本格小説(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 825
レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338132

作品紹介・あらすじ

ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。

感想・レビュー・書評

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  • さすが続明暗を描いた作家だけあり、しっかりした文学的構成の作品。現代でここまで文学を徹底した作品を残せる作家はいないのではなかろうか。太宰や谷崎の二番煎じ的な作家はたまに遭遇するが、そういえば、漱石を彷彿させるような作家はいなかったんじゃないかと思った。それくらいインテリで上品でいて、かつ、骨太でスケールが大きい。物語として確立すべく作品を丁寧に作り上げ、学問としても世に残せるほど正統な位置にある。知的好奇心を満足させてくれる。
    下巻に気持ちが逸る。

  • 文庫にて再再読。
    日本語で歌うロックはサンボマスターにて完成の域を超え、本格小説は水村美苗をもって次の世紀に入ったということで。

  • 現在のところ、一番大好きな小説。
    嵐が丘をベースにした物語性や、
    水村さんのなめらかな文体、
    静かな語り口の裏にある激情が、心をゆさぶる。

    これを今から読めるあなたは幸せだな、と、ぼくは思います。

  • 長い長い話の部分を読んでいて、佑介が語りだすところで、ああこれは「嵐が丘」をやりたかったのか、と思った。そこから読み進むと、実際、作者自身がそのことについて意識的であることが触れられており、E・Bとエミリ・ブロンテの名を出している。あるいは、昔新聞の「本格小説」に関する書評か何かで、これが「嵐が丘」の本歌取りであることを、読んでおり無意識のうちにそのことが自分の頭の中にあって「嵐が丘」を連想したのかもしれない。今一つ記憶が曖昧である。

    物語自体は「本格小説」と呼ぶにふさわしい、19世紀あたりのヨーロッパの小説を思わせる堂々とした内容だ。感じたことは、その頃の物語には、貧富の差や身分の差といった事柄が物語に起伏をもたせる要素になっていることがやはり多いのでは、という印象。「名作文学」と呼ばれるものは、わりとそういった姿をしているというイメージが自分の中にもある。

    「嵐が丘」の本歌取りと言ったが、「嵐が丘」を読んだ時に感じる物語の流れの不均衡な雰囲気まで上手く移植されているように思う(図らずもなのか意図してなのかはよくわからないが)富美子と太郎の間の関係や、雅之の行動と心理は少し飛躍があるというか、意味がとりにくい部分があるような気が読んでいてした。ただ、「嵐が丘」同様、それがこの小説の魅力を削ぐことにはなっていないと感じる。

    内容としてはとても読み応えがあり面白いが、新しいものではないという思いも一方である。古き良きものという言葉がしっくりくる。クラシックの名曲の模範的な演奏という印象だ。しかし読者に対してこういった印象を与えることもある程度織り込み済みで書いているようにも感じられる。

    水村さんがこれをやりたかったのは、やはり、名作文学と世間で言われるものに対する敬意や憧れなのだろうか。なんとなくだが、水村さんのような多くの良質な文学を読んだ経験を背景に持っていそうな人は、文学全集に載るような作品に対して特別な思い入れなしで済むなんてことはないような気がする。

    それとも何か別のたくらみがあるのだろうか。
    もしも日本語で西洋の「本格小説」みたいなものを実現したければ、このようなプロットになり、「名作」と言われるものは実はこういう構造をとっていて、あなたがた(読者)はこういうものを傑作だと思っているのですよ、と作者水村さんがほんの少しだけ意地悪く言っているようにも思える。

    こう書いてきて、その両方なのではないのだろうかという気がしてきた。
    敬意とたくらみの作者の心の中での複雑な結実としてこの作品があるのかもしれない。

  • 村上春樹が訳したスコット・フィッツジェラルドの小説「グレート・ギャッツビー」を思い出した。グレート・ギャッツビーは1920年代、ニューヨーク郊外のロングアイランドの豪邸を舞台に、毎夜盛大なパーティーを開催する若き富豪の物語。この水村美苗の「本格小説」は1950年代後半以降の東京と軽井沢を主な舞台とした日本の富豪を巡る物語だ。華やかな軽井沢の富豪の別荘に出入りするようになった少年東太郎が、自らの出自や貧しさを振り切るため10代で渡米し米国で大富豪になっていく。20代、30代を米国で仕事に全力を注ぎ金銭的には十分に成功するが、実は軽井沢で出入りしていた富豪の家の娘と果たせぬ恋に落ちたまま、満たされぬ人生を送っていく。グレート・ギャッツビーも本格小説も、お金では手に入らない恋のために苦しむ主人公という共通点がある。水村美苗はそこに、出来事を客観的に語らせるために女中土屋冨美子を使い、その冨美子さえも客観視するための通りがかりの若者加藤祐介を物語に絡ませた。東太郎を含めた3人の思惑のぶつかり合いのような会話が、幸福とは何かを考えさせてくれる。

  • 感想は下巻で

  • 美文。まさに美文。
    読んでいて、蟲師の「筆の海」を思い出してた。
    文字が浮き出して、身体に染みこんでくる映像。
    そのくらい、文章に活き活きとした生命が込められているのを強烈に感じた。

    文学と言うよりも、なにか絵画でも観ているみたいな。
    「場面」を映像として思い浮かべながら読むことはよくあるし、そういう作品じゃないと、ぼくは大概読み進められないのだけど、この作品は、さらにその一歩先を行っている感じ。場面の映像化はもちろん、文章の並びというか、本を開いて読み進めている、その「言葉の並び」そのものが、映像として、というか、んー、うまく説明出来ないけど、とにかく「文章」が「映像」として飛び込んできて、染みこんでくる。

    明日から読む予定の下巻も楽しみ。

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  • 2005-11-00

  • 以前著者の「母の遺産」を読んで、それがとてもよかったと友人に話したら、こちらの本を貸してくれました。

    構成がとても凝っていて、長い長いプロローグの後に、回想として過去の話を一歩引いた女中の目線で描いています。
    もう、どこまでがフィクションだかわからないくらいその世界観にのまれました。
    昭和初期の軽井沢を舞台とした階級社会の(底意地の悪さを含めて)華やかさが美しく、更に美しい3姉妹が登場しときめき度MAXです。

    すべての疑問は下巻に託されていますが、なんだかもったいなくてすぐに読む気にならない・・・

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