すみれの花の砂糖づけ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339207

感想・レビュー・書評

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  • この表題がピタリと当てはまるくらいに、甘くて濃厚な香りが匂い立つような詩集。

    江國さんの恋愛対象の男性に対する気持ちがストレートに伝わってきて、正直戸惑った。
    こんなにも男性にベッタリなんて。
    「わたし」ではなく「あたし」が似合う女性。
    私が相手の男性なら、江國さんの真っ直ぐさにちょっと引いて逃げ出したくなるな。
    江國さんは疲れないのだろうか、と要らぬ心配をしたりして。
    夕暮れのキスは素敵だけれど、カニを食べながらのキスは嫌だな。

    『なにもない場所に』『無題』『言葉はいつもあたしをいさましくする』が好き。

    『無題』
    どっちみち
    百年たてば
    誰もいない
    あたしもあなたも
    あのひとも

    うん、確かにね。
    最後の”あのひと”って…”あなた”の奥さんだったりしてね。

  • 詩集の感想にかえて、なるべくこちらも詩で返すようにしているのだけれど、この詩集の世界観には、なんというか、どうしても入りこむ隙間がない。

    たいていの詩集では、そこで使われている言葉は、他者のもの、つまりわたしのものでもあるから、わたしにも浸透してきて、それに、かならず何らかの、詩の卵みたいなイメージを喚起されるから、くだんの詩人が使っている言葉をちょっと拝借して、詩にする。

    江國香織という人がパズルとするなら、その人の(愛玩している。あるいは認可された)部品である言葉が隙間なく組み合ってひとつの詩をなしてはばらばらになり、ふたたび組み合っては別の詩をなす。読みながらそういうイメージの運動を感じていた。

    ともあれ、言葉があまりにストレートにこちらに飛んでくるので、まごついてしまう。それに対してこちらもまっすぐに打ち返す自信がない。

    そもそもこれは詩なのだろうか。いやでも、詩と宣言すれば詩なのだろう。とかいろいろ考えさせられた。いずれにしろそんなに好きじゃない。
    江國香織はやっぱり小説のほうがいい。『去年の雪』なんて、すごくよかった。

  • 江國さんの詩集を読んだらこちらも読んでみたくなり、再読してみました。
    タイトルからして素敵ですよね。
    実はこの本、あまりに装丁が可愛らしいので、単行本と文庫の両方持っています。

    私は、精神がまだお子さまなのか、よいと思った詩は、
    「遊園地」
    「錯覚だ、と、思おうとするのに」
    「アメリカンバーのさくらんぼ」
    「五時の鐘」
    「ぐわりとさびしくなるでしょう」
    「あたしにお説教をするのはやめて」
    などで、大人の女性の詩がないですね。

    江國さんは童話や小説も素敵ですが、詩が一番天才的に上手いと思います。

  • 甘い甘い砂糖菓子みたいな詩集。
    だけど時々どきっとさせられる鋭いことばたち。
    愛情も孤独もいっぱい胸に抱えながら、だれのものにもならない芯の強さがとても好きです。

  • 久しぶりに詩集を読みたくなり。
    読書は得てして皆そうだけど、特に詩は心のざわつきがあると読み進められない、というか。心を凪の状態にして言葉を楽しみたいと思った。それがこのご時世なかなか難しい。瞑想の訓練になりそう。

    この詩集の中では「無題」が一番印象に残った。

    どっちみち
    百年たてば
    誰もいない
    あたしもあなたも
    あのひとも

  • 小説も好きだけど、詩が大好きです。

    【すみれの花の砂糖づけ】の装丁とタイトルに惹かれて手に取りました。

    可愛らしく甘いイメージでしたが…

    なんとも人間らしく、女そのもので、大人だけど子どもの部分が残ってて、生と性、そして夫婦愛、不倫愛、家族愛…が、リアルでした。

    なかでも、心に刺さったのは
    【時間】【あたしはリップクリームになって】【無題】【あたし、コウモリになって】

    やっぱり装丁のイメージ通り可愛らしくて、ちょっと切ないのがピッタリかもしれないですね。。。

    【願い】は、過去に引き戻されて胸が苦しくなりましたよ。まさに砂糖づけですね!



  • なんかちょっと違う、私は小さな女の子の感性が読みたかったのよ。

  • 装丁と題名に惹かれて読んだ。
    なんと恋の多い女の子だこと!って感じ。

    私はあまり遊び回ったり、キケンな恋をするのは苦手なタチなので、あまり共感はできなかったかな。
    純粋無垢な少女の詩集だと思ってページを捲ったら、色恋に奔放なくせして、多くの愛にうんざりしちゃってる少女の詩集だった。ストレートで素直。

    もともと江國香織さんの作品は『号泣する準備はできていた』だけ読んだことがあって、それも大人の恋愛って感じで自分にすっぽりハマらなかったんだけど、詩集ならハマるかも!と思って読んだら、同じテイストのものだった。

    勝手な考察だけど、ここまで不倫とか浮気とか、どろどろした恋模様を美しく描くのって、ましてや詩にまでしてしまうのって、彼女がそういう経験をしたことがあって、それを肯定したいのかな、と思う。ある意味彼女ほど女性らしい人っていないかもって思う。違っていたらごめんなさい。

    私がもっと大人になったら、理解できるのでしょうか。
    時間を置いて読んで、自分の変化を確認したい。

  • この作品はずっと自分の手元に置いておいてふとした時や年を重ねた時に読み返したい。その時その時で読んだ後の感じ方が違うんだろうな〜〜楽しみだな〜〜。

  • 表紙、文字の色、書体がすごくいい。
    見た目に惹かれて買ってしまいました。
    乙女心をくすぐります。

    何年か経ってこの詩集を読み返したら、「わたし、大学4年のクリスマスの日にこれ買ってひとりでお酒を飲みながら、おとなな気分に浸って読んでたなーうわー(照)」とか言って思い出すのでしょうかね。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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