占領史追跡: ニューズウィーク東京支局長パケナム記者の諜報日記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101337524

作品紹介・あらすじ

占領時代の歴史を追う著者が発見したニューズウィーク東京支局長パケナムの『日記』。そこから見えてきたのは知られざる戦後日本の深層だった。昭和天皇と米政権の中枢を非公式ルートでつないだ男たちが水面下で描いた「影のシナリオ」とは何か……。日本政治の裏面と英国人記者の数奇な人生を徹底追跡した本格ノンフィクション! 『昭和天皇とワシントンを結んだ男』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 通夜の席には高松宮や岸信介等の日本の要人が出席した。
    亡くなったのは日本生まれのイギリス人、トマス・コンプトン・
    パケナム。

    第二次世界大戦後、進駐軍の占領下で「ニューズウィーク」
    の東京支局長を務めたジャーナリストである。

    占領時代の日本の歴史を追ううちに、著者が偶然手にしたのが
    編集長ハリー・カーンへの報告を兼ねた「パケナム日記」だ。

    そこには表の歴史には浮上してこない、日本占領史の裏面が
    綿密に記されていた。この日記の発見から、著者はパケナム
    の足跡を追う旅に出る。

    占領下の日本を象徴する人物といえば、マッカーサー元帥で
    ある。ワシントンの意向を無視し、独自の占領政策を続ける
    元帥は、ある種、アンタッチャブルな存在だった。

    そのマッカーサーが代表する進駐軍の日本占領政策を
    「ニューズウィーク」誌上で真っ向から批判している。

    「アメリカ兵は外国の習慣や感情を理解しないし、これから
    も理解しないであろう。彼らは自分たちのように日本人が
    考えると思い、彼らがやることはこの世でいちばん良いこと
    だと信じている。彼らはあの戦争前と戦争中の日本軍将校と
    ほとんど同じである。教養ある日本人はアメリカ兵の不作法
    と尊大な行動にたいしてこう考えている」

    進歩してないかも、アメリカ…。こんな記事を書かれて黙って
    いる元帥ではない。元帥の逆鱗に触れたパケナムは日本へ
    の再入国拒否という憂き目にあう。

    でも、くじけない。元帥の頭を飛び越してワシントンから入国
    許可の圧力をかける。

    占領下の日本の記事を送るのは勿論だが、自由に操れる
    日本語を武器にパケナムが会談を重ねる相手がまた凄い。

    公職追放中だった鳩山一郎、昭和天皇の意を受けていると
    思われる宮内府式武官だった松平康昌、鳩山一郎の次
    の首相・岸信介等々。

    ジャーナリストと言うよりも、占領軍を飛び越して日本のトップ
    とワシントンとを繋ぐ、黒子のようである。

    非常に興味深い人物だ。日本生まれとはいえ、アイルランド
    に広大な城を持つ名門貴族出身。9歳でイギリスへ送られ、
    ビクトリア女王に小姓として仕え、全寮制男子校で学び、
    王立士官学校からオックスフォード大学へと輝かしい
    経歴が並ぶ。

    しかし、パケナムの足跡を追ううちに著者はこの立派な
    経歴に疑問を抱く。終盤ではパケナムの謎めいた経歴
    を解き明かす作業になるのだが、これがスパイ小説を
    読んでいるようで面白い。

    勿体ないのは単行本敢行時のタイトルを捨ててしまった
    こと。『昭和天皇とワシントンを結んだ男』の方がしっくり
    くるんだけどな。

  • 迫力に欠けるなあ、と感じた。年代が古いので仕方ないのかもしれないが、内容の殆どは、手記を読んだ著者が想像したこと。つまり、読者であるわれわれにとっては二次情報に過ぎないのだ。手記の内容をインタビューなどで検証してこそルポルタージュとしての迫力が生まれると思うのだが。

  • 時期的に、読みたくなるネタですね。

    戦後、自民党がCIAの援助を受けていたというのは有名な話。
    この本では、直接的にその件には触れないものの、
    それに繋がる事柄、あるいは、その件と並行して行われていた
    事柄と考えることが出来ると思います。

    それと、今につながる米軍基地問題の、端緒がここにあったとはねぇ。

  • 戦後のGHQとアメリカ本国、天皇そして共産主義の台頭への危機感などが埋めく中での新生日本のたちあげがいかに大変だったか、生臭ったかがわかる。過去の人が簡単に批判するのは簡単だよね。あと政治家:昭和天皇の姿が
    かみまみえておもしろい。

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