佐賀北の夏―甲子園史上最大の逆転劇 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101332420

作品紹介・あらすじ

2007年、夏。甲子園は奇跡に揺れた。前年県大会初戦敗退の公立校が、全国制覇を成し遂げたのだ。その名は佐賀北。スター選手を一人も抱えることなく、宇治山田商、前橋商、帝京、広陵など常連強豪校を次々と破った裏には、いかなる練習と秘策があったのか。対戦校の監督たちが体験した怖さ、監督・選手間で交された日誌の存在など、綿密な取材から、最大の逆転劇が起きた必然に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 懐かしさを感じた。

    あのがばい旋風から時が経ったんだ…と感じた。

    あの時の甲子園の雰囲気、展開は非常に面白かった。

    また、甲子園が普通に見れる時になってほしいな。

  • 2007年の夏の甲子園で「がばい旋風」を巻き起こし全国制覇を成し遂げた佐賀北高の軌跡をまとめたノンフィクション。
    監督も選手もこのチームだったから全国制覇できたのかもしれないなと思えるくらい個性的で面白かった。

  • 第89回全国高校野球選手権大会(2007年)で優勝を遂げた佐賀北高校のドキュメンタリー。審判の不明瞭なジャッジが物議を醸した決勝戦だったが、最後の結末が偶然ではなく、実力で掴み取ったものであることを記している。彼らの一戦一戦の緻密さや成長度合いを知ることができる一冊である。

    少し寂しいのは、佐賀北の選手たちには松坂世代の様なチームを超えた絆は生まれなかったようだ。決勝で敗れた広陵の野村(現広島)、小林(現巨人)といったメンバーと佐賀北の元選手たちの交流は、当書に取り上げられていないだけでなく、他のメディアを通じても聞こえてこない。いつか時を経て、この大会を選手たちが振り返られる日が来たら幸いである。

  • 弱くても勝てます、という本があったけど、これは少し強いだけで甲子園で優勝できます、といった感じか。
    甲子園で優勝するためにギラギラした感覚も無く、気がついたら優勝した。
    もちろんその影には弛まない努力があってのことだろう。とても素晴らしいチームだと思った。

  • 2012年の佐賀大会決勝での佐賀北高校勝利を報じた7月26日付け新聞記事。
    他紙が打線の爆発とかエースの踏ん張りとか、いかにもわかりやすい勝因をあげる一方で、朝日新聞の見出しは「がばい手堅い7犠打」。写真も2回1死1、3塁で2番打者のスクイズしようとするバットにボールが当たる瞬間。佐賀北の百崎監督が各紙を見比べて「俺らのこと本当にわかっとるな」と感じたのは、朝日の記事だったに違いない。
    朝日の記事はこう続く。「佐賀北の攻撃に派手さはなかった。『長打はいらない。逆方向に打て』百崎監督の指示は明確だ。」

    この本の121ページに、これとよく似たエピソードが出てくる。「百崎にはメディアの取り上げ方に少々不満がある。宇治山田商との再試合では6犠打とバントを試みた場面はすべて成功した。…だが、どういうわけか…そういった自分が会心だと思える試合ほど、佐賀北の優勝をまとめたダイジェスト映像ではカットされてしまう…」百崎は言う。「監督が采配し、きっちり勝ったという試合ほど、話題にものぼらない。」

    高校野球の定石とは何だろう?投手に松坂大輔、野手に松井秀喜、清原和博etc.といった超高校級を擁することが、甲子園で優勝するための必要条件か。たぶん著者も、佐賀北の優勝から、それに対するアンチテーゼを見つけたかったのではと思う。

    ファインプレーも出てくるものの、佐賀北優勝への軌跡の核となるのは、決してミラクルじゃない。核は監督の徹底的な“こだわり”だ。それは選手が自分自身で応えられるようになるまで徹底管理される。
    しかし管理といってもガチガチに高校生を縛るのではない。ここでいう管理とは、監督が“囲い”を作るということ。その囲いの中でなら、選手は自分の力を好きに発揮できるしくみ。
    監督にはわかっていた。高校生には“伸びしろ”という大きな可能性があることを。管理野球でも、のびのび野球でもない、その両方の「いいとこ取り」が、監督から選手に伝わり、選手はあえて大技に挑まなくても、監督の采配に従い、自分たちの技量を生かした小技の積み重ねが結果につながると知ることとなり、試合を重ねるたびに、力が伸びていく。

    著者の部長、監督、当時の選手への多角的な取材によって、小さなエピソードが丹念に集められ、まるで「キャプテン」(ちばあきお)を読むようなドラマを感じることができる。もちろん、生の人間関係をしっかりと描き込み、美談化しないよう配慮されている。
    高校野球が好きでたまらない人にとって、また新たな視点が加わるお薦めの一冊。
    (2012/8/6)

  • 百﨑「妥協しないこと。これに尽きるんじゃないですかね。ついつい許してしまうとか、渡してしまうとか、そういうことをしないことが大事。365日もあると、一日ぐらい、まあいいかって許してしまうときがある。でも、靴をそろえていないのを見たら、それだけは許さんぞと。綻びなんて、いつでも最初は小さいものじゃないですか」(p.38)

    百﨑「そこで気づかされたんですよ。どういう結果があろうと、そこからプラスになることを掬い上げていくと、結果が違ってくるなって。結果を求めずに、今を楽しむということを初めて知りましたね。それまでは、俺がこんだけやってんのにって、人のせいにばっかりしているところがあった。よく『不運の監督』とか言われる方がいるじゃないですか。選手もいる、環境も整っているのに勝てないという。そういう方を観察していると、やはり愚痴が多いんですよね」(p.41)

    スイカに塩を振ると甘さが増すように、高校野球に塩をかけて味わう中村の態度が、青春の甘さがをより引き立てている。(解説:p.239)

  • 奇跡の記録
    最後の公立高校優勝になるのか?
    公立高校のモデルに?

  •  百崎監督の監督方針というのは、言うのは簡単だけど、続けるのは難しいだろう。
     派手で目立つプレイではなく、勝つ為に効果的なプレイを監督以下のチーム全員が意識をしてゲームを進めることが出来るというのは、どうしたらそんなことが出来るのか想像すら出来ない。だからこそ奇跡なんだろうね。
     監督の日誌に掛ける意気込みというか……正しく強いまっとうな学生より、監督の方を向く(従うと言う意味では無く、向き合うという意味)というのは、尊いなぁ。

     しかし、もともと体育会系の人間では無いので「なぜそこまでして勝利を求めるんだろう」という根本的な疑問がやまなかったのもひとつ。
     チームプレイというものが分かっていないのかもしれない。

  • 朝日再読'13/12/7<倍返しノンフィクション>

  • 野球特待生問題に揺れた2008年の夏の甲子園。優勝をさらったのは野球後進県・佐賀の公立の進学校・佐賀北高校だった。日本中ががばい旋風に包まれたあの夏の記録である。件の決勝戦・広陵高校のエースは現広島の野村祐輔。女房役は2013年巨人にドラフト1位で指名された日本生命・小林誠司。このふたりの当時の証言も交えつつ、普通の公立校佐賀北高校がいかにして頂点に上り詰めたかが書かれたドキュメントである。報道では佐賀北は進学校であるかのように報道されていたが、実際は野球推薦枠もあるのでただの公立校ではないようだ。決勝で涙をのんだ広陵高校からは野村や小林などプロを輩出しているが彼らは誰もプロに進んでいない。野村から劇的な逆転満塁弾を放った副島くんは今は地元で銀行員らしい。2013/350

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著者プロフィール

1973年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部卒。スポーツ新聞記者を経て独立。スポーツをはじめとするノンフィクションを中心に活躍する。『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社)でミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』(集英社)で講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『佐賀北の夏』『歓声から遠く離れて』『無名最強甲子園』などがある。

「2018年 『高校野球 名将の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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