本格小説 (上) (新潮文庫)

  • 新潮社 (2005年11月27日発売)
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感想 : 90
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  • 本 ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338132

感想・レビュー・書評

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  • さすが続明暗を描いた作家だけあり、しっかりした文学的構成の作品。現代でここまで文学を徹底した作品を残せる作家はいないのではなかろうか。太宰や谷崎の二番煎じ的な作家はたまに遭遇するが、そういえば、漱石を彷彿させるような作家はいなかったんじゃないかと思った。それくらいインテリで上品でいて、かつ、骨太でスケールが大きい。物語として確立すべく作品を丁寧に作り上げ、学問としても世に残せるほど正統な位置にある。知的好奇心を満足させてくれる。
    下巻に気持ちが逸る。

  • 文庫にて再再読。
    日本語で歌うロックはサンボマスターにて完成の域を超え、本格小説は水村美苗をもって次の世紀に入ったということで。

  • 現在のところ、一番大好きな小説。
    嵐が丘をベースにした物語性や、
    水村さんのなめらかな文体、
    静かな語り口の裏にある激情が、心をゆさぶる。

    これを今から読めるあなたは幸せだな、と、ぼくは思います。

  • 長い長い話の部分を読んでいて、佑介が語りだすところで、ああこれは「嵐が丘」をやりたかったのか、と思った。そこから読み進むと、実際、作者自身がそのことについて意識的であることが触れられており、E・Bとエミリ・ブロンテの名を出している。あるいは、昔新聞の「本格小説」に関する書評か何かで、これが「嵐が丘」の本歌取りであることを、読んでおり無意識のうちにそのことが自分の頭の中にあって「嵐が丘」を連想したのかもしれない。今一つ記憶が曖昧である。

    物語自体は「本格小説」と呼ぶにふさわしい、19世紀あたりのヨーロッパの小説を思わせる堂々とした内容だ。感じたことは、その頃の物語には、貧富の差や身分の差といった事柄が物語に起伏をもたせる要素になっていることがやはり多いのでは、という印象。「名作文学」と呼ばれるものは、わりとそういった姿をしているというイメージが自分の中にもある。

    「嵐が丘」の本歌取りと言ったが、「嵐が丘」を読んだ時に感じる物語の流れの不均衡な雰囲気まで上手く移植されているように思う(図らずもなのか意図してなのかはよくわからないが)富美子と太郎の間の関係や、雅之の行動と心理は少し飛躍があるというか、意味がとりにくい部分があるような気が読んでいてした。ただ、「嵐が丘」同様、それがこの小説の魅力を削ぐことにはなっていないと感じる。

    内容としてはとても読み応えがあり面白いが、新しいものではないという思いも一方である。古き良きものという言葉がしっくりくる。クラシックの名曲の模範的な演奏という印象だ。しかし読者に対してこういった印象を与えることもある程度織り込み済みで書いているようにも感じられる。

    水村さんがこれをやりたかったのは、やはり、名作文学と世間で言われるものに対する敬意や憧れなのだろうか。なんとなくだが、水村さんのような多くの良質な文学を読んだ経験を背景に持っていそうな人は、文学全集に載るような作品に対して特別な思い入れなしで済むなんてことはないような気がする。

    それとも何か別のたくらみがあるのだろうか。
    もしも日本語で西洋の「本格小説」みたいなものを実現したければ、このようなプロットになり、「名作」と言われるものは実はこういう構造をとっていて、あなたがた(読者)はこういうものを傑作だと思っているのですよ、と作者水村さんがほんの少しだけ意地悪く言っているようにも思える。

    こう書いてきて、その両方なのではないのだろうかという気がしてきた。
    敬意とたくらみの作者の心の中での複雑な結実としてこの作品があるのかもしれない。

  • 劇的なシーンはないが、
    引き込まれる。
    長い歴史の流れや、価値観の
    違いが行間から浮かび上がる。

  • 読み進むうちは、世界名作全集を読んでいるような感覚を持つ。ロシアの文豪が日本語で小説を書き綴ったと言ってもいい。ただ、最終的な結末にはやや物足りなさを感じる。大河小説にありがちではあるが。
    将来身分違いの恋に苦しむ「たろうちゃん」と「ようこちゃん」が子供時代に夢中になって遊ぶときの描写は秀悦だ。

  • 2024.01.27

    色々と長い。
    引き込まれるほどのことがあまりない。
    下巻に期待。

  • とても読みやすく、飽きない展開。下巻も楽しみです。

  • 稀に見る引き込まれる話

  • 感想は下巻にまとめて

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著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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