- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101339221
感想・レビュー・書評
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さらさらと読める。そのときに私の心境にマッチしていたのか、全てがすっと入ってくる。
全てを投げ出したくなったときでも読み進められる本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
好きなひとに愛されることは「雨のように降り注ぐずぶ濡れになるような贅沢」で、そのひとを失うことは「ねじ切れてしまいそうな淋しさ」。ぴったりとくる感情表現とリズムカルな文章に、読了後は五感が冴えわたる。日常が色づく。
言葉にひとつも嘘がなくて、すこしもずるくなくて、運命を静かに受け入れるヒロインたちは、反面教師だなと思うけれど、そのたった一瞬の感情に集中する生き方が、やっぱりすごく魅力的。
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表題作が一番好き。
好きな人の描写がすごく好き。
江國さんの作品は好きなもので溢れてる。 -
江國さんの短編集。読みやすい。熱帯夜が個人的には好きだが、どれもさらっと、繊細に描かれている。江國さんらしい一冊。
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江國さんの短編集。読みやすいです。熱帯夜が個人的に好きですが、江國さんらしく、どれもさらっと繊細に描かれております。
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この本を読むと、女性になれるような気がした。
どことなく色っぽいというか艶っぽい、湿度の高い本。
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直木賞受賞作品。「これは、私だと思う。」と、解説で光野桃が言っていたとおり。全12篇、魔法にかけられたように、五感で女たちを感じました。
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一番好きな作家。言葉の一つ一つが秀逸。皮肉めいていて、けれど真実を映していて、心に響いて深く沈んでいく感じ。恋の物語だけれど、これは人生の物語たち。淋しさ、孤独、頼りないぐらいまっすぐな純情。
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読んでから日が経ってしまったけど、久々のエクニカ。
これが直木賞か~。ふーん、と思った。悪い意味ではなくって、もっとエンタメっぽいのが直木賞だと思ったから。
12コの短編は、全部「ほんとは泣くはずだった気がするけど、涙を出しそびれた気持ち」たち。
何かきっかけがないと、涙って流しそびれる。
淡々と過ぎて行って、涙は身体にたまる。
涙は溜まったまま、生活はつづく。
相変わらずのタンタンっぷり。
なんだか、最近エクニカが自分にぴったりしてきた。
自分が変わったのか、エクニカが変わったのか。
まずは、自分が変わったな。
仕方のないことは仕方のないことってわかってきた。
エクニカもこの小説では気取った部分が少ない。
イイ感じの生活ディテールとか、甘ったるいのとかが、ない。
甘ったるいのは、レズ(orバイ)にして描いている。
そういえば、短編のほうがおもしろい作家なのかも。
女子高生がこれを読んでも、面白いとは思えないかもしれぬ。
だがしかし、ぜひ、少し成長してから読んでほしい。
男は、一生わからんだろうから読までよし。 -
2014.10.9読了
第130回直木賞受賞作品。
真の美に触れたい。
根源的な欲求がある。
でもそれは、家族を持ち、サービス業に就いた今の自分にとって、見果てぬ贅沢な願いでしかなくなったと思っていた。
なぜなら、そんなものに手を伸ばすには、特別な才能でもない限り、全てを犠牲にする覚悟、つまり馬鹿みたいに膨大な、 無限の労力と無為の時間が必要だと思ったからだ。
そんな思い込みに押し潰されそうになって息苦しさを感じていたとき、図書館で本書が目にとまり、読み進むにつれ、厳寒の中で飲む缶コーヒーのようにほっこりしたのだ。
多少、古さを感じるところはある。
10年以上前の作品なのだから仕方ない。この10年の諸々の変わりようは、小説より奇なりを地でいくものだ。
読んでいて深く思い知ったのは、人間の感情の複雑さは、定型に当てはめられるものではなく極彩色に色づいているのであり、自分にとっての究極の美は、視覚的なものではなく、そんな心の有り様なのだということだ。
《収録作品》 (全12編)
前進、もしくは前進のように思われるもの
じゃこじゃこのビスケット
熱帯夜
煙草配りガール
溝
こまつま
洋一も来られればよかったのにね
住宅地
どこでもない場所
手
号泣する準備はできていた
そこなう
[気になった文書箇所抜き出し]
・ゆうべ、夫が猫を捨ててしまったの。
・言葉にした瞬間に、私の言いたかったこと ー 言ってみようとしたこと、どうでもいい、あるいはどうしようもなかった日々のこと ー とは違う何かになってしまう。
・それは誰かの抜け殻に見えた。あるいは残骸に。空っぽで冷たいのに、生々しく体温や気配を想像させるそれは、本来の持ち主のそばを離れて困惑しているように見えた。ほとんど恥じ入っているように。
「私たち一度は愛しあったのに、不思議ねぇ。もう全然何にも感じない」
・背筋をのばしてエスカレーターに乗る。誰かに見られてでもいるみたいに気取って、この場にふさわしいと自分の思う、毅然とした態度で。周囲に馴染んでしまわないよう急ぎ足で、地階に向かってまっすぐに降りていく。
・私は独身女のように自由で、既婚女のように孤独だ。
・認めたくはなかったが、真理子は自分を、いつか見た老女とおなじだと思った。
・「じゃああたしは、どこでもない場所に」
・自由とは、それ以上失うもののない孤独な状態のことだ。
・近所の女の人たちは、私の母も含め、みんな彼女を嫌っていた。だらしのない女だと言い合っていた。私にはそれが恐かったのだが、それというのが陰口なのか、ネグリジェの女なのか、自分の母親なのか、わからない。わからないというより、上手く区別がつけられないのだ。
著者のあとがきもいい。
かつてあった物たちと、そのあともあり続けなければならない物たちの、短編集になっているといいです。 -
泣ければよかったのかな
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最近論理でがっちりかためられたミステリばっかり読んでいたので、久しぶりにこういう感情主義的な女性作家の小説を読むとなんだかもの足りないような気がしてしまう。というか江國香織がタイプでないのかもしれないと思った。
「私たちは、一切の策を弄さずに愛し合いたかった。また、もしいつかどちらかが気持ちを変えたら、無条件に赦して手を離せると信じたかった」(p.201) -
短編集。
生きていると感じる諦めや、なんとなく感じるさみしさがかたちを変えて表現されている。
読み進めると、みんな、心の奥でこういう気持ちを感じながら生きているのかな、と思わされ、ちょっと安堵のような気持ちも起こった。
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昔の恋人を思い出さなくてはいけないほど恋愛が生活に変質してしまう様が印象的だった。夫だとしても生身の人間は変わってしまう。自分自身さえ。そして好きだった人は何時までも記憶として保たれ続ける。結婚してもしなくても心は自由で孤独だ。女性同士の恋を書いた「熱帯夜」はこの短編集の中でも少し明るい袋小路だった。著者の書く女性は男性より繊細で豪胆で憧れる。
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「前進、もしくは前進のように思われるもの」
タイトル名が好き。大森靖子さんの流星ヘブンという歌の「死ぬことが人生において唯一の結果なのだから」という歌詞を思い出した。前進なのか後退なのか誰にも分からないまま、ただある視点から見れば前進であり違う視点から見れば後退でもあるだけであり、それを繰り返して人は一生を終えるだけなのだと思う。それならば、いつまでも少女のまま、自分のやりたいことに素直でい続けるべきだ。
「じゃこじゃこのビスケット」
p42「「17歳のとき、はじめて男の子とデートをしたの」でも、それは、そう言葉にした瞬間に、私の言いたかったこととは違う何かになってしまう。」
信念にも近いような変な思い込み固定概念、楽しくなかった日々、美しくなかった思い出、行きだけ手を繋いだこと、そのあとは1回も遊ばなかったこと、重く湿った砂が心地よく思えたこと、それは全部自分だけのその時たしかにあった、誰にも分からない分かられたくない、ただその時の記憶である。私にもあなたにも知らない人にもある、ただその時の記憶である。
「熱帯夜」
愛においても一点に留まることができないと分かっているからこそ幸せであればあるほど不安になる。独りになる。いつか別れるかもしれないし別れないかもしれないし、未来は分からないからこそ美しいのではないか。でもそんなの綺麗事であって、本当ははやく私たち以外の全員を皆殺しにしたいし、思うだけならそれこそ愛だったりする。
「煙草配りガール」
今愛してる人必要としてる人会いたい人、1年後にはその人たちを忘れ、今はまだ出会ってない誰かに愛焦がれているの分かる。
「溝」
裕樹にイライラした。実家に奥さんを連れて行くとき、安心感や懐かしさに浸るより先にまず奥さんへ気遣いするべきで旦那が唯一味方にならなければいけないところでぼーっとしているところが最悪だった。私は物心ついた時からずっと、好きな人と結婚しただけなのに家族同士の結婚ってなる風潮が苦手。小さい頃おばあちゃん同士が挨拶してる所を見るのにも違和感を感じてた。違う環境で生きてきた人達が急に家族とか無理があり過ぎて笑っちゃうよ。形だけとか表面だけ取り繕ってるのも、取り繕う意味もないのになあって疑問。否定するのは良くないかもしれないけれど、私が大切に思ってる人のことを相手が確実に大切に思えるとは限らないし、相手が大切に思ってる人を私も確実に大切に思えるとは限らないから。私も私で、細かい事で絶対に許したくないことがあったり(逆にどうでもいい事は本当にどうでもいいなんでもいい)とめんどくさいんだけど。小説の内容に戻ると、でもきっと2人がめちゃくちゃに愛し合ってた時期もあったわけで、ウエットスーツを持ってきてしまう奥さんの狂気的な行動が、私にはあまり狂気的に思えなかった。
洋一もこられればよかったのにね
p180ルイとの情事がもたらしたものは、堰を切ったような記憶だった。自分が誰のものでもなかったころの、恋一つで人生がどうにでもなってしまったころの、本質的な記憶だった。
住宅地
傍から見た幸せや不幸せなんて全く気にしなくて良い事だ。
どこでもない場所
p169そういうことが確かにあったのかもしれないし、勿論、もしかしたら嘘かもしれない。どちらでも同じことだ。
どこでもない場所なんてどこにもないから、どこでもない場所をつくってつくって元の場所に帰り、またどこでもない場所をつくってまた元の場所に帰ってを繰り返して生きていく。
手
予期せぬことにわずらわされることをみんな求めているのかもしれない。
号泣する準備はできていた
p205とてもほんとうとは思えない、と思うくらいかなしい目にあったとき、フィッシュスープをのんだことがある人は強いの。海の底にいる動物たちに護られているんだから、と。
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熱帯夜に出会えてよかった
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ザ・江國ワールド。女性観点で語られる話がほとんどなんだけど、江國香織さんの物語の中の女性ってやっぱりどこか癖がある。でもそれも含め引き込まれていつの間にか話に呑み込まれる…
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「手」「熱帯夜」「どこでもない場所」が特に好きだった。
一作一作に号泣する心構えで本を開いたら、拍子抜け。最初から最後まで、涙は出なかった。
確かに考えてみれば、本当にどうしようもない感情に襲われるとき、胃から食道にかけて何かが急速にこみ上げてくるような感覚があるけれど、涙が出るとは限らない。むしろ首元まで這い上がってきたものを吐き出すことができずに、全身にじわじわと毒が広がるような心地がする。
この本を読みながら、そんな不完全燃焼の想いに何度襲われただろう。手足がビリビリするような、生々しい哀しみがあった。
これまた小説の醍醐味なのだろうけど、分かりにくい表現というか、意図が掴めない描写はかなり多い。ただ「語り尽くされない美しさ」は確かにあるし、ふとした瞬間に、強烈に真理を突く言葉が挟まれるものだから、読んでいて退屈することは決してない。
短編ということもあって、読後の余韻もひとしお。
泣きたい人には不向きだけれど、静かな哀愁を摂取したい人にはたまらない一冊だと思う。 -
記録。
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熱帯夜が一番好き!両思いなのにもっと欲しくなる、読んでて幸せで切なかった
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タイトルに惹かれた。美しい描写!!
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江國香織中毒
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寝る前にひとつずつ読み進めて、この前ようやく読み終えた。
はじめ、私はこの本を長編小説だと思っていて、短編集なことにびっくりして、短編がかなり短い部類の短編なことにもびっくりした。
この本を読み終わったとき(細かく言うと『そこなう』を読み終わったとき)、なにか判別のできない涙が溢れそうになってしまった。
言葉にできない悲しさ、苦しさ、さびしさ、愛しさがつらいくらいに言葉で表されている本。自分の心がつらくねじ切れそうになったとき、この本がそばにいたら、わたしはきっと明日を迎えられるだろうなって思わせてくれる。
好きな短編は『どこでもない場所』『号泣する準備はできていた』『そこなう』。 -
・前進、もしくは前進のように思われるもの
・じゃこじゃこのビスケット
・熱帯夜
・煙草配りガール
・溝
・こまつま
・洋一も来られればよかったのにね
・住宅地
・どこでもない場所
・手
・号泣する準備はできていた
・そこなう
以上、16編。
色々な人物の人生の断片が描かれている短編集。
情景描写・心情描写ともに淡々と描かれてるので、自分の記憶の中の景色を重ねられて、心情を追っていくうちに話が展開していきます。
私は絶対にこの小説の語り手の人物達みたいな人生は送らないだろうな。今まで接してきて「合わない」と感じた人の人生ってこんな感じなのかな。とか思いました。
私にとって現実味はないけど、この小説の中の人物が現実にいてもおかしくない、というか。
私の感覚には合わない部分には、時々我にかえって心の中でツッコミ入れつつも、読みやすかったです。
巻末に付いてる解説は、全然解釈が違ったな。読む人によって感覚が全然違うかも。
「こまつま」が一番好きです。次に「熱帯夜」 -
上手く世界と折り合いを付けながらも、どこか齟齬を抱えて、折り合えない部分を持ってる人達がたくさん出てくる短編集。
12篇ある中で「じゃこじゃこのビスケット」「どこでもない場所」「手」「号泣する準備はできていた」「そこなう」の5作が好き。
特に「手」の最後の「予期せぬことにわずらわされちゃったわよ」という言葉が良い。自分が考えた通りに行かないことが、煩わしいんだけど、反比例してうれしかったんだなー。そういうのいいね。
わかりきってるたけるくんのような存在が羨ましい。 -
あとがきに書かれているように、色とりどりのドロップのような作品集でした。こころがすうすうするお話です。私にとって江國香織は、これから続く重い読書生活に向けてのウォーミングアップ用作家です。自分の心を正しい位置に置いてくれる文章世界。よんでよかった。