- 本 ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101339184
感想・レビュー・書評
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家にインコがいるから小鳥ちゃんに感情移入して読んでしまった。写真立てを倒す可愛い小鳥ちゃん。やきもち焼きな小鳥ちゃん。ちょっと切ないのは小鳥ちゃんにはきっと恋心があると解釈したからかな。でも主人公にはガールフレンドがいる。でもそんな生活の主人公が心底羨ましい。私のインコも小鳥ちゃん見たくしゃべりださないかな。
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思えば物語を読むというのは不思議なものです。同じ物語を読んでも感想を語ると見事なくらいに色んな意見が出ます。例えば『なにかが窓ガラスにぶつかった音。ふりむくと、窓枠に小鳥ちゃんがおっこちていた』というような文章を読んでも読んだ人の数だけ頭の中のイメージは違ったものになるはずです。読んだ人のそれまでの経験が頭の中のイメージを変化させるからです。でもそれが小さい子どもだったらどうでしょうか。まだ想像力を働かせることのできない彼ら。物語の出だしからイメージができないとその先を読む気が失せてもしまいかねません。そんな彼らの想像力を助けるために絵本があるのだと思います。絵本の原点が何なのか、色んな説がありますが、12世紀ころに生まれた絵巻物から始まったという説もあります。でもそれらは子どもを対象にしていたとは思えないものです。今でこそ、絵本と聞くと子ども向けと思ってしまいがちですが、絵本ってそもそも子ども向けのものなのでしょうか。
『小鳥ちゃんはいきなりやってきた』から始まるこの作品。これだけだと、その先の展開はいかようにでも想像ができます。でも、『「いやになっちゃう。中途半端な窓のあけ方」不満そうにぴちゅぴちゅ鳴いて、小鳥ちゃんは羽根をひろげて体をぶるぶるっと震わせた』、えっ?小鳥がしゃべった、ファンタジーか何かなのか?と感じる一方で、『バスケットは、ぼくのガールフレンドの忘れものだった。ふたをあけると、ハンカチとティッシュ、口紅と財布と運転免許証が入っている』、とこちらはやけに現実感のある描写です。
『「はぐれちゃった」窓の外をじっとみたまま、小鳥ちゃんはぽつんと言った』という小鳥ちゃん、そして『「小鳥がやってきたんならまき餌がいるわ」ぼくたちは食後のコーヒーをのんでいるところだ』という『ぼく』を中心として、『小鳥ちゃん』と『ぼくの彼女』の三人が絡み合うような絡み合わないような不思議なストーリーが展開します。
恐らく、これだけだと何のことだかさっぱりわからない世界です。でも、この作品には31枚もの挿し絵が描かれています。4ページに1枚という決まったパターンで最初から最後まで続くカラフルな挿し絵。その絵によって、この不思議な存在である『小鳥ちゃん』という存在のイメージが読者に共有されていきます。思えば平仮名がとても多い作品でもあります。これは子ども向けに書かれた絵本なのか?とも感じてしまいます。
でも読めば読むほどに、そんな挿し絵の小鳥が、文章に出てくる小鳥と同じなのかという妙な違和感が湧き起こります。『はぐれてしまった仲間に会える見込みはあるのかな』『ひどい、でていけって言うの?』『ちがうよ。そんなことは言ってない』『でていけってって言うのね。でていけって言うのね』ぼくと小鳥のこの会話だけだと、これはもう普通の男女の会話そのものです。物語のイメージを読者にわかりやすくしようとする挿し絵が逆に理解を混乱させてしまう不思議な世界観が描かれていきます。
挿し絵だけ見ていると子ども向けの絵本といってもいいような雰囲気のこの作品。でも一方で、文章ではぼくと小鳥と彼女の三角関係が描かれているようにも感じる不思議感。基本的に平易で平仮名の多い読みやすい文章に突然登場する『鉄の枠をはめた窓は把手つきの押し上げ式』、『小鳥ちゃんのお父さんは厭世的』、『「猫に頭蓋骨を砕かれて」非業の死をとげた』といった子ども向けじゃない感を纏った表現が登場する違和感。
これはもう、読む人の色んな経験と価値観によって読後感に相当差が生まれるような作品だと思いました。最後の解説で、角田光代さんが、『小鳥ちゃんに奇妙な共感をいだいてしまう』と書かれているとおり、人でない小鳥が人格を持ったかのような不思議なイメージがこの作品の特徴です。物語自体何が起こるわけでも何が変わるわけでもありません。でもそこから感じられる独特な雰囲気はとても強く印象に残ります。
絵本のように身近において、気軽に何度も読み返してもいい、そんなことを感じたとても不思議な作品でした。 -
仕事場のイケメン男子が、江國さんの作品が好きだというので、いろいろ読んでみた。私は、この本好き。
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短くて字が少なくて可愛い絵も多くて読みやすいのに、何だかずっとどこか不快感があった。
水漏れのあとに小鳥ちゃんを見たシーンにはぎょっとした。
私は多分小鳥ちゃんのような何か(人かもしれないし、人の感情のようなものかもしれないし、何かの現象かもしれない)がとても嫌いなんだと思う。
嫌いなんだけど、どこか同情の気持ちも湧くし、上手く言葉にできないけれど、そんな本だった。
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ある日突然ぼくの窓辺にやってきた小鳥ちゃん。
ときどきやってくるガールフレンドと、小鳥ちゃんとの穏やかでキラキラした日々。
小鳥ちゃんの見せるちょっとした嫉妬や、わがままや、好奇心にどきどきしっぱなしで、私もこの小鳥ちゃんが、大好きになってしまいました。 -
ひさしぶりに読み返しました。
それぞれ性格が大きく違う小鳥ちゃんとぼくと彼女。でも不思議なことに読んでいると3人それぞれに自分と似たところを見つけて共感していきます。可愛くて少し寂しくなるお話。 -
江國香織の本には自由奔放で開放的ででもどことなく寂しそうな女性がでてきますね
小鳥ちゃんもそんな感じに思えました
彼女がいるからただただ小鳥ちゃんとの生活を微笑ましいだけに思えなくなってしまいます
冬が好きになるような本でした -
小鳥ちゃんのラム酒のかかったアイスクリームが好きなところと少しお節介なところが好きです。こんな小鳥が自分の家に来てくれたらなぁ。
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不思議な世界に迷い込んでしまった。全てを受け入れてしまう僕、わがまま放題だけど打たれ弱く繊細な小鳥ちゃん、意識高い系(この表現が正確かはわからない)の彼女の3人の日常のお話。
著者プロフィール
江國香織の作品





