東京タワー (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 8660
感想 : 765
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339214

作品紹介・あらすじ

人妻と関係を持つ二人の大学生が、世界の全てだと考えて、彼女と過ごせる時を途方もなく幸福だと感じる人と、本名の彼女がいます。それでも人妻との関係を辞められない人が、会えない時に彼女の好きな音楽や本を読み聴きしています。
19歳の大学生と人妻が冷静で朗らかです。正直に生きていると、楽しいことがあるという東京タワーの物語です。

感想・レビュー・書評

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  • そんなに面白い物語ではないと思いながらも、結局最後まで読んでしまった。江國さんの文章がいい。

    詩史さんの、
    一緒に暮らしたいひとと一緒に生きたいひとは違うという言葉がいつまでも頭に残っている。
    透の視点で話を読んでいるからか、つかみどのろのない詩史さんのことが素敵に思えた。

  • 2人は歳上の人妻と不倫中という点では共通しているけど、溺れ方は対照的
    どんな結末になるのやらと想像しながら読んだ割にはバッサリと終わった
    まあそうかとも思った
    恋と欲に終わりなんて無いですし
    でも透のその後は気になる

  • この手の恋愛小説は初めてでした。登場人物の相手に対する恋愛感情が社会的によしとされるかと言われるとそうではないですが、それぞれが相手に抱く気持ちの中にその人が現れている感じが好きです。

  • 登場人物がそれぞれ魅力的。
    本全体としてひんやりしててその空気感が好きな1冊。
    何回読んでも飽きひんのやけど、何故か結末が印象に残らない。不思議。
    多分ストーリーより空気を味わっているからやと思う。それでいいんちゃうかなー…

  • 恋はするものじゃなく、おちるものだ。

    年上の詩史と過ごす甘くゆるやかなひと時―大学生の透の世界は満ちたりていた。一方、透の親友である耕二は女子大生の恋人がいながらも、蠱惑的な喜美子との肉体関係に夢中だった。夫がいる年上の女性と大学生の少年。東京タワーが見守る街で、二組の恋人たちが繰り広げる恋愛を描く。

    私が本棚にずっと置いておきたい一冊。夜の間だけ暗闇にぼんやり浮かび上がる東京タワーの灯りのように、幻想的で儚い二組の恋人たちの物語が綴られている。詩史も喜美子も夫がいるのだが不倫の泥沼感は全く感じられず、むしろ純粋な感情(喜美子と耕二は感情と言うより欲望)で恋をしている。夫がいるが故にどちらの恋人たちも、いつかこの関係に終わりが来ることを感じながら寄り添っている。物語は情熱的な一方、終末の寂しさを常に漂わせている。さらに著者の静かな文章と絶妙な言葉選びで、ため息をついてしまうくらいに美しい物語に仕上がっていると思う。

    「恋はするものじゃなく、おちるものだ」という言葉の「おちる」は「堕ちる」にも通じているように思う。透も耕二も、不覚にも恋愛にどっぷりと浸かっていく。有り余る時間は学生の特権である。しかし透にとって詩史が全てであり、その有り余る時間で部屋にこもり、彼女からの電話一本をひたすら待ち続ける。詩史がいない場所には興味を持てず、どこにいても何をしていても詩史のことを考えてしまう。透の世界が徐々に詩史に染まっていく様が、恋愛の静かな狂気を感じさせる。そして読者もまた、東京タワーの下で繰り広げられる恋愛模様に惹き込まれ、心を奪われていくだろう。

    • 大野弘紀さん
      このレビューを読んで、読んでみたくなりました。
      このレビューを読んで、読んでみたくなりました。
      2019/01/16
  • 詩史からではないかもしれないと思うのを忘れて電話をとった一節がとても好き。この一文だけで狂おしいほど恋していることが伝わる。

  • 人間の生々しい感じがする。人と人とは愛するとは、考えさせられる作品の一つ。


  • 先日久々に手にした江國作品がかなり良かったのでまたも未読の作品を選び取ってしまった。

    2人の男子学生、透と耕二。
    真逆のようにも思えるふたりの共通点は、共にひとまわり以上歳上の女性と恋愛をしていること。しかも既婚の。
    しかし一途な透とは異なり、耕二は大学生の彼女がいながら、歳上の恋人・喜美子と割り切った関係を築いている。

    最近は意図せず不倫ものや、セックスばかりしている小説ばかり手に取ってしまい、そのどれもが殆ど美しい文章たちなんだけど、なんだか疲れてしまっている。
    そういうわけで、本作はかなりスローペースでの読書となってしまった。

    似たようで似ていない2人。
    透と詩史は可憐で、残酷にも艶やかに映ったけれど、耕二と喜美子はなんだか醜く思えた。
    何故なのだろう。
    やはり江國さんの作品には、優雅で流れるような時間を過ごすキャラクターに期待しており、激情型の喜美子は見てられなさを感じたからかもしれない。

    この人の作品は、女性が主人公の方が良さが出ますね。

  • 雨のかおりが、湿度が、嫌な感じのせずひんやりと物語を漂っている。

    詩史がそう望むなら、たとえ月が二つでてもおどろかない。
    少年らしいあどけなさがあって、それでいて大人のように全身で愛しているのだなと感じた。
    詩史と透がほんとうに好き。
    江國香織さんの作品を読むと、ひとりでいたいと思うし、人のことを胸が捩れるほど愛したいとも思う。

  • 半熟卵をからめた焼きアスパラガス!
    大人になったら食べたいと思っていたもの。

    詩史さんの台詞がたくさん染みついて、
    今の私は、大人のふりして生きている。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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