レンタルチャイルド 神に弄ばれる貧しき子供たち (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325330

感想・レビュー・書評

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  • 基本的にはノンフィクションの良書だと思うのだが、情景描写をあえてショッキングにグロテスクに書くやり方にはやや閉口。
    必要のない箇所で、動物の死体や虫や体液など、読者が不快に感じる小道具を必ず入れてくる。そんなに都合良く小道具がセットされているわけはない。そういった小説だと言ったほうがしっくりくるかもしれない。
    また、スラムや貧民達のルールの中で暮らしている人に対して、金を払ってひっかきまわして、そこの人々のささやかな暮らしをぐちゃぐちゃにしていく様子はあまり読んでいて気持ちの良いものではない。

  • より憐憫を誘った方が多くお金が集まるということで、赤子をレンタルしたり、手足を切断されたり、そんな物乞いの実態があるという。衝撃的な内容ですが、それで自分に何が出来るかと考えて、より一層虚しい思いが押し寄せてきます。それでも何とかしたいと思ったから著者も目を背けずに取材をしたのでしょう。今、この時に少しでもそんな実態がなくなるように願わずにはいられません。

  • 2000年ころ、2週間のバックパック旅行でインドに行ったとき、あまりの物乞いの多さにショックをうけた。行く前は「たくましく生きる人を見たい」なんて思っていたが、帰国後読んだ本に、貧困は美しいものではない、人類が憎むべきものだという言葉に激しく同感した。その後、インドに行ってないが、差別も貧困も少なくなったのだろうと勝手に思っていた。何も変わっていない?!しかも当時やけに障害者が多いなと感じたがこんな理由なのか?!
    マイナス1点は通訳が片言の割りには物乞いが饒舌で、フィクション入ってそうだから。最後まで読んだら、雑誌編集部に読者がドキッとするような話をたくさん書いてほしいというようなこと言われたようで、そのせいなのかなーと思ってしまった。

  • レンタルチャイルド。
    表紙とタイトルだけで壮絶な貧困問題を取り扱っていることは想像がついた。
    著者が数年おきにインドのムンバイを訪れ、貧困の現場をルポタージュしたもの。

    気付くと段々と小説を読んでいるような気になっていた。
    そのようにして見ないと受け止めきれない気がして、心が勝手に張った予防線なのかもわからないが。

    ラジャという青年を追いかけられたことはすごい意義があると感じる。
    少年から青年への成長の過程と、ムンバイの発展、貧困者たちの形勢変化が切り離されずに描かれている。
    たまたま出会った少年がどういう社会の中で生きているうちの一人なのか、
    その一人がどんな気持ちを味わって生きていいるのか。

    言葉をなくしてしまう。

    フィクションであればラジャ少年がなかなか男前なキャラクターである。
    泣かせ所は十分。マノージと絡めればお話も纏め上げられそうな気がするが、全部作者の目の前で起こった事実。

    ずっしりと重い。
    自分が何も考えずに享受しているものを再確認する。
    遠い国のお話。「せめて」と希うことが多すぎる。




    うーーーーん、うまくかけません。ショッキングは大です。映画じゃない。

  • 2012(底本2010)年刊行。

     インドの商都ムンバイに生きる貧困層の実像を自ら(時には単身で)調査・取材し、まとめたものである。
     売春・強盗・強姦・物乞い・薬物等は序の口である。死体を利用した物乞い、人身売買、あえて不倶にした子どもを利用した物乞い、臓器売買、少年への男色から、果ては性欲を満たすための獣姦まで。凄みのある壮絶な状況に絶句するしかない。
     これを現地に飛び込み、危険をかいくぐりながら調査した著者には言葉もない。ところどころの激越な書きぶりも、酷い状況に対する感情の捌け口として得心できる。

  •  著者の石井さんはインドのムンバイで乞食をする人々の実態を暴く。後半では雑誌社から取材料金なるものを手にして、マフィアの「物乞いビジネス」の全容を知ることになる。確かに読んでいて、その闇の深さにただただ驚く・・・著者は自身で本書にも記載しているのだが、自分は外人なので危害は加えられないだろうという立場での取材であることを認識している。事件が起きている現場の突撃取材で当事者を名乗る著者だが・・・違和感を覚えたのはわたしだけかな。内容は凄いの一言。

  • 病院の待合室で意外にエグい本が読めるあるある…レンタルチャイルド、万をじして読んでるが、かなりエグいんだけど、非人情的な現実の中に人間の生の情が垣間見える。物乞いする為に目を潰された子供たちがその張本人である大人たちを親の様に慕い、他の街の人間は自分たちを蔑む事しかしない、それに比べれば住食を与えてくれる彼らを「悪く言わないで」と言う様が什造に重なって…の本を読みたいと思ったのは不謹慎な意味ではなく、関心があったからだが、読んでいて、人間に迫害され親を失い食料を調達できない喰種が生きる様に似ているなぁ、と思った。
    描かれている孤児たちは文字通り泥水すすりながらも「生きる為に」が前提なんだよね。自分たちの悲惨さを嘆いて文字通り立ち止まって考える余裕もないほど飢えている…生きるってどう言う事を差すんだろうなぁ。

  • この本は作者である石井光太さんが10年の歳月を費やしただけあって、彼のルポルタージュの中でも出色で禍々しい内容になっています。紹介しておいてこういうことを言うのもなんですが決して万人受けはしません。

    僕は今回この記事を書くために、もう一度この本を再読して、その上で今回この記事を書いておりますけれど、現在非常に鬱の状態です。それぐらいのインパクトがこの本にはあって、僕自身でさえもここで挙げておいて言うのもなんだけれど、非常に迷います。紹介していいものなのかどうか、と。

    ここに書かれているのは、前編に渡って絶対的な貧困というものがいかに
    『にんげんが、にんげんでなくなってしまうのか』
    ということです。作者によると、インドの地で路上で物乞いをしている女の人たちが抱いている赤ん坊は実を言うとマフィアに売られた赤ん坊で、それを物乞いに文字通り「レンタル」することで彼らからその収入のほとんどを巻き上げ、赤ん坊がさらに成長すると目をつぶしたり、手や足を切り落とすなどして『障害者』として路上に立たせ、物乞いをさせる。そして、その路上で生き残った子供はここでいうところの『路上の悪魔』に変貌を遂げます。

    身寄りのない彼らはよりあり集まって『青年マフィア』結成し、街でヒジュラを襲ったり、本当にさすがの僕もここでは書くことを差し控えるようなことをして生き延びていくのです。それはもうおぞましいものです。そして、僕が一番印象に残っているのは作中にラジャという少年が出てきますが、彼もまた大人になるにつれて、かつて自分が最も忌み嫌った存在に変貌してしまうのが、これまたどうしようもないやるせなさを読んだ後に残してくれました。

    これは、はっきり井って心臓の弱い人にはあんまりお勧めできません。それでもいいという方のみ、読んでください。

  • 石井光太作品は「神の棄てた遺体」に続き2作目。通訳を介しているのに、取材対象者の心の機微がここまでわかるのか!?とか、この人の作品のノンフィクション性について色々言われてるようだけど、そんなことどうでもよくなるくらい、あまりにも現実は生々しくて壮絶。消毒したものじゃないと食べれないとか、清潔な布団じゃなきゃ眠れないとか、表紙が折れた本は読めないとか、何かそんなことがちゃんちゃら可笑しく思えてきた。人間って弱いようで凄く強いんだよな…。

  • 壮絶な現状。俗な言い方だけどそれしか思い浮かばない。著者はかなり闇の深部まで潜り込んで取材を続け、このジャーナリスト精神には脱帽。多分著者はもっと壮絶な現場を見てるんじゃなかろうか。本文はその一部の抜粋のような気がする。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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