- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101333014
感想・レビュー・書評
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サンキュータツオ氏の著作の中で触れていた、『言海』の凄さを知り、大槻文彦を伝記小説にしたこの作品にも言及されていたので、購入。
ブクログには1984年出版となっていて、現時点でレビュー数はゼロ。
でも、届いた本はものすごくキレイだったので、アレ?と思って奥付を見ると、なんと平成30年3月に二刷とある。
更に金水敏氏の解説が付け加えられて、新潮文庫の新刊と題したオビまで付いてるんだけど?
まあ。とにかく。版が重ねられて嬉しい。
今年は明治維新150年なのですね。
私は日本史には疎いのだけど、大政奉還や戊辰戦争を真摯に見つめる文彦青年の目から学ばされて、大変楽しかった!
仙台という地から見た明治維新。または、北海道の魅力と危惧。
江戸から明治への過渡期に現れた、国として開くべきか閉ざすべきかの闘い。
これらを現場に立って見通してきた文彦が、17年に及ぶ事業を大成させた源には「日本が国として認められるには、立派な国語辞典が欠かせない」という大志があった。
後に福沢諭吉が、この『言海』を見て、いろは順ではなく五十音順になっていることに苦言を呈したとあるが、それも近代国家としての在り方として文彦の考えがあってのことだった。
今尚、五十音順、そして国文法という所での形式がブレていない所を見ると、ジーンとくる。
『舟を編む』も面白かったけれど、この本は、明治維新という「荒海」に、たった一人で漕ぎ出していく大槻文彦の生涯が描かれており、頭を垂れる思いで読んだ。
文彦が生きていく礎に、仙台藩や倒幕派の命、父や祖父の偉業がある。
これ。『天地明察』並みに映画化出来ると思いますよ。(誰かへのアピール)
文彦自身は、虚構が嫌いだったとあるけどね。
「大槻文彦の『言海』は、ひとりの人間が十七年、自分を顕すまい、物を顕そうとつとめながら、古今雅俗の語と格闘し、自国語の統一をめざしてつくり上げたものである。」
直前に山田美妙の感覚を取り入れた『日本大辞書』が出て来るのだが、対して「自分を顕すまい」というこの一言に、職人気質を感じますねっ(笑)
「辞書は、文法(Grammer)の規定に拠りて作らるべきものにして、辞書と文法とは、離るべからざるものなり。而して、文法を知らざるもの、辞書を使用すべからず、辞書を用せむほどの者は、文法を知れる者たるべし」(原文カタカナ)
「言葉の海のたゞなかに櫂緒絶えて、いづこをはかとさだめかね、たゞ、その遠く広く深きにあきれて、おのがまなびの浅きを耻ぢ責むるのみなりき。」
イギリス行きを辞めて、ただ己がやるべきことに心血を注ぐという生き方。
そこに傲りはなく、ただ無数の言葉に対する自身の浅学への恥が立つ。
凄すぎるわー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本初の近代国語辞典を著した大槻文彦の生涯を語るノンフィクション。
幕末から明治前期への激動の時代に生きた洋学者であった著者がどのような経緯で国語辞典の完成にその生涯をささげたのか、その時代背景が良く分かる。
維新後、不平等条約改正のために躍起になって近代化を進めていた日本。その一つに自国言語の文法を整備し、辞典を備えることであった。その志が胸を打つ。
今では普通にある国語辞典だが、その成立にはかような時代背景から要請され、長い年月をかけて作られていたことを知ることができた。 -
ドンタク オランダ語 Zondag の訛り 日曜日、休日
半ドンの語ものちに派生 -
高田宏 「 言葉の海へ 」 日本初の国語辞書(言海)を作った 大槻文彦 の生涯をまとめた本。言海は 国家事業としての信念、大槻一族の系譜の集大成であることがわかる
国家にとって文化とは 国家の存在条件であることを認識した。文化としての言葉、国語の整備、保存は 明治時代だけでなく、グローバル化の進む現代も重要であると思う
「一国の国語は 外に対しては 一民族たることを証し、内に対して 同胞一体の公義感覚を団結させる」
「一つの思想で国は育たない〜多様な方向により日本が育っていった」