心に龍をちりばめて (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101340715

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの白石一文。
    「僕のなかの壊れていない部分」以来、ずっと敬遠していたのだけれど、これはそこまで嫌悪感を持つことなく読了。
    読後感は、「私という運命について」に似ている。

    ただ、この人の描く登場人物には基本的に共感しにくい。
    白石作品はキャラクタ造形も含めて究極のエンターテインメントなのだと解説されていたものの、ところどころで現実世界とリンクする部分があることも入り込めない一因かもしれない。
    私にとって、読書は現実逃避の手段である場合が多いから。

  • 表紙がとても爽やかで美しい、流れ下る小川のせせらぎと両岸に咲き乱れるクレソン(おらんだからし)の白い花。
    何か、この物語を象徴しているようだ。

    フードライターとして成功している美穂は美貌と知性をもち、理想的なエリート記者、丈二と婚約もしていた。だが丈二は政界に出馬するという野心があり、美穂は将来に不安を感じる。家族、特に母親には軋轢も感じていた。
    故郷に帰ったとき、偶然幼馴染の優司に再会する。彼は弟がおぼれそうなところを救ってくれたことがあった。子供のころ「俺はお前のためならいつでも死んでやる」といってくれた優司は、ヤクザ時代に彫った大きな昇り龍の刺青を背負っていた。
    美穂は次第に優司に惹かれていく。

    先に読んだ「一瞬の光」は嘱望された、将来に向けて開けた生き方を捨て、完璧な恋人も捨てて、悲惨な経験から昏睡状態になっている若い女性の傍で暮らすことを選択した男の物語だった。

    今回は過去に傷のある男を選んだ女の話だった。言い換えればどちらも純愛小説で、読者を喜ばせる設定が揃っている、男は男らしく頼りがいがあり見かけのいい。女は振り返るよう美人だが、本人はそれが自身の美点だとは思っていない謙虚さがある。
    出合った、今で言う「運命の人」に一途に思いを寄せ、困難を覚悟で人生をかける。勇気のある選択は読後感もいい。

    ただ何か美しすぎて眩しい、川の向こうの現実感のない世界を見たようだった。</div>

  • 幼少のころから一緒だった同郷の美帆と優司、その先まったく違う歩みをするが、出生において悲しい共通点をもつ。それぞれ道を歩みながら、徐々に近いしい関係に。最初からこうなる運命だったんだと感じる事ができる作品。

  • 男性視点から書けばいいかもしれない…

  • 落ち着いた文章でじっくり書いてある作品なのに、何故か入り込めなかった。
    登場人物の殆どが実の両親とは離別しているという設定までは受け入れたとしても、背景が実親が朝鮮総連の活動家、元覚醒剤中毒で売春させられていた女性、孤児院出身の元やくざでおまけにマグロの遠洋漁船に乗せられていた、自殺した愛人の子を本妻が養子にしたなど、昭和のやくざ映画さながらの極端な事例のオンパレードで、笑えるぐらい「やり過ぎ」ていることが理由でしょう。
    エンターテイメント性と受け止めれば良いかも知れませんが、自分には合いませんでした。

  • こってり塩味。
    たんたんと読み進んでしまった。面白いんじゃなくて、染みるな。

  • 結婚を控えた主人公は、故郷で同級生と再会する。

    読んでいて、最初の方の設定を
    すっかり忘れている状態です。
    おぼろげながら覚えているのですが
    目の前の現実(?)を読み込むのに必死で…。

    最後には驚きの現実も出てきましたが
    これを『愛』だと言っていいのかは謎です。

  • 今まで読んだ白石作品の中で、初めてOLとか会社が出てこなかった。話としてはまあまあかな。

  • 巻末の解説にもありましたが『一瞬の光』のこじらせ女子版といったところ。
    ただ、『一瞬の光』の瑠衣さんと違い丈二はエリートで容姿に恵まれているけど、下衆な男でパーフェクトな男性とはとてもいえません。
    かえって、元ヤクザの優司の方がカッコイイ男として描かれているので、『一瞬の光』を読んだ時みたいな、どうしてこっちを選ぶかな?と納得できない訳じゃない。
    個人的には非のうちどころのないエリートの婚約者よりも元ヤクザを選ぶ話の方が面白くなりそうなのにと少し残念でした。
    後半にあるエピソードには「お前は金八先生における杉田かおるか」とツッコミを入れたくなった。
    もう35歳なんだから……そんな中学生みたいなことはやめようよ、と。
    ケンちゃんのエピソードからとんでもないバッドエンドがくるのかと身構えて読んでいたけど、バッドエンドにならなくて良かった。

  • 事象が先にポンと描かれて、のちに「実はこういう流れだったのだ」と解説されるスタイルがあまり得意ではないのかもしれない。さらに、登場人物のバックグラウンドというか、ハイブランドが実際にストーリーにどれだけ意味があったのか・・・高学歴、“いわゆる”勝ち組vs元ヤクザ、ヤク中という極端な対比が果たして必要だったのかなという違和感を感じつつも、ストーリーがどこに落ち着くのか見届けたくて一気読み。2時間ドラマの原作を読んでいるような感覚。

著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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