ちょうちんそで (新潮文庫)

  • 新潮社 (2015年5月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784101339290

作品紹介・あらすじ

いい匂い。あの街の夕方の匂い――。些細なきっかけで、記憶は鮮明に甦る。雛子は「架空の妹」と昔話に興じ、そんな記憶で日常を満たしている。それ以外のすべて――たとえば穿鑿好きの隣人、たとえば息子たち、たとえば「現実の妹」――が心に入り込み、そして心を損なうことを慎重に避けながら。雛子の謎と人々の秘密が重なるとき、浮かぶものとは。心震わす<記憶と愛>の物語。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

記憶や思い出がテーマのこの作品は、日常の中で感じる懐かしさや現実からの逃避欲を描いています。主人公の雛子は、架空の妹との昔話を通じて、自身の過去や周囲の人々との関わりを再考し、心の内面を探ります。作品...

感想・レビュー・書評

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  • 失踪したいと思ったことがあります。
    自分を知るすべての人から、自分の存在を消したいと。もしそうしたら、家族は、周りの人たちはどうするのか。
    現実から逃避するのは簡単なようで、案外また引き戻されてしまうものなのでしょうか。

  • 好きな作品でした。
    記憶、思い出、空想。現実が1番大事ではなくて、人はそういうものに支えられながら生きていると思っている。
    だから、この作品は暖かく感じられて、共感できる部分もたくさんあった。

    「『きょう見た布、素敵だったわね。』
    雛子が話題を変えたのは、何か、なつかしくない話をする必要があると感じたからだ。そうしないと、今いる場所に、戻ってこられなくなりそうでおそろしかった。」

    時々、子どもの頃の思い出や記憶をふっと思い出すことがあって、それは懐かしい場所だったり、匂いだったりがきっかけになったりするけれど、そういう時、現実に戻ってこられなくなりそうなかんじが一瞬する。
    でも将来年老いた時に、「幸せな人生だった?」と誰かに聞かれたときに、
    涙が出るほど懐かしい思い出があればあるだけ、幸せな人生だったと思えるのかなと思った。

  • よくわからない、という感想多いのだろうけど、自分はこういう雰囲気好きだな。雰囲気小説と言われようとも。

    大きくドラマチックにストーリーが動くわけではないのだけど、人の心の儚さやもの悲しさ、寂しさや無常感が良いです。
    架空の妹、という部分で、雛子が老齢のため壊れかけているのかと思ったのですが、予想していたのとまた違った展開で良かったと思う。

    すべての問題点がきれいに解決する人生なんて、ないよね。
    自分の思い通りにすべて行くような人生って面白くないよね。
    だからこそ、人生は儚く美しいのかもしれません。

  • 《図書館本》久しぶりの江國香織さんの本。装丁が綺麗で、「きらきらひかる」や「ホリー・ガーデン」のような雰囲気を期待していたけど、ちょっと違った。でも、おもしろかった。長編と帯に書いてあったけど、個人的には連作短編のように思いました。

  • 面白かったです。
    生きている感じが希薄な女性が主人公でした。
    50代で高齢者用の施設に入っているとこも、本当は失踪している架空の妹とだけ過ごす日々も、彼女の生活は余生ということが伝わってきました。
    わたしは架空でも妹と過ごしたくないですが、雛子が生きることをどうでもいいと思って過ごせているのは羨ましいです。
    でも飴子みたいに失踪するのも憧れます。外国にいるので会おうと思っても容易ではないし。
    江國作品は、恋愛色の強いものも、家族色の強いものも、食べることは大事なようです。
    食べることは生きてるってこと、みたいな言葉はあれは孤独のグルメだったか……。
    過去に生きているとか、夢の中に生きているとか。ぼんやりと、良い本でした。

  • 主人公の雛子はまだ50 代なのに高齢者向けのケアマンションに一人暮らす。
    消息のわからない妹がいて、そこにいるはずのない妹が雛子には見えるのか?いつも妹と会話している。

    語り手がしょっちゅう変わり、最初はこの人誰?とわからなくなるが、読み進むにつれて雛子との関係も見えてきて、雛子がここで暮らす事情も痛い過去も、こういうことかとわかってくる。

    「ウエハースの椅子」に似ているというレビューがあったが、私もそう感じたし、「神様のボート」にも通じるところもある。
    どちらも江國作品の中でも好きな作品だ。

    ラストは呆気なく、何か解決したとか、希望が見えたとか、そういうことが全くない。
    終始雛子とそこにはいない妹と、雛子が捨てた家族たちと、ケアマンションの住人たちとの間でストーリーは進むが、唯一外国で暮らすなつきという少女の場面が最初意味不明で、これが雛子と何の関わりがあるのか?私は最初わからなかったが、読み進むにつれて、あ~そういうことなのねと…

    相変らず登場人物の生活や何気ないシーンの描写が江國作品らしくて好きだ。
    引用すると
    「窓の外はすでに暗い。夕食用に買った焼売弁当をテーブルにのせ、食器棚からワイングラスをとりだす。それからCDプレーヤーに、ローリング・ストーンズを選んでのせた」
    この様なストーリーにはあまり関わらない、どうでもいいことの描写が大好きだ。

    あと、装丁が好きだ。

  • 起承転結もなく、オチもなく、ただただ日常が綴られている小説だけれど現実とは少しかけ離れているもの。江國香織さんワールドで好きだった。

  • 大人になると、傷つくこと、
    失うことを事前に避けたくなりせんか?

    大切な人を失うって、
    人生の中で一番て言っていいくらい悲しい。

    楽しかった記憶の中で生き続けることができるなら、
    もう誰かを失うことはない。

    悲しい現実より、
    楽しかった記憶を優先して生きてる。

    妹を失ったことが、
    雛子さんにそうさせているのかと思うと
    胸が締め付けられる。

    自分一人で生きていくだけの人生なら、
    現実は投げやりでいい。他人なんてどうでもいい。
    そんな感じ。

  • 高齢者集合住宅に住んでいる雛子と架空の妹である飴子、隣室のタンノ夫妻、タンノ夫妻の犬友達の岸田夫妻、雛子の息子と家族、アメリカで暮らしている飴子、そして飴子の日本人学校の教え子であるなつき。そして、なつきと雛子が見たことのあるこびと。緩やかにつながった人々の群像劇。大きなストーリー展開はないまま、複数の登場人物の少し寂しい日常の断面を切り取って覗いたような、ゆったりとした小説。

  • あるなあ…

    故人を思い目の前に居るかの様に
    会話してみたり

    なかなか会えない人を思い
    目の前に居るかの様に
    都合よく会話してみたり

    思い出の記憶を走馬灯の様に…

  • 「架空の妹」は、つらい現実から自分の心を守るために生まれた、雛子にとってのシェルターのようなもの。一方で現実の飴子は、新しい土地で人生をやり直して、姉のことはたまに「楽しかった過去」として思い出すくらい。
    この対比がとても悲しいと思った。

    離れていても、姉妹が互いを大切に思っていることが分かってよかったけど、
    飴子にとってはお姉さんも含めて、決別したい過去になってしまっているのかな?
    手紙くらいあげたら、雛子も救われるのではと、おせっかいにも思ってしまいました。

  • 伏線回収が下手くそな私は最後の章に入ってから全ての意味が繋がった面白い小説。
    江國香織さんは外さないよね。

  • 読んだことのない江國香織。正直新しめのものについては読んだか読んでないか忘れてしまっていて、ブクログで自分の本棚を検索してみないと読んだかどうか判断できない。今回の話は、ウエハースの椅子に似ている気がした。ずっと死の匂いがする。
    江國香織の描く物語を読む時、ストーリーはあまり気にしない。誰が死んでも生きてても離婚しててもあんまり関係ない。村上春樹や吉本ばななもそうだけど、ただその人の世界に入ることが必要な作家というのがいる。だからストーリーはどうなってもいい気がする。
    亜美ちゃんの「普通の男の子は珍しい」というの、とてもわかる。
    江國香織に出てくる「良心枠」の男の人、現実にはなかなかいない。深町直人と結婚するのが一番いいのはわかっているんだけど。

  • 江國さんの書くゆったりと気怠い毎日が好き。これを読んだらチョイスをミルクティーに浸さずにはいられない。架空の妹ってすごく切ないのに幻想的で美しい。

  • 江國香織さんの他の作品とはひと味違う、小説らしい小説。
    エピソードはあるもののオチはなく、それが日常らしさを演出していく。
    52/100

  • 時の流れが止まってた。いろんな人生があるんだな

  • 不思議な愛の物語。

    記憶によって愛が表現されるのか、それとも愛によって記憶が作られるのか?

    静かな日常の中で謎を持った人と人とが交差する。愛のかたちは人それぞれ。

  • このラストの、止まっちゃった感。物足りなくなってしまうんだなぁ

  • なにかが始まっていくような、終わりに向かうような。つながりそうでつながらないところで終わっちゃう。雛子は現実の妹と再会しないのか。正直は妻とやり直すのか別れちゃうのか。行方不明にこだわる隣人の過去にオチはつけないのか。それぞれ読み手にはもどかしいまま。人生ってそういうもんだよなぁ、とも。淡々と日常の片鱗。

  • ちょうちんそでって懐かしい言葉。小学生の頃の憧れ、みたいな。姉妹の遊びがふっと自分のその頃を思い出させる。
    なんでだったんだろ、どうして家庭を、家族を捨てた?って説明は全くなくて、その後の生き方。過去に生きていても悲しいだけなのに。
    でも久しぶりに江國ワールド。このところエッセイばかり続いたから。小説もよいね。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに・かおり):1964年東京生まれ。1992年『きらきらひかる』で紫式部文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、07年『がらくた』で島清恋愛文学賞、10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文学賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞など数々の文学賞を受賞。他の小説作品に『つめたいよるに』『神様のボート』『東京タワー』『抱擁、あるいはライスには塩を』『彼女たちの場合は』『去年の雪』『ひとりでカラカサさしてゆく』『シェニール織とか黄肉のメロンとか』『川のある街』など多数。『絵本を抱えて部屋のすみへ』『いくつもの週末』『雨はコーラをのめない』『旅ドロップ』などのエッセイ集や詩集・童話・翻訳など多彩なジャンルで活躍。 

「2024年 『読んでばっか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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