愛という病 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101341743

作品紹介・あらすじ

なぜ恋をするとバカになるのか、男を殺す女の言葉とは、エロいとは一体何なのか-幸福になるためには、自分を知ることのほか道はない。欲望と自意識をライフワークにしてきた著者が、自らの生き苦しさの正体を徹底的に解体していく痛快エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 意外と、いや結構良かったです。
    女性の方には是非読んで欲しい本。

    この直前に読んでいたのがホッコリ心温まる系の本たちだったので、この本の「女ども…戦うぞ!」みたいな過激さ満ち溢れてる感じに、最初はちょっと腰が引けながら読んでいた。

    でもうさぎさんの文章って、過激で尖っていながらもやっぱりそこにはどこか真摯さがある。
    「ジェンダーレス」という言葉が世の中に浸透してきた現代、くだらない性差の概念はどんどんなくなっていってほしいけど、やっぱり男と女というものがある以上、絶対そこに違いはある。
    当たり前だけど。
    その「女」っていうものに、現代でとことん向き合い続けてきたのがきっとうさぎさんなんだろうなぁとこの本を読んで思った。

    女ってそもそも何者?
    なんで男に守られたい女が多いの?なんで愛されたがるの?いやそもそも愛って何?
    そして、女はどうやったら幸せになれるの?

    そういう問いにうさぎさんは自分なりに答えを出していく。別にこの本に書いてあることが全て正解だとは思わないし、本人も正解を出すつもりで書いてはいないと思う。
    この本を読む目的は、「その正解をうさぎさんに教えてもらう」ということではなく、「正解を自分で考えるきっかけをもらう」ことだと思う。
    事実、うさぎさんも結びにこう書いている。

    『女は、もっと女を知らなくてはならない。
    そうじゃないと、私たちは幸せになれないよ!
    そんなふうに考え、私はこの連載を続けてきたのだった。』

    読者が、一人一人で女を知ろうとする過程で、間違いなくうさぎさんの出した答えはその一助になるだろうし、救いになるだろうと思う。
    女ってめんどくさいし、気が滅入ることも多いけど我ながらやっぱり面白い生き物だ。

  •  『新潮45』の連載をまとめたエッセイ集で、文庫オリジナル。シリアスな内容を予想させる書名だが、実際にはまことに痛快で、笑いにも満ちた一冊だ。

     中村うさぎについて、呉智英は「この人は頭がいい。マスコミがもてはやす女性大学教授連中など較べものにならないほどの優秀な頭脳を持っている」と評したが、本書は彼女の頭のよさが全開になっている印象。

     エッセイ集ではあるが、かなり批評性が強い。連載中に起きた事件(性がらみの出来事がメイン)を取り上げた「時評」としての側面もあるし、女性のセクシュアリティそれ自体に中村ならではの角度で斬り込んだ女性論・性愛論集でもある。
     さらに、中村自身の心に分け入った自己分析としての側面もあり、その種のエッセイでは、自分を突き放して客観的に分析する手際が鮮やかだ。なにしろ、自身の閉経後の心理変化などまで赤裸々に明かしたうえでの捨て身の自己批評なのだから……。
     そして、全編にわたって、「なるほど!」と膝を打つ見事な分析や、世の男ども(私も含む)の身勝手な女性観を突き崩す鋭い批評がちりばめられている。

     たとえば、渋谷区の歯科医一家で浪人中の兄が妹を殺したあの事件を取り上げて、中村は次のように記す。

    《自分の価値観を持たず他人の価値観に過剰反応してしまう人々こそが「現代の病」の中核を成している、と私などは思うのである。妹の兄に対する「人マネ」発言(「お兄ちゃんが歯科医になろうとしてるのは、人のマネだ」というもの/引用者注)は、まさに、その核心を突いたものだったのだ。だからこそ、痛いところを突かれた兄は、殺意を抱くほど激怒したのであろう。でも私が兄だったら、「そういうおまえこそ、グラビアアイドルなんか目指してる時点で、他者の評価に自分の存在価値を委ねてるんじゃないか。おまえは自分で思ってるほど自由じゃねーよ」と反論してたね。このふたりは両極端の生き方を志向しているように見えながら、所詮は「同じ穴のムジナ」だったのだ。両者の間の激しい確執と愛憎は、じつに「双方が互いの歪んだ鏡像」であったからに他ならない、という気がする。》

     このような、マスコミでしたり顔のコメントを述べる心理学者よりよほど鋭い分析が随所にある。

     さらに、本書には優れたメディア論としての側面すらある。とくに、オヤジ系週刊誌などが女性を揶揄するステレオタイプの記事に対しての反論は、胸のすくような痛快さだ。
     たとえば、山本モナと二岡智浩の不倫(当時、モナは独身)に際しての週刊誌報道を、中村は次のように斬って捨てる。

    《今回の「不倫」だって、モナの立場は「飲んでることを知ってて運転させた助手席の友人」であって、「飲酒運転」そのものをやったのは二岡のほうだよ、明らかに。なのにモナばかりバッシングする『週刊現代』の意図は?
    (中略)
     何故、モナを「病的尻軽女」と呼んでおいて、二岡を「病的ヤリチン」とは呼ばないのか?
    (中略)
     ねぇ、モナが尻軽だからって、あんたに迷惑かけた? つーか、もしモナがリアルに隣に座ってて誘ってきたら、あんたは腹を立てるどころか大喜びでラブホに付いてくクチなんじゃない?
     そこなのである。正義を振りかざしてモナに天誅を加えるようなポーズを取りつつ、その下半身は「尻軽モナ」に半勃起……そんな姿が透けて見えるからこそ滑稽なのだよ、この記事は。つまり、この「過剰反応」としか言いようのない怒りのポーズは、欲情の隠蔽にしか見えないのだ。》

     本書で私がいちばん目からウロコが落ちる思いを味わったのは、「ダメ男はなぜモテるか」という一編。これはいわゆる「だめんず・うぉ~か~」となる女性の心理を、「ナウシカ・ファンタジー」なる概念を用いて見事に分析した内容だ。そこには、次のような一節がある。

    《私の女友達が、このたび、またもダメ男に引っ掛かった。他人から見ると軽薄で頭の悪いヤリチン男に過ぎないのだが、彼女は「私が彼の最後の女」と言い放ち、周囲がどんなに忠告しても「彼を信じる」の一点張りだ。彼女は「彼」を信じているのではない。自分のファンタジーを信じているのだ。人間ってのは、他者への信頼なんて簡単に放棄できるが、自分のファンタジーにだけは強固に執着する。詐欺師に騙された人間がなかなか気づけないのは、他人を信じるお人よしだからではなく、詐欺師によって与えられたファンタジーを崩せないからだ。
     今にして思えば、ホストにハマった時の私も「ナウシカ」だったのかもしれない。女を利用する事しか知らないホストが自分にだけは本物の愛を捧げてくれる、というベタベタな夢を見たかったのだ。もっとまともな男に惚れなよ、と、何人もの友人たちから言われた。でも、相手がホストじゃないと私の夢は成就しないし、恋愛の手柄感も得られなかったのである。》

     ところで、ここに出てくる「またもダメ男に引っ掛かった」「私の女友達」って、きっとくらたまのことですね(笑)。

  • 女、性、愛 etc. をここまで突き詰めて考察している本に初めて出会いました。
    男女平等とか、男尊女卑とか…人間を男と女に分ける言葉は物心がついてから沢山聞いてきましたが、生殖機能以外で結局何が違うのかハッキリ言葉に出来たことはありません。そんな心のモヤモヤを紐解いてくれるような、哲学書のようにも思えました。

  • 性やジェンダーに関して一歩踏み込んだ内容を筆者の体験も踏まえて書かれている。
    ズバズバっと直線的な物言いが気持ちいい。

  • 「女とは?」というこの究極の問いに、中村うさぎが様々な視点から答え"ようとする"一冊。その効能(?)は解説の指摘が的確。p285「性役割に馴染めなかったオトコオンナたちに、うさぎさんは何と闘えと言っているのか。それは、本文中にもたびたび登場する「オヤジ」というやつだろう。〜略〜闘う相手はもっと観念的なもの、社会にはびこる「オヤジの常識」だ。」p288「Cancam女にも、エリートパパにもなれなかった外れオトコオンナ達は、舗装されていないけもの道を歩き続けるしかないのだ。〜略〜そんな人々に、一緒に強く生きようぜとハスキーボイスでエールを送り続けているのが、うさぎさんの本なのだと思う。」要は旧来の凝り固まった「女」像からの解放を目指しているんだと思う。
    中村うさぎ、そして彼女を支持する読者を苦しめるのは、この観念的な「オヤジ的なるもの」だ。「自分棚上げ精神」を持ち、「こうあるべきだ」を振りかざす「オヤジたち」。そのオヤジたちが唱える「女のあるべき姿」に順応できる素地のない人は、社会が求める自分と現実の自分にもがき続けることになる。「男」や「女」といった枠組みに拘るのは往々にして「オヤジ」たちであり、そのくせこの「オヤジ」たちは自分を傍観者に位置付けるのだ。
    男の論理は基本的に自分が中心であるため極めて単純明快。一方の女は「女」であるが故に求められる役割やらそれに反する自意識やら、不一致要素がたくさん。これが女を苦しめる要因の一つであるような気がする。

  • 女性の心理、「女性は三度生まれ変わる」というのは案外 当たっているかも。

  • 中村うさぎはオカマ、というのにうなずいたり。
    閉経というのは、頭がハゲてしまった坊主、というのに爆笑したり。
    エロを感じたのがAV女優のたたずまいだというエピソードに切なさを感じたり。
    このエッセイのテーマをあえていうなら、「敵はオヤジ」ってところかな。「オヤジのはしゃぎっぷり」とか、耳が痛い。私自身がまわりに感化されてオヤジ目線になっているところがあるので。そのほうが楽なんだよ。内心は違うと思っているんだけどね。
    ブルボンヌさんの解説もよいです。あたりまえとされるものをあたりまえと受け取れないのはつらいんだ。でもがんばるぞと思ったり。

    中村うさぎの本のことは、ほかの人とは話せない。「ブランド品を買いあさって整形している人でしょ」「ホストクラブをネタにしてエッセイ書いている人でしょ」で終わってしまうから。なんだか踏み絵のような気がしますよ。

    中村うさぎのいいところは、韜晦というものがないところです。たまにいいわけしてるけど、人や社会のせいにはしないで、踏みとどまってる。
    一生、老年になっても自分と女を追及してもらいたい。

  • おもしろかったー。
    この気持ちってこういうことだったんだ、と
    共感できる。
    根拠はないものもあるけど、
    自分の行動論理に当てはまるから自ずとこれが正解なんだろうなと思えた。

  • 途中になってしまった。

  • ジェンダーに関しての違和感。言葉にしてくれてありがとう。おかげで明日はもっと強く美しく生きられる気がする。

  • 自意識について内省化したエッセイ。体験をさらけ出してるので説得力がある。2019.5.10

  • ひりつくような感覚で読んだ。女性に比較的賛同者は多いかもしれないけれど、男性にも読んで頂きたい一冊。鋭く鮮やかな切り口が好き。

  • 中村うさぎは執筆者も取材対象も”自分”というルポライターであり、自身を実験動物とする研究者である。
    それは一日体験とか潜入取材といった生易しいものではなく、どっぷりとハマりこみながら、冷静に観察する自分も存在するという中村うさぎにしかできない荒技だ。
    彼女が体当たりで獲得した「女は愛されている自分に欲情する」「恋愛はナルシシズムのためにある」という言葉。思い当たるフシはあるが…いや、納得するしかない!

  •  中村うさぎはすごいなぁって思う。
     身を張って生きてる。いや、誰もがそうなのかもしれないけれど、自分に都合のわるいことをここまでさらして生きているひとはそうは居ない。だからこそ作家なのだろうけれど。

     エッセイをまとめたものなので、1冊を通しての強いメッセージや構成はないけれど、それでも、ひとつの彼女の思う愛という病について考えさせられる。彼女の思うことが正しいとも言い切れないが、少なくとも彼女にはこう見えているのだろう。すごい。

  • BL好きの女性(いわゆる腐女子)についての考察が的外れすぎて……。なんかガッカリ。
    私は完全にBLを楽しむときは「傍観者」の立場で、
    物陰からひっそりと覗き見しているような状況に
    萌えているわけで、その男の子たちに自己を投影して
    いるなんてことはありえません。
    そういう楽しみ方があるのはわかりますが、
    人それぞれじゃないですか?
    BL好きだからって、全ての女子の楽しみ方
    が一緒とは限らないのに、そんなことはわからないのかなあ?
    下手にBLというジャンルに首を突っ込んで失敗したとしか思えない。
    せめて、「私はこう思う」くらいに書いてくれたらまだ良かったのに、断定的な文章だったもので。

    なんだかなあ。最近うさぎさんの本読んでも、矛盾点というかツッコミどころが多すぎます。

    ホストのことも何回も書いてますけど、
    うさぎさんはご自身よりはるかに年下の
    ホストに「恋をしていた」と確実に書いてあったのに
    (さびしいまる、くるしいまる
    私という病 など)

    後の本に「恋愛関係になりたかったわけじゃないのに、勝手にホストが勘違いした。ホストは私の言葉を殺した」
    みたいに書いてあったり……。

    いや、恋してたやん!?
    迫ってましたやん!?!?

    自分の言葉は、ものすごく崇高で、神で、絶対に汚してはならないものっていう感じなのに
    相手の言葉は軽んじる傾向があるというかなんというか……。
    私もうまく言えないんですけどね。

    とにかく、なにか嫌なことがあれば
    「自分の言葉を殺された!!」
    と騒ぎ過ぎた結果?が、今の現状なのかなと思ってしまいました。

    うさぎさんのファンで、本もたくさん読んできたけれど、最近のは重くて読むのが辛いです。
    でも、こういうこと言うなら読むなって感じですよね。
    でも、うさぎさんのことは最後まで見届けたい気持ちがあります。うさぎさんは自分の人生にどう落とし前をつけるのでしょうか……。

  • うさぎさんの女分析はなるほど。毎度同じだけど納得。

  • ひとつひとつの事象をすごい考えられていて 視点も「あー、確かに」と気づかされることも多かった。すごい素直な文章でした。

  • 動物は性欲が生殖本能と直結しているため、相手は一意的に決まる。ところが人間は抽象思考により性的興奮を得る。それゆえ、同性に恋をしたり、レザーやゴムに興奮したり、嗜虐や被虐に萌えたりする。時代が進むにつれ性欲は生殖本能からどんどん遠ざかっている。変態はいわば進化の最先端。少子化は脳の進化のきわめて自然な末路といってよい。とりわけ女性の場合、男性と異なり、写真やAVなどズリネタは不要。脳内妄想のみでイケてしまう。自身が女性でありながら、女そのものの不可解さに違和感を抱く著者。女とは何なのかを模索する。

  • 新潮文庫の病シリーズ第3弾。「新潮45」の連載をまとめたもの。著者が批判している「オヤジ」週刊誌ではないものの、やはり読者層としてはオヤジをターゲットとしているこの雑誌だからこそ、意味がある連載だったのだなあ、と思う。読者への呼びかけ「諸君」というのがいいねえ。蒙を啓かれる、というか、思わぬ切り口に納得したり疑問を抱いたり。自分を省みる、という点でもとても有意義な時間をくれる本だなあ。

  • 病シリーズ。相変わらず。

  • もうエッチ(ぶっち)ぎりに愛餓エロ探究だね。「マイ・エロツボ」、これを読んだ図民のあなたのツボは何ですか?

  • 幸福になるには自分をしることのほかに道はない。
    男と女二つの間にさまざまな人がいる。愛とジェンダー。著者が日常感じている男と女の疑問を感じ考え結論を述べている痛快エッセイ。

  • 読んだ時期*2012年1月9日~下旬

    “飽きた人は、読んでくれなくても構わないのよ。いや、ホント、興味がなければ無理して読んでくれなくていいから。”

  • もがく。あがく。考える。
    中村うさぎは、諦めない。
    その潔いまでの諦めの悪さが、カッチョいい。

  • うさぎさんの容赦ない自己を追求する姿勢には頭が下がります。私にはここまで突き詰めることは出来そうにないなあ。
    彼女は答えにたどり着けるんだろうか。

  • 身につまされて痛すぎる。
    「そうそう、そうなの。わかるわかる!」という部分と、「どうしてもそこは理解できない」という部分が入り交じっている。
    でも、すごく考えさせられる。

  • う~ん…あたし、いつの間にやらオヤジになったのね。

  • 中村うさぎの本を読むと、彼女の持つ「女の業」と「文筆業の者の業」に圧倒される。

    女という地獄巡りの果てに、彼女はどこにたどり着くのだろう。

  • 鋭い
    (中村)うさぎさんというファンタジックな名前とは
    かなり印象の異なる本質を見抜くような鋭い意見

    愛(を求める)という言葉からは夢見がちな印象を受けるのに
    内容からは徹底したリアリストぶりがうかがえる
    勝手に想像したものとの落差も手伝ってとても面白い

    男らしさ・女らしさという枠に縛られること、
    露出という防御、
    自分で選んだ人生の対立項の脅威、
    関係性の中での自己確認としての愛情etc…

    問題の本質を射抜く意見とストイックさ
    デリヘルだかウリセンだか整形だかしらないが
    この人は真面目で真実だけを求めて生きている
    妥協のできない人…という印象

    何だか天命の課題を研究する研究者のような感じがします

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著者プロフィール

1958年2月27日生まれ。
エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学 文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以後、エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、美容整形、デリヘル勤務などの体験を書く。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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