「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)
- 新潮社 (2014年2月28日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101335551
作品紹介・あらすじ
甲子園も夢じゃない!? 平成17年夏、東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が甲子園大会東東京予選ベスト16に勝ち進んだ。グラウンド練習は週一日、トンネルでも空振りでもかまわない、勝負にこだわりドサクサに紛れて勝つ……。監督の独創的なセオリーと、下手を自覚しながら生真面目に野球に取り組む選手たちの日々。思わず爆笑、読んで納得の傑作ノンフィクション!
感想・レビュー・書評
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少し前のベストセラー。
文庫化されたこちらを読んだ(単行本はこちら)。
東大合格者数日本一を誇る、いわゆる「御三家」の1つ、開成高校の野球部を追ったノンフィクションである。
単行本の方が売れていた当時はさほど食指が動かなかったのだが、ドラマ化されて、娘が見るというので一緒に見ていた。
アイドルや歌舞伎役者を使ったり、きれいなお姉さんも登場させたり、先生と生徒の年の差がまったく感じられなかったり、生徒たちがむやみとイケメン揃いだったり、三角関係を絡ませたり、家の経済的事情を抱える子が出てきたり、ちょいといろいろ盛り込みすぎで、んー、オトナの事情があるのだな、とは思った。が、まぁまぁまぁ細かいことを言わずぼやーんと全体の雰囲気を楽しんで見れば、そこそこおもしろく見られたドラマだった。
とにかく、凡百のオトナの事情を盛り込んでもなお尖っている、野球部「語録」がスゴい。曰く、「俺『は』、ではなく、俺『が』で行け!」「『練習』じゃなく『実験と研究』をしろ!」「守備は捨てろ、打撃に賭けろ!」。
・・・なんじゃそれは!? 予定調和に収まりきらない開成野球部精神に大ウケし、何だか気になって原作を読む気になった。
開成は天下の進学校である。グラウンドでの練習は週1日、テスト前には部活停止という、強豪校ではおよそ考えられない練習時間の短さを「誇る」。
そんな短い練習時間で試合に勝つには、いったいどうすればよいのか?
ウチは下手くそなんだ。下手くそが強いチームと同じことをやっていても勝つはずがない。
例えば守備を練習しても完璧にするには時間が掛かる。効率よく勝つためには守備練習はやめて、打撃に特化した方がよい。ウチみたいな弱小に点を取られたら強豪校はがっくりくるだろう。そこを攻めろ! ドサクサで勝て!!
監督はあれやこれやと考えて、理屈で作戦を立てる。生徒を叱るときには理詰めで責める。
監督に負けず劣らず、選手たちも一様に理屈っぽい。
自分の欠点の分析、野球に関する理論、こうしたらなぜダメで、ではどうすればよいのか。それはまさに、「実験と研究」なのである。
ときに「野球で困るのは、球が正面から飛んでくることだ」なんて珍結論に到達しながら、あれこれ、論理的に考えつつ、黙々と素振りしたり、型破りなフォームを試してみたりする。
頓珍漢なこともあるけれど、自分の頭で考えようとする彼らの姿勢は、基本、明るく、悲愴感がない。
桑田真澄の解説が何だか絶妙で、うんうん、この本の解説を書くのはこの人が適任だよな、と思う。
スポ根にありがちな、頑張れ、我慢しろ、が最適だという証拠はない。桑田によればこれは戦争に影響を受けた「武士道」スポーツの弊害なのだという。
フォームに関して定説と言われていることだって、要は、大部分の人にとって他のよりは成功した仮説に過ぎないわけである。個々人にとってはもっとよいやり方があるかもしれないではないか。
闇雲に監督にしたがうのではなく、「自分」にとって、何が最適なのか、考えて考えて、追い求めて行く者がいたってよい。
開成高校野球部監督の方針が、「セオリー」と呼ぶほど確たるものなのか?というとよくわからないのだが、とにもかくにも、ここには明るい「萌芽」が感じられる。
根拠はないが、いつか、この理屈っぽい高校生たちが甲子園に行く日も来る、ような気もしてくる。
そう、いつか。多分。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ドラマ「弱くても勝てます」の原作となっているが、野球部の練習に関すること以外の場面はまったくない。
顧問となった先生の過去へのこだわりもなければ、部員たちの恋愛模様もない。
野球部が取り組んだ他とは違う練習方法や、部員たちの練習への思いを追いかけたノンフィクションである。
既存の練習法を打ち壊し、まったく別のアプローチで勝利を目指す。
一応野球のルールくらいはわかるといった程度の人間にも理解できる練習方法だったけれど、本当にそれでいいのか?と思うようなこともあった。
部員たちは不安にならなかったのだろうか?
疑問の答えは本書の中にあった。
部員たちは、そもそも野球をよく知っているわけではない。
当然、当たり前だとされているセオリーを知らないからこだわりようもない。
「野球をしようとするな」
監督のこの言葉の意味を理解するのは、ちょっと難しかった。
「野球をする」と「野球をしようとする」の違いがわからない。
たぶん、彼らは理屈で納得してからでなければ野球が出来ないのだろう。
何も考えずに球を打つ、走る。球を拾う、球を返球する、球を捕る。
普通のことだと思うのだけれど…。
週1回の練習でも試合に勝てるようになるのか!!と単純に驚いた。
常識からは大きく外れた練習方法だったけれど、だからこそ週1回の練習しかしない彼らでも勝てたのだろう。
この本の面白さは、何よりも普通とは「大きく外れた」部分にある。
監督のいうことのひとつひとつが、変わりすぎていて唖然とする。
でも、読んでいるうちに、唖然とするよりも何だか面白くなってくる。
次はどんなことを言うのだろう。
これで本当に勝っちゃったの?
負けたほうは辛いだろうな…など。
すべてのことを決め付けるのではなく、時には「あり得ない」と思うアプローチが有効なことだってある。
そんなふうに思えたノンフィクションだった。 -
出張帰りの夜行便で、超絶眠いのに読み切ってしまった。傑作だ。素晴らしい。俺、生まれ変わったら開成に行って野球やります。なんのドラマ性もなく、圧倒的に戦力差のある強豪校を打ち崩す方法論を追求し、迷い、そして負ける。全然弱い。登場人物も監督を除いてあっさりしてる。ヒーローなんか居ない。感動した。俺たちの日常そのものじゃないか。絶対もう1回読む。
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嵐の二宮君が主役のドラマを観て面白いと思い原作を読む。正直言って、全くテレビと内容が違っていたのに驚く。本の方は、どちらかというと開成高校野球部というよりも毎年多くの東大生を輩出している開成高校の学生はどんな人種で、何故野球をしているのかを主眼として、インタビューしているように感じた。実際、ドラマはインタビューではなく生徒と監督の成長物語だったのだが…。
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おもしろかった!
笑えるけど、為になる。
正確な情報を伝えるだけがコミュニケーションではない。互いの立場や役割を確認し合うことこそが人間のコミュニケーションなのだ。 -
頭の中で反芻し、言葉で動きを四肢に指令を出す。新しい動きについては慣れてくるまでそうしないと動けない、そんな私には笑えるようで、笑えない、彼らの思い悩みがとても身近に感じました。
野球って、怖くて当たり前、ということも今更ながら妙に納得。あまりにも上手い人たちばかり見ているから、誰でもある程度のことは出来て当たり前と思い込んでいたんだということに気付きました。
結局、スポーツは、運動と違って競技なのだから勝ち負けがついて回り、勝つためにはどうするかを考える。そのために、作戦を立て、作戦が立てられるように練習する。その練習を効率よく、かつ、個性を活かすことを考える。それでもチームとして戦う競技を成り立たせる面白さを読ませてもらえました。 -
甲子園も夢じゃない!? 平成17年夏、東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が甲子園大会東東京予選ベスト16に勝ち進んだ。グラウンド練習は週一日、トンネルでも空振りでもかまわない、勝負にこだわりドサクサに紛れて勝つ……。監督の独創的なセオリーと、下手を自覚しながら生真面目に野球に取り組む選手たちの日々。思わず爆笑、読んで納得の傑作ノンフィクション!
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超進学校の開成高校野球部が、グランド練習週1回という最悪の環境で、頭を使って勝つための独自のセオリー。徹底的に合理的で論理的な分析で詰めていく監督と生徒達。ドラマは微妙だったけれど、原作はリアリティーがあって面白かった。
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解説が、桑田真澄。ピッタリ。
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弱者の兵法。
こう言い放つ傍らで、自分たちが持つべきプライドを見つけよ、と言う。
週一回の練習と、頭脳以外は平凡な能力値。
しかし、その中で野球を楽しむ、試合に出ることを楽しむという部員の思いが可愛い。
さて。各校のコーチが読んだら、一体何て言うんだろう?
解説では桑田真澄が、武士道野球に対して少し批判をしている。
練習量ではなく質を、服従ではなく調和が必要であると語る。
私は、精神性とスポーツとはやや異なる所にあると思っている。
ゲームというものを、どんな心境で臨むかは各人の自由である。こうでなくてはならないスタンスというものは、多分ない。
けれど、学校世界での部活動は何か理想的な型があるように思える。
そして、理想的に仕上がった型を崩すには勇気が要る。
だから、型は今も存在している。
開成高校野球部の面白さは、まずもってその型を求められない所だ。だから、工夫で乗り切ろうとする。
勝つことは、楽しい。
そこから新たに見出す境地があって良いのだと思う。
著者プロフィール
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