他者という病 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2018年2月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784101341750

作品紹介・あらすじ

原因不明の難病で入院中、三度も死にかけた私。さらに薬の副作用で人格まで変容し、自分を見失ってしまう。やがて仕事もなくし、鬱状態に陥り、ついに自殺未遂を起こすまでに……。激動の渦中に文章をつづり、当時の自分を客観的な目で振り返って考えた、「生」とは、「言葉」とは、そして「私」とは。極限体験に際した人間の脆さを凝視し、思いがけない強さを発見する、特異で壮絶な魂の手記。

感想・レビュー・書評

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  • ふかわりょうさんが司会をされていた頃のMXテレビ番組『5時に夢中』は欠かさず日課のように観ていた。大好きだった。レギュラーだったうさぎさんの生死をさまよった大病と生還、そして番組の降板についてずっと気になっていたまま。番組からもすっかり離れご無沙汰。

    うさぎさんの回復されたお姿を最近youtubeで中瀬ゆかりさんや肉乃小路ニクヨさんとのとの対談で頻繁に見かけるようになった。ご主人と茂原に移られ、久々の切れの良いトークを再び、と思い手に取った1冊。発行はなんともう10年前の2015年だった! 時の流れの速さよ。

    突然の原因不明の難病。何より心停止と2度の呼吸停止状態。治療法もなく、原因もわからないという対症療法のみ。生き返ったこと、生き延びたことがよかったことか、不運の始まりか。

    体が自由に動かず、他者の手を借りずには生活がままならない。定職ともいえるレギュラーの週刊誌への執筆もMXテレビ出演も失う。
    それまで数多くの整形手術や買い物依存での豪快かつ奔放なお金の使い方で知られる彼女が突然の「生きること」の停止状態。

    意識不明状態や使用していた薬の副作用により、人格が変わってしまったり、記憶が飛んで、自分が知りえない別の「自分」が動き出す。
    想像を超えたそんな状況を彼女の筆で疾走するように蘇らせる。引き込まれてあっという間だ。

    ただし、ある時はホスト、またある時はブランド品で身を崩し、強い衝動や依存の問題を抱えながら(と、お見受けする)、言いたいこと・感じたことを抑制するのもなかなか難しく、自分の「正しさ」へのこだわりは底流にあるように感じられた。
    そしてその意識のもっと下にあるもの、「他者の評価」、もっと言えば「誰かの目」という自分以外の誰かを意識する思考パターンは、何も彼女に限ったことではなく。

    「ナルシシズム」「自己愛」「自尊心」の彼女なりの比較や定義づけが非常に興味深かった。
    以下抜粋:
    「ナルシシズム」とは「自分に恋する」こと。
    「自己愛」とは「自分を愛する」こと。

    「恋」が己の幻想に目をくらまされて盲目となる状態であるのに対して、「愛」はより客観的な視点を持つ。相手の欠点もきちんと見えていて、そこも含めて愛するのだ。「愛」は「恋」よりも利己的でもなく独占支配的でもない。

    「恋」は我とわが身に陶然と惚れ込んで、正しく自分を見られなくなるのとまったく同じ構造。

    我々はナルシシズムから極力脱却しようと試みる一方で、正当な自己愛を失わないように気を付けなくてはならない。自分をしっかりと見つめ、その弱さも醜さも受け容れずに目を背けたり美化したり、逆に激しく憎悪したりするのは、すべて「自己愛」ではなく「ナルシシズム」の仕業だ。

    「自尊心」は「自分を尊重する気持ち」だ。誰かに不当に貶められたりした時に傷つくのは、この「自尊心」だ。「不当に」といったのは、それが正当な批判であれば、自尊心は傷つかないからである。

    自尊心はナルシシズムではなく、公正なる自己愛によって裏付けられる。他人に避難されてカーッとなるのはナルシシズムだ。自己愛はそれが正当な批判であれば謙虚に受け入れ、的外れだと感じれば冷静に反論する。ただ、批判ですらない根も葉もない誹謗中傷に関しては、それがたいてい陰口という形をとるために反論する機会すら与えられず、自尊心が深く傷つく羽目になる。

    うさぎさんの思考からは哲学的なものを感じ、どんどん深いところまで掘り起こす。

    その日のちっちゃな嬉しさや楽しさ、他者から評価されたことではなく、自分の感覚や判断を大事にした喜びを味わっていきたいところ。でもこれからも「持っているもの」の喪失は、「生」と切り離すことはできない以上、弱ったときには弱っている自分を認めたいな。

    話は外れるけれど、前の総理。弱者の立場とか、地方を大切に、と善を装っているけれど、根底に彼の「ナルシシズム」と「自分は被害者」の体がプンプンするんだよなあ。私の印象。この人も他者の目を意識して「自分は善」だと言い切るけれど、批判や他者の視点は謙虚には受け入れず、後ろから撃つのはお上手。私も気を付けたいところだけれど、これも人間本来の弱さや脆さでもあり…。

  • 『脳はみんな病んでいる』を読んでうさぎさんに興味持ったけど、内容や考え方は共感するところもあるのだけど、
    文章や選んでる言葉が好きではなく、読むのにちょっと苦労した。
    でも、今後どうするのかなあと、興味ありあり。

  • 自分を客観的に見据えること。著者が興味を持っていたとはいうが、わかりにくい自我、自己愛といったものをわかりやすく表現しているところは素晴らしい。2018.11.16

  • 中村うさぎ「女王、地獄から生還す!」(聞き手:中瀬ゆかり) in東京 - パスマーケット
    https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01gkk1ze212c.html?event_id=01gkk1ze212c&referer=x558cEU-

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    死の淵から三度の生還を果たした女王を待っていたのは、薬の副作用による人格変容の恐怖だった――。レギュラー番組降板の内幕、これ以上ないほど考えた生と死、そして他者の目を気にし続ける自分について。噓のない言葉で自分も相手も丸裸にする「うさぎ節」が炸裂! 笑って読めて身に沁みる、比類なきドキュメント。
    http://www.shinchosha.co.jp/book/134175/

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著者プロフィール

1958年2月27日生まれ。
エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学 文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以後、エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、美容整形、デリヘル勤務などの体験を書く。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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