つめたいよるに (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 10791
レビュー : 1029
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339139

感想・レビュー・書評

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  • 『つめたいよるに』には21編もの短編が収録されています。5分もあれば読めてしまうどの物語も、長い余韻を残しながら消えるように心のなかへと静かに沈んでいきます。

    それはそれは、まるで優しい味のバニラアイス。そんな短編集でした。
    口に含めばトロリと溶けてしまう甘さは「生」と「死」のあやふやな境界線のような儚さです。
    バニラの淡い黄身色は、私たちの存在はいつか過去へと帰っていくのだと、どこか懐かしさを覚えるような温かさでした(アイスに温かいは変ですね)

    「でもなぁ。いつも同じ味、同じ見た目ばかりでは、大好きなバニラアイスとはいえ飽きてしまうわ」そんな我が儘なわたしにも嫌な顔ひとつせず、江國香織さんはバニラアイスを差し出してくれます。そのバニラアイスを見てわたしは自分が間違ってたことに気づき、そして目の前に広げられた光景に感動しました。艶やかなチョコレートソースやキャラメルソース、ストロベリージャムなどがかけられた数えきれないほどのバニラアイス。カラフルなトッピングシュガーで飾られたバニラ。ほろ苦い熱いコーヒーの中で溺れるバニラ。意外な調味料が隠し味となり美味しさが引き立てられた数々のバニラ。どれひとつとっても同じものはありません。

    江國香織さんがすごいなと思ったのは、本来のバニラアイスの美味しさを失うことがないところです。トッピングや隠し味はほんのちょっぴり。ほんのちょっぴり悲しかったり、幸せだったり、恐ろしかったり、そんなエッセンスを加えながら、不思議で味わい深い物語をわたしたちに届けてくれます。
    特に「あ、わたしこの味好きだ」と思った物語は『デューク』『スイート・ラバーズ』『銀色のギンガムクロス』『南ケ原団地A号棟』でした。
    悲しいのに幸せ、苦手なはずなのに愛しい、可笑しいのに切実、そんなバニラアイスたち。
    きっと、読んだひとそれぞれお好みのバニラアイスが見つかるはず、そんな短編集でした。

    • まことさん
      地球っこさん♪こんにちは!

      江國香織さんは、私も大好きな作家さんです。
      江國さんの作品をバニラアイスに例えて表現されるなんて、江國さ...
      地球っこさん♪こんにちは!

      江國香織さんは、私も大好きな作家さんです。
      江國さんの作品をバニラアイスに例えて表現されるなんて、江國さんの作品も、素敵ですが、地球っこさんの表現力がさらに素晴らしいと思いました。素敵です。
      私も、この作品集は、かなり昔読みましたが、今でも『デューク』だけは忘れられない作品です。
      2020/04/26
    • 地球っこさん
      まことさん、こんにちは。

      江國香織さん、実は恋愛小説のイメージが強くて今まで読む勇気がなかった作家さんでした(恋愛もの苦手でして 笑)...
      まことさん、こんにちは。

      江國香織さん、実は恋愛小説のイメージが強くて今まで読む勇気がなかった作家さんでした(恋愛もの苦手でして 笑)
      でもこの『つめたいよるに』は、いろんな江國さんが見ることができてとても良かったです!
      なぜかバニラアイスが浮かんできたので、バニラ、バニラとなんだかよくわからないレビューになっちゃいました。

      江國香織さん、追いかけていきたい作家さんになりました(*^^*)

      『デューク』わたしも心に残りました。
      この作品、大学入試センター試験の国語の問題にも使われたんですね。
      試験中にもかかわらず涙を流す受験生が続出したとか。
      できたらこの物語は、じっくりひとり静かに本と向き合える時間に読みたいですよね。。。
      どんな問題でどんな正解なのか、気になるところです。

      2020/04/26
  • ねぎを刻む話が確かあったなぁと、ふと思い出して手に取った。
    もう何度も読んだ短編集。

    お目当ての一編はタイトルはそのまま、一人暮らしのOLがねぎを刻むお話。

    今の自分と重なる。孤独でいるのを好んでそうしているのは自分なのに、どうしたって我慢ならない時がある。

    最近、なんとはなしに涙が出てきてびっくりしたことがあった。
    仕事が忙しくてストレスが溜まってた訳でもないし、泣ける映画を見てたわけでもない。
    自分で作ったカレーを食べながら、涙がこぼれたのだ。

    カレーが美味しくて、美味しいと思うのはそれが母の味に似てるからで、ふと実家が恋しくなって、涙が出た。

    それ以来、またそんな風に泣いてしまうのが怖くて、なにかと忙しいフリをする。

    前は、退屈なくらい時間を持て余して1人でいるのも平気だったのに。一生1人で生きていきたいとさえ思っていたのに。

    今度涙が出そうになったらねぎを刻んでみようかな。

    • 大野弘紀さん
      感想と言う名の、小説を読んでいるかのようです。
      感想と言う名の、小説を読んでいるかのようです。
      2020/07/05
  • 人を恋するということはえらいことですわなぁ。
    江國さんの描く様々な恋と、ちょっぴり摩訶不思議な仕掛けのある21編の短編集。
    好きなタイプの話が多く、優しい、懐かしい、切ない等様々な気持ちが次々に生まれる。
    『桃子』『草之丞の話』『鬼ばばあ』『晴れた空の下で』『ねぎを刻む』が印象的。

    一番心に残ったのは『デューク』。
    「それだけ言いにきたんだ」
    あの時あなたは優しくそう言った。
    けれど私にとっては「それだけ」なんかじゃない。
    あなたが私にくれたものは一言では言い尽くせない程の深い愛情。
    ほんの数頁の短編なのに物語の余韻がずっと頭から離れない。
    以前大学センター試験に出題され、涙をこらえられなかった受験生が続出したという『デューク』。
    こんな心を揺さぶる作品を出題するなんて、出題者なかなかやるじゃん。
    受験生と試験官泣かせの作品。
    読めて良かった。
    この先何度でも読み返していきたい一冊。

  • 寂しさをたんまり味わった。
    何かお話を読み終わった時に感じる寂しさ。
    長編小説ならば、その寂しさは遠く先の事だから、そんなに気にせずに読み進めることができる。
    だけど、短編集となると、その寂しさは毎回本を開くたびにすぐそばにある。
    その寂しさを何度も味わうことができた。
    特に、江國さんの美しい描写で描かれる世界は、入り込むたび、出たくなくなるような世界だ。
    だからこそ、毎回、短編が終わってしまってからの寂しさが大きかった。
    もっと読んでいたい。
    もっと世界に入っていたい。
    そんな感情をたんまり味わうことができた。

  • 短編集を読んだことはほとんどなかったので、1つの話がテンポよく出来上がっているものをポンポン読むのは気持ちが良かった。
    まるでセンター試験の大問2だなと感じていたら、デュークがセンターの有名な過去問であることを友達に聞き、親近感がすごく沸いた。
    どの話も江國さんの良さが詰まっており、心に訴えかけられるような面々が見られて、短いのに話が鋭く、読んでいて楽しかった。
    特に印象に残っているのは、デュークと鬼ばばあ。命の終わりに付き物である別れや悲しみ、そういったものが自分には染み込みやすく、心が動かされた。

  • 「デューク」や「草之丞の話」など私の好きな作品が収められている江国さん初めての作品集です。読むと温かい気持ちになれる、癒しの一冊です。(4.5)

  • 江國さんの短編集の中で、一番好き。
    21篇のどれも5~10分足らずで読めてしまうのに、どの話も描かれてる物語に引き込まれてしまうのが単純にすごい。

    中でも特にデューク、草之丞の話、スイート・ラバーズ、藤島さんの来る日、子供たちの晩餐、さくらんぼパイ、とくべつな早朝がお気に入り。

    そして夢か現かの不思議な世界観が多い中で、ねぎを刻むの生々しさが本当に目立つ。
    もう何年も手元に置いてある本だけど、これだけは軽い気持ちで読み返せない。
    何ていうか覚悟が要る、良い意味で。
    だから寂しいって怖い。

  • 大学生の頃に読んだんだが「デューークゥゥゥ」となった記憶がある。10年経ったらまた違うんだろーなぁとか思いつつ先ほど読んでみたら「デューーーーーーーーーークゥゥゥゥゥ」となった。犬を飼い始めたのもまずかった。

  • 久しぶりに読み返しました。

    「デューク」…犬派にはたまらない。たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬。「君はペット」の松潤みたいな?しかしこれ、犬種がパグやコーギーなら成立しない気もしますね。

    コーギーのおしりと笑ってるみたいな口元がたまらなく好きな私ですけども。

  • 【心に】

    沁みます。
    江國香織さんの好きなものの詰め合わせ。

    「感激する」「影響を受ける」っていうほどではないけど、
    静かに心のなかに染み込んでいく感じ。
    好きです。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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