自壊する帝国 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.02
  • (73)
  • (108)
  • (59)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 810
レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (603ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331720

作品紹介・あらすじ

ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そしてゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていた。ソ連邦消滅という歴史のおおきな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。大宅賞、新潮ドキュメント賞受賞の衝撃作に、一転大復活を遂げつつある新ロシアの真意と野望を炙り出す大部の新論考を加えた決定版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ソ連邦の消滅という歴史の大きな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか?。筆者が今の日本はこの時期に非常によく似ているという意味が読み終えてなんとなくわかりました。『文庫版あとがき』もいい。

    この記事を書くために再読しました。非常に面白かったのですが、やっぱり難しいです。この本は『外務省のラスプーチン』こと佐藤優さんが在ソ連日本大使館の外交官として赴任したときに 見聞きしたソ連崩壊までの一部始終を振り返る回顧録です。

    筆者は『蘇る怪物』を詳しくは参照してほしいんですが、モスクワ大学で教鞭をとっていた時期があり、そこで知り合ったミーシャという学生を介して、多くの重要人物を仲介してもらったり、自身の体質でウオトカを一日に数本飲んでもあまり二日酔いになることはない、という利点を十二分に発揮して『日本以上に酒を強要する』といわれるロシア人高官を相手にウオトカをガンガン飲みながら自身のルーツであるキリスト教はプロテスタントを基礎とした神学の教養を武器に彼が今でも『師』と仰ぐゲンナジー・ブルブリス氏をはじめとする人間たちに受け入れられていく姿はすごいなと素直に思わずにいられませんでした。

    そして、『大使以上の人脈を持っている』といわれる情報網を駆使して1991年のクーデター未遂事件にも正確な情報をいち早く掴み取って、『ぎっくり腰で政務ができなかった』といわれるゴルバチョフ大統領(当時)の生存を重要人物から聞き出したシーンがいまだに強い印象を僕の中に残しています。

    そのほかにも読んでいて面白かったのは食事、行動原理や習慣にわたってロシア人のことを細かく観察・描写されてあって、食事や飲酒の場面。そこで供される豪奢な料理。筆者と彼らが交わした言葉の一つ一つにもそういった事がにじみ出ていてロシアおよびロシア人がいったいどういう人なのかということや、あの当時、現場でいったい何が起こったのか?筆者が最近、今の日本がこの時期のロシアにそっくりだという理由がこの本を読むと本当によく理解できるかと思われます。非常に読んでいて骨が折れる文献だとは思うんですけれど、それに見合った対価は保証できる本だと思っています。

  • ソ連の崩壊を見届けた外交官
    難しかったけどすばらしい作品

    作品の紹介
    ロシア外交のプロとして鳴らし、「外務省のラスプーチン」などの異名を取った著者の回想録。在ソ連日本大使館の外交官として見聞きしたソ連崩壊までの一部始終を振り返る。
    「もともと、人見知りが激しい」という著者だが、モスクワ大学留学中に知り合った学生を仲介に、多くの重要人物と交流を深め、インテリジェンス(機密情報)を得る。ウオツカをがぶ飲みしながら、神学の教養を中心に幅広いテーマで議論を交わし、信頼と友情を勝ち取る。その豊富な人脈と情報収集力を1991年のクーデター未遂事件でも発揮、ゴルバチョフ大統領の生存情報をいち早く入手した。

    出世競争が最大の関心事であるキャリア組とは大きく異なる仕事・生活ぶりで、外交官の本質を考えさせられる。

  • 面白かった。読みやすかった。

  • 元々は伊藤潤二の「憂国のラスプーチン」がきっかけで手に取った本書。ソ連崩壊までの内情を描くノンフィクションで、聞き慣れない組織や思想も多かったが、先述の本で全体はカバーしていたのですんなり読むことが出来た。時系列的にはこのあと、出版時期はこのまえになる「国家の罠」も是非読んで「憂国のラスプーチン」への理解を掘り下げたい。
    佐藤優氏の経験は深く広い。そしてその経験を物語として描ききる作家性も見事だ。文庫版に追加された章も、横道にそれつつ重要な部分にも触れているので必読だろう。

  • ソ連邦の崩壊を、内側から記した一冊。
    当時何が起こっていたのか、何を起こそうとした人々がいたのかが論理的にわかりやすく書かれており、一気呵成に読んでしまった。
    ロシア経験が長い私の友人(著者と同年代)が言っていた、嘘のような話がここでも書かれており(カレンダーやマルボローの話)、それが本当に現実であったのだと改めて思う次第。
    「知の型には二つある。一つは、新しいものを創り出す知性だ。(中略)第二は、一流のオリジナルな知を、別の形に整えて、別の人々に流通させる能力だ。」(pp.258-259,ll.13-ll.7)
    いずれの知も持たぬ自分にはがゆいばかり。

  • 日本においてゴルバチョフはソ連を変えた人、エリツィンは飲ん兵衛の無能というレッテルが貼られることが多かったように思うが、実はそうではなく全く逆であり、ゴルバチョフは時代を読むことができなかったし、エリツィンは時代の波に乗せられつつも乗ったのである。この書はソビエト連邦の終焉、そしてロシア連邦の成立とそれにまつわる人々を描いたドキュメンタリーという体裁を取っているが、実際のところは佐藤氏の青春の回顧録なのだ。私が佐藤氏を知ったのはいわゆる鈴木宗男事件に拠るのであるが、田中眞紀子よりも、口は悪いが正論を述べているように感じた鈴木宗男の方にシンパシーを感じていた私としては鈴木、佐藤両氏への「国策捜査」は北方領土問題の解決を遥かな夢物語としてしまったのは紛れもない事実であろうと思うし、田中眞紀子氏を支持する世論(これには小泉純一郎首相(当時)の無条件の人気も含め)が罷り通ってしまったことが残念でならない。ここで失われた20年と佐藤優というロシアへの太い深いチャンネルを失った日本はこれからどうロシアと向き合っていけるというのか。
    ここ最近になってロシア側が北方領土のカードを切ってきているが、佐藤氏はどういう思いでそれを見ているのであろうか。

  • ソ連やバルト三国の知識・指導者層に入り込んだ著者が、外務省No. 1のソ連通となった過程を描き、ソ連崩壊を追体験させてくれる。

    ウオッカは兎も角、酒のつまみとしてのロシア料理が、美味そうでしかたがない。

    日常の仕事もこなしながら、キリスト教の研究をし、人的交流のために行動し、これだけ呑んでいて、健康を保てたのか?
    やはり著者は化け物だわ。笑

  • 凄まじい

  • これがノンフィクションとは。
    ソ連が崩壊していくただ中で、外交官たる主人公はどう生きたか。魅力的な登場人物、国立場を越えた友情…歴史小説のようである。
    この本によってロシアの様々を知ることができた。
    そればかりでなく、もっと学ぼう思わせてくれた。

  • 大宅賞、新潮ドキュメント賞

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、専門職員として外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。
帰国後、外務省国際情報局で主任分析官として活躍。
2013年、『国家の罠』で毎日出版文化賞を受賞。

「2019年 『世界宗教の条件とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

自壊する帝国 (新潮文庫)のその他の作品

佐藤優の作品

自壊する帝国 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする