「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101335551

作品紹介・あらすじ

甲子園も夢じゃない!? 平成17年夏、東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が甲子園大会東東京予選ベスト16に勝ち進んだ。グラウンド練習は週一日、トンネルでも空振りでもかまわない、勝負にこだわりドサクサに紛れて勝つ……。監督の独創的なセオリーと、下手を自覚しながら生真面目に野球に取り組む選手たちの日々。思わず爆笑、読んで納得の傑作ノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 少し前のベストセラー。
    文庫化されたこちらを読んだ(単行本はこちら)。
    東大合格者数日本一を誇る、いわゆる「御三家」の1つ、開成高校の野球部を追ったノンフィクションである。

    単行本の方が売れていた当時はさほど食指が動かなかったのだが、ドラマ化されて、娘が見るというので一緒に見ていた。
    アイドルや歌舞伎役者を使ったり、きれいなお姉さんも登場させたり、先生と生徒の年の差がまったく感じられなかったり、生徒たちがむやみとイケメン揃いだったり、三角関係を絡ませたり、家の経済的事情を抱える子が出てきたり、ちょいといろいろ盛り込みすぎで、んー、オトナの事情があるのだな、とは思った。が、まぁまぁまぁ細かいことを言わずぼやーんと全体の雰囲気を楽しんで見れば、そこそこおもしろく見られたドラマだった。
    とにかく、凡百のオトナの事情を盛り込んでもなお尖っている、野球部「語録」がスゴい。曰く、「俺『は』、ではなく、俺『が』で行け!」「『練習』じゃなく『実験と研究』をしろ!」「守備は捨てろ、打撃に賭けろ!」。
    ・・・なんじゃそれは!? 予定調和に収まりきらない開成野球部精神に大ウケし、何だか気になって原作を読む気になった。

    開成は天下の進学校である。グラウンドでの練習は週1日、テスト前には部活停止という、強豪校ではおよそ考えられない練習時間の短さを「誇る」。
    そんな短い練習時間で試合に勝つには、いったいどうすればよいのか?
    ウチは下手くそなんだ。下手くそが強いチームと同じことをやっていても勝つはずがない。
    例えば守備を練習しても完璧にするには時間が掛かる。効率よく勝つためには守備練習はやめて、打撃に特化した方がよい。ウチみたいな弱小に点を取られたら強豪校はがっくりくるだろう。そこを攻めろ! ドサクサで勝て!!
    監督はあれやこれやと考えて、理屈で作戦を立てる。生徒を叱るときには理詰めで責める。

    監督に負けず劣らず、選手たちも一様に理屈っぽい。
    自分の欠点の分析、野球に関する理論、こうしたらなぜダメで、ではどうすればよいのか。それはまさに、「実験と研究」なのである。
    ときに「野球で困るのは、球が正面から飛んでくることだ」なんて珍結論に到達しながら、あれこれ、論理的に考えつつ、黙々と素振りしたり、型破りなフォームを試してみたりする。
    頓珍漢なこともあるけれど、自分の頭で考えようとする彼らの姿勢は、基本、明るく、悲愴感がない。

    桑田真澄の解説が何だか絶妙で、うんうん、この本の解説を書くのはこの人が適任だよな、と思う。
    スポ根にありがちな、頑張れ、我慢しろ、が最適だという証拠はない。桑田によればこれは戦争に影響を受けた「武士道」スポーツの弊害なのだという。
    フォームに関して定説と言われていることだって、要は、大部分の人にとって他のよりは成功した仮説に過ぎないわけである。個々人にとってはもっとよいやり方があるかもしれないではないか。
    闇雲に監督にしたがうのではなく、「自分」にとって、何が最適なのか、考えて考えて、追い求めて行く者がいたってよい。

    開成高校野球部監督の方針が、「セオリー」と呼ぶほど確たるものなのか?というとよくわからないのだが、とにもかくにも、ここには明るい「萌芽」が感じられる。

    根拠はないが、いつか、この理屈っぽい高校生たちが甲子園に行く日も来る、ような気もしてくる。
    そう、いつか。多分。

  • ドラマ「弱くても勝てます」の原作となっているが、野球部の練習に関すること以外の場面はまったくない。
    顧問となった先生の過去へのこだわりもなければ、部員たちの恋愛模様もない。
    野球部が取り組んだ他とは違う練習方法や、部員たちの練習への思いを追いかけたノンフィクションである。
    既存の練習法を打ち壊し、まったく別のアプローチで勝利を目指す。
    一応野球のルールくらいはわかるといった程度の人間にも理解できる練習方法だったけれど、本当にそれでいいのか?と思うようなこともあった。
    部員たちは不安にならなかったのだろうか?
    疑問の答えは本書の中にあった。
    部員たちは、そもそも野球をよく知っているわけではない。
    当然、当たり前だとされているセオリーを知らないからこだわりようもない。
    「野球をしようとするな」
    監督のこの言葉の意味を理解するのは、ちょっと難しかった。
    「野球をする」と「野球をしようとする」の違いがわからない。
    たぶん、彼らは理屈で納得してからでなければ野球が出来ないのだろう。
    何も考えずに球を打つ、走る。球を拾う、球を返球する、球を捕る。
    普通のことだと思うのだけれど…。
    週1回の練習でも試合に勝てるようになるのか!!と単純に驚いた。
    常識からは大きく外れた練習方法だったけれど、だからこそ週1回の練習しかしない彼らでも勝てたのだろう。
    この本の面白さは、何よりも普通とは「大きく外れた」部分にある。
    監督のいうことのひとつひとつが、変わりすぎていて唖然とする。
    でも、読んでいるうちに、唖然とするよりも何だか面白くなってくる。
    次はどんなことを言うのだろう。
    これで本当に勝っちゃったの?
    負けたほうは辛いだろうな…など。
    すべてのことを決め付けるのではなく、時には「あり得ない」と思うアプローチが有効なことだってある。
    そんなふうに思えたノンフィクションだった。

  • 出張帰りの夜行便で、超絶眠いのに読み切ってしまった。傑作だ。素晴らしい。俺、生まれ変わったら開成に行って野球やります。なんのドラマ性もなく、圧倒的に戦力差のある強豪校を打ち崩す方法論を追求し、迷い、そして負ける。全然弱い。登場人物も監督を除いてあっさりしてる。ヒーローなんか居ない。感動した。俺たちの日常そのものじゃないか。絶対もう1回読む。

  • 嵐の二宮君が主役のドラマを観て面白いと思い原作を読む。正直言って、全くテレビと内容が違っていたのに驚く。本の方は、どちらかというと開成高校野球部というよりも毎年多くの東大生を輩出している開成高校の学生はどんな人種で、何故野球をしているのかを主眼として、インタビューしているように感じた。実際、ドラマはインタビューではなく生徒と監督の成長物語だったのだが…。

  • おもしろかった!
    笑えるけど、為になる。

    正確な情報を伝えるだけがコミュニケーションではない。互いの立場や役割を確認し合うことこそが人間のコミュニケーションなのだ。

  • 頭の中で反芻し、言葉で動きを四肢に指令を出す。新しい動きについては慣れてくるまでそうしないと動けない、そんな私には笑えるようで、笑えない、彼らの思い悩みがとても身近に感じました。
    野球って、怖くて当たり前、ということも今更ながら妙に納得。あまりにも上手い人たちばかり見ているから、誰でもある程度のことは出来て当たり前と思い込んでいたんだということに気付きました。
    結局、スポーツは、運動と違って競技なのだから勝ち負けがついて回り、勝つためにはどうするかを考える。そのために、作戦を立て、作戦が立てられるように練習する。その練習を効率よく、かつ、個性を活かすことを考える。それでもチームとして戦う競技を成り立たせる面白さを読ませてもらえました。

  • 甲子園も夢じゃない!? 平成17年夏、東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が甲子園大会東東京予選ベスト16に勝ち進んだ。グラウンド練習は週一日、トンネルでも空振りでもかまわない、勝負にこだわりドサクサに紛れて勝つ……。監督の独創的なセオリーと、下手を自覚しながら生真面目に野球に取り組む選手たちの日々。思わず爆笑、読んで納得の傑作ノンフィクション!

  • 超進学校の開成高校野球部が、グランド練習週1回という最悪の環境で、頭を使って勝つための独自のセオリー。徹底的に合理的で論理的な分析で詰めていく監督と生徒達。ドラマは微妙だったけれど、原作はリアリティーがあって面白かった。

  • 解説が、桑田真澄。ピッタリ。

  • 弱者の兵法。

    こう言い放つ傍らで、自分たちが持つべきプライドを見つけよ、と言う。
    週一回の練習と、頭脳以外は平凡な能力値。
    しかし、その中で野球を楽しむ、試合に出ることを楽しむという部員の思いが可愛い。

    さて。各校のコーチが読んだら、一体何て言うんだろう?

    解説では桑田真澄が、武士道野球に対して少し批判をしている。
    練習量ではなく質を、服従ではなく調和が必要であると語る。

    私は、精神性とスポーツとはやや異なる所にあると思っている。
    ゲームというものを、どんな心境で臨むかは各人の自由である。こうでなくてはならないスタンスというものは、多分ない。

    けれど、学校世界での部活動は何か理想的な型があるように思える。
    そして、理想的に仕上がった型を崩すには勇気が要る。
    だから、型は今も存在している。

    開成高校野球部の面白さは、まずもってその型を求められない所だ。だから、工夫で乗り切ろうとする。

    勝つことは、楽しい。
    そこから新たに見出す境地があって良いのだと思う。

  • HONZのレビューで知ってからずっと「いつか読みたい」と思っていた本。書店で棚積みされているのを見た瞬間、思わず声を出してしまった。
    うん、いい本!
    本書は、高橋秀実にしか書けない本でもある。
    素朴な疑問を素朴に追いかけていく著者のつぶやきを横でクスクス笑いながら聞いているといつの間にか深淵を覗き込んでいた。ゴクリと唾を飲み込み、パチパチと瞬きすると、確かにすごく深いけど穴の直径は小さいからまず落ちることはない、とわかる。ホッ。でも、さっき感じた恐怖は本物だよね。
    高橋秀実はそういう作品を書く。
    本書もその通り。

    「素振りと違って野球は球が前からくるのが問題」と考え込む選手。いいなぁ。親近感わく〜。

    私は運動より勉強が好きで得意だったし、考えずに動いたり感じたりなんてできなかったし今もできないし、チームプレーが苦手だし、そう感じている自分を見ている自分を分析している自分を反省している自分を巡ってからでないと書評の一つも書けない。

    そんなわたしだから、笑いながら読めるところと笑えないところが皆さんとは違うかもしれない。
    でも、これだけは伝えたい。本書は「ふつーの人とズレた変な高校球児の話し」としてゲラゲラ笑って終わり、という本ではない。ステレオタイプとの違いが何を指しているのか、笑いおわった瞬間に訪れたわずかな沈黙に何が見えたか、そっとしまって大切にして欲しい。
    (帯によるとテレビドラマになるらしく、テレビドラマになった時にはこのあたりが欠けて「頭はいいが運動神経の悪いおかしな野球部のおかしな話」に矮小化されてしまう、ということを懸念しています)

    (以上、書評ではなく応援歌、でした)

    (私が本書を読みたくて仕方なくなったHONZの書評は http://honz.jp/15449 です。評者は土屋さん。)

  • 知人にもらって拝読した。

    実践書として読み始めたが、そこまで得れるものは少なかった。

    開成高校の野球部のセオリーが描かれている。セオリーはざっくり言うと、「自分らが出来ること、出来ないことを理解し、それに合わせた戦略を立てる」というものだったと思う。(うる覚え)
    その他の項目としては、筆者の主観で思ったことが色々と書かれており、考えがまとまっていない印象を受けた。(主観)

    実践書としてはあまり期待せず、そういう考えもあるのかで良いかと思う。

  • 実際には「弱そうに見えても勝てます」なんだろうけど、そんな結果を残せている要因は【明確な戦略】の存在とそれを実践するための【準備】をしているから。ちなみに(残念ながら)現在の東大野球部には開成出身の選手はいないみたいです。

  • 開成高校野球部の取材記録。
    選手や監督達の理屈っぽい独特のコメントと著者のツッコミが面白いです。
    物語ではないので読み終わった!というスッキリ感はないですが、感心したりクスッとしたりしながらゆっくり読めました。
    強い野球部を目指すのではなくて、弱くても強豪校に一か八か勝てるかもしれない野球部を目指す、という目標設定は新感覚でした。下手なんだから多少打たれてもエラーしても動じない、そういうメンタルコントロールは真似してみたいかも。

  • ガチガチな部活動時代を過ごした私だったので、こんな指導もあるのか、なるほどと思いました。考え方ひとつで指導も変わる。面白かった。

  • ニノ出演のドラマの原作。
    開成と言えど、やっぱ男子高校生って
    バカなんだな(笑)
    と思った。
    青木監督の罵声も、生徒の言動も、
    「高校あるある」が詰まってて共感しまくり。
    部屋で一人で夜中に読んでて、始終ゲラゲラ笑ってしまったf^_^;(近所迷惑)
    教育的示唆はこの本の中にはコレと言ってないので
    あんま、そういうのを求めてはいけない…。
    ただ、
    「将来エリートコースに乗るような生徒でさえ、高校の時はこれだけボケッと過ごしてるんだから、そりゃウチの生徒なんかもっとボケボケしてるわな」
    という広い心だけは持てるようになりました(゜ω゜)。。。

  • この物語のおもしろさはどこにあるのか?これまでの強い野球のセオリーをまったく意に介さない。大胆さはメジャーに匹敵する。自分を分析し、それを言語化し、実行していく生徒たち。生徒たちの良さを活かすためにどうすればよいか(捨てるべきものは捨て伸ばせるところを伸ばす)を考える監督。こんな野球が観られたら楽しいだろうと思う。監督や生徒たちから言葉を引き出した作者が一番すごいかな。

  • 強みを徹底的に強くするのに共感

  • スポーツ推薦の万能選手(しかも練習量豊富)と、
    エラーだらけ空振りだらけ(しかもグラウンド練習は週1回)の選手が戦うとき、
    どうやったら後者が勝てるか。まともに考えると無理。

    後者が勝つためには、どさくさまぎれという状況を発生させるしかなく、
    エラーで10点は失なうだろうから、逃げ切るには15点とか20点が必要。
    そこから考えていくと、練習でやるべきことが、見えてきます。
    野球強豪高とはまったく違った問題解決のアプローチは、おもろいです。

    1回でもこういう学校が甲子園にでてきたら、もっと多様性がうまれるんちゃうか、
    って思うのですが(笑)
    20160731

  • 「思いっきり空振りしてこいや!」

    思わず読みながら笑ってしまったけど、こうやって言ってくれる指導者、最高だ。

    本著は実在の野球部(強豪とは言いがたい部)の練習や試合について著者が取材したノンフィクション。
    野球の話ではあるんだけど、目標に対するアプローチの仕方、問題を解決するプロセスや心構えについて知ることができる1冊になっている。
    読んで感じたのは、言葉ひとつで物事の見方は変えられること。
    精神論が悪いとは言わないけど、どうしたら合理的にできるかを論理的に考えることは大切なんだということ(頭のいい人はこれができているんだろうね)。

    「練習」ではなく「実験と検証」。
    ボールが「来た」ではなく「来い」と思って対処する。
    「私は打つ」ではなく「私が打つ」。

  • リリース:うららさん

  • 毎頁毎頁笑いながら読んだのは『酔って記憶をなくします』以来。
    でも登場人物は酔っ払いでもなく、お笑い芸人でもなく、開成高校野球部なのです。
    高橋秀実さんの筆致が冴える。

    でも「だんだんと笑うところが減ってきたなあと」思っていたところで、
    「しょせん、彼らのメインは東大。甲子園なんて真剣に考えていない」
    と思いました。

    私の高校の野球部の子だって、決して強くはないけど、本気で甲子園を考えていた。
    すごくカッコイイと思いました。
    私はそっちのほうが好き。

    でも内容はいろいろ、勉強になりました。
    私も大人になってから始めたことについて、知識偏重になるものですから。
    子どもの頃からやっていれば自然に体が動くのでしょうに。

    読み終わって調べたら、ドラマ化されていたことを知りました。
    私が『あまちゃん』で一目惚れした福士蒼汰くんや、『プリマダム』でファンになった中島裕翔くんがでている(でも今はどちらも何とも思っていない)そうなので、見てみたいと思いました。

  • すんか寸暇を惜しむようにのんびりしている ただ単に「甲子園を目指す」というと、何やら遠くを見るようで体も棒立ちになりそうだが、「強豪校を撃破する」と言葉にすれば、闘う姿勢になる。バットも思い切り振れそうてま、まさにイメージが体の動きを呼び起こすのである。考えてみれば、開成のセオリーは強豪校を相手にした弱者の兵法。それを貫けば、自ずと結果はついてくる。結果を目的にしてしまうと結果が出ないのである。それに「甲子園を目指す」「甲子園に行く」では観戦に行くようでもあり、無意識のうちに気も緩みそうで、イメージとしては逆効果なのかもしれない。 へりくだ遜る 自分に必要なことは自分でやる 彼らに意志の確認をするのは骨である。最初から「やりたかった」と言ってくれれば済むところを、客観的描写を徐々に絞り込んでいくことでようやく意志のようなものに辿り着けるのだ 客観性で追い詰める 私は答えに窮した もともと意思の有無は正確性に乏しいのである 言葉の力を試す思考実験 必要を決めれば十分がついてくる 閃きを凌駕する努力の証明 西日暮里駅の改札 各人各様 道元 福井 親鸞は浄土真宗「爆発」が近づいているように思えてくる 希望は知性から生まれる 幸甚こうじん 「は」ではなく「が」の勝負 仮説と検証の連続 サイクロイド曲線 常識を疑うこと 野の球 桑田真澄

  • 開成高校野球部の風変わりな野球道を数年にわたり追いかけたルポ。「小説新潮」連載。
    頭でっかちの秀才君たちが、週一回の練習で如何に試合に勝つか、理屈っぽく考えている姿は、ある意味微笑ましい。

  • 変わり者達。

  • 開成高校の野球部員のマインドは彼らなりに合理的でスマートなものだ。ゆえに客観的過ぎて、当事者意識が希薄だ。これは良くも悪くも社会に蔓延している兆候のような気がする。そういった感覚を活かしながら、野球を通して、殺さずに活かしつつ、挫折と成功の両面を学んでいる。エリートコースで通常得難い経験を野球部員はしているように思えた。絶対条件に適うように野球をする。なんて命題に従って試行錯誤し試合に繋げる。通常の野球部では考えられないやりかたで、野球の世界である程度の成績を残している。練習効率の面からいけばおそらくトップではないだろうか。野球が具体的にひとつひとつ問い直され再構築されていく様子は読んでいて刺激的で面白かった。これからのヒントにもなると思う。良書。

  • 開成高校野球部を取材した本書。
    運動神経やセンスがない彼らなりに、色々と考えて練習している。しかし、頭がいいせいかそれが段々と深みにはまり、しまいには哲学のようになってしまう。
    けれど、そんな彼らの少しズレた感覚や、一生懸命さに応援したくなる。
    監督も独特の指導方法をしており、野球とは…と考えてしまった。強豪にみる様々な戦略よりも、伸び伸びと思い切り振ることに重点を置く指導方法は、弱いチームだからできることであるだろうが、高校生のスポーツにおいては、素晴らしいことの様に思う。
    「野球は勢いで相手を踏み倒す競技だったのだ」(p32)という一文は、一瞬衝撃だったけれど、よくよく考えてみればあながち間違いでもない。時に勢いが勝敗を分けることもある。
    今後の開成高校硬式野球部の動向が気になる。

  • [墨田区図書館]

    図書館で、「開成高校野球部のセオリー」と書かれた表紙が気になって借りてきた本。

    表題通り、開成高校野球についての取材本。
    どうやら平成17年に都のベスト16にまで勝ち進んだという実績をもとに、「(そのうち)開成が甲子園に行く」という旗文句をぶら下げた筆者が、まるで筆者自身がその実現を叶えるためにとも言えるようなスタンスで、開成野球部の練習(ナイター設備のないグラウンド練習は週1回, Max3Hくらいらしい)に足繁く通った結果を綴っている。

    ただ?
    恐らく本書で紹介されている青木秀憲監督による、「試合が壊れない程度に運営できる守備力」と、「一気に大量得点できる打順」などというチーム目標、ポリシーがこの書の肝ではない。

    本書はあくまで開成野球部の練習風景と試合結果を追う形のインタビュー紹介も含むドキュメンタリーを装いつつ、「頭がいい超人」として捉えられる開成高校生の日常を等身大に描き出しているので、野球をしない人でも開成を目指す男児は、そして女子を筆頭に、野球にも開成にも縁がない人も、ぜひ一度読んでみると面白い。

    開成高校生という未知なる謎の集団が、本当に謎だらけであり、頭がいいのか悪いのか、やはり自分たちとは別次元なのかなということを実感する書となっていると思う。そしてもちろん、そういった違和感?を感じない人も少数だとしてもいるはずで、本書の中で惜しかったのは、取材先の野球部にその"普通"の生徒がいなかったこと。半ば著者自身の心のつぶやきがその役割を果たしているものの、その集団の中にいる(であろう)、"普通"の人々が自らの所属した"集団"自体とその内部にいる自分に対してどう思っているのかまでの生の声があると面白かったなー。

  • 面白いですよ、この本。タイトルだけ見ると「弱くても勝てますーー開成高校野球部のセオリー」ですから、弱小チームがいろんな工夫をして強くなっていく、というイメージを持たれるかもしれませんね。がんばれベアーズの高校野球バージョンみたいな。
    だけど読み終わってみると、それとはかなり違う印象を持ちました。その印象の正体はなんだろう?今のところ頭の中にぼやっとしているだけなので書きながら探っていきたいと思います。
    まずこの本がどんなものかというと、毎年200人前後の東大出身者を生み出すという名門校「開成高校」の野球部の数年間を断続的に描いたノンフィクションです。
    あんまりその方面詳しくはないですが、超有名進学校ということになるんでしょうか?まあ、そうなるとそこの野球部に所属している生徒さんたちも相当頭の良い子供たちということなんでしょうね。
    著者はこの本の中で彼ら野球部員たちの野球を媒介にした彼らの本音みたいなものをたくさん収録しているんですが、彼らの言葉は興味深いですね。というのもこちらのコミュニティには高学歴の方も多いと思いますが、僕のまわりにはあまりというか高学歴の方は全くいませんからね。で、物珍しさも含めて、また反対にわかるなあ、という部分も多々あり、楽しく読めました。

    ということで、その生徒さんたちの言動について振り返ってみます。この本で描かれる将来の高学歴者たちはとても不器用です。本当のところはわからないですけど、著者の視点に映る彼らは痛々しそうなくらい真面目です。優秀すぎるんでだろう脳みそを持て余しているような印象ですね。まだ完成されていない、きゃしゃな身体に重い頭がバランス悪く乗っかっている、というような感じでしょうか。
    ↓(ここで印象に残った生徒さんの発言を引用します)
    「僕は球を投げるのは得意なんですが、捕るのが下手なんです」内野(ショート)の2年生はそう言って微笑んだ。「苦手なんですね」と相づちを打つと、こう続けた。「いや、苦手じゃなくて下手なんです」ーーーどういうこと?私が首を傾げると彼は淀みなく答えた。「苦手と下手は違うんです。苦手は自分でそう思っているということで、下手は客観的に見てそうだということ。僕の場合は苦手ではないけど下手なんです」

    いわれてみればそうですよね。僕は理屈っぽい人間なので言ってることはわかるよ、と共感してしまうんですが、もしも大人になって普通に社会生活をしようとするときに、ここまで考えちゃうと結構厳しいのは間違いないですね。著者はこの言葉を聞いて彼らが実際の野球の試合や練習でよくエラーするのはこの思考方法が原因なのだろうと推測し、面白い表現をしています。

    「彼らは頭脳野球ならぬ頭脳でエラーをしているかのようだ」
    それに対して彼らは「エラーは開成の伝統ですから、僕達のようにエラーしまくると、相手は相当油断しますよね。油断を誘うみたいなところもあるんです」と答えたそうだ。むむむ、やはりただの不器用ではないようですね・・・・・。
    そんな感じで彼らの発言を読んで行くだけでも面白いのですが、それ以上に印象的なのは
    監督の青山さんの考え方や指導方法ですね。
    練習中や試合中に発する指導というか激がすごいんですよ。
    ↓(例えば・・・)
    「例えば、開成高校のグラウンドで試合が行われた際に外野にコーンを置きっぱなしにしているのを見ると、「それをどかせ!」と言うのではなく「そこにコーンを置いたヤツはコーンをを置くことの趣旨を理解していない!」と叫ぶ。守備で球を手にしてあたふたしたりすると、「人間として基本的な動きができていない!」「そんなことは起こりえない!」と客観的に正確に怒鳴る。怒鳴ってはいるが命じているわけではなく、察するに生徒たちの自主性を損なわずに、客観性で追いつめるのだ。」

    という事です。ちなみにこの青山監督も東大出身だそうです。
    で、「弱くても勝てます」の「勝てます」とは高校野球ですから、当然甲子園出場とかになるとは思うんですが、この監督こんな言葉を言っています。

    「チームに貢献するなんていうのは人間の本能じゃないと思います。思い切って球を遠くに飛ばす。それが一番楽しいはずなんです。生徒たちはグラウンドで本能的に大胆にやっていいのに、それを押し殺しているのを見ると、僕は本能的に我慢できない。たとえミスしてもワーッと元気よくやっていれば、怒れませんよ。のびやかに自由に暴れ回ってほしい。野球は『俺が俺が』でいいんです。
    この監督の言葉に対しての著者の考察はむむむ、と唸らせられました。

    「そういえば、部員たちはいつも『僕が』ではなく、『僕は』と言っている。『僕は○○なんです』『僕の課題は○○です』と。あらためて考察するに『僕は』という言い方をすると、『僕』は僕の中にとどまるような印象がある。例えば『僕は打つ』は僕の中の『打つ僕』が打つような。しかし『僕が打つ』なら人を押しのけるようで、『僕』というものの輪郭が現れ、そこで初めて物事に対峙できる。思い切り球を叩く、というのも『僕が』でなければできないのだ。
    『は』ではなく『が』の勝負。」

    考えていることが言葉に現れるのか?それとも言葉が行動を作るのか?その答えは時と場合によるでしょうが、頭の中に「は」と「が」がどちらが優勢になっているのか?『自分はどうであろう?』と考えてしまいますね(笑)いやいや、監督に言わせれば『自分がどうする?』が大切だ!と怒られるでしょうか(笑)
    というあたりが印象に残った場面だったわけですね。なんだろう?この『監督が定義する勝ち(価値)』とは何だったのか?そこを考えてみたくなる一冊です。
    2017/04/19 21:32

  • ドラマの原作本ということで読みましたが、中は小説ではありません。取材をもとに書かれたインタビュー記事として記されております。なので盛り上がる処は基本的に無く、淡々と事象が書かれているだけです。ドラマが面白かっただけに、これを読み始めると読み辛いと感じるかもしれません。
    また本書では開成は甲子園に行けるかも?で終わりましが、読んでいる限りでは無理かなぁ……という気持ちになります。野球に詳しくはありませんが、やはり野球に特化している学校の方が……という気持ちになります。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1961年、横浜市生まれ。東京外国語大学モンゴル語学科卒。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家に。開成高校野球部の奮闘を描いた近著『弱くても勝てます』がベストセラーに。
『ご先祖様はどちら様』で小林秀雄賞受賞。

「2015年 『損したくないニッポン人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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