女という病 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101341712

作品紹介・あらすじ

ツーショットダイヤルで命を落としたエリート医師の妻、我が子の局部を切断した母親、親友をバラバラにした内気な看護師…。殺した女、殺された女。際限ない欲望、ついに訪れた破滅。彼女たちは焼けるような焦りに憑かれて「本当の私」を追い求め、狂い、堕ちた。女性が主役を演じた13事件の闇に迫る圧倒的ドキュメント!女の自意識は、それ自体、病である。これは、あなたの物語。

感想・レビュー・書評

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  • アタシやっぱこの人好きだわー。
    「女」という自分への激しい嫌悪。

    13個の実際にあった「女」をキーマンとした事件を元に、
    中村うさぎが独断と偏見でエッセイを書く。
    という本でした。

    まぁ、この人の意識の偏りってのがありすぎるから、
    13個目になるとちょっとクドい感じもあるけど。
    でも、そこは「現実にあった事件」
    っていうリアリティがカバーしてくれてるんだよね。
    上手いよね。そういう狡さが。

    2000年~の事件だから、
    アタシもうっすらと覚えてるのばっかりだったし。
    だけどその事件をこんな風に?!
    って苦笑、微笑、失笑の嵐でした。
    真正面からは笑えないのよ。
    だって、アタシも女だもの。

    女という自意識にこだわって物事を見つめると、
    こうも世界は歪むんだなー。
    そうだよね、女というフィルターが歪んでいるんだもの。
    優しすぎて、柔らかすぎて、だから残酷すぎて。

    東電女に必要以上にこだわった中村うさぎが、
    現代の「東電女」となりうる女を求め奔走する様も、
    病を感じさせてくれる。
    素敵な1冊でした。

  • 著者の描き方に非常にはまる。もともとこうした事件ものが好きではあるが、こんなの一気に読めたのは、珍しい。読みながら、どうもこの文体はどこかで……と思ったら、朝倉喬司さんのルポだった。そういえばこのお二人には共著もあったなあ。13の事件の中で、気になったのは佐世保の小学生、あの子今いくつになったのだろう。そして事件の凄惨さに引いたのは保育園園児殺害と神奈川の主婦連続殺人。女性として一番興味があるのは浮き草売春テレクラ殺人の人。ワタクシが犯罪に興味があるのは、自分には関係ない、見世物として好きなのではなくて、いつ「そこ」に自分が立っているかわからない、そんな「恐怖」(であり快感)があるからだ、と再確認。

  • 犯罪を犯した13人の女たち。彼女たちが犯した事件や取り巻く環境、そして何よりそれぞれの心の内が、中村うさぎの内面と交錯する形で描かれる。
    それぞれが持つ背景や、また彼女たちの結末も三者三様であるが、その根底には強烈な"自意識"の問題が存在する。そんなこと考えない方がきっと楽に生きられるに違いない。しかし彼女たちは、"何か"が欠落した自分に対して目を向けずにはいられないのだ。
    多くの犯罪者は自分の感情を言語化することに不得手だ。勿論、ここで描かれるそれぞれの"犯罪者"に対する中村うさぎのの解釈が誤っている可能性も、彼女自身が前書きで指摘する通りあるわけであるが、とかく分かりやすい形でセンセーショナルに取り上げるマスコミに代わって、その内心をえぐるように言語化するという作業こそ、解説で述べられる"祈り"の行為なのだと思う。

  • 「自分という病」というエッセイで東電OL殺人事件の被害者女性に感情的に馮依・同化して、女視点で赤裸々に肉薄をした筆者の、肉薄同化シリーズの続編。

    事件の被害者女性・加害者女性に中村うさぎが馮依・同化して、突き詰めて抽出する女(特有)に自意識は、多分男女問わず共感を引き起こすものが多かったのではないか。少なくとも自分は、部分的には「自分の物語」として読んでいるモードに入っていた。とくに
    やおい漫画作家殺人事件被害者の『謎めきたがる癖」には少し共感してしまった。底の浅い人間だと思われたく無いという想いが自分には強い気がする。

    ちょっとこれも怖いけど面白い話しだった。

  • 私のいつものテーマである「女性性の肯定と否定」に関して触れられており良かった。性的な価値を認められたい欲求は大概の女性が持っているだろうし、若くないとか美しくないとかの女性は大概不満を抱えて生きているのではないでしょうか。
    男性性への恐怖に関しても概ね共感であった。私は常々、若くなくなった自分の価値の消失が怖いと感じてるんだけど、それは露骨な男性の対応が怖いのかもしれませんね。というか殆どがそれです。

  • 女性が主役を演じた実在の13の事件。
    その闇に迫るドキュメント。

    描かれる事件と当事者の心理はもちろん
    それを描き出す著者もまた、良くも悪くも
    女性特有の形で表現されていて
    大変面白い一冊でした。

    奥底にあるテーマは、以前に読んで感想を記した
    「グロテスク」や「ヘルタースケルター」と、ほぼ同じかも。

    今回も、前出の二冊も、関西弁で言うところの
    いわゆる「えげつない」話なんだけど、目を背けることができない。
    そこに生きている彼女達は、可哀想という言葉をかけるには
    あまりにも力強くてたくましくて、まぶしすぎる。

    「女の自意識は、それ自体、病である。」

    というコピーに、首をふれない女性は多いんではないかしら。
    少なくとも、私は首をふること、できません。

    毒気に当てられて、くらくらと眩暈を感じながらも
    滑稽だとは、笑えない、もう一人の私がいます。

  • 女の自意識はそれ自体病かもしれないけれど、
    持っていて悪いことばかりじゃない。

    うさぎさんの描く物語として読めば面白い。
    現実の事件としては、やっぱり痛ましい。

  • 女性犯罪者13人の実録犯罪集。とはいえ著者本人も言ってたけど、やはりどうも著者の中で一度取り込まれ練り直された段階でだいぶ主観が入ったというか、ここまで断定するのはどうか、と思われる内容になっている。思い入れが強すぎて、センチメンタル&どろどろ&センセーショナルに脚色し過ぎじゃないか。犯罪はドラマじゃないし、犯罪者サイドの理由を他人が後付けする必要もない。個人的にはもうちょっと後に引いた立場から書かれたものが読みたい。

  • イキナリ同人誌作家の殺人事件から始まるので、妙にドキドキしました…;;
    自分の嫌なところとかを突きつけられた感じで、納得いかないんだけど納得するしかないなーみたいな気分になる。もっと大人になりたいなーと思います。

  • いつもは軽めのおバカなエッセイを書いている中村うさぎ女王様ですが、今回は13人の女性犯罪者・被害者に焦点を当て独自の見解というか、まるでイタコのように彼女たちの恨みつらみ心の闇を突き詰めて語って行く。
    「女」はそれ程日頃から「女」を意識していない様にも思えるのであるが、この様な本を手に取ってしまうあたりやはり私も「女」を意識している女の一人であるという事か?個人的に中村うさぎにはこの固めというか、噎せ返るようなねっとりとした文章で永田洋子か福田和子の一人称長篇小説を書いて欲しい。需要は全く無さそうだけど。きっと後味の悪い濃い読みごたえのある本が出来ると思う。

  • 事件をテーマにした本はよく読むが、ここまで筆者が加害者側に寄り添った本は珍しいと感じた。

    女性たちがどのように自己を肯定していくのか、といったことを中心に様々な考察がされており面白い。

    中村うさぎさんは自身と加害者女性に重なり合う部分が多い、と語っており自らの体験なども記述しているが、正直私が共感できる部分は少なかった。

    本書では「あらゆる女性に当てはまる感情」として事件に関わる女性たちの内面が描かれていたが、必ずしもそうではない気がする。女性が生得的に持っている感情というよりは家庭環境や交友関係などから後天的に得られるものなのでは??と思った。事件に関わる女性たちがどのような環境で育っていったのか事実ベースでもっと知りたい。

    少なくとも「女はなにものでもない自分自身を肯定できない」「女の価値は男性に愛されることで決まる」というのはあまり共感できなかった…。

    読み物としてはどんどん読み進められてとても面白い。

  • すごかった。本当に一瞬で読めた。

    全員自分と重なる、自分のことがとても怖く感じた。
    他人事でなく、1歩間違えたら私も彼女たちの仲間入りすると思う。怖い。

  • 殺した女、殺された女、世間を騒がせた女、、いずれも“女という病”に取り憑かれた女というだ、と筆者は述べる。買い物依存、ホスト依存、整形依存に風俗嬢の体験。コミカルに自らをさらけ出し、楽しいエッセイを書き続けた中村うさぎ。いつもそのエッセイから感じてたのは彼女の、繊細さと頭の良さ、そして恐ろしいまでの自分を客観的に分析できる視点。そして犯罪を犯した13人の女たちは、全員、私のグロテスクな鏡像、と締めて終わる。中村うさぎのまさに集大成、傑作と思う。彼女くらい頭が良すぎるのも不幸だと思いつつ、強く尊敬している

  • 結構怖い話だったけど、共感できる女性もいて、周りに救ってあげられる人がいれば良かったのにと思った。

  • 文庫版の与那原恵さんの解説がkindleには載ってない。「女たちの心理描写を一人称で書き始めると、私は、自分に彼女たちが憑依しているのか、彼女たちに私が憑依しているのか、わからなくなってしまう。わからないのだけれど、筆は止まらないのだ。彼女たちの想いが、いや厳密に言うと、彼女たちに仮託した自分の思いが、溢れ出して止まらなくなるから」

  • ・・・・・・・・・・・・これ全部本当にあった事件なんですよね・・・・・・・・・?????
    こ、怖…凄・・・

  • アンビリバボーであった事件が載ってるってことで読んでみたけど、結構楽しめた。
    わたしが一番自分かも…って思ったのは最初の同人家殺害事件かな。

    私もこういうところで自分の意見を言ったりして、自分自信を演じて、いろんな自分に酔ってるのかもな。

  • 実話を自分の目から見てドキュメントする。事実ではないかも知れないが、きっとこう思ったのであろうと。登場する犯罪者の気持ちと私は同じと述べることで、皆さんは如何と語りかける。しかし女だからこそこんな風に行動するのだという主題には共感できなかった。2016.6.11

  • 実際の事件を元にしたフィクション。
    一見、短絡的で、荒唐無稽であり、同じ人間として感情を理解できない事件の加害者、被害者たち。
    しかし、著者の「自分の物語」とする力によって登場人物たちの行動に合点が行ってしまう。
    作家の想像力はすごいとよく言うが、
    これほどまでに様々に過剰な登場人物に帰依し、感情、場景を描き出せる著者の物語もそうとうにグロテスクなものだろうと想像できる。
    しかし、自分の行動を著者のように言語化できずに、恐怖し、焦燥する日々(なんとなくモヤモヤする的な感じ)はもっと地獄である。

    特に記憶に残ったのは「第十一章」の物語。あとがきにも触れられているが、読み返すのもしんどいので止めることにする。

  • 図書館でタイトルに惹かれて読了。

    なーんのことはない、未解決事件ものが好きで昔によく買って読んでた「新潮45」の連載をまとめたものだった。表紙のちょっと不気味なイラストが好きだったなー。

    で、中村うさぎさんが、ご自分の持つ女の自意識と比較、もしくは重ね合わせて、犯人像に迫るという、事件はノンフィクションなんだけど、ストーリーはあくまで個人的な見解のフィクションというもの。中村うさぎさんファンなら、かなり楽しめるのかも。

    ただ、「女だから」とか「男だから」とか、日本て、この性別論から、この本が発行された10年が経っても抜け出せていない感じ。。。「女の自意識は、それ自体、病である」ってフレーズも、なんだか、女自身を卑下しているようで、しっくりこない。

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著者プロフィール

1958年2月27日生まれ。
エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学 文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以後、エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、美容整形、デリヘル勤務などの体験を書く。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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