神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325316

作品紹介・あらすじ

イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう-。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。

感想・レビュー・書評

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  • "人の温もりが欲しいから抱かれる”この本に書かれていることは、遠い国で起こっていることなのだが、身近にもそういう人はいるのではないだろうか。数冊、石井氏の本を拝読しているが、その中では希望のある話が多いように感じられた。
    今回のテーマが”性”についてだからなのだろうか。性について語るときに、切り離すことができない愛や恋というものは、どのような境遇や国でも楽しくワクワクするものなのだろう。
    といっても、辛く救いのない章が多いことに変わりはない。日本兵のレイプや僅か12歳の少女の売春。
    そのような非情な現実を石井氏は包み隠さず、文章にしている。加えて、そのような境遇であっても明るく生きている人もいるという事実も同じように文章にしている。故に、石井氏の文章はリアルなのだと思う。
    自分の近くにも、辛くとも明るく生きている人もいれば恵まれているにも関わらず自分から道を踏み外す人もいる。
    この本を読んだ感想が「知っているだけではなにもできない」だけでは余りにも悲しい。
    できないことには変わりないが、どんな境遇であっても幸せな人生を送る人もいるという部分に私は勇気をもらった。
    (ヒジュラの話や、一夫多妻制の集落の話は特に)
    また、「知っているだけ」という人が増えれば、経済が動くのかもしれないという希望くらいはもっていてもいいのかもしれない。

  • 著者の本は3冊目の読了となりましたが、手に取る度にいろいろ考えさせられます。

    本書はイスラームの国々を訪れ、都会や観光地を巡るのではなく、それぞれの国が抱える闇に潜入し、「性」をテーマに取材をすすめる潜入ルポ。

    まだまだ勉強不足な私にはイスラームといえば中東の国々だと思っていましたが、東南アジアにも多くのイスラーム教徒がいることを知りました。

    敬虔なイスラーム教徒であればある程、厳しい戒律を重んじ、その中で生きています。

    私の勝手な思い込みかも知れませんが、宗教とは私も含め多くの日本人には理解し難いものだと思っています。

    それが故に本書にも書かれている「一夫多妻制」等は誤ったイメージを持っていた事にも気づかせてもらいました。

    どことなく、権力や金を持つ一部の人が複数の妻をめとっているのだと何となく思っていましたが、イスラームの教えでは女性は外で働くことも許されていません。

    だから、虐殺や戦争などで多くの若い男性がいなくなった後、残された女性を助ける為に多妻制が自然と出来上がったという事実は私の記憶に刷り込まれました。

    そして、最下層で生きていく弱者とは何処の国でも女性と子供達、病に侵された人やジェンダーだという事実。

    そこには生きていく為に体を売ったり、犯罪に手を染めたり、ドラッグに手を出したりする姿が生々しく描かれていました。

    そして、そんな弱者を食い物にする人々がいることも。

    過日読み終えた「絶対貧困」とも通ずる世界。

    しかし、本作では「絶対貧困」で描かれた闇の部分のみならず、最下層で生きていく弱者の人々が、どう考え、どう思い、何を求めるのか、もう一歩踏み込んだ視点で描かれていたように思います。

    本作を読みながら、著者が現場で感じたリアル、苦悩、無力感...そのままを書き記して頂いたことに只々感謝と尊敬の念を禁じ得ない。

    私にはこの現実を変える力なんてありません。

    しかし、世界中の全ての人が「自分には無理だ」と何もしなければ、何も変わることもない。

    何かが出来る訳ではないが、せめて現実の世界で起こっている事実として受け止めようと思います。

    説明
    内容紹介
    イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう──。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。
    内容(「BOOK」データベースより)
    イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう―。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    石井/光太
    1977(昭和52)年、東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 戒律の厳しいイスラームの国々の底辺で生きてる人間を「性」という視点から見た著者石井光太氏のルポ。氏の作品は何作か読んだがどうも腑に落ちない点が多い。
    確かに彼は現地での取材はリアルに行っていると写真からでも理解できる、が、話の内容が嘘臭い、いや、臭すぎる、え、嘘だろって感じwwwww
    偽善すぎるというか、お前何年も現地のスラム街に住み込んでんだから、現地の政治・治安状況がわかるはずだろ?だったらその中で政治の腐敗、現地警察・司法の醜さは重々承知してるはずだろ?理不尽だからと言ってなんで現地警察管に突っかかるんだよwそんなん普通は捕まるだろ?いやいや闇に葬られるのがデフォだろ?現地マフィアが絡んでんだから。知ってるはずやんwwww絶対嘘wwwwwwwwwww
    海外に住んでいれば現地警察の怖さは分かるはず。頼むから現在の価値観で日本人としての正義感をみせつけたったー的な話はやめろ。嘘だろ、おいおいw自分の脳内物語だろwwwwwww
    淡々と現地の悲惨さを報告するだけで十分俺達には伝わるんだよ。それを突撃マル秘報告したことは評価できる。だから何冊か読んだ。
    でもな、文章が拙い。場の空気を表現する為の風景描写がなんとも、んー、イスラムだけにイラン。(ゴホン)
    最底辺で体を売って生きるイスラムの人々の話を読むと宗教ってなんなん?って誰もが感じるはずだが、これは宗教が理由なのか政治が理由なのかは俺には分からんが、こんな悲惨な人生を歩んでいる人達がいる事は事実であり、受け止めなければいけない、でも全員が幸せになる事は無理なのも事実。せめて悪いヤツは苦しんで死んでくれ。それだけ。

  • 何度も泣いて、本を手放したいくらいだった。だけど日本人の私には想像もつかない境遇でも、ささやかなことに喜んだり、楽しく踊ったりする彼らの様子がほんとうに尊かった。理解しがたい風習も多いイスラームだけど、彼らには彼らの積み重ねてきた歴史が、逃れられない掟がある。不妊女性や同性愛者の迫害や名誉殺人なんて心底ぞっとするけれど、今そこで一生懸命に暮らしている人々に罪があるなんて思えなかった。
    また、著者が自身の無力さや日本人側の価値観ゆえの葛藤も赤裸々に書いていることで、同じ目線で考えながら読むことができた。私にもなにもできないなあと痛感した。でも文庫版あとがきで著者が言うように、知らないことにはなにも始まらないというのは本当だと思う。

  • すごく興味深くて、一気に読んだ。人の不幸を見て、自分の幸せを実感するというのはとてもやらしい方法だと思うけど、そういう事も感じた。遠い昔の、遠い国の話じゃなくて、今現在でたぶんすぐそこでも起こっていること。私は関わりになることがなくて知らなかっただけ。石井サンの言葉には、えらそうなところがないっていうか、自分の弱さをちゃんと見つめてるというか、そういうところがあるから、もっと読みたいと思えるのだと思う。エライ学者が、上から目線で「研究」や「ボランティア」のために途上国にいって、自分はいいホテルに泊まってっていうのとは全然違う。日本のような先進国だと「恋愛結婚至上主義」が普通で、世の中みんながそうしたいのだというような錯覚に陥るけど、私は前から思っていたけど、たぶんそうではない。ということが一夫多妻制のことについて書かれているのでもわかった。そういう状況で、そうする事で、助け合っている。今の先進国は、恋愛も結婚も仕事を得るのも資本主義的な考え方で進んでいる。努力をして自分の価値を高めて、自分で選んで、選ばれて、競争して勝ち取っていくような。そしてそれに漏れる者もたくさんいる。でも、そうじゃなくて、一定の「しあわせ」みたいなものをまわりが固めてくれて、それに乗っかって生きていくのも、それは「しあわせ」だと思う。
    あと、路上生活者の子供が性犯罪にあっているのを「絶対に嫌に思っているに違いない。かわいそう」という色眼鏡で見ていたけど、そうじゃないことがわかって、驚いた。人間として見てもらうことって本当に大事なんだなぁって思う。「同情するなら金をくれ」な子ばかりかと思ったけど、たとえばちょっとおしゃべりしたり、冗談を言ったりで、一瞬でも、楽しい気分がお互いに広がれば、それって小額喜捨を同じかもな、と思う。これからの接し方をすごく考える。
    イスラムの厳しい戒律があるがゆえに「仕方がない」ことになって、実の子を殺したり、家族とも絶縁して底辺でこれから生きるしかなくなった人がたくさんでてきて、なんとも言えない気持ちになった。本人は悪くないように見えるのに。「助ける」のための一夫多妻などで、恩恵を受けている人もたくさんいるのだろうけど。
    それはさておき…戦争中の日本の兵隊のした事の影が、まだ他の国に残っている。私は何も知らなかった。もっと戦争の事も知りたいと思った。

  • イスラーム圏の国々における「性」に視点を当てたルポ。性に携わる職のひとたちが多く登場し、それは、老若男女問わない。少年少女、老人、女性、男性など、様々なひとが登場して、自分の思いを吐露する。

    貧しさだけが、体を売る理由ではない。寂しさ、心のスキマを埋めるために売るという人が少なくない。さまさまな環境の中で、一概にその行為を否定することはできないと思う。

    非常に考えさせられる内容であったと思うが、筆者の姿勢で気になる点があった。出てくる人を自分の定規に当てはめて、「これはいけない。もっとこうしなければ」と押し付けるのだ。個人的な意見として、それはあまり望ましいことではないと感じた。そのようなことをしたいのなら、そのような活動を行なっている団体に参加するなどの方法があるはず。取材をするなら、一貫して冷静な目線、第三者でいるべきだとおもう。

    案の定、「部外者のくせに」「何も知らないくせに」などと言われて、拒絶され、自分は無力だなどと途方にくれている。悲劇のヒーロー気取りが鼻につく点が多々あった。

    視点としては面白かったと思うので、残念。

  • ☆5つけたけど、一個へらした。著者の中途半端な正義感で却って人を傷付けてる部分は、確かにある。けど、腹が立つというより「でも正直っちゃ正直な反応」だと思うし、何より当人がわかっているでしょう。「実際に行って、人と関わることでしか知り得ない現実」を伝えてくれた事を素直に受け止めたい。

  • 何となく読んだ一冊。
    何となく読んで、ずっしり重い気分になった。

    旅先で出会う物乞いの子供達の汚れた小さな手を思い出した。

    正義感だけでは彼女たちを救えない。
    でも、救えるものなら救いたい。

    危険を試みず行動を起こした筆者は素晴らしいと思う。

  • 本のタイトルからそこまでの興味がわかずにずっと積読してありやっと。
    自分では石井光太さんと同じことは絶対にできないから、こうやって本にされ読める事がすごいことだと思いながらあっというまに読み終わり。
    この方の文章は読みやすく引き込まれる。
    旅で出会ったいろんな人々の話。自分の全く知らない世界。

  • 2010-4-29

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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