功利主義者の読書術 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 398
感想 : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331744

作品紹介・あらすじ

功利主義的読書とは何か?それは本の大海から、本当に使える叡智を抽出する技術だ。聖書、資本論、名作古典小説からタレント告白本まで、具体的効用の薄いとされるジャンルの書物をあえて選択。紙背に隠れたメッセージを読みとり、過酷な現実を戦い抜く方法を鮮やかに提示する。世界の非情さと教養の豊穣、いずれをも知りぬく当代随一の論客による、挑発と知的興奮に満ちた読書指南。

感想・レビュー・書評

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  • この人の本はどれも読み応えがあって面白いです。一度読んだ本でもまた違った読み方ができて面白かったです。特に、綿矢りさの『夢を与える』の書評には「ウーンそんな読み方があるんだ」とうなってしまいました。

    この本は佐藤優氏による「実際に役立つ」という観点からピックアップされ、本人は書評を書く訓練はしていない、と謙遜しつつも、ロシア分析で培った『相手の内在的論理』をつかむという筆致で描き出された本の中身の論考についてはやはり、参考になる部分が多かったと思います。『資本主義の本質とは何か?』『大不況を生き抜く智慧』『人間の本質を見抜くテクニック』など、非常に刺激的なタイトルのあとに、一見「この本がいったいなんの役に立つの?」と首を傾げたくなるようなもの。たとえば、『論戦に勝つテクニック』というところで上げた本は酒井順子の『負け犬の遠吠え』と石原真理子の『ふぞろいな秘密』をあげております。

    その理由は『ふぞろいな秘密』では事実を淡々と記すことによって相手の男性がいかに不誠実であるということを浮き彫りにするのに最も効果的である、ということ。『負け犬の遠吠え』では結婚して子供もいる『勝ち犬』と仕事に自分磨きにいそしみつつ、まだ未婚の女性は全て『負け犬』と断じることで、筆者いわく「アリストテレス論理学」を実践して論戦で徹底的に相手を打ちのめす方法を伝授しているのだそうです。僕は以前、「負け犬の遠吠え」を読んで「ふーん、あ、そう」という感想しか持ちませんでしたが、こうして読んでみるとまた違った読み方が出来て楽しかったです。ちなみに筆者は現在全面戦争状態にある外務省を相手にこの2冊に使われている方法を存分に応用しているのだそうです。

    僕が一番興味を持ったのはやはり『資本主義の本質とは何か?』というところに取り上げられているマルクスの『資本論』とっこれはコミックスになりますが伊藤潤二という方の『うずまき』でした。僕はこの人の本を読んで原著のあの迷宮のような文体で書かれてあることを概要ながら理解することが出来ましたし、マルクスが以下に的確に資本主義の本質を捉えていたかということに感動すら覚えました。そして『うずまき』では直感的に捕らえられた「うずまき」の存在がそれがそのまま資本主義のシステムそのものだ、という筆者の主張にこれもまだ未読ではありますが、どうにかして手に入れて一読をしたいと思いました。

    一軒役に立たないもの、これをまた違った角度から見ることによって「見えない世界」が浮かび上がってくる。僕はここに取り上げられた文献をほとんど読んではいませんが、機会があればおいおい、手にとって見たいと思います。とりわけ「テンペスト」という沖縄を扱った小説はドラマ化されておりますので、ぜひ最優先で読んで見たいと思っております。

  • 確かに途方もない観点から本の内容を掘り下げている。 しかし、独善的であり、話の内容も面白くなかった。

  • 小難しかった。

  • 短期で役に立つ本ではなく、生きて行くために、心に留めておくべき内容の本が厳選されてる
    出来る著者の経験から、ロシアに関する本が多いように思うが、ロシアという国の異質的な部分を垣間見える

  • このリテラシー!!

    <blockquote>「本を読む」という行為が、「どう読むか」によってどれほど異なる結果をもたらすか(酒井順子 解説より)</blockquote>

  • 佐藤優による読むべき本の紹介本。著者が神学者的考え方をすることがよくわかり、紹介されている本を読めば、より理解が深まるものと考える。小説が多いことには驚いた。
    「読書には、大きな罠がある。特に、読書家と言われる人がその罠に落ちやすい。読書はいわば「他人の頭で考えること」である。従って、たくさんの本を読むうちに、自分の頭で考えなくなってしまう危険性がある」p3
    「(旧ソ連)労働によろこびを感じる労働力や農民はほとんどいない。ルーブル紙幣がいくらあっても、人々が欲しい商品がない。カネの力で、労働者や農民を働かせることはできないが、暴力を剥き出しにした国家が脅しあげて、国民を働かせていた。国家全体が強制収容所と基本的に変わらなくなった。そして、「国民は国家に対して働いているふりをし、国家は国民に対して賃金を支払うふりをする」という小話をよく耳にするようになった」p8
    「新自由主義を継続すると、格差の拡大にとどまらず、絶対的貧困が生まれ、労働力を供給する労働者が弱体化してしまい、結果として、資本主義体制が弱っていくという論理連関を示したい」p10
    「資本主義は景気循環をともなうので、恐慌や不況を避けることができない」p11
    「マルクスの「資本論」は、有名であるが、ほとんど読まれていない本の代表例である」p28
    「学問の急峻な山路をよじ登るのに疲労困憊をいとわない者だけが、輝かしい絶頂をきわめる希望をもつのです」p31
    「自然の本質を直観で把握できる人間だけが真理をつかむことができるのである」p43
    「資本家的生産は、労働の社会的生産力の増進を利用して発展してきたのであって、資本の蓄積とともに一事業に投ぜられる資本の蓄積もますます増大し、その生産方法も科学的技術をできうる限り利用して、その生産力の増進をもたらすのである」p51
    「素人がプロの世界に侵入すると大怪我をする」p84
    「大きな仕事をするときはかならず敵が出てくる」p85
    「カクテルパーティは、いわば情報戦争の戦場なので、そこで出会う人々は、潜在的な敵なのである」p174
    「新自由主義(市場原理主義)が、社会主義的な計画経済はもとより、国家が経済に介入するケインズ政策に対しても勝利したように見られた」p202
    「新自由主義モデルでは「規制緩和」ではなく「無規制」が、「小さな政府」ではなく「無政府」が理想となる。個体がすべてなので、民族、国家など「われわれの同胞」という感覚が薄れていく」p204
    「経済合理性と逆行する地域共同体の助け合いの伝統が強い沖縄には、新自由主義が浸透しにくい。その結果、沖縄の人々は連帯意識を強くもつ」p205
    「大衆民主主義は事実上、為政者とマスコミによって操作される愚痴政治のようになっている」p391
    「ドイツ、チェコ、イギリス、ロシアの知識人は基本的にテレビを見ない。日本でもテレビのスイッチを切り、活字を読む習慣をもつ人々が増え、その人々が、喫茶店でも、居酒屋でも、井戸端会議でもよいから、自由な討論を深めることによって、日本の民主主義も少しはマシになるのだ」p392
    「国家主義者である筆者としては、新自由主義政策による格差拡大とその固定化は、中長期的に日本国家を弱体化すると考えるので反対だ」p404

  • "沖縄問題を考えるときの本。
    ?良倉吉「琉球王国」
    まず、この一冊から始めたいと思った。
    日本の閉塞状況を打破する視点を持つための本。
    多川俊映「はじめての唯識」
    ユルゲン・ハーバーマス「公共性の構造転換」
    「新約聖書 新共同訳」
    佐藤さんの真似事でもよい。書物の海原から、得られる英知を吸収したいものだ。"

  • 2012年(単行本2009年)刊。エキサイティングな読後感。「読書術」ではなく、沖縄・ロシア・資本主義等様々なテーマに関し、読書から生じる内的体験をうまく拾い上げ、自らの体験とリンクさせた硬質なエッセイである。これらの叙述から抽象化されたものが、著者のいう「読書術」なのだろうが、浅学な我が身としては、とてもそこまではたどり着けそうもない。が、本書から著者の御母堂様(沖縄久米島出身)へのそこはかとない愛情が感じられ、著者への印象が急変。「理性よりもはるかに強いのは偏見」だと自覚せざるを得ないのが痛い。

  • 佐藤優氏の作品は、引用が多いため、その引用に手間取る事が多く、彼の考えを掴みにくくなる事がある。

    思い切って引用を飛ばして読むと、比較的容易に彼の言いたい事が理解出来る様になる。

  •  表題の「功利主義」ってなんだ?早速、wikiにて調べてみるが、字ズラの意味は分かるが、難解である。ようは、 帰結主義の1つで、 実利主義(じつりしゅぎ)とも呼ばれるものらしい。実利主義とは、現実的な利益を追求するものの考え方である。で、著者はこの現実的な利益を追求するという考え方にもとづき、読書をしているのである。さて、わたしはどうなのだろう・・・読後の感想としては全体的に表題とおなじで、こむずかしくまとまっている。

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著者プロフィール

佐藤 優(さとう・まさる)
1960年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了。外務省に入省し、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、本省国際情報局分析第一課で、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、2009年6月執行猶予付有罪確定。2013年6月、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『人をつくる読書術』(青春出版社)、『勉強法教養講座「情報分析とは何か」』(角川新書)、『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社)、『調べる技術 書く技術』(SB新書)など、多数の著書がある。

「2022年 『世界史の分岐点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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