一輪 (新潮文庫 さ 28-2)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101342122

感想・レビュー・書評

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  • 自分の人生において、オーバーラップする部分があり、非常に感情移入をしてしまった作品である。

    間違いなく、人生観を変えた1冊である。

    が、しかし。
    これ程プラトニックな人生はおくれていない。

    非常に理解にできにくい、特に女性にとっては(経験者以外)理解しがたい職業である風俗嬢を職業にする女性にスポットをあてた小説であるが、下卑た描写もなく、さらりと読めると思う。

    心地よい痛々しさが読了後に残ります。

    その他、1編収録。
    こちらも風俗嬢が主人公。

    私小説という事。
    それを思わせる、本編主人公とおぼしき女性へ宛てた手紙形式の「Dear・・・文庫版のあとがきにかえて」まで読んでいただきたい。

    最後に、この作家はもっと評価をされても良いのではと思う。

  • 大学1年の時、ちょうど路線乗り換えで時間があり、駅前の本屋に入った際に目に留まった1冊
    題名に惹かれて購入

    中編2編を収録した1冊

    物語は、電気工の青年と風俗で働く女性の接点から始まる。
    電気工の青年は、昼休みの風俗店に修理に訪れる。
    お昼ご飯を食べている風俗嬢に電気工は一目ぼれをする。

    以来、客として青年は彼女を指名するようになる。

    アスベストで病を患った青年と、家族を支えるために風俗で働く女性

    不器用でいて何とも暖かく切ない男女の悲しい恋物語

  • 20年ぶり?に再読。

    奥付は平成九年二刷り

    昔読んだ時は、なんだか居た堪れなくなったような
    なんか、ちょっとこんないかにもなのって、ちょっと。
    と思ったのを覚えてる。

    歳をとってどこかが鈍感に、若い痛みの記憶が遠くなって
    今読むといいなと感じる事が出来る。

    ラストの記憶が全然なくて驚いた。
    これはやはりそういう事、だよね。

    丙午の彼女が21歳、同伴喫茶だの、「俺」にカラーテレビの普及の記憶があったり。
    時間は流れてるのだなぁ。
    彼女目線の「ポートレイト」は名前とか設定の違いがいまいち乗れず。
    一輪だけの評価。

    佐伯一麦氏も、仙台一高で電気工で私小説家でって、
    ブンガクだなぁ…

  • 佐伯一麦(かずみ)。珍しい名前ですね。
    2編の小説とも同じような背景で描かれます。片方は男性を主人公とし、もう一方は女性を主人公にして。自伝的小説だそうです。
    どことなく一言ずつ紡ぎ出されたような文章が魅力的です。淡々と底辺の愛情物語が生み出されて行く。過激さはまったく無いけれど、どこか静的な力を感じさせます。
    一種の私小説でしょうね。こういった私小説的な世界は既に過去の遺物ではないかと思っていました。しかしこの作品は、著者の身勝手とも言える想念を描くのでなく、一旦客観化している感じがあり、新鮮さを感じました。
    耽溺したいとは思いませんが、良い作品でした。

  • 自分のイメージする、昭和時代や平成の初頭は、表題作の主人公のような不器用なのにキザな人が多いような印象がある。
    電気工で稼ぎ、その仕事がきっかけで知り合った女性と仲を深める。読者が恥ずかしく思ってしまうくらいに、送られるプラトニックな純愛は、量こそ短いけれども、訴えかける強さのようなものに打ちのめされる。タイトルの「一輪」はまさに、この物語の美しさと儚さを兼ね備えている。

  • 2011/2/7

  • アスベストに侵され明日もしれない男と、前夫の影に怯えながら体を売って生きる女の邂逅を描いた物語。

    設定といい、登場人物の台詞回しといい、何もかもが一昔前のドラマみたいなコテコテさでクサい。しかし、それが持ち味であり、そういう類の作品の中では王道を行っているような気がする。

    ページは少ないが、個人的にはこの退廃的で不器用な雰囲気が好きなので、とても楽しめた。

  • 風俗嬢のお話なんだけど、あんまりエロチックじゃない。爽やかに読めて、気分がすっきりする。まさかの最後の文章と淡い恋心に心燃やしました。青春とかロマンとかで修飾される小説でっせ。いやあ、こういう恋愛をしてみたいです。電気ビリビリ。

  • 風俗ルポどころか立派な純愛モノなんだもの、恥ずかしくなっちゃったよな。しかしながら、この「一輪」は、今までに読んできた佐伯作品の中でも上位としたい。誤解があるといけないので、決して風俗嬢の技巧に関心したからではないことをここに明記しておく。

  • 佐伯一麦の初期作品では一番好き。

  • 2010年2月17日(水)、読了。

  • 「一輪」のみ再読。
    何の事件もない淡々とした雰囲気が好きです。あとラストも。
    最後の一文、もたつきを感じますけど良いんだ!好きだから良いんだ!

    不器用な男と女ですな。人間、器用じゃなきゃ幸せになれんのだろうか。

    09.06.22

  • 知り合って、気持ちが近づく感じがとても ささやかで いいなぁどうして、うまくいかないの?

  • たとえば・・・

    誰かにもらった一輪の花。
    早く持ち帰って、水につけてやらなくちゃ。
    そう思いながら帰りそびれる。
    まだ大丈夫。まだ平気。
    次に気づいた時には萎れてる。

    ほんのちょっとの、一瞬の、でも取り戻せない哀しみ。
    深刻じゃないけど、鮮やかに胸を刺す痛み。

    読み終えた時、そんな事を考えた。

    イマドキなんて・・・ってなくらい不器用な世界。

  • 古臭いといってよい純愛小説だし収録2編は同じ題材を扱っているが、読ませる面白さはある。しかも、これは「私小説」らしい。

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著者プロフィール

1959年、宮城県生まれ。84年、「木を接ぐ」により海燕新人文学賞、91年、「ア・ルース・ボーイ」で三島由紀夫賞、「遠き山に日は落ちて」で木山捷平文学賞、『鉄塔家族』で大佛次郎賞、『山海記』で芸術選奨・文部科学大臣賞文学部門を受賞。ノンフィクションに『アスベストス』、エッセイに『Nさんの机で ものをめぐる文学的自叙伝』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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