神様のボート (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339191

作品紹介・あらすじ

昔、ママは、骨ごと溶けるような恋をし、その結果あたしが生まれた。"私の宝物は三つ。ピアノ。あのひと。そしてあなたよ草子"。必ず戻るといって消えたパパを待ってママとあたしは引越しを繰り返す。"私はあのひとのいない場所にはなじむわけにいかないの""神様のボートにのってしまったから"-恋愛の静かな狂気に囚われた母葉子と、その傍らで成長していく娘草子の遙かな旅の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 見えない神様の存在を本当に信じつづける宗教的な愛、というのがしっくりきた。でも縛られてるように見えず、誰よりもかなしみを持たず自由なように見える不思議。

    怖くない、ということが自由?水色が透ける曇り空のイメージがある小説。

    ラストが美しすぎて泣いてしまう。どっちの結果なのか分からないけれど、どっちの世界であっても葉子が神様に逢えていると信じたい。

    好きすぎる文章が多すぎる!
    「すぎたことはみんな箱の中に入ってしまうから、絶対になくす心配がないの。すてきでしょう?」

    「あのひとの目をみたら、誰にだってわかると思う。信じなくちゃいけないということが。たとえそれが叶えられない約束でも、私は生涯あのひとを疑ったりしないだろう」

    「一度出会ったら、人は人を失わない」

    「言葉は危険なのだとママは言う。言葉で心に触られたと感じたら、心の、それまで誰にも触られたことのない場所に触られたと感じてしまったら、それはもう「アウト」なのだそうだ。」




  • 2024.3.20 読了

    江國香織さんはずいぶん昔に『きらきらひかる』を読んだことがあって2作目になる。
    あの作品の主人公も独特な生き方を選んだどこか不安定な女性だったけどなぜだか魅力的な生き方にも見えたことを覚えている。
    『神様のボート』の葉子も同じく。
    常に自由を求めて生きているはずなのに─自由と不自由はよく似ていて、ときどき私には区別がつかなくなる─
    彼女のひと処に留まらない生き方は羨ましくもあるけれど自由を得ると同時に大きな不自由さを負うとわかっているから容易には選択できない。
    だからこそ魅力的に映るのかなと思う。
    最後はどうなんだろう…あれは葉子にとって幸せな終末だったんだろうか。

  • 葉子さんのようないつまでも少女性があって、だけど色気のある女性が好きすぎる。やっていることは、とんでも母親なのに、魅力的にみせてしまうのが江國さんの凄さ。

  • 江國さんの小説に出てくる人たちの常識や世間やルールから自由な生き方が、読んでいる私の心も解き放って満たしてくれます

    「空は心おきなく晴れていて、何ひとつ心配なことはなかった。」

    こうしなきゃいけない、こうあるべきだ、そんなことにとらわれないで生きてみたい。
    そんなふうにいられたらいいのにな。

  • 江國香織さんの本の中で1番好きな小説。
    シングルマザーの葉子と娘の草子の物語。
    してはいけない恋をして、いろんなものを失って、でも、生まれてきた最愛の人の子供と、何とか生きている葉子。
    でも、葉子はしてはいけない恋であったことを、自分では決して認めないのだ。

    そんな母のもとで、成長していく草子。
    いろんなことが、ほかの子の家とは違う。
    そのことを感じながら、少しずつ自我が芽生えていく草子。

    不器用にしか生きられない葉子、どうしてそうなんだろう、って思うけど、でも、真っ直ぐに生きている葉子に、そんなにも人を好きになれる葉子に、私は多分憧れているのだ。

  • 葉子と草子、母と娘の視点が交互に移り変わりながら、流れる時間を感じる本書。
    有限なはずの時間を無限に感じ、どこまでも遠くまで羽ばたいていけるような気がした。
    それは何者にも囚われない自由さに見えて、実は気づかないうちにがんじ絡めになっている不自由さなのだと。
    それでも、そこに居心地の良さを感じ求めるのか、あるいは焦燥感を覚えて違う世界へ踏み出すのか、どちらに舵をきるのか決めるのは自分なんろう。

  • 昔、溶けるような恋をした。娘の草子が生まれた。
    必ず帰ると言って消えたあの人を待って、葉子は娘と旅を続ける。
    恋する葉子と、娘の草子の想いが、交互に交錯して進行していく。
    どこに向かおうとしているのか。狂おしいくらいに恋をして、ずっとその世界に生きていく。狂気の物語とあとがきにありましたが、それでいて、ポエムのようでもあります。

  • 大人と子供のちょうど中間にいるわたしにはちょうどよくて、愛に神的に縋り付く葉子の美しさと次第に成長する草子の気持ちのどちらにも心を置くことができた
    葉子は自由で理想的な存在だけど、その自由さえも自らで望んだものではないのだからせつなくて、終盤はかなしかった

    地域と季節の変化は美しい言葉で記されていて、それでいてもこの作品は万人受けするものではないだろうな、とおもった
    みんなにすすめるにはあまりにも破滅的で、『神様』の存在を信じる魅力的な、宗教的な愛だから

  • 町の描写等はとても素敵だったけど母親に全く感情移入できなかった、、、
    母親としてちゃんと子どもを愛してるは素晴らしいけれど。。
    子どもがいい子で良かった。

  • 30代のお母さんと娘の物語。中盤にやっと内容のわかる部分が出てくる。ずーっと単調に少しづつ娘が成長していく。やがて娘は旅ガラスの生活を嫌がり寮のある高校に入る。小さい娘にも30代の母にも感情移入出来ず、読むのがしんどかった。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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