すいかの匂い (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 9609
感想 : 702
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339160

作品紹介・あらすじ

あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに-バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。無防備に出遭ってしまい、心に織りこまれてしまった事ども。おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。

感想・レビュー・書評

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  • R3.9.19 読了。

     主題のすいかの匂いは、夏の思い出にしては怖かった。特殊すぎる。
     他の短編も個人的にはあんまり楽しめなくて残念だった。

  • 年を重ねて、10代のころの自分に戻りたいか? と問われたらどうでしょう。
    時代は変わりすぎました。
    忘れるようにもなりました。
    でも、人間はうまくできていると思います。
    忘れたいことは、本当に忘れることができます。
    そんなことあったかな? くらいには。
    きっとそんなこともあるから戻りたくないのかもしれません。

    今は便利すぎるけれど、昔はよかったな~、そんなこともあります。
    でも、昔は時間がありました。自然もありました。
    暑さもありましたし、自然の中で遊んだことも、それは暑さとあわせて
    思い出されます。

    すいかの匂い、ふとしたきっかけで何か昔を思い出してしまう。
    思い出すどころか、過去にタイムスリップしてしまうような、そんなことを感じました。
    今まで蓋をしていたものが、突然出てくる怖さ、そんなことから、”怖い”というレビューが多いのかもしれません。

  • 夏休みの夜、宿題である星座の観察をするためにベランダに出たこと。ざらざらとした材質、足裏のひやりとした感触。
    クーラーをつけず扇風機のみの室内は空気がゆるゆると動いて時間の流れも遅く感じたこと。
    夏のそんな記憶がよみがえります。

  • 『すいかの匂い』読了
    去年の秋に購入した本で、夏になったら読もうとずっと温めていました。
    登場してくる少女たちの秘密が魔性めいていて、なんだか夏の終わりを告げるような侘しさがよかった。
    ちょうど今、読めてよかったな。もうすぐ夏が終わる。
    もう少し、あの夏を味わいたかったな。もう少し。
    子ども時代のどうしょうもない困惑や痛みが夏の空気感を通して五臓六腑に浸透してくる感じ…懐かしい気分にさせられるね。あ〜また楽しい楽しい、けどちょっと切ない夏が来ますように。

    2020.9.29 (1回目)

  • 高校のときの友人が読んでいたのを覚えている。10年前。「これ怖すぎ……。」と言っていた。
    その印象が強くて、ホラー小説でも前にしたかのような心境でもって読んだのだが、なるほど確かに怖かった。
    記憶のふたを開けたように、かつて自分が少女だったころのありとあらゆることをとめどなく思い出した。ここに書かれているのとそっくりなことも、そうでないことも。スイカの種をのみこんだら腹のなかでスイカの芽がでると信じ込んでいたあの頃。
    それらを今まですっかり忘れていたことが怖かった。私にも少女として過ごした夏があったのだ。不機嫌で疑り深く、好奇心ばかり強かった、夏。
    歯みがきカレンダーの緑色に塗られた蟹や、ラジオ体操のあとに食べる朝ごはん、開放された学校プールの水のきらめき、友達を待つとなりの家のお兄さんが持っていた溶けかけのアイス。思い出せる夏はそれこそたくさんある。
    江國香織さんの言葉で、私はあっというまに少女に戻ってしまったようだった。

    この中では「焼却炉」が好き。小学四年生の退屈な夏休みに、ボランティアで学校にやってきた大学生のお兄さん。無表情で歌をうたう彼とは、とても気持ちが合うという確信があったのに、どこまでもただ子供扱いされることへの苛立ちともどかしさが愛おしい。はやく大人になりたい、と願った切実さを覚えている。
    とある音楽フェスティバルで露店のアイスクリームをながめていたら、その日共に参加していた同じサークルの男子大学生に「食べる?」と聞かれたときの気恥ずかしさをふいに思い出した。子供扱いされているようにも、大人扱いされているようにも思えて、どう答えればいいか分からず、顔を背けて無視してしまったこと、ごめんね。

  • 「水の輪」以外は初めて読みました。まるで自分が小学生の頃に本当にあった出来事のようなリアリティがありました。初めて「水の輪」を読んだときにも思いましたが、江國さんの書く不気味なお話は恐ろしい・不気味という言葉よりも不思議という言葉が似合うと思います。今回は特に「すいかの匂い」を気に入りました。

  • 真冬にこの本を読んだのに、夏がつい最近のように感じられて、懐かしくなった。

    いざ夏になると、暑いし汗は気持ち悪いしセミはうるさいし、日焼けするしで、いい事なんかひとつも無いのに、本の中に描かれた夏は鮮やかで、太陽に反射して煌めく海はとても幻想的なものになる。


    表題作の「すいかの匂い」は夏に読むとゾクッとするんだろうなと思った。

    私はすいかの匂いより、「水の輪」の方が恐ろしく感じた。クマゼミの「シネシネシネ」という鳴き声とやまだたろうの「死ね死ね死ね」どちらが正解なのかは分からないけど、どちらにせよ怖い。


    一番好きな話は、「焼却炉」だった。
    最後まで、すずきじんたの年齢が分からなかった所がいいなと感じた。


    夏にいい思い出なんてないし、そこまですいかが好きなわけでもないのに、恋しくなった。
    自分は小学生の頃、夏休み何をしてたかと思ったが、結局思い出せなかった。

  • すいかの匂い、というタイトルで赤はない。
    皮の、残った部分がます思い浮かんだが、どんな匂いだったかよく覚えていないな。そんな気持ちで手に取った一冊。

    解説にあった、自分の秘密も打ち明けたくなるような作品。
    学生時代に、図書館で偶然見つけて一人で読みたかったかも。笑

    明確な形や色はもたない、一冊を通して儚げな雰囲気があった。
    今の季節に読むのにぴったりだと思います、是非!

  • 不思議な短編もあったけど、「あぁ、その感じ、わかる。」と幼い頃の記憶を思い出した本。
    しずかで冷静で、少し大人びているような目線。でも、子どもにしか感じることのできない、敏感で不思議な感覚がある。そしてそれは、ひみつということでもないけど、誰に話すわけでもない。

    子どもの頃の秘密の会話やあそび、寝転んでみる入道雲とい草の匂い、屋外プールの冷たさと石階段の暑さ、あの頃の背丈の視点でみる夏の夕焼けなど、自分の幼い頃の感覚もよみがえった。

    あと、文中で「かっこいい」ではなく「かっこういい」と書かれていた部分は、教科書どおりにまっすぐ覚えた言葉を小学生が使っているように感じられて、お気に入り。

    夏に読みたい一冊。

  • 子供の頃を思い出す。
    無邪気で、残酷で、なんだか救われない感じ。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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