室町無頼(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101329796

作品紹介・あらすじ

唐崎の古老のもと、過酷な鍛錬を積んだ才蔵は、圧倒的な棒術で荒くれ者らを次々倒す兵法者になる。一方、民たちを束ね一揆を謀る兵衛は、敵対する立場となる幕府側の道賢に密約を持ちかける。かつて道賢を愛し、今は兵衛の情婦である遊女の芳王子は、二人の行く末を案じていた。そして、ついに蜂起の日はやってきた。時代を向こうに回した無頼たちの運命に胸が熱くなる、大胆不敵な歴史巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 過酷な修行を経て六尺棒の使い手となった才蔵は腕試しを通じて人を見る目、器量を上げる。
    一方で蓮田は蜂起を計画し身内の武士だけが優遇される室町の体制に一石投じようとする。
    道賢、兵衛、才蔵とその仲間達の行く末は、、、

  • (下)はもっと駆け抜けた!こんなに疾走感のある小説を読んだのは久しぶり…!

    本題に入る前に訂正しておきたいのが、(上)のレビューで才蔵の修行について「ユニークだ」と書いたこと。(上)では彼の成長をワクワクしながら追っていたけど、冷静に考えれば半端なく命懸けである。
    深手の傷を負えばまだ良い方で、身体が不自由になったり下手すれば落命することだって充分ありうる。自分ならまず生きて帰ってはこれないだろう。自分に置き換えるのもおかしな話だが…汗
    そんな修羅のような特訓メニューを生き延びた彼の戦場での無双っぷりが、物語の疾走感を助長させていた!(それでいてあどけなさのギャップがまた凄まじい笑)

    「だが、昔ながらの侍の世など、早晩に終わらせてやる。たとえその結果、一時この世が地獄になって構わない」

    修行で棒術を会得して以降、才蔵は兵法者として洛中で名を馳せるようになる。
    その間も百姓一揆の計画を進める兵衛と彼の動きを監視し続ける道賢。蜂起の時を前に張り詰めた洛中で、それぞれ進む道を見据えていく…。

    「この男から戦国時代は始まった」
    映画版の予告で流れた文言である。「この男」とは蓮田兵衛のことだが、実は兵衛や骨皮道賢、そして一部登場人物は実在しており、何と文献にも彼らの名前がちょくちょく登場するという。
    つまり『室町無頼』は、史実に基づいたストーリーなのだ。

    タイトルからは任侠もののような印象を受けるが、実際は兵衛が率いる百姓一揆が物語のバックボーンになっている。兵衛や才蔵をはじめ、日頃徴税や借金に苦しむ百姓や主家・俸禄を失った牢人・法外な関銭を徴収されている車借や馬借が一揆の構成メンバーである。

    「室町幕府とは武家が在京して多くの職務をこなしていた政権で、そこから発生する負担は京都近郊の住人たちを家臣化して対処させていた」と解説には記されている。(これまた初耳!) そのようにして出自や階層の異なる人々の「つながり」が多用されていた時代に、兵衛もまたそれを重要視していた。
    兵衛と人々の「つながり」が生んだ意思を守り通していった結果、戦国時代は始まったのだ。

    「どのみちこの世は苦界だ。生きること自体が泥水を啜るような屈辱と、怒りと、苦しみの連続なのだ」

    人々の生き方が縦横無尽に広がり始めていた時代に、才蔵もまた自分の居場所を見つける。それもまた感慨深かったが、法妙坊暁信(ほうみょうぼうぎょうしん)のケースが一番そうだったかもしれない。
    (上)では才蔵の憎き雇い主であったが、彼もまた幕府や自らの運命に憤慨していた。一揆の混乱に乗じて手にしたものではあるが、あれは彼にとって真に輝ける居場所だったのではないかと自分は見ている。
    時代がくだり応仁の乱を迎えても、暁信は命懸けでそこを守っているのだろうか。その時には、彼にも共に居場所を守ってくれるような「つながり」が出来ているといいな。

  • 前巻と比べて、後半の話の進みが速い。まあ終わり方はそうなるかなあ。

  • 舞台は応仁の乱より少し前の京都。主人公は貧困家庭に育つ少年。貧困に喘ぐ農民たちの大規模土一揆を率いた実在の人物に目をかけられ、彼は逞しく成長していく。

    史実に創作を加え、当時の様子と出来事をドラマチックに描写している。主人公は創作。登場人物がかっこよすぎる気もするが、エンタメ感は十分。

  • 日本で初めて一揆を起こした(?)男たちの話

    半蔵くんがオリジナルキャラにして、人が良すぎて辛かった。越前リョーマ並に強いのに管仲並に人との付き合い方分かっているのは、作者が考えたさいきょうのしゅじんこう過ぎて震える

    こんな時代や出来事もあったという点では面白い

  • 面白かった!
    グロい時代だけどカッコいい。

    この時代はノーマークだったので余計に興味深かった。
    歴史の授業や日本史マンガでも一揆や室町時代にはあまり興味が湧かなかったので、今回知ったことが新鮮。

    骨皮道費と連田兵衛は実在の人物なので、他に登場する本があったら読んでみたい。

  • 「『こころ』『ノルウェイの森』そして」

    武術に関する垣根先生のネーミングセンスは個人的に絶品だと思う。
    「吹き流し才蔵」といい、「光秀の定理」の「笹の葉新九郎」といい。道を究めた行く先は何か「さらさら」とか「ゆらゆら」みたいな物になるのかもしれない。

    それはさておき、いよいよ兵衛の武装蜂起が始まる。
    「世の中には、銭で買えぬものもある」と云う。兵衛の暮らしぶりを見るに上辺のきれい事ではなく、本心であるのだろう。そして、この乱れた世でのうのうと蓄財に励む既得権益をぶち壊すというのもまた真意であるには違いない。

    しかし、兵衛には、何か損得の奥のその更に奥に「自らの器量を世に問う」みたいな衝動があるように感じられた。それが無謀な一揆を始めさせたのではないか。

    そう考えると、兵衛、道賢さらには才蔵が芳王子と関係を持ったこと。また、幕府側の道賢、一揆側の兵衛、才蔵が敷いた陣を底辺とした三角形の頂点に東寺の五重塔、そして相国寺の大塔が聳えていること。どちらもとても「象徴的」に自分には思われた。
    (読み方は自由かと思いますので悪しからず。)

  • 読後感も良かった

  • 才蔵の強さが際立った下巻。読みやすくて歴史小説の入門にもってこい。才蔵が亀仙人前後の悟空ばりの成長を遂げ、男の子としてはワクワク。兵衛と道賢はトラとライオンのようにカッコ良いけど、下巻は才蔵を楽しむためのもの!

  • 過酷な鍛錬を積み、圧倒的な棒術で荒くれ者らを次々倒す兵法者となった才蔵。一方、一揆を謀る兵衛は、道賢に密約を持ちかける。そしてついに蜂起の日がやってきて…。無頼たちの運命を描いた、大胆不敵な歴史巨編。

    (再読)
    文庫版のあとがきで、道賢の最後などは実際に記録に残っていることを知った。垣根涼介は執筆にあたって文献をかなり詳しく調べたようだ。

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著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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