実験 (新潮文庫 た 90-3)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101334837

作品紹介・あらすじ

新作が書けぬ小説家・下村に届いた旧友春男の近況。長く疎遠だった春男は、三十を過ぎうつ病を発症したという。青春の華やぎを一切拒絶して引きこもる息子を案じ、両親の相談を受けた下村は、筆の進まぬ窮状を脱する好機と、ある不穏な「実験」を思いつくが…。潮風と砂が吹きつける海峡の町で、孤独且つ平和という泥濘であがく人々の精神の危機を冷徹にえぐる表題作ほか2篇。

感想・レビュー・書評

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  • 小説家の主人公がうつ病の旧友を自殺に追い込もうと「実験」する表題作。童貞の友人を妻に誘惑させるようなことをしたりと、意地の悪さが出ていて面白い。
    収録されている「週末の葬儀」では、海沿いの街とそこに住む人が、潮風で錆びついて疲弊して行く様子が書かれている。共喰いのドブ川の描写を思い出させるような上手さがある。

  • 文学

  • 暗い。出てくる人間全てが絶望的なほどに暗い。暗くて退廃的でうすっぺらい人間たちの関わりにイライラしつつも、淡々と進む文章につい読んでしまう。

  • 淡白すぎて入り込めなかった。気持ち悪いと思った。

  • こんな文章を書くのか、という印象。
    共感できる部分が少々あった。

  • 表題作「だけ」いい。
    好きか嫌いかと言ったらすごい嫌いな主人公なんだけど、やっぱり主要人物二名に向ける冷徹な目線は凄いと言わざるを得ない。

  • 我不保持系你。自杀(自尽,寻问死)。人人是弱的生物吗?实验?还是,为故事的材料作?

  • 書けなくなった小説家下村が、三十を過ぎ鬱病を発症した旧友春男を題材に小説を書こうと接近する。

    外界との接触を絶ち、自らの論理の中で生きる春男の発する言葉とは?
    そして下村はどう反応するのか?

    現代日本文学の旗手、田中氏の萌芽的作品。

  •  表題作は過去最強に暗い小説だった。主人公の小説家のもとに、引きこもりになった幼馴染の相談に乗って欲しいという知らせが来る。幼馴染にはうつ病を発症し、自殺未遂も起こしていた。主人公は幼馴染を小説のネタにしようと、ある「実験」を試みるのだが…。
     幼馴染のキャラクターがこれでもかというぐらいに暗い。35歳を過ぎても童貞の幼馴染が両親のセックスを目撃する場面の恐ろしさといったらもう…。
     他にも『汽笛』『週末の葬儀』の2編が収録されている。『週末の葬儀』は、荒廃しつつあるニュータウンの描き方が秀逸だと思った。実家のある住宅地を思い出してしまった(笑)。

  • 自身をモチーフとしたと思しき新作が書けない小説化を主人公として、うつ病で悩み自殺願望を持つ友人との交流を通じて、彼をテーマにした作品を書くことで1つの実験を試そうとするがその結末は・・・。帯の「お前の苦しみを小説のネタにもらっといてやる」という一文そのままの小説。

    他人の苦しみですら小説の糧として利用せざるを得ない小説家という職業を露悪的に描きつつ、きっちりラストで希望を描いている点は巧いと思う。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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