神様のボート (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 1208
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339191

作品紹介・あらすじ

昔、ママは、骨ごと溶けるような恋をし、その結果あたしが生まれた。"私の宝物は三つ。ピアノ。あのひと。そしてあなたよ草子"。必ず戻るといって消えたパパを待ってママとあたしは引越しを繰り返す。"私はあのひとのいない場所にはなじむわけにいかないの""神様のボートにのってしまったから"-恋愛の静かな狂気に囚われた母葉子と、その傍らで成長していく娘草子の遙かな旅の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 成長と共に変わっていってしまう子・草子と、ずっと変わることができない母・葉子の物語。
    読んでいてずっと、なんだか悲しかった。変わってしまうことも、変われないことも、どちらも悲しいんだと思った。

  • 狂気といえるほどに愛を信じ続ける母親、葉子。そしてそんな母親に対する嫌悪感と愛情の間で悩み、やがてはそんな母のもとから脱皮して現実を生きだした娘、草子。
    いずれにおいてもこの親子は似ていて、 痛々しいほど自分をごまかせない人たちだと思った。
    母と娘のきっても切れない関係性がひしひしと伝わる読み応えある作品。

  • 江國さんは恋愛小説と言葉選びの名手だが、これは、狂気にも似た恋に落ちた大人の女性とその娘という二つの視点が面白かった。岸辺というゴールに辿り着けない神様のボート。でも、岸辺って、何だろう。江國さんの描く恋愛は、狂気でもあり、虚無でもあり、温度なら冷たいはずなのに、触れたら火傷しそうな激しさがある。

  • ちゃんと、もっている本を全て読み返して、積読されてる分も読もうと思いたち、それならば簡単な感想や評価をつけていったほうがあとあと楽しそうだから記録を始める。すきなときにできたらいい。

    昔読んだことがあると思っていた。江國香織はほとんど読んだと思っていたけれど読んでいなかった。伊豆でのシーン、最後になるにつれて娘のも母のも気持ちがわかって、草子が小さいころと対比してしまって辛くて涙が出そうになった。

    最後のシーンは死んでしまっているようにも見えるし、本当に再開したように見える。安心したけれどちょっとずるい、その終わり方は、という気持ちになってしまった。
    どちらとも読み取れるから、どうなったんだろうという気持ちが宙ぶらりんのまま
    でもなんども読みたいし、だいすきな作品の1つになりました。

  • 江國さんの言葉が大好き♡
    静かな狂気的な話なのにこの作品を受け入れてしまう。
    江國さんの作品を読むとチョコレートが食べたくなる♡
    リンツ、ノイハウス買お!
    フレアスカート履こ!

  • とても昔に読んだ本ですが印象的な本で。何が印象的だったかというと、自分はこの本を読んで、江國さんの、これは狂気の物語ですというのをとても感じ、そこが好きで、感動して知り合いに貸したら、全く違う感想がかえってきたところです。知り合いは、ママ、パパとまた会えてよかったね、と言ってましたが、マジかよ全然ちがーう!ってなりました。
    江國さんの本でこの本が一番好きです。娘は健全に現実世界をたくましく成長していく。ママはもう現実を生きているのかもわからない…もしかして…もう狂気の世界にしかいないのかもしれない?コントラストが見事です。

  • 秀逸なラスト!
    結局会えたのか、なんども、何年も、考えるけれどわからない。どちらだといいのかもわからない。わたしだったら会って数日一緒に過ごしてまた別れたい、かな。ボートに乗るということは、そういうことではないかな。




    理由は違うけれど、葉子たちのように引っ越しばかりしている。明日はあそこに行こうと思った場所が昔住んでいたところのことだったり、ふと浮かんだ風景がいつのことかわからなかったり、記憶は時々混乱を起こす。私のホームはどこだろうと前は悩んだりもしたけれど、最近はすっかり慣れて、今いる場所がわたしの居場所だと思っている。結局どこにいても同じなのだ。葉子たちは今どこにいるのかなと同志のようにときどき考える。

  • 2度目の読了。
    1度目は、信じていれば報われるんだ!ってこのストーリー自体に励ましてもらった記憶。
    2度目の今回は、少し怖かった。
    思考回路がぜんぶ「あのひと」経由の葉子。
    どれだけ草子が現実を突き出しても、その思考は揺らがない。信じて疑わない。頑なな信念と閉鎖的な思考がこわくなった。
    狂気の小説、一番危険な小説……まさに。

    それでもやっぱり大好きな小説。

  • 言葉がどれも怖いくらいに綺麗
    きっと一生大切に何度も読み続けていくのだろうと思える1冊

    p.20・21
    箱のなか、はママとあたしだけに通じる言い方で、もうすぎたこと、という意味だ。
    どんないいことも、たのしいことも、すぎてしまえばかえってこない。
    -すぎたことはみんな箱の中に入ってしまうから、絶対になくす心配がないの。すてきでしょう?

    p.63
    「あなたのパパというひとは、よりそって眠ってくれるだけで、たちまちママを幸福の果てに連れていってしまった。いつでも」
    「あのひとのそばで眠れれば、なにもこわくなかった」

    p.92
    草子に望むことはなにもない。私の人生に与えられた三つ目の宝物である草子。草子は健康で聡明で、申し分のない子だ。だからあとはただ、自分の体と頭で注意深く感じて生きてほしい。いつも。あのひとのように。

    p.136
    昔、あたしのママは、骨ごと溶けるような恋をした。骨ごと溶けるような恋、というのがどういうものであるにせよ、その結果あたしが生まれたのだ。

    p.144
    たとえばあのひとと一緒にいることはできなくても、あのひとがここにいたらと想像することはできる。あのひとがいたら何と言うか、あのひとがいたらどうするか。それだけで私はずいぶんたすけられてきた。それだけで私は勇気がわいて、ひとりでそれをすることができた。

    p.153
    いまここにパパがいればいいのに。ママの言う「天国みたいに居心地のいい腕の中」にあたしをいれてくれればいいのに。「ものすごくきれいな顔」でわらってくれればいいのに。「ママの頬骨にぴったり」の肩の下のくぼみを、あたしにもちょっとかしてくれればいいのに。

    p.158 p.159
    -どうして箱に入れなきゃいけないの?どうして引っ越しばかりなの?ここでパパを待っていちゃいけないの?
    -どこかに馴染んでしまったら、もうあのひとに会えないような気がするの。
    -馴染まなければ、パパに会えるの?ママは本気でそう思ってるの? ・こういうとき、あのひとならどうするだろう。
    ・草子を妊娠したことがわかったとき、私はすこしも迷わなかった。私の人生に与えられた三つ目の宝物だとすぐにわかった。三つ目の、そして最大の。

    p.186 p.187
    もういかなくちゃ。
    あのひとがそう思ったことが私にわかり、私にわかったことがあのひとにわかった。
    あのひとの目に悲しみの影がさした。わたしもかなしかった。

    p.215
    言葉で心に触れられたと感じたら、心の、それまで誰にも触られたことのない場所に触られたと感じてしまったら、それはもう「アウト」なのだそうだ。
    p.276
    言葉をみつけるまでに一年はかかりそうだった。安心して泣くまでにもう一年、首に腕をまわして抱きしめるには、さらにたぶん一年かかる。

  • 読んでいて胸が痛くなる物語がある。
    「神様のボート」はそんな物語だ。
    まともとは言えないほど純粋で一途な葉子の想い。
    母を愛し、母をいたわり、母を守り、母に従う娘・草子の思い。
    人を愛するということは、こんなにも辛いことなのだろうか。
    葉子自身は辛さを感じてはいない。
    何の保証もない約束を、ただ信じて生きている。
    その約束のためだけに生きている。
    だが、一歩離れたところから葉子を見ている読み手である私が感じるのは辛さだ。
    切なさだ。哀しみだ。

    成長するにしたがい、草子もまた同じように辛さを感じるようになる。
    「ママの世界にずっと住んでいられなくて」
    草子は母・葉子が住む夢のような、ある種狂気に彩られた蜃気楼のような世界に住むことをある日拒む。
    葉子の世界は葉子だけのもので、そこには草子の居場所はないと知っていたから。
    気がつくと草子寄りの視点で読んでいることに気づく。
    葉子の何気ない台詞や振る舞いにちょっとした苛立ちを感じたり、身勝手さに腹が立ったりもした。
    絹のようなさらりと渇いた手触りの物語は、痛みとともに妙な幸福感が読み終えた後に残る。
    何年か先、再びこの物語を読んでみたい。
    きっとまた違った思いで読むことができそうな気がする。

    余談だけれど、「世界一難しい恋」というドラマがある。
    脚本を書いている人はきっと江國さんのファンなんだろうなと。
    ヒロイン役がお薦めの本として「神様のボート」を差し出したり、お風呂あがりの牛乳をやたらと好きだったりするからだ。
    葉子自身は牛乳が嫌いなくせに、お風呂あがりには草子に牛乳を飲ませるのがきまりごとのようになっていた。
    ドラマでも牛乳嫌いな主人公と牛乳が大好きなヒロインとの間で、感情の変化を表現する大切なアイテムのひとつになっていた。
    小説のエピソードが、かたちを変えてドラマに登場するのは面白い。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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