- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101339160
感想・レビュー・書評
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文章の結び、引き際が美しい。よけいなことは詰め込まず、短編ひとつひとつが、日常のなかにある冷たい部分に特化して少女の虚さをただただ浮き彫りにさせている。人間の中身をいやらしく描くものだから、いままで女流作家は苦手で、読まず嫌いの一途だったが、すっきりとした文章で読みやすく、夏になると恋しい作品。
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この短編に登場する子供たちは、物憂げで所在なさげで、所謂天真爛漫な子供らしい子供ではない。
でも、それぞれの子供たちの心情が、まるで自分が体験したことのようにリアルに感じられる。
大人になれば憂鬱な気持ちの持って行き場を見つけたり、うまく発散させたりということを経験から学ぶことが出来る。
けれど、子供はそのような術をまだ持たないことから、行き場のない気持ちに閉じ込められ、それがこの短編の独特な閉じた世界を作っているように思われる。
知識や経験を持たない代わりに、世界の薄暗い面を本能的に感じとる子供たちの心情に触れるのは、決して不快ではない。
むしろ、自分にもこんな気持ちを感じたことがかつてあり、大人になった今でも、ふとした拍子にそんな子供が顔をのぞかせることがあるということに改めて思い当たった。 -
少女の夏のお話が11話。
1話1話は短いけど、続けて読むことが出来ない。
余韻に浸るというか、息継ぎのような時間が必要だった。
夏だったかは分からないけど、物語の中の少女達と同じ怖さを私は感じたことがあるはず。
特に「あげは蝶」の少女のように、新しい(想像したこともない)選択肢が突然現れた時の衝撃と恐怖、どうしようもなく心惹かれるのに踏み出せない自分への失望をよく知っている。
読んでいる間ずっと心地いいような息苦しいような感覚を味わった。
江國香織さんは凄い。
この小説と出会えてとても嬉しい。 -
「つめたい夜に」の次におすすめの一冊。
内容は、上記よりも少しクセが濃い印象の短編集。 -
江國さんの作品は2作目なので、"いつも"がどうか分かりませんが、独特の色というか切なさがあります。
本作は11人の少女の記憶がテーマですが、何故か(男の)私も昔の酸っぱい記憶が蘇るような感覚になり不思議でした。
子供時代のやるせない感ってみんなもってるんですね -
夏が大好きな友達から教えてもらった本。
夏の暑さと、みずみずしさを感じながら読んでいった。江國香織さんの小説に出てくるような登場人物たちの暮らしをしたいとついつい思ってしまう。 -
不思議な世界観だった。
少女たちの無垢さが目立ち、それが物語の内容とは全く噛み合わないために、一層美しく愛しく感じた。 -
わからない。1つ1つの短編は起承転結があるわけではないし、出てくる少女たちの生活だったり記憶が語られる。そして短編はどれも少し陰鬱な雰囲気漂う物語だった。これが江國香織さんらしさなのかもしれない。
物語の中で描かれる夏の情景は一瞬で子供時代に戻れるような繊細でノスタルジックな表現だった。 -
奇妙な物語ばかり。
小さい頃の記憶ってもしかしたらそんなものかもしれない。
そして小さな頃の素直な残酷さ。
そういうものがあったかもしれない、わたしにも。
江國香織を読む理由が川上弘美の解説によく表れていた。
言葉にしたら、それは嘘っぽくなってしまうような、本質とズレているのはわかっているのに、うまくは訂正できないというような、とにかく言えるのはわたしの江國香織はわたしだけの江國香織であって、誰かとシェアできるものではないということ。
だからわたしは密やかにいつまでもわたしの江國香織を持っておく。
登録が2015年7月にされている。
ずいぶん長いこと置き去りにしていたらしい。 -
不幸せじゃないけれど、重たい毎日、それが自分にとっての10歳前後の記憶です。親、先生、散歩のおばさん、草刈りのおじさん。当時、周りにはいろんな大人たちがいましたが、彼らの気持ちは、大人になった今でも分からないままです。この本を読んで、可愛げなかった小学生時分の心持ちを思い出しました。