つめたいよるに (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 9764
レビュー : 987
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339139

感想・レビュー・書評

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  • 大学生の頃に読んだんだが「デューークゥゥゥ」となった記憶がある。10年経ったらまた違うんだろーなぁとか思いつつ先ほど読んでみたら「デューーーーーーーーーークゥゥゥゥゥ」となった。犬を飼い始めたのもまずかった。

  • 短編集。ほんとに短いお話しばかり。

    優しくふんわり不思議な印象で、はじめは絵本を読んでいるような感覚でした。
    だけどこの短いストーリーの中に内容がギュッと詰まっていて、読んでいく毎にぐいぐい引き込まれてしまいました。

    女性向けですね、ロマンチックなものが多かったです。

  • ああ、やはりショートショートは苦手だ。盛り上がりに欠ける。なのに不思議と心はあたたかい。静かに心に積もる一冊。

  • 正直何が言いたいのか私には……と思っていたが、解説を読んだら、もう一読すれば非常に感動できそうな気になった。
    解説を読む前にも漠然と「いい話だ~」とは思っていたが、さすが批評家の視点は素晴らしい。
    だが、やはり初見(=自分の力のみ)で読んだ限りはそこまで面白いと感じることができなかったので、当時の自分に素直に☆3にしておいた。

    『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』同様、短編のくせに登場人物ひとりひとりのリアリティがすさまじかった。
    『泳ぐのに~』が女性の恋愛の話だったのに対し、今作は川本三郎氏曰く「幽霊、変身、転生」の話。
    また、中身は『つめたいよるに』『温かなお皿』に大きく分かれている。

    『つめたいよるに』
    デューク:幽霊
    犬好き必涙。あの短さであの量の伏線を回収するのはすごい。しかも(これも解説を読まないと気づかなかった辺りまだまだ読書量が足りないが)少年がデュークであるとは、どこにも書いていない。クリスマスの街の中に消えていくデューク。デュークは最高のサンタさんだった。「僕は、楽しかったよ」「私も」「……ずっと、だよ」とかいう会話があったが、自分の家の犬も、彼の”犬生”をずっと楽しんでくれているといいなぁ、と思ったら涙を禁じえなかった。

    夏の少し前:変身
    時間軸ぶれぶれで、主人公は彼女の人生を白昼夢のように体験していく。ひたすらに不思議な感じのお話。だれかこれで絵本書いてくれ。

    僕はジャングルに住みたい(:どれでもない)
    野村さんと、彼女と両片思いな感じの主人公くんの、小学校卒業直前のかわいらしいお話。野村さんがわざわざ頼んでくれたのに素直にメッセージを書けなくて、挙句下駄箱に突っ込まれていた彼女のノートに「おれたちに明日はない」、かわいすぎた。それを見た野村さんはにっこりしたらしいので、やはり女の子の方が精神年齢は上なのね。
    主人公くんはジャングルに住めたら、彼女のために獲物をとってくるそう。人間のままだと優しくできないのかな。人目があると素直に優しくできない少年であった、ってとこでしょうか。

    桃子:変身
    処女作らしいです。すげえ。身寄りのない子ども・桃子と恋に落ちてしまった引受先の寺の僧。桃子と虫を殺生して遊んでいるとか、僧の様子がおかしくなっていくので、ボスの僧?が桃子を寺から伯父伯母のところへ出してしまうと、僧の頭からは青い花を咲かせる植物が……。しかも毎年春には小鳥が寺にやってくる。桃子、お前鳥だったんか。だからセミの羽根をむしって遊んでいたのだね。伏線の張り方など、デュークに通じるところがある。過ぎた愛は身を滅ぼすという教訓の話?

    草之丞の話:幽霊
    女手一つで育てられていたと思っていたら、実は幽霊の父さんがそばにいて、母はそれを知っていて、えー……という息子の話。最終的に少年は父から「もうお前ひとりで大丈夫だな、母さんを頼むぞ」みたいな感じで母を任される……。賞とったらしいけどあんまり良さがわからなかった。

    鬼ばばあ(:どれでもない、死に近しくなる話)
    これ好きだった。小学生の少年が老人施設のおばあさんと仲良くなるが、ある日おばあさんはぼけてしまって……という話。老人施設内でもいなかったかのようにふるまわれることに少年が違和感を覚えている描写など、子どもと大人の事情の違いというか、リアル。

    夜の子どもたち(:どれでもない、強いて言うなら変身?)
    これも好きだった。夕方まで子どもたちがやっている遊びを、実は夜中に彼らの親がやっている、という光景を目撃する少年の話。その光景は夢か現実か。しかし、その真偽は重要ではなく、少年が大人の中に残る「子ども」を知った、というのが重要。それを周囲の友人に打ち明けないのも、大人の秘密を知って、自分だけが少し大人に近づいたような優越感を覚えたからか。大人だって無邪気に遊びたい、そんな欲望を描いた作品だと解釈。

    いつか、ずっと昔(:転生)
    恋人の横にいながらふわふわ前世の恋人に会う旅を始めてしまう主人公さん。不思議な雰囲気が魅力的ではあったが、何が言いたいのかはよくわからなかった。頭が江國さんに追い付かない。

    スイート・ラバーズ(:幽霊?転生?)
    これも好きだった。結婚を間近に控えた主人公さんのおじいちゃんは、余命わずか。主人公は、亡き彼の妻――主人公のおばあちゃんによく似ている、と言われて育ってきた。それどころか、祖母が亡くなった翌日に生まれた彼女には、祖母の記憶を受け継いでいる節がある。
    おじいちゃんが亡くなり、遺体のそばに行くと、彼女は自分の中から「出て行って」しまい、体をおいて、自分の意思の外で、おじいちゃんの亡霊とともに歩いていく。「夫婦はいいぞ」と。2人が病室から出ると主人公は主人公の中に戻る。婚約者と顔を合わせると、「おじいちゃんが亡くなって悲しかったからではなく、婚約者と会えてうれしかったから」泣いてしまった主人公。もはや祖母の存在を内に持たない彼女だが、祖父母と同様、「夫婦はいいぞ」、なんて、将来孫にでも言っているのではないか。


    『温かなお皿』
    朱塗りの三段重
    犬に過保護だけどいい奥さんだけど、やっぱり過保護過ぎた奥さんの話。さすがの私(重度の犬好き)でもわからない。犬におせちは作らない。そして何が言いたかったんだこの話(n回目)。

    ラプンツェルたち
    女子大生4人組が厳しい寮生活を楽しんでいる。なんか共感できなかった、というかやかましかった。自分が自由で恋にそこまで溺れないタイプの女子大生だからか。

    子供たちの晩餐
    いい食事を作る母のもとで育った、4人兄弟の晩餐の話。父母が連れ立ってでかけた晩に、体に悪そうなものをお行儀悪くこっそり食べまくる。楽しそう。たまには羽目はずさないとね。たまの悪さで発散しながら、ある種抑圧された生活に戻っていく少年少女。
    ただね、ごみが大量発生するだろうからね、ご両親は実は気づいてると思うよ。

    晴れた空の下で
    どの話か忘れた……。

    さくらんぼパイ
    離婚して娘の親権は妻がもっている、しかしある日娘から急に電話がかかってきて、行ってみると元妻は部屋にこもって泣いている。娘が自分の作ったさくらんぼパイを食べなかったからだという。えぇ……ガキかよ……。父は娘を外食に連れ出し、そのままその晩だけは娘を連れ帰ることに。娘曰く、母は毎日手作りのお菓子を作る――メインの食事は手作りでもないのに。去り際に父はさくらんぼパイを平らげ、「おいしかったよ」。元妻は車で去っていく2人をベランダから見送る。
    女さんにいらついてよく読めませんでした、ちょっとよくわからない。

    藤島さんの来る日
    猫と飼い主の女の人とその恋人藤島さん(妻いる)の話。
    吾輩は猫である、みたいな感じだった。かわいい。藤島さんに料理を作らせ、彼女は「わたしね、男の人に料理なんて作ってあげないんだ」。かならず帰ってくる人のために料理を作って待っているなんて、余裕のあるマネはしないようなことを言っていた。猫ちゃんは、でも、彼女の料理は好きらしい。猫の無邪気な視線から、男女関係の悲しさを描く。

    緑色のギンガムクロス
    違う父をもつ、アラフォーの姉と妹の話。そりは合わないけれど、男運がないもの同士ではある2人。最終的に打ち解けていらっしゃった。そんなに印象に残っていないので、よくわからなかったのでしょう。

    南ヶ原団地A号棟
    隣の芝は青い話。娘の体重を気にして健康食を出すお母さんは、厳しくていやになってしまうけれど、娘を太らせまいとする合理性を持っている。好きに食事をさせるお母さんは、母親らしくないけれど、自由でいい。料理に凝るお母さんは、「母親」らしくて素敵だけれど、そんなに凝ったものばかり出されても、みんながみんな食事に興味があるわけではないので、疲れてしまう。3人の子どもが3人の母親を評価していた。

    ねぎを刻む
    特にきっかけがなくても孤独に襲われる夜がある。そんな日には、ひたすらねぎを刻む、という女性の話。「孤独のつめたいてのひらに覆われる」みたいな表現があった、素敵すぎた。
    あと急に病み期がくるのは本当にそう。きっかけなんてないのに、ひたすらにいろいろなことが嫌になる。

    コスモスの咲く庭
    お父さんの自由な昼間。最初は乗り気ではなかったが、この状況――娘息子に邪魔されず休日を謳歌するのが夢だったことを思い出す。昔の得意料理を作るために買い物に出かけ、ついでに元カノ御用達のヨーグルトを見つけてつい買っちゃったりなんかするけれど、お料理完成間近で帰ってきた妻と娘に現実に引き戻される。挙句ヨーグルトは娘に求められてあげてしまうし。過去には戻れませんよ、ってか。切ない。

    冬の日、防衛庁にて
    浮気相手の奥さんにコテンパンにされる話。優雅な専業主婦に、キャリアウーマンはかなわない。主婦っょぃ。

    とくべつな早朝
    クリスマスで始めて(デューク)クリスマスに締めにきたよこの人…!という感動を覚えた。大学生のコンビニアルバイターとその女友だちの、何かが始まりそうな朝のお話。

  • 有名な「デューク」は知ってたいたが、それ以外にも心にほんわか残る短編がたくさん。
    とてもシンプルな言葉で書かれているのに、なぜか心に残る。
    日常の一場面を切り取っただけなのに、そこに潜む温かさ、優しさ、きらりとした輝き…そんなものがまっすぐに伝わってくる感じ。
    短編なのでとても読みやすい。
    たくさんのお話があるのですべてが心に残るというわけではないが、お気に入りは見つかります。

  • 私の苦手な短編集とは知らずに購入してしまったので
    少し後悔しましたが
    予想を裏切られ、とってもいい作品集でした。

    江國香織の短編を初めて読みましたが
    こんなにも不思議な世界が詰まっているのか、と驚き。
    とある日常の中に、突然スルスルと不思議な世界に入っていくのに
    それが違和感もなく、溶け込んでいける。
    そして、またふと突然現実に戻り、物語が終わる。

    読み終わりが実にさらっと描かれているので
    「これで終わり?」と物足りなくなる人もいるかもしれないけど
    私はとっても好き。
    余韻があり、ふわっという表現がぴったり当てはまる終わり方。
    「これからこうなっていくのかな」とかあれこれ考えるというより
    読み終わって、ただただ余韻にふける、という感じ。

    また、子供から大人、老人まで幅広い年齢層を主人公に設定してあり
    本当にさまざまな人間模様が描かれています。
    こんなにたくさんの人間を書き分けることができるのはすごい。
    物語のもつ世界観は江國香織そのものだけど
    そこに描かれている人間は、全く別の生活感のある人間が
    何人にも渡って描かれている。

    江國香織の世界はなかなか言葉で表現できないけれど
    短編集が苦手な方に、ぜひお勧めしたい作品です。

  • 『デューク』を教科書で始めて読んだ時の衝撃は、多分一生忘れないと思う。本棚の見えるところに置いておきたい、一冊。

  • ファンタジーあり、日常でありそうな話アリの短編集。意味が分からないものもありましたが、最後まで飽きずに読めました。

  • だいぶ前に読んだが、内容思い出すと、なんとなく、寒い冬の昼間に水色のマフラー巻いている女の子が浮かぶ本。温かい気持ちになる話が多い中、皮肉な女の子の話がちょっと入ってるのが好き。

  • 江國さんの本を読むのは今回が初めてです。21編の短編を一気に読破しました。心に残るものもあれば、心に残らないものもあります。心に残るものは、前半の『つめたいよるに』に多かった印象。特に、『夏の少し前』と『いつか、ずっと昔』、この二つは現実的には起こりえない時間や生命の跳躍が起きる夢想的なフィクションです。

    http://naokis.doorblog.jp/archives/tsumetai_yoruni.html【書評】『つめたいよるに (新潮文庫)』江國香織を書く : なおきのブログ


    <目次>
    つねたいよるに
     デューク
     夏の少し前
     僕はジャングルに済みたい
     桃子
     草之丞の話
     鬼ばばあ
     夜の子どもたち
     いつか、ずっと昔
     スイート・ラバーズ
    温かなお皿
     朱塗りの三段重
     ラプンツェルたち
     子供たちの晩餐
     晴れた空の下で
     さくらんぼパイ
     藤島さんの来る日
     緑色のギンガムクロス
     南ヶ原団地A号棟
     ねぎを刻む
     コスモスの咲く庭
     冬の日、防衛庁にて
     とくべつな早朝
    解説 川本三郎


    2016.10.25 シミルボンより
    2016.11.15 読書開始
    2016.11.17 読了

著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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