ウェルカム・ホーム! (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325200

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに鷺沢萌さんの本を読みました。
    2つともいい話。
    一生懸命生きてる感じもあって、爽やかに、だけど人との繋がりの大切さをそっと教えてくれるそんな気がしました。
    鷺沢萌さんの本はわりとたくさん持ってるので再読しようかな。

  • 近年、米国のファミリー映画は、ゲイカップルの子供の話だったり、ちょっと変わった形で、家族のあり方を問う作品が増えており、その度に大きな反響を呼んでいる。

    鷺沢さんが、10年も前に、先駆けるかのように、『血縁とも婚姻とも恋愛とも違うもので結びつく人々』を描いているとはなんとも素晴らしい感性。

    家族について、考えさせられました。

  • 「ウェルカム・ホーム!」
    血なんか繋がってなくても大丈夫。魔法のことば「お帰りなさい!」を大きな声で叫んだら、大好きなあの人は、たちまち大切な家族に変わるから。


    離婚し親にも勘当され、親友の父子家庭宅に居候しながら、家事と子育てに励む元シェフ渡辺毅と、再婚にも失敗し、愛情を注いで育てあげた前夫の連れ娘と引き離されたキャリアウーマン児島律子。それぞれの奮闘が詰まった物語です。


    キャリアウーマン児島律子のウェルカム・ホーム!は、読んでからのお楽しみということで、渡辺毅のウェルカム・ホーム!に関する書評です。


    主人公は、離婚の結果、住む場所と経済力を失った毅。そんな毅に「ここに住む場所と経済力は無いが、それ以外のことに時間を割ける男が一人。ここに住む場所と経済力はあるが、それ以外のことに時間を割けない男が一人。同居するのは、合理的だろ」という親友の言葉から全てが始まった。毅と親友、そしてその息子の物語。


    今では、主夫という言葉が市民権を得ている状況ですが、著書が刊行された2004年には、まだ世間に浸透していなかったのではないでしょうか。そんな中、毅は親友の家事全てを一手に担った。あっぱれ。毅は、元シェフだったので、料理に手こずるのではない(但し、テキトーな学生生活の延長線上で父親の繁盛店を継いでしまった為、結果的に店を潰してしまい、親に勘当されるという有り難くないお墨付ではあるが)。そんな彼が、手こずったのは、オトコの沽券である。


    一言で言ってしまえば、”このオトコの沽券について毅がオタオタしている物語”となるのですが、それがアットホームであり、ちょっと感動ものであったりするのです。特に、毅が独り言を言うシーンが、絶妙。ユーモラスであり、男として思うところが出ていたり、息子への熱い思いが出ていたりで、独り言が重要な役割を果たしているのは間違いないです。この部分だけ切り取ってもきっと楽しめるw


    毅たちは、本当の家族ではないのですが、血なんか繋がってなくても「お帰りなさい!」を大きな声で叫んだら、大好きなあの人は、たちまち大切な家族に変わる。なんと素晴らしいことだろう。


    心がほっと温まる、そんな作品です。しかし、弁当を作って貰える有り難さ。羨ましいことこの上ない。

  • これは素晴らしかったなぁ。遺作ってことだけど、今更ながら、早逝されたことが残念です。二つのウエルカムから構成されている中編集だけど、両方ともがそれぞれに違う魅力を放ってます。で、個人的に好きなのは後半。夫の連れ子の幼少期から思春期、ともに過ごした日々を回想した後、久しぶりの再開に用意されたドラマの数々に、もう涙腺崩壊。これだったら、作者の狙い通りに泣かされちゃっても、何も文句ないです。もちろん、ふとしたきっかけでパパ2人になってしまった前半作品も、特に息子の作文とか凄く素敵。

  • 家族って血の繋がりじゃなく、絆なんだなー
    暖かくて、感動して、少しクスリと明るくなれる物語。
    シングルとか、海外出張とか、離婚とか、現代的だけどわざとらしくない、良い本に当たりました。
    「辿り着いたじゃないか、辿り着いちゃったじゃないか!!」

  • 血の繋がっていない家族の話が2編。どちらも良かったが特に小島さんと娘の話に涙。出来過ぎの結末ではあるが、苦労した母とそれを裏切らなかった娘。全てをハッピーエンドにまとめてもらってとってもうれしい。タケシさん家のノリくんは作文が上手過ぎ。我が家の息子もこんなに出来る子だったら親の悩みも少なかったんだろうな。

  • 鷺沢さんの本の中で一番か二番目に好きな本。
    読みやすいしね。
    特にひとつめの話は温かくて好き。
    二つめはなかなか苦しい気持ちになるけど、ハッピーエンドなので。

  • 読みやすい。何となく心温まる。家族とちゃんと向き合うって大事って思う。遠慮せず、心配してやろうと思う。

  • 渡辺毅と児島律子の物語。この二人に関連性はなく、それぞれの家族の形が描かれている。
    所謂、両親が揃っていて・・・という「普通」の家族、「普通」の結婚を逃した二人が、自分達なりの幸せと家族の形を捉え、受容していく過程がよかった。表現が適度にポップで、重すぎず暗すぎず。幸せにもひたりすぎずで、これからも様々に形を変えうる家族の可能性を秘めながら、前向きに進んでいこうとする家族たちに感動しました。

  • 久しぶりの鷺沢萠。家族とは何かを問い続けた作者が最後に遺した作品。フツーな家族って何?フツーな家族なんてないんだから、自分に正直に生きれば良いんじゃない、とでも言いたげな作者の優しさに触れられる作品。来年4月11日で没後10年。早すぎるよ、鷺沢さん。


    2021年3月26日更新
    家族の在り方がますます多様化している昨今、そして、自分自身も齢を重ね、子の親となったところで、久しぶりに手に取って再読。

    刊行されたのは平成16年3月。もう17年前。そして、その1か月後、4月11日に自死。

    当時、30代半ばにして、この作品を書いていた作者の慧眼に改めて感動する。

    日本でも、ようやく先日同性婚を認めないことは違憲であるとの判決が札幌地裁でなされた。本作は、LGBTQを取り上げたものではないが、性別か夫婦の在り方や役割に対する固定観念が大きく揺らぎ、男性の育休も決して珍しくなくなってきた今現在でも、この書は新鮮であるし、当時からその問題意識を見透かしたように、しかしそれを一つのエンタテインメントとなり得る小説として著していたことに、驚かされた。

    今の時代、鷺沢さんが見ていたらどう見えたんだろう。あれから日本内外で大きく時代は変わり、従来の価値観、倫理観、モラルも大きく変わっている。また、国際関係も、プレーヤーが変わってきている。韓国との関係は、過去最悪といえるほど冷え込んでいる。そんな今に、鷺沢さんがいたら、どういう発信をして、どういう作品を残しているのか、見てみたい。

    でも、最後に一言重箱の隅をつつくようで申し訳ないけど、ダメ出しさせて。鑑みるのは「に」であって「を」ではないんです、鷺沢さん。本書収録作品2作、それぞれ1回ずつ使っているけど、どっちも誤り。あ、1980年代の日円と米ドルの為替レートにも違和感あったかも。

    まあ、そんなこんなを措いて、本書は気軽に楽しく読める作品。今の時代においても、広く読まれてほしい。

著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鷺沢萠の作品

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