きらきらひかる (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339115

感想・レビュー・書評

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  •  2回読んでみた。最初は流し読みで物語全体の流れを把握して、2回目はゆっくり読んだ。執筆された時期があとがきによると1991年らしいので、ホモ・おとこおんななどLGBT用語が若干古いかなと感じたけど、親族や周囲の人間も含めて、家族(パートナー?)との在り方について一石を投じている内容であった。

     以前youtubeで外国人が日本のゲイ文化を紹介する動画があって、その中に仮面夫婦(ゲイとレズビアンだけど世間体を保つために結婚した人達)のインタビューがあったんだけど、本書の夫婦の形はこれに近いのかなと思った。子持ち既婚者がゲイ活動しているのはTwitterやアプリで見かけたことがあるけど、実際に仮面夫婦の方たちにお会いし話を聞いたことがないので、新鮮に感じた。

     個人的には、こういう夫婦(夫夫)のかたちも在りなのかなと思った。親族や法律的な問題も絡んでくるから現実的には簡単に言う事は難しいであろうけど。

    特に、睦月の母が言った「結婚は本人の問題ですものねぇ。笑子さんは睦月のこと、つまり紺くんとのことを知ってらしてお嫁にいらしたわけでしょう?結局、愛情の問題だよねぇ、そうでしょう?まわりがとやかく言ってもね、二人とも、もう立派な大人ですから」というセリフに感動した。
    親へカミングアウトする時もそうだけど、子どもの意思を尊重してくれることはきっとその人にとって大きな安心感になると思う。

    もう一方の両親サイドの主張も分からなくはないけど、きっと精神が不安定な娘を慮る気持ちもあるだろうと思う、それでも本人が望んでいることであるのだから、身を引いて温かく見守ってあげても良いのではないのかと思った。

    これは、それぞれ自分の弱みについての両親に対するスタンスが違うことも影響もあるのかなと思った。

     こんな感じで、親族や友人・同僚といった周囲の人間も含めて、愛情のかたちについて考えさせられる良い本だった。
    あと、文中に飲料の固有名詞が効果的に用いられ、バーに行きたくなった 笑。

  • ゲイの間では(たぶん)有名な作品で、かなり昔に買って放ったらかしだったのを今頃読んだ。複雑で奇妙な人間関係と、作品の始めから終わりまでずっと続く情緒不安定な笑子がとても印象的だった。

    純文学に分類される恋愛小説と言っていいのか?
    情景描写や笑子の心理描写がとても細かく、読むのに精神力がいる。間違っても、仕事の合間には読めない。
    色んな細やかな表現があって、多分二度目に読んだら新たな発見があると思う。

    ・ざっと人間関係を整理してみる。これ以上ないくらいに奇妙。笑子と睦月は「恋人を持つ自由のある夫婦」だと決めて結婚している。
     - アルコール依存症で、情緒不安定な笑子
     - ゲイで、それなのに笑子と結婚した睦月
     - 睦月の恋人の紺
     - 笑子の元恋人の羽根木
     - そして、笑子・睦月それぞれの両親

    ・笑子と睦月の変わった結婚生活が物語のメインとして描かれている。仮面夫婦かと思ったら、読み進めるうちに二人がお互いに愛情を持っている描写があることに気づく。でも、性交渉はない。

    ・もうひとつ印象に残ったのが、お酒の描写。知らないお酒の名前がたくさん出てきた。ミントジュレップ、コアントロー、キュンメル、ピーチフィズ。どこかショットバーに行って飲んでみたくなった。

    ・アルコール分2%未満の子供用シャンパンを朝食と一緒に飲んでいる。そういう飲み方もあるのか。

    ・笑子がお酒を飲んだり、鬱っぽくなったり、怒って物を投げたりという描写が何度も出てくる。情景描写がものすごい。笑子の情緒不安定さ、悲しさが伝わってきて、気付いたら感情移入している。

    ・各章が一話ずつ細切れになっていて、交互に笑子・睦月それぞれの視点で語られる。笑子自身の視点で悲しさや辛さが描写され、次の章では睦月の視点で気遣う様子が見られる・・・という流れが多かった気がする。

    ・親、友達、精神科医など色んな人が子どもを作れと迫ってくる。子どもがいれば笑子の辛さも和らぐという善意だったり、親の立場から人工授精の話まで出されたり。ゲイの当事者なら、心に来るものがあると思う。

    ・笑子、睦月それぞれの両親に、睦月がゲイだとバレた後の親族会議のあたりはかなり見もの。

    ・恋愛小説なんてものを読むことはあまりなかったけれども、面白かった。とても歪な人間関係だと思ってしまうけれど、よくわからない。


    ブクログの登録日を見ると2013年だった。こんな前に、ブックオフで200円で買った本で、これほど感動するとは思わなかった。


  • 愛する相手に誠実であることは、自分の思いとは裏腹に相手の首を絞めてしまうのかなと感じた

    笑子の無邪気で突拍子のない、純粋であるがゆえに傷つきやすく精神的に波のある性格は、とても感情を揺さぶられたし澄んでいるようにみえた

    睦月が愛した紺と笑子は、ほっておけない、目を離せないところが少し似ているなと思う

    “銀のライオンたち”が大きく深呼吸して安心して眠れるような時間を過ごしていてほしいと願ってしまう

  • 誰かのそばにいること。居続けること。一緒にいて辛くてもたまに逃げてしまっても帰る居場所になること。
    「たっぷりした」や「行かれない」という言葉を見つけると、ああ江國さんだ、といつも思う。そうしてやっぱりここに着地してしまう。

  • 好きな人たちみんなを大切にしようとしたら、笑子がたどり着いた(無理やり収め込んだ)行動が、最終的な答えになるんだろうなと思った。このままでいたいだけなのに、このままでいられないことは沢山あるけど、時には強引な行動力に救われることもあると信じたい。むつかしいね。夫婦とは。
    91年刊行に驚き。

  • 江國さんの本の中でも何故か印象に残る作品。特別な設定てのもあるけど、なんか色とか匂いが見える感じ。江國さんの文体ってどれも思うけど、漢字と平仮名と片仮名の違いがうまく出てるなぁって感じる。こういうの翻訳して読まれたりしてもちゃんと伝わるのかな。全体通しては何も起こらないとか、結局何が言いたいの?とか、そういうの無視してこの感じを味わってほしい。

  • ただの恋愛小説なんかではなかった。神様のボートと立て続けに読んだけど、心情描写をあらわすための修飾がうまい。ぞっとした+(血が引き潮のように)とか。詳しくは知らんけど、叙述にもいろんな手法というか体系化されているもんなんだろうか。技法が確立されている世界なのか、はたまた個人のセンスに頼れてしまうものなのか。つまりは属人化されているのかいないのか。

    そもそも本当になんで笑子と睦月は結婚したんだろう。紺が越してきたあと本当にどうなってしまうんだろう。

    笑子が柿井さんに相談した件について紺が激怒して睦月を殴り倒した場面の「そんな風に相手を追い詰めるんなら、睦月は笑子ちゃんと結婚なんかするもんじゃなかったんだよ」は胸熱。

    そのあとの行動と全く結びつかんけど。紺はつまり何がしたいんだろう。3人で暮らしたいのか。けど夫婦としては立ててあげつつ。

  • 「まぁ、でもこの小説全然現実的じゃないよね」と言われて仕舞えばそれまでなんだけれど…それでも私は女子なので、紺くんにときめいたり、付かず離れずなまさに水を抱くような夫婦生活に憧れを抱いてみたり、お酒に溺れたり、ベランダから星を眺めたりしたいわけです。そういうのが好きなんです、女子だから。
    江國さんの透き通るように見透かした柔らかい言葉たちで心臓をぎゅっと掴まれちゃうからしょうがない。

  • 1回目に読んだ時、アル中とはいえ主人公は何でこんなに情緒不安定なんだと、事情飲み込めずに困まりました。後は同性愛の描写にいけないものを見たような気持ちになったくらいで。

    あとがきを見てから2回目、読みながら涙が出ました。主人公が情緒不安定なのは恋をしていたからなんですね。素敵な異性がそばにいて、自分を特別気にかけてくれる。どんどん好きになってしまう気持ち分かります。でも出会う前からその人には大切な人がいて、その人にとっての一番が誰か主人公が誰より思い知っているんです。他にもたくさんの複雑な気持ちが絡み合っているけど、シンプルに考えてしまえば彼女は片思いをしているんだとやっと腑に落ちました。だからこれはわたし的に解釈すると恋愛小説の王道の話です。

    普段から推理小説も最後まで全く謎が解けないので、あとがきで答えを教えて貰ってやっとそうなのかなと思いました。三度目にはもっと新しい発見があるかもしれません。シンプルだけど味わい深いお話だなと思います。

  • 「結婚して、子どもを生んで、幸せな家庭を築く。それが自然で、それが当たり前。」

    「自然」という言葉の定義は人それぞれ違う。ただ、世間一般でいう「自然」こそ誰もがなぞるべきものだと杓子定規の考え方を突きつけてくる「ふつう」の人々の言葉が痛い。
    アル中の妻と、男の恋人がいるホモの夫。世間でいう「自然」とはかけ離れた結婚だ。

    人工授精をしてでも形式上のふたりの子どもを、と勧める夫の母。
    子どもがほしいならば養子縁組という手段だってあるのに、血縁に拘るその所以は、やはり世間の目なのだろうか。

    ごっこみたいに楽しくて、気ままで都合のいい結婚の代償として、水を抱く。
    「このままでこんなに自然なのに」と言いながら、代償ということばを口にする主人公の笑子が健気で苦しい。結婚せずパートナーとして3人で共存していく方法もあったろうに、それを選ばなかった。同性愛者の結婚が認められた今だとまた少し選択肢が広がるが、世間のこの「ふつう」という息苦しいしばりがある限り、生きづらさは変わらないだろう。「自然」とは一体なんなのだろう…

    そう考えこんでいるところに、「ごく基本的な恋愛小説を書こうと思いました」という作者あとがき。はっ、そんな小難しいことでなく、人を好きになるってこういうことだよ、ということを伝えたかったのか。おもしろかった。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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