「鬼畜」の家: わが子を殺す親たち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 220
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325385

作品紹介・あらすじ

使用済みのオムツが悪臭を放ち、床には虫が湧く。暗く寒い部屋に監禁され食事は与えられず、それでもなお親の愛を信じていた 5 歳の男児は、一人息絶え、ミイラ化した。極めて身勝手な理由でわが子を手にかける親たち。彼らは一様に口を揃える。「愛していたけど、殺した」。ただし「私なりに」。親の生育歴を遡ることで見えてきた真実とは。家庭という密室で殺される子供たちを追う衝撃のルポ。

感想・レビュー・書評

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  • 石井光太『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』新潮文庫。

    3つの幼児虐待事件の深層に迫ったルポルタージュ。石井光太は信用できるノンフィクション作家である。その理由は客観的な視点による取材結果を極めてフェアに記録している点にある。全ての事実には必ず表と裏の二面があるが、石井光太の描くルポルタージュはそのどちらも公平に伝えてくれているように感じるのだ。

    本書に描かれるのは怒りとやるせなさを感じる『厚木市幼児餓死白骨化事件』『下田市嬰児連続殺害事件』『足立区ウサギ用ゲージ監禁虐待死事件』の3つの事件。いずれの事件も未熟な親が、親としての責任を果たさずに子供を死に至らしめた哀しい事件ばかりである。

    『厚木市幼児餓死白骨化事件』。人間としても親としても未熟なカップルが育児放棄の果てに自分たちの子供を餓死させる。恐ろしいのは自分たちはまともでそれほど悪いことはしていないと主張している点である。

    『下田市嬰児連続殺害事件』。恐ろしいまでの狂気にまみれた事件の全貌。余りにも堕落した身勝手な人間ばかりが事件に関わっており、吐き気がした。狂気とエゴは連鎖し、不幸の上に不幸を塗り重ねていく。とても人間が取るべき行動とは思えない。

    『足立区ウサギ用ゲージ監禁虐待死事件』。普通の人間とは思えないモンスター夫婦による幼児虐待と殺人。この事件もまた狂気とエゴの連鎖の果て……

  • 実際にあった凄惨な虐待事件を扱っていることもあり、何ともやるせない気持ちになったが、著者の丹念な取材と筆力に圧倒され、のめり込んでしまった。

    一つの事件が起こる背景には、複雑な事情が絡まり合っている。
    著者は三代まで遡りながらその背景を探っていくが、更にその先にも引き金になる要因が眠っているのであろう。
    虐待の連鎖の始まりは、どこなんだろうか。
    そんなことを思わざるを得なかった。

  • 親が子供を虐待死させるというニュースはセンセーショナルなのでメディアを賑わす。本書が取り上げているのは、3件の事件。「厚木市幼児餓死白骨化事件」「下田市嬰児連続殺害事件」「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」。

    著者は裁判の傍聴だけでなく、子どもを殺すことになった親たちの暮らしていた街や生まれ育った街をたずねて、隣人・友人・同僚・家族への丹念なインタビューを行い、彼らの人となりを書き出す。

    ここで書かれるのは、繁殖力や性欲はやたらと強いのに、知能が足りないとしか思えない行動を取る人たちの姿。登場する人物たちの行動規範がとにかく訳がわからない。暴力・貧困・無知が世代を越えて受け付けがれていく様子にやるせなくなる。

    ただし、エピローグで登場する「Babyポケット」という土浦の施設の話で少し救われた。

  • 親の親が問題あるならその親も問題あってまたその親もってなっていくとしたら一体いつまで遡ると最初の問題の人が出てくるんだろう。

    日本は色んなところでカウンセラーがもっと必要なんだと思う。

    あと、一生懸命働くより生活保護の方が収入多いって問題じゃないの?

  • つらすぎる事件の数々。「私なりに」愛していた。「私なりに」精一杯やっていた。「私なりに」「私なりに」…。身勝手に子供たちを殺してしまう親がいること。家という密室で助けを求められず亡くなってゆく子供がいること。悲しくてつらい、真実のルポ。

  • 読み初めは、読むのをやめようかなと思う悲惨な事件だと思った。もちろん事件そのものはひどい話だが、それを表面だけでなく、取材して、掘り下げているのに、感心した。虐待だと自分では思っていない父親がいる事がわかった

  • 毎月のように何らかの児童虐待が報道され、その量の多さが逆にこの悲惨なことどもを「アタリマエ」化してしまうようで、この本に取り上げられた3つの事件も、タイトルだけではすぐにどれだかはわからないほどに、感覚が鈍麻してしまっている。それこそが怖い。

    タイトルが「『鬼畜』の家」とあるように、これは子どもを死に至らしめた親たち個人というよりは、彼らを生み出した「家」、つまり家庭環境を取材し、問い直したルポルタージュだ。

    3つの事件で罪を問われることになった親たち、そのいずれもが一般的な「サザエさん」的なイメージもしくはそれが内包する基準からは、はるかにかけ離れた環境で育っている。

    それは貧困であったり、本人もしくは家族の疾病であったり、何らかの人格障害めいた行動であったり、単純にひとつの要因で語られるようなものではない。

    「歪んだ」家庭環境からは、社会的多数が容認、同調できるような常識的感覚を身につけた人間は生まれてこないのだ。そして当然、その人間は「社会的生物」つまり権利を守られ、義務を果たすべく道徳や倫理観を持った人間を「育てる」ことはできない。彼らが育てている「つもり」の人間は、そういったものが欠損した存在で、当然のように自分が家庭を持ったときに、正常に機能できないのだろう。

    とても気になったのは、ここで取り上げられた「鬼畜」を生み出した家庭の主が、ほぼ自分と同世代だということ。「家」制度が事実上解体はしたものの、「個人」の権利と義務に対しては、全くというほど躾も教育もなされて来なかった自分たちの世代。個性とは自己主張すること、権利とは言いたいことを言えること、義務とは罰せられない限り果たす意味合いを見いだせないもの。

    そんな育ち方をしてしまった世代であることには十分以上に自覚も同調もできてしまう。悔しいけど。

    そしてそれが社会的に連鎖していくものであることを、この本は十分過ぎるほどに語っている。

    児童虐待は未熟な個人がつくる歪んだ家庭が生み出すものだとしたら、それはそこら中に広がっている。それが事実だ。

  • 記憶に新しい三つの凄惨な虐待死亡事件。それら一件一件を丁寧に取材した石井光太氏のノンフィクション。

    「文庫版あとがき」に記載されているが、どの事件の背景にも共通する真実があった。それは、「虐待親たちが生まれ育った環境の劣悪さ(338頁)」と「ゆがんだ親子関係(338頁)」。つまり、「犯人を育てた親が大きな問題を抱え、子供たちを虐待、もしくはそれに近い環境に置いていた。犯人たちは生まれつきのモンスターだったわけではなく、彼らの親こそがモンスターだったのだ。そういう意味では、犯人たちは幼少期からモンスターである親の言動に翻弄され、悩み苦しみ、人格から常識までをねじ曲げられたまま成人したと言えるだろう。愛情が何なのか、家族が何なのか、命の重みが何なのかを考える機会さえ与えられてこなかった。だからこそ、彼らが親となった時、「愛している」と言いながら、わが子を虐待し、命を奪ってしまうことになる(339頁)」。
    だからこそ、石井氏は虐待問題への対策の困難さを訴える。それはつまり、「親が育児をする前から家庭の支援をはじめなければならない(340頁)」ということだ。「まっとうな子育てができない親がいることを認めた上で、出産直後、いや出産の前からそうした親の生活を支え、適切な育児が何かを教え、困難にぶつかればすぐに専門家が手を差し伸べられるような環境づくり(340頁)」がないと「虐待の萌芽を摘みとることは難しい(340頁)」と語る。だが、現実問題として、その実現は難しい。それでも、こうして本書として問題提起することで、我々一人一人が虐待事件の犯人をただ「鬼畜」という一言で終わらせるのではなく、その正体を正しい目で見据える必要性を訴えている。
    本書は確かに、面白半分で読み進められるような内容ではない。だが、マスコミに報道される「鬼畜」虐待親という一辺倒な見方にメスを入れ、虐待事件の闇に眠る深層に迫ったものだった。読み終わった後に受ける衝撃を、我々は忘れてはならない。

  • つらくてなかなか読み進められなかった。しかし終わり近くなってようやく著者の意図がわかって、少し明かりが見えてきた。NPO法人「babyぽけっと」のようなきちんと問題が捉えた人々の温かい働きしかないのだ。人間らしい温かい育ちを経験していない者には、次の世代を育てることはできないのではとずっと思い続けてきた。今更大人を育ち直せるわけがない。親になるのに資格が必要なのだと言って見せることしかできなかった。しかし、こんな方法があったんだね。すばらしい。赤ちゃんポストではない。人の優しさに触れていない人間にはなにが人としての,親としての暖かさなのかがわからないのだから。

  • 最近読んだ小説と同タイトルのルポ。実際に起きた事件の裁判傍聴、関係者への取材等により事件を浮き彫りにする。願わくば親になるべきではなかった親達が起こした悲劇。だが親になる権利の有無など判断できないのが現実。事実は小説より奇なり。「厚木市幼児餓死白骨化事件」「下田市嬰児連続殺害事件」「足立区ウサギ用ゲージ監禁虐待死事件」

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著者プロフィール

作家。
1977年東京都生まれ。大学卒業後にアジアの貧しい国々をめぐり、ドキュメンタリー『物乞う仏陀』(文春文庫)でデビュー。その後、海外の貧困から国内の災害や事件まで幅広い執筆活動を続けている。NHK「クローズアップ現代+」などにも出演。
著書に、『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『きみが世界を変えるなら』(共にポプラ社)、『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』(共に少年写真新聞社)、『おかえり、またあえたね』(東京書籍)がある。一般書として、「新潮文庫の100冊 2015」に選ばれた『絶対貧困』『遺体』(共に新潮文庫)、『原爆』(集英社)、『43回の殺意』(双葉社)など多数。

「2020年 『地球村の子どもたち 途上国から見たSDGs ④マイノリティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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