- Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101330556
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
まさに“謎手本”の表題通り、刃傷事件と討ち入りの真相に迫る歴史ミステリとして、興味深く読ませて頂きました。
個人的には“お安い涙”も嫌いではないので、今後忠臣蔵で泣けなくなりそうなのは少々残念かも。。。 -
討ち入り前は細かく、討ち入りはあっさり。
討ち入り後はきちんと書かれています。 -
通説とされている歴史事象を疑い、歴史推理の手法で、謎解きの面白さを堪能させてくれる忠臣蔵の物語。
-
忠臣蔵といえば断絶となった旧浅野家の家臣が吉良上野介を討ち取った実話で、私の場合はテレビドラマで何度も見てきました。討ち入りに参加した人数は50人弱ですが、それらを構成する人は様々な人たちから成っているのですね。
討ち入りに参加した人しなかった人、各々事情はあったようですが、著者の加藤氏が調査した内容を上手に小説の中に取り込んでいて、とても興味深く読むことができました。
この本では討入りの根拠となった原因について加藤氏の見解が示されています。将軍綱吉の母へ従一位授与をめぐる朝廷と幕府との対立があったことを示唆しています。
また、興味をひかれたのは、討ち入りが終わった吉良邸から泉岳寺まで、できるだけ問題の起きないような道順が考えられていた点でした。
以下は気になったポイントです。
・当時の男の上位の遊び場であった「島原」等において、太夫・天神・鹿囲の序列がある、太夫一晩の揚代は、銀76匁(銀60匁=1両=20万円、公式ルートは50匁=1両)なので、現在で12.7万円相当、以下半額(p18)
・人は、己の欲することしか見えぬもの、これを超えて真実を見つめる勇気を持たなければ、本当の殿様にはなれませぬ(p163)
・討入り時の吉良側江戸屋敷在宅者は43人、非戦闘員(料理人、足軽、坊主など)を除けば36人、当時の宿直員は22人、さらに逃亡した者を除くと実質戦闘に参加したのは15人程度=死亡、負傷者は13人(p177、247)
・吉良上野介を見つけられなかったので、内蔵助は、全員を今いる場所にとどめて、そのまま安座させる奇策をとった(p179)
・当時、江戸入りのための大川渡りには3つの橋(両国橋、新大橋、永代橋)があった(p197)
・どうしても避けられない大名屋敷として、1)竜野脇坂家上屋敷、2)伊達家上屋敷、3)会津保科家中屋敷があった(p207)
・総勢46名は4家へ分散お預け措置となった、1)細川越中(外様)、2)松平隠岐(徳川)、3)毛利甲斐(外様分家)、4)水野(譜代)(p256)
・16世紀半ばの欧州では、英国が歳出の90%、フランスが75%、ロシアは85%を軍事費にあてていた、日本は完全に平和ボケしていた(p307)
・秀吉は金(慶長大判・小判)をもっぱら褒美に与える「見せ金」としていて、流通には銀と銅を使うという二重貨幣政策をしていたが、家康やそれが理解できず、生活貨幣に金を混入させた(上・p107)
・貨幣改鋳(慶長→元禄)は、旧貨幣を持つ富裕層から財を収奪したいわゆる「富裕税」に似た善政ということもできる、当時の出目(差額利益)は、5千万両(3-4兆円)であった(上・p109)
2012年5月16日作成
========================
後半も楽しく読ませてもらいました。本当かどうかは今後のお楽しみとしても、設定としては楽しかったと思います。
以下は気になったポイントです。
・銀60匁=1両が綱吉時代のレートで、12.7万円程度となる、太夫と遊ぶのは1両、その下の天神は半分、その下の鹿恋はさらに半分の14匁(p93)
・1両=60~100匁となるのは、徳川中期以降に南米で大量の銀鉱脈がみつかって銀相場が急落したから、それで金が流出した(p106)
・赤穂塩がおいしいのは、熊見川の良水が海に流れ込むため、養分が塩田の海水に混入するため(p110)
・江戸内部に入るために通る必要のある辻番は、1800箇所を超えていた(p139)
・吉良側は、最初から逃亡したものを除くと、実質戦闘に参加したのは15人程度(p213)
・吉良上野介がどうしても見つらからなかったので、大石内蔵助は、全員に動かさず安座をさせた(p215)
・吉良側の死者は側近15人、負傷者が13人、赤穂側は死亡者なし、軽傷者が若干名(p265)
・16世紀半ばのヨーロッパは、国の歳出の殆ど(イギリス:90%、ロシア:85%、フランス:75%)を軍事費にあてて、軍
備の充実にあてていた(p311) -
明治維新は、黒船からの外圧から日本を変えて行こうという革命が始まった。この本からは、それとは違った面から日本の仕組みを変えてゆこうという視点で忠臣蔵が描かれている。そう考えると、柳沢吉保という人文が、いかにすごい視野や視点をもったリーダーであったか、また、そういった人間を使えた徳川綱吉のリーダーとしての資質が伺える。現代を見返してみると、国会議員や完了に、吉保のような人物が出てきてくれることを願う。
文庫本3冊を読み終えて、このストーリーが単純な喧嘩からくる敵討ちではなく、暦や幕府の仕組みに起源していることがおもしろい。忠臣蔵へまた違った見方ができた。 -
『信長の棺』で、本能寺の変という日本史上のミステリーに新たな解釈を提示してくれた歴史作家、加藤廣。
しばらく作品から遠ざかっていたのですが、精力的に執筆している作家さんなのですね。
文庫本になった作品が上中下巻並んで書店に平積みされていたので、読んでみることにしました。
本作のテーマは、「忠臣蔵」。
発生当時から現代にいたるまで、「主君への忠誠」「団結力」といった日本人的な価値観において共感を呼んでいる、これまた日本史上の有名な事件です。
「何が刃傷事件の”本当の”原因だったのか」「なぜこれ程の規模の討入りが実行できたのか」といった”謎”に、これまでも多くの歴史作家が取り組んできました。
その謎に、新たな視点での解釈を提示したのが、この作品です。
全くの新解釈というわけではないようですが、この作家さんの作品を横断してのテーマである、「朝廷と武士との関係」を軸に、ストーリーが展開していきます。
主人公として、大石内蔵助とともに、幕府の”高級官僚”柳沢吉保を配し、将軍綱吉周辺のどのような事情が、この事件の展開に影響を与えたのかが、描かれています。
僕は忠臣蔵について、まとまった書籍を読んだのが初めてなので、興味深く読ませてもらいました。
また、5代目将軍綱吉(著者は好意的に描いています)の時代というものもきっちりと描かれており、歴史小説を読む目的のひとつ「この時代の空気をかぐ」という部分でも、楽しめる内容でした。
忠臣蔵について知識豊富な人には抵抗があるかもしれませんが、僕にとっては楽しめる作品でした。 -
もちょっと活劇的な要素を期待してたけど、題名通り、緻密な実に沿った謎解きで、現代人が調査したドキュメンタリーの合間に当時の場面が挟まる、といった風情。所々に入る大石のあっけらかんさが救い。
-
刃傷事件に関係する、幕府、朝廷、赤穂浪士、それぞれの思惑が入り乱れるなか、ついに赤穂浪士の討ち入り。世に知られている「忠臣蔵」は、柳沢吉保が、事件の核心から民衆の目をそらすための情報操作だったという仮説はGHQの「ウォー・ギルド・インフォメーション・プログラム」に通じものがある。
-
面白かった!考察の道筋がわかりやすいなあ。原資料からの引用仕方にも好感。