ぬるい眠り (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 4447
レビュー : 500
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339238

感想・レビュー・書評

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  • 「嫉妬にしばられてがんじがらめになるのは自分なのだ。」
    「人間はみんな、そこに向かって生きているわけだから」

    そこ、は想像に難くないとは思う。
    この「ぬるい眠り」のいくつかある短篇の中でも「清水夫妻」に衝撃を受けた。

    私は知っている人でも知らない人でも、誰かが死んだということがすごく悲しくて。
    まだ20歳前半なのに、お葬式に行く回数が多くて。

    誰かが死ぬのはいやだ、と思ってしまう。
    朝のニュースや何かに敏感で、通勤電車の中で泣けてきてしまう。
    子どもだなぁ、ガキだなぁと思うけど、止められないんだ。
    大事な人を何人も亡くしたからだと思う。
    出来ればお葬式も行きたくない、のに、お葬式に行くのが趣味の夫婦って。。

    無理だ、理解できない。

    でも、衝撃だった。

    私の知らない世界、行き着くことの出来ない世界かもしれないけど。
    行き着きたくないのかもしれないけど、
    純粋にそんな世界がもしかしたらあるのかもしれない

    と思ってしまった。

    でもやっぱり、人が死ぬのはいやだ。
    殺人も事故も、病気もいやだ。

    知ってる人はもちろんいやだと思っていたけど、
    知らない人もいやです。
    人は、動物は死ぬんだって分かっているけど。死なない人はいないんだってことも、知っているはずなんだけど。
    純粋な死をまだ理解出来ていないのかな。。

  • 江國香織先生の短編集。内容は恋愛中心ですが、不倫だったりなんだったりで、変わった形が多いです。
    以下、それぞれの感想(おもいっきりネタバレ注意です)

    「ラブ・ミー・テンダー」
     短編集の始めらしい、恥ずかしくなるほど爽やかな内容で、とても好き。

    「ぬるい眠り」
     不倫もの。なのに暗くなくて、でもやっぱり悲しくて、すごく切なくなった。結婚指輪なんて馬鹿みたいとうそぶいて、でも自分の中にはっきりとした嫉妬を認めて情けなくなったり、それでも暗くはならない主人公の感じが、なんだかとても好きです。強がりと本音と色々がないまぜになった感じがリアルで、一番共感できた話かもしれません……

    「放物線」
     学生から社会人になり、変わっていく友人関係みたいな内容。オチも何もないけど、リアルで、それだけで読ませるすごい作品。

    「災難の顛末」
     ノミにさされた!という災難で、人生観が一変するという、とても馬鹿らしい、不思議な作品。もちろんノミは例えで、思いがけない何かでこれまでの価値観が崩れる瞬間が……みたいな内容なんだけど、全然説教臭くならず、なんかコメディホラー風(?)で、おかしくて笑ってしまいました。

    「とろとろ」
     恋人にのめり込むのが怖くて、浮気をしまくる女性のお話。実はこの話が一番感情移入しにくかった。女性の方が感情移入しやすいかもしれない。しかし、江國さんの書く女性は、すごくいいなと思うのに変わりはないけど。

    「夜と妻と洗剤」
     これも始めの作品と同じく爽やか系。この手の爽やか大好きです。

    「清水夫妻」
     葬式が趣味、という罰当たりな夫婦に惹かれていく女性の話。この話は不思議な雰囲気すぎて、生とか死とか堅苦しいテーマを臭わせないのだけれど、そういうことが逆に伝わって、楽しく読めてしんみりもできるという2重でおいしい話でした。

    「ケイトウの赤、やなぎの緑」
     きらきらひかる、の十年後の世界。大好きなあいつらがあい変わらずの感じで、ほっとするようなしないような。”まっとうで、まっすぐで。私に言わせればそれは暴力だ。”ってセリフが心に残った。

    「奇妙な場所」
     これも爽やか系。最後らしくデザートっぽい位置づけ。

    全体的に
     明るく読みやすい感じなのに、実は一般的にかっこわるいとされる感情にスポットライトが当たってる気がした。でもそれが江國さんに書かせるとあんまりネガティブじゃなくて、むしろ魅力的な感じに書かれている気がして(強がりに見える部分もあるけど)、元気をもらえた。自分もかっこ悪いけど……みたいな(ちょっと恥ずかしくて書けませんが)。

  • 江國さんの描く
    日常生活の形容の仕方がたまらなく好きだ。

    読むとぼんやりと過ぎてく毎日ですら、愛しく思えてしまう。

    短編だから出る良さもある。
    独特の世界もたっぷり。

    ラブミーテンダーがかわいすぎる。いい老夫婦。

  • 半分、はんぶん

  • 短編集。きらきらひかるのその後だったり、どれもすてき。
    江國さんの書く小説は、どれがよかった、どれがいやだ、とかそんな感情を抱けない。ただただ、それはすてきなことばとして、そこにある。

  • 久しぶりの江國香織。比較的初期の短編がまとまっている。
    1編めはちょっと外したかなと思ったけれど、2編めの表題作、「ぬるい眠り」はとても親しみ深く読んだ。
    あと、「とろとろ」も。いつかの自分を重ねる。
    そして、こころの底からとろっとしたものがあふれてきそうな。
    これを書いた頃の彼女は30前で、ああ、そうか、と思ったり。

  • 「災難の顛末」は、最後までただただ恐ろしくて、江國さんってそういえばこういう怖い話がうまいんだよなって思いだしました。逆に「奇妙な場所」の優しい雰囲気、懐かしくなるようなのも江國さんならではなんだよなぁ

  • 「災難の顛末」は猫を飼っている人(決して猫が好きな人ではない)には素晴らしいお話。飼い猫がいとおしくなるから。

  • 2012.2.29読了

  • 「ぬるい眠り」に圧倒された。
    まさに文章に感動して、驚いた。
    多才な表現の巧みさは、本を読む楽しさを再認識させてくれる。
    「災難の顛末」のように悲しい結末もあれば
    「とろとろ」のまったく男性には理解に乏しい作品もある。
    「ラブ・ミー・テンダー」などいままで読んだ江國氏の作品で一番詰まらなかった。
    面白い作品も、つまらない作品もたくさんあった。
    とにかくバラエティに富んでいて、それが深みとなって魅力に感じる。

    もともとはフォロワーさんに「ケイトウの赤、やなぎの緑」という「きらきらひかる」の十年後を描いた続編があることを教えて頂き拝読。
    睦月がなぜ笑子を愛しているのか、その理由は分からなかったけれど
    笑子の魅力がなんとなく分かる気がした。

著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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