砂場の少年 (新潮文庫)

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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331119

感想・レビュー・書評

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  •  先入観がお互いの理解を妨げる。
     元テレビディレクター、臨時採用の中学校教師葛原順が受け持つことになったのはいわゆる「札付き」のクラス。札付きってなに?大人が札を勝手につけたんやん。このクラスの生徒たちは、納得できないルールやしきたりをとことんまで考え、話し合う。大人にとって都合の悪いことまで。
     これはわたしが中学生だった頃のさらに10年や20年も前の話なので、こんなにガチガチのルールに固められるなんて!という衝撃はあったが、わたしのときですらゴムの色は黒にしろとか、靴下は白でワンポイントまではOKとか、わけのわからんルールがいっぱいあった。
     わたしもそれなりに反発してたが、「あんたらがやってほしいこと(勉強)ちゃんとやってるのに見た目のせいでレッテル貼られるのもなんや理不尽やな」と思ってからは深く考えず、ルールの範囲内で行動する(もしくはこそこそやる)ようにしてたなあ。冷めてたわ。
     こういう話し合いをしたりする労力を持てることは逆にすごいことやし、生徒が大人に与えてるチャンスやと思う。型にはめるのは簡単。同じような人間を量産してどうすんねん。
     もう子どもとは呼ばれなくなった今、あるいは母になることが近づいている今、こういう小説で当時の自分を思い出して、子どもを縛るのではなく信じてあげる母親になりたいなと思う。

  • テレビ局をやめて「無用熟」という自然農園に勤め、妻の心の病がきっかけで中学校の臨時採用教師となった、35歳の葛原順と、その教え子たちの物語です。

    学校からは「札付き」とされる彼のクラスの生徒たちですが、西文平をはじめ、魅力的なキャラクターがそろっています。学校の行き過ぎた管理教育に率直な疑問を表明する生徒たちと、その言い分を先入見を持たずに耳を傾けようとする葛原との間に、本当の意味での理解が生まれていく様子が描かれています。

    著者の「思想」が勝ちすぎていて、「小説」としては失敗しているのではないかという気がしないでもありません。また、「学級崩壊」や「モンスター・ペアレント」などの問題が取りざたされる以前の作品ということで、やむをえないのかもしれません。本作が示しているような理想主義が、昨今の教育の現場を取り巻く現実の中で擦り切れてしまわないためには、どうしたらよいのだろうかと考えさせられました。

  • 一気に読んでしまった。中学校における先生と生徒の距離感、言い分、目指すこと、などなど考えさせられた。「考えないこと」「考える機会を奪うこと」がまずいんだろうな。『兎の眼』もそうだけど、たまに読んだほうがいい。

  • 2003.5.19
    教職取ってたので。

  • 私の読書の原点・灰谷健次郎。
    すごいなぁ、教師になる人は全員
    こういう本を読むべきだよー。
    教科書にもこういう本を載せるべきです。
    今も昔もずっと足りないことは、
    教師と生徒が一緒に考えるということじゃないかな。
    この本にもう少し早く出会ってれば私は
    教師を志したかもしれないなぁと思う位よかった。

    自分の行動や言動が子どもの人間形成とかに
    関わったりすることはとても怖いことだけど、
    不安定な子どもに寄り添えたりするのなら、
    それはすごく尊いことだと思いました。

    ぼくのたった一つの良心みたいなものは、
    自分は生徒より一段上の人間だから、
    号令をかけてもいいんだという思い上がりだけは
    持たないようにしようという消極的な願いだけです。

    人間らしくて好きな言葉だった。
    教師だって人間なら、生徒だって人間だ。

  • 以前、『少女の器』と『太陽の子』、そして『兎の眼』を比べた。
    本書はどちらかというと
    『兎の眼』に近いと思う。

    『少女の器』『太陽の子』=感受性ゆたかな少女が、現実に傷つけられながらもしなやかに生きる。
    『兎の眼』=泣き虫の女先生が主人公ではあるが、〈問題教師〉のストと邂逅など、力強く、より現実的な描かれ方をしている。


    『少女の器』でも、反抗というものは感じたが、これはあやうさとか、そんなものと紙一重だ。(ヒステリックな母のように。)

    此方の反抗は、たとえどんなに偉い者でも、聞いたら口ごもってしまうぐらいに筋がとおっていて、どうしようもなくて、現実的なのだ。『少女の器』の絣の反抗は、人によっては一笑に付すことが容易い反抗だと思う。(私としては、一笑に付して欲しくないが。)

  • (メモ:高等部2年のときに読了。
     その後、購入し、数回読みました。)

  • 子供と同じ目線で向き合うとはどういうことか、ということに信念を持った主人公が30代から非常勤講師になり、
    生徒と向き合っていく小説です。
    どのようなことを教えなければならないのかが小説の意図として感じ取れました。
    現在教員の人に是非読んでもらいたいです。
    特に生徒からウザキャラとして扱われている先生はw

  • 心に響く。私の中学時代にはこの小説で葛原順が受け持ったクラスのような自治が可能だったと思う。生きる力って何だろうということを思い起こさせる。やすこちゃんのお母さんが「わたしも昔は非行少女と呼ばれていましたけれど、今、こうして、なんとか生きています。儲けのために病気だらけの牛や鶏を売ったりしませんから」と言った場面で思った。
    生きる力というのは、お金や地位やそういうものではないということを思い起こさせてもらった。自分自身もそういったことは、中学卒業くらいのときのほうがはっきりと意識できていたと思う。
     無限塾で月給4万円で生きている男たちもいる。彼らの話の中で「スプーン1杯の土の中に地球上の人間全部の数よりもっと多い生物がいることになる」というのは私も知らない話だった。(380頁)
     特に第6章、(189頁〜232頁)、体育の時間の体罰をめぐっての子供と先生とのミィーティングの場面は、壮観だった。自分の子供にも読み聞かせてやりたいとさえ思った。親として子供を信じたいと私も思った。子供の未来に子供自身の誇りがあることを願う気持ちになった。
    69頁で、清水恵子が、「ことばでいい表すことのできない自分は私にとってとても大事です。そこにほんとうの自分があるから」「それは、自分以外の人間に、こうだろうとか、はっきりいってみろ、なんていわれたら嫌です」「人を傷つけるっていうのは、そういうときだろうと思います。相手を理解しようとして、人にそういうせまりかたをしているんじゃないかって、わたし、思う」と言うくだりは、自分には体にこたえるほどだった。自分の実生活を思って、なんでも性急に白黒つけようとあせっていることに気づかせられた。やすこのお母さんも、「人を利用してわが身を肥やす人間も、人を踏んづけて優越感を持つ人間も、親切ごかしが身について干からびた自分に気がつかない人間も、目つきとことばが無駄ばっかし」と言っている。葛原先生も、「きつい」と言っているが私にもきつかった。
     また、メヴラーナの本や「私の遺言」でテーマだった執着が、主人公、葛原の手紙の中で出てきた。人間の大テーマなんだなと改めて感じた。
     この本では、文章の引用もよくて、河合政雄さんの「学問の冒険」という本からの「山奥のガキ大将」の部分の引用のくだりは共感を覚えた。(280ページ)
    また、「もうすんだとすれば、これからなのだ」という詩、葛原がやすこちゃんにあげた本、まど みちおの本からの引用だが、それも気にいった。
     また、しばらくしたら読んで、心の教科書のようにしたい。

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著者プロフィール

灰谷 健次郎(はいたに けんじろう)
1934年10月31日 - 2006年11月23日
兵庫県神戸市生まれの児童文学作家。定時制高校商業科を卒業。大阪学芸大学(現・大阪教育大学)学芸学部卒業後、小学校教師に。そのかたわら、児童詩誌『きりん』の編集に関わる。
短編小説「笑いの影」が問題となり、事件身内の不幸が重なったことを契機に1971年小学校教師を退職、沖縄・アジア各地を放浪。1974年『兎の眼』で児童小説デビュー。その他代表作に『太陽の子』『ろくべえまってろよ』、テレビドラマ化された『天の瞳』などがある。

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