- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101341736
作品紹介・あらすじ
この世界が用意するのは、思考停止のハッピーエンドだ。静かな諦観とともに人生を受け入れ、無為な戦いを放棄する-そんなハッピーエンド、私はいらない。安住を拒み続ける女王が新たに狙いを定めた先は、新宿二丁目ウリセンバーでセックスを売る男の子たち。お金で買った彼らとの関係に、本物の恋愛は生まれるのか?欲情地獄のさらなる深みに到達した、飽くなき絶望の放浪記。
感想・レビュー・書評
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ホストにハマり、デリヘル嬢も経験した中村うさぎ(ここら辺は『私という病』に詳しい)、彼女はその後もウリセンの男につぎ込み、SMクラブで縄に吊るされ、人に見られながらのセックスも体験し…彼女の行動は一見すると(いや、しなくても)奇怪だ。なのだがなぜか清々しい。自分とは何者かーこの根源的な問いに体を張って挑む姿勢が格好いいと思うからだ。
「主体的」な私と「客観的」な私、この分裂した「自己」を中村うさぎは「女」を切り口にして考え続ける(逐一「いや自分が醜いなど分かっている!」というような自分への容赦ないツッコミをせずにはいられないあたり、いかに自分が主体的な自分と客観的な自分との狭間で揺れ動いているか、分かる気がする)。だがしかし、この悩みはなにも女に限ったことではない。「男」とか「母」とか万人が何らかに属するようなカテゴリーだけではなく、「容姿」や「性格」といった極めて属人的なものであっても、それにより決定される「キャラ」があり、その客観的な「キャラ」と主観的な「自分」の齟齬に悩む人にも、また通づる内容だろう。これらが一致していたり、あるいはなにも考えずにどちらかになびいてしまう方がある意味では幸せだろうが、そうはしない人には心に響く内容なのではないだろうか。この本は、戦いの記録なのである。
思うに、中村うさぎは「思考する人」であり、そしてまた、「妥協しない人」でもある。変に"悟ったふり"などしない。己で体得する、そうこの「体得」という言葉こそが彼女に一番しっくりする言葉である気がする(「何も得てなどいない」と、彼女は言いそうだが)。「大人になれよ」と時に人は諭したりするが、それはとりも直さず「思考するのを止めよ」ということと同義だ。考えず、ありのままを受け入れよ、と。それを拒み続ける中村うさぎは一見すると「幼稚」だが、真の意味で生きるのを諦めない「大人」なのである。だからこそ、中村うさぎには戦いを挑み続けてほしいと思うのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
はーおもしろかった。
個人的に好きなのは「甘い「さよなら」」というエピソード。
うさぎさん好みの完璧な外見をしてるのに、どうしてだかエッチな気分になれない不思議なウリセンの彼。
男に甘えるのが苦手なうさぎさんが、どうして彼の腕枕なら素直に受け入れられるのか、彼になら抱き締められて抱き締め返すことができるのか。説明ができない。
「彼は、私の心の中の「何か」を溶かす天才だ」と言う。
うさぎさんは、愛する人の中に自分を見、愛する人を抱き締めることで自分を抱き締める、そんな愛の形にうんざりしているみたいに見える。
たぶん、彼はその泥沼から遠いところにいる。愛する人を抱き締め、自分を抱き締めたいなら、もう少し彼のそばにいたらいいと思う。
が。
「だが、その「何か」が溶けてしまうのを、私は本当に望んでいるのか?」
…泥沼から抜け出すことを望んではいないみたいです。 -
初中村うさぎさん。タイトルからどんな過激な内容かと思ったら、読みやすいわ共感できるわで面白かったです。
求められることが幸せと感じる女って沢山いるし、自分もそんな人間の一人だけど、そんな人って自分一人では幸せになれないんだな〜っと今更ながら実感。
でも人間って男だろうが女だろうが、大人だろうが子供だろうが誰かに認めてもらいたいって欲求は大なり小なり抱えて生きている。だからこそ生きていくのって難しいんでしょうね。 -
文庫の新刊コーナーから購入しました。
中村うさぎさんの本を読むのは初めてで。
タイトルからして、
とても赤裸々で内容も過激なものかと思いきや。
面白かったー。
自分が求めるもの、自分自身について、
真摯に向き合っている作家さん。
だけど、どーしようもない部分を持っていたり。笑
本当は賢者なのに、愚者を全面に押し出して
かなり振り切っている方。
とてもカッコ良い女性。
買い物依存症、デリヘル嬢経験、ホストとの恋に次いで、
「ウリセン」を「買う」ことにしたうさぎさん。
「さっき会ったばかりで、
しかも金でセックス売買している関係で、
愛なんか発生するワケねーだろ!
嘘も休み休み言うがよいわ、たわけ者!」
「本気の言葉だけ、本気の愛だけ、私は欲しい。
それが手に入らないなら、いっそ愛なんか、いらない。
獣みたいなセックスだけで結構よ。」
と言いながら、
ウリセンの男の子と恋に落ちていく。
あー。苦笑
自分の存在価値について、真正面から考えている作品。
前半部分は、体験記がメインで
後半部分は、心理分析も絡んできます。
どこまで行っても満足できなくて、
わかっているのに、自分から穴に落ちていって、
せっかく這い上がって穴から出たのに、
また落ちてしまう。
そんなループを描いてる作品。
人魚姫について描いてる部分が特に印象的。
「愛されなければ、海の泡」この世でもっとも価値のない存在。
ちなみに、
ウリセンの男の子との結末まで描いてるのは
2010年のあとがきが加筆されている文庫版だからみたいです。 -
3/7 なんだかなー。もう気持ち悪いなこの人。怖いもの見たさで読んじゃう自分がいるんですけども。。。
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面白い?あまり、、、
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一般人が気楽に体験していいような体験談ではないけれど、根源のところにある「ホストにしょっぱいHをされて自分に対する自信が…」みたいな、「ああ、その感覚、わかる…」という部分があるから読み進められる、という感じ。
所謂ウリセンのトークその他の実態、を読んで行くと世の中こんな世界もあるんだなあ…と、うさぎさんの「虚しさ」みたいなものが追体験される瞬間はある -
自分を認めてもらいたい、こんな自分を認めてもらえるはずがない。葛藤のなかで、それでも人生に対して諦念持つことなく生きたい。紆余曲折の放浪記。2019.4.28
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同年代の女性のセックスへの考えが判るのではないかと読んでみた。しかし、自分よりはるかに年下のイケメンにしか性欲を起こせない著者には共感できない。赤裸々な描写や、セックスの最中に相手に問われてオッパイの美容整形を話してしまえば、やっぱり萎えるだろう。著者自身が分析するとおり、自己愛が彼女を苦しみのスパイラルから解放されない原因だろう。女性との性行為を否定し、オナニーのみに耽る男を描いた筒井康隆の短編が頭に浮かんだ。本書のセックス感はあくまで個人の感想ということで……
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ここまで赤裸々に自分の性生活について語る作家が他にいるだろうか
嘘偽りもキレイゴトも全くないうさぎさんの文章は胸に深く突き刺さるものがある