- Amazon.co.jp ・本 (670ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101331133
作品紹介・あらすじ
誰よりも海と島を愛した亡き父は、なぜ漁師を辞め、自然破壊をもたらす道路建設の測量に加わったのか?美しい島に暮らす高校生壮吉は父の行動に疑問を抱き、その理由を探ろうとする。そんなある日、彼は都会からの転校生秀世と出会う。心に大きな傷を持つ彼女に、壮吉は惹かれてゆく。秀世を愛し始めた時、壮吉は父の真意を知った…。荒廃した社会に希望の明日を探る感動の大長編。
感想・レビュー・書評
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※2008.10.12売却済み
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瀬戸内の小島に暮らす高校3年生の沖島壮吉が、猟師を辞めて電力会社の開発事業に参加した父親の本当の意志を知ろうとする物語です。
都会から、島の旅館「絵島楼」に帰ってきた同級生の矢島秀世と陽子の姉妹や、不登校の壮吉を理解しようと努める担任の島尾先生といった登場人物たちとの交流を追っていく中で、都会と自然、あるいは教師と生徒の関係に対する、著者の思いが伝わってきます。
著者の作品については、イデオロギー的な観点から語られることも多いのですが、本作については、まず小説としておもしろく読んだということを言いたいと思います。たとえば、石原慎太郎が著者の作品を毛嫌いしていたことは有名ですが、いわゆる「右」からの批判だけでなく、たとえば本作に描かれる壮吉と秀世の恋に対して今日的なジェンダーの視点からの批判を想像してみることは難しくありません。しかし、これだけ密度の濃い作品に対しては、「思想」の次元で語るのではなく、まずは「小説」として受け取りたいというのが、正直な感想です。 -
何か引き込まれる魅力の有る本です。灰谷健次郎さんは初めてですがグイグイと読まされてしまいました。
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(メモ:高等部2年のときに読了。
その後、購入し、数回読みました。) -
いくら分厚いからってここまで詰め込んじゃダメでしょ。でも読みやすい本で良かった。
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小学校の頃から灰谷さんは大好きだ。特に「兎の眼」「砂場の少年」みたいな学校ものには、心をガッシと掴まれる。この小説も心を掴まれてそのまま徹夜で読んだ。海の町に住む人々、その中で珍しく自身の意思を持って登校拒否をしている男子と都会から引っ越していた女子とその小さな妹を中心に話は展開する。教室の生徒たちの持つ温度が熱く、そのためにレッテルを貼られるクラス。体裁を保とうと冷めた先生たちの中で、頑張る若い担任。要素が、学校だけでなく環境問題にも及んでいて、灰谷さんが見ているものは大きくなっているなと感じた。