- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101325330
作品紹介・あらすじ
二〇〇二年、冬。インドの巨大都市ムンバイ。路上にたむろする女乞食は一様に乳飲み子を抱えていた。だが、赤ん坊はマフィアからの「レンタルチャイルド」であり、一層の憐憫を誘うため手足を切断されていたのだ。時を経て成長した幼子らは"路上の悪魔"へと変貌を遂げる-。三度の渡印で見えた貧困の真実と、運命に翻弄されながらも必死に生きる人間の姿を描く衝撃作。
感想・レビュー・書評
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基本的にはノンフィクションの良書だと思うのだが、情景描写をあえてショッキングにグロテスクに書くやり方にはやや閉口。
必要のない箇所で、動物の死体や虫や体液など、読者が不快に感じる小道具を必ず入れてくる。そんなに都合良く小道具がセットされているわけはない。そういった小説だと言ったほうがしっくりくるかもしれない。
また、スラムや貧民達のルールの中で暮らしている人に対して、金を払ってひっかきまわして、そこの人々のささやかな暮らしをぐちゃぐちゃにしていく様子はあまり読んでいて気持ちの良いものではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2000年ころ、2週間のバックパック旅行でインドに行ったとき、あまりの物乞いの多さにショックをうけた。行く前は「たくましく生きる人を見たい」なんて思っていたが、帰国後読んだ本に、貧困は美しいものではない、人類が憎むべきものだという言葉に激しく同感した。その後、インドに行ってないが、差別も貧困も少なくなったのだろうと勝手に思っていた。何も変わっていない?!しかも当時やけに障害者が多いなと感じたがこんな理由なのか?!
マイナス1点は通訳が片言の割りには物乞いが饒舌で、フィクション入ってそうだから。最後まで読んだら、雑誌編集部に読者がドキッとするような話をたくさん書いてほしいというようなこと言われたようで、そのせいなのかなーと思ってしまった。 -
著者の石井さんはインドのムンバイで乞食をする人々の実態を暴く。後半では雑誌社から取材料金なるものを手にして、マフィアの「物乞いビジネス」の全容を知ることになる。確かに読んでいて、その闇の深さにただただ驚く・・・著者は自身で本書にも記載しているのだが、自分は外人なので危害は加えられないだろうという立場での取材であることを認識している。事件が起きている現場の突撃取材で当事者を名乗る著者だが・・・違和感を覚えたのはわたしだけかな。内容は凄いの一言。
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病院の待合室で意外にエグい本が読めるあるある…レンタルチャイルド、万をじして読んでるが、かなりエグいんだけど、非人情的な現実の中に人間の生の情が垣間見える。物乞いする為に目を潰された子供たちがその張本人である大人たちを親の様に慕い、他の街の人間は自分たちを蔑む事しかしない、それに比べれば住食を与えてくれる彼らを「悪く言わないで」と言う様が什造に重なって…の本を読みたいと思ったのは不謹慎な意味ではなく、関心があったからだが、読んでいて、人間に迫害され親を失い食料を調達できない喰種が生きる様に似ているなぁ、と思った。
描かれている孤児たちは文字通り泥水すすりながらも「生きる為に」が前提なんだよね。自分たちの悲惨さを嘆いて文字通り立ち止まって考える余裕もないほど飢えている…生きるってどう言う事を差すんだろうなぁ。 -
この本は作者である石井光太さんが10年の歳月を費やしただけあって、彼のルポルタージュの中でも出色で禍々しい内容になっています。紹介しておいてこういうことを言うのもなんですが決して万人受けはしません。
僕は今回この記事を書くために、もう一度この本を再読して、その上で今回この記事を書いておりますけれど、現在非常に鬱の状態です。それぐらいのインパクトがこの本にはあって、僕自身でさえもここで挙げておいて言うのもなんだけれど、非常に迷います。紹介していいものなのかどうか、と。
ここに書かれているのは、前編に渡って絶対的な貧困というものがいかに
『にんげんが、にんげんでなくなってしまうのか』
ということです。作者によると、インドの地で路上で物乞いをしている女の人たちが抱いている赤ん坊は実を言うとマフィアに売られた赤ん坊で、それを物乞いに文字通り「レンタル」することで彼らからその収入のほとんどを巻き上げ、赤ん坊がさらに成長すると目をつぶしたり、手や足を切り落とすなどして『障害者』として路上に立たせ、物乞いをさせる。そして、その路上で生き残った子供はここでいうところの『路上の悪魔』に変貌を遂げます。
身寄りのない彼らはよりあり集まって『青年マフィア』結成し、街でヒジュラを襲ったり、本当にさすがの僕もここでは書くことを差し控えるようなことをして生き延びていくのです。それはもうおぞましいものです。そして、僕が一番印象に残っているのは作中にラジャという少年が出てきますが、彼もまた大人になるにつれて、かつて自分が最も忌み嫌った存在に変貌してしまうのが、これまたどうしようもないやるせなさを読んだ後に残してくれました。
これは、はっきり井って心臓の弱い人にはあんまりお勧めできません。それでもいいという方のみ、読んでください。 -
石井光太作品は「神の棄てた遺体」に続き2作目。通訳を介しているのに、取材対象者の心の機微がここまでわかるのか!?とか、この人の作品のノンフィクション性について色々言われてるようだけど、そんなことどうでもよくなるくらい、あまりにも現実は生々しくて壮絶。消毒したものじゃないと食べれないとか、清潔な布団じゃなきゃ眠れないとか、表紙が折れた本は読めないとか、何かそんなことがちゃんちゃら可笑しく思えてきた。人間って弱いようで凄く強いんだよな…。
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壮絶な現状。俗な言い方だけどそれしか思い浮かばない。著者はかなり闇の深部まで潜り込んで取材を続け、このジャーナリスト精神には脱帽。多分著者はもっと壮絶な現場を見てるんじゃなかろうか。本文はその一部の抜粋のような気がする。
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これ一冊を書くのにどれだけ大変な危ない経験をしたんだろうって何度も考えた。
人間の生活と思い難いけど実際にそうして暮らす人がいるんだなと思うとなんとも言えない気持ちにしかならない。 -
僕がアジアに興味を持ちはじめた頃に読みました。
あれからどれくらい世の中は良くなったのか。
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パックパッカーの聖地として知られているインド。
自分自身も大学時代に旅行をしたことがある。
確かに貧困について考えさせられる場面があった。
物乞いする子供、道端で物を売る子など
貧しさから生まれるものだと思っていたが、
それだけが理由でないことがよくわかった。
万人にお勧めできる本ではないが、(想像を絶する環境があり、あまりにもリアルに描かれているため)本質を知る上でとてもよい本だった。
石井先生の取材力を感じる一冊でした。 -
貧困地帯の、負の連鎖の現状について深く知れた。
実際の経験をもとに書かれていてゾワッとした場面が多々あった。 -
インドのムンバイ。物乞いの稼ぎを良くするために利用される幼児「レンタルチャイルド」をめぐるルポ。
マフィアが赤ん坊をさらってきて、より同情を引けるよう障害を負わせ、貸し借り、あるいは売り買いする。そのマフィア自身も貧しい。虐げられる側だった子どもも、成長した後は他人に暴力を振るうようになる。人権という言葉が空しく感じられるような世界の話。自分のちっぽけな怒りや悲しみのレンジを超えている。ただこういう現実もある、その中で生きている人がいる、ということだけを理解する。 -
あとがきにあったけど、是非またラジャやマノージ達を訪れて本にしてほしい。
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2012-11-9
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2012年に突然首肩痛に悩まされて以来、ベッドで横になって本を読む時間が急激に増えた。当時はなるべく日常からかけ離れた本を意識的に選んで読んだ。そんな中で、最大の読書体験となったのが『レンタル・チャイルド』だった。
これをきっかけに、その著者である石井光太氏が講師を務める『ノンフィクションの作りかた』講座を受けた。余りの衝撃にこの人の話を聞かねばならないと思ったのだ。
インドムンバイを舞台にした壮烈なノンフィクション。 -
小難しい話ではなくて、物語のように進んでいくので、読みやすかった。
時代の流れとともに変わっていく物乞いたちの姿。現在の彼らの姿が気になった。
この歳だから読めたけど、もう少し若い時に手に取っていたら読めなかったかもしれない。それだけ辛い内容だった。本当にこんなことがあったのだろうか。読んでよかった。 -
読みながらふと、エッセイ・ノンフィクションと、小説を読む違いについて思った。エッセイ・ノンフィクションは、問題があらかじめ提示されているけれど、小説は何を問題にするのか自分で考えなくてはいけない。それが、小説を読むしんどさなんだろうなあと。
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インドで乞食をするために哀れみを得ようと、手を切断されたり目をつぶされたりする者がいる。そうした現状に入り込みねなぜそのようなことが行われているのかを探っている。レンタルチャイルドとは女が物乞いをするときに子供を連れていた方が喜捨がもらえる可能性が高いためマフィアがさらってきた子供を借りている、その子供である。
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15.oct.25
一気に読んだ。一つ一つゆっくり噛みしめるのが怖かった。「事実は小説より奇なり」と言うが小説よりも残酷で救いがない。
2002年、2004年、2008年の3回に渡って著者がインド・ムンバイの路上生活者を追った記録。
登場人物一人一人の髪や服装の汚れ、臭い、退廃的な街の雰囲気が目の前に迫ってくるようで苦しかった。
レンタルチャイルドという言葉は正直この本を読むまで知らなかった。売春や奴隷かと想像したが、物乞いのために他人の子供を使うとは…物乞いの数が尋常でなく、その中で日銭を稼ぎ、ギリギリのラインで生き残るには、いかに他の物乞いより悲惨に見せるかが重要で、その為にマフィアが子供を傷つけて手足を切断したり目を潰したり、仲間の死体を市中に -
ぐったり。
おもしろかった。 -
気をつけていないと、ちょっと西側の同じ地球上で起きていることだということを忘れてしまうほど、ショッキングな内容なのは、事実。予想がつかないかと言われると嘘になるが想像を絶する。本当に起こってしまうのだなという世界。インドのもとからのカースト制度×資本主義の生み出す格差、貧困の底辺の物語ってところなんだろうか。これ以上の底辺もあるのだろうか。
ラジャは最後でもまだ20代である。でも、日本のおじさんたちにさえ絶対に選択できないであろう究極の2択をちいさい時から常に選んで生きてきている。
環境によって状況によって人は変わる。考え方も行動も変わる。しかし、搾取されてる側もする側も、それを取材する部外者も、その取材結果を読む部外者も1人の弱い人間だという、紛れもない事実。
物乞いにお金をあげることがいいことなのかわるいことなのか答えを更に出せなくなる。一概には言えない。が究極の答えか。どちらでもないが1番まともな答えかもしれない。
正解のない世の中で生きているということを思い出させてくれる。
自分はなにも言う資格がないくらいにはなにもできない。
著者の抱いた感情も行動も、外から見れば不思議なところ疑問なところあるが、その場に著者が居合わせた結果として、必然的に起こったことなのだろうと思った。
ちっぽけなことは気にしていられない世界であり、よく知っている悩みはみんなちっぽけなことであるという、そういう世界で彼らは生きている。 -
発展途上国〜新興国の頃合いにかけてのインドにおける、路上生活をする者、利用される子供、それからそれを利用する大人たちの構図と、利用されてきた子供たちの行く末を追ったルポ。
元々ノンフィクションものは敬遠しがちだったけど、ノンフィクションでこんなに読みやすいのがあるんだなってことにまず驚いた。なんていうか小説みたいにスラスラ読める。ただ中身は悲惨。何も救われやしない。けど読後感はどうだって聞かれたら、そう悪くはなかった。人によると思うけど。ルポの人の態度というか、ルポの書き方に強い感情的表現がないからかも。あったら多分読むの息苦しいわ、これ。
作者のガイドのマノージに「てめえは、どうあがいたってあの頃の乞食だ」と言い放ってた路上生活者のラジャが、最後の最後にマノージに吐き捨てた言葉は、胸にくるものがあった。 -
思わず小説かと思ってしまうほど壮絶なインドの現実。
久しぶりに強烈な海外の本を読んだ気がした。
貧困ということへの日本人の理解は低いと思う。
なぜなら飢餓など自分たちが絶対に経験したことのないことへの想像しかできないからだ。だからこういった話をフィクションのように考えてしまう。 -
何にもできないな。。