- Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101342719
感想・レビュー・書評
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反対派の人は、要は「新しいことを始めるにあたっての責任」から逃げたいだけなのでは? 前例にしがみつく悪しき風習を改めてみてしまった気がする。前例がないのなら、かつてない対応をすべきとは考えないのだろうか。
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その当事者にならないと
本当のことはわからない
もちろん、そうであろう
でも真のノンフィクションはそこを
きちんと届けてくれる
「犯罪被害者基本法」成立にいたるまでの
犯罪被害者やその家族に襲いかかる信じがたい理不尽な事実をていねいにていねいに綴られている
その苦しくつらい思いにちゃんと寄り添われる東さんは本当のジャーナリストだ -
とにかく読んで良かった。
当事者にならない限り、対岸の火事としか思わないであろう犯罪被害者の悲惨な現状と権利を勝ち取るまでの話である。
テレビも見てみたい。
現在の被害者たちがどうなっているのか、法律の改正が行われたのか気になる。 -
(2015.05.21読了)(2010.10.31購入)
450頁ほどあります。300頁を超える本は、敷居が高くて読み始めるのに覚悟がいるので、裁判関連の本を読んでいるついでに、読み始めました。
読み始めたら、ぐいぐい引き込まれて思ったより早く読み終わることができました。
裁判は、国が公の秩序を守るために犯人を裁くのであって、被害者のために行われるのではないのだそうです。従って、被害にあった本人や親族は、聾桟敷に置かれ、知りたいことを知ったり、被害の補償などは、お金をかけて民事裁判などを起すしかなかったとか。
裁判を傍聴するにも、特に優先権はなく、犯人の証言に有効に反論する権利もない状態だったとのことです。
怪我などを負って、治療する場合も、犯人から治療費を取れる可能性があるので、とりあえず、100%負担で治療費を支払わなければいけなかったとか。
犯人の人権は、いろんな形で保障されているのに、被害者には、何の権利も認められておらず、被害にあったうえに、多くの苦しみを負わされている状態だったということです。
この本は、犯罪被害者たちが連携して、権利を保障してもらう一歩を踏み出すまでの記録です。
【目次】
プロローグ 踏み出した一歩
第一章 犯罪被害者の過酷な生活
第二章 弁護士から被害者に
第三章 ゼロからのスタート
第四章 二つの動き
第五章 大会前夜
第六章 第二回大阪大会
第七章 支援の広がり
第八章 立ちはだかる壁
第九章 ヨーロッパ調査① 被害者の参加
第十章 ヨーロッパ調査② 補償と支援
第十一章 街頭署名
第十二章 約束
第十三章 逆転
第十四章 基本法
第十五章 基本計画
第十六章 法改正とこれから
あとがき
解説 重松清
●医療費(33頁)
(被害者)「それは本来加害者が払うものだから、加害者に請求してください。加害者が払うべきものを、私たちが払ったら、加害者を助けることになる。どうか分かってください」
(医事課)「私たちは加害者とは関係ない。加害者が払わない以上、あなたが払うべきだ」
最初、二百数十万円だった請求額は、退院後、いつの間にか、四六五万円になった。
●医療費(38頁)
通り魔殺人事件の被害者の家族の中には、事件後、数百億円の救急治療代を請求され、愕然とした人もいる。面識のない非行グループから集団暴行を受け、重い後遺症に苦しむ息子の治療費やリハビリ代を、長年にわたって払い続けている家族もいる。
●遺影(54頁)
欧米では、すでに常識になっている、被害者の遺影の持ち込み。日本の裁判所にも、遺影を持ち込んではいけないという規則はなかった。
●公判記録(55頁)
岡村さんは、せめて、公判記録を見せてもらえないかと、裁判所に依頼した。しかし、これも裁判所は拒否した。(岡村さんの妻が殺害された裁判の公判記録)
●犯罪被害者給付金(74頁)
「全国犯罪被害者の会」が発足する二年前の1998年一年間で、殺人によって亡くなった被害者の数が、1388人、傷害事件で負傷した被害者が、1万9476人であるのに対し、犯罪被害者給付金の支給が決定されたのは、殺人事件の遺族で225人、自らが負傷した被害者でわずか3人であった。
●被害者(91頁)
被害者には何の補償もない、国は何の保護も与えない、加害者を処罰するのも国の利益のために処罰するのであって、被害者のために処罰するのではないというのが、我が最高裁判所の判決であります。
●プライバシー(166頁)
誰にでもプライバシーはあります。だけど、傷つけられた被害者にはプライバシーがなく、加害者にはプライバシーがあるのは、矛盾がありすぎます。わたしは家族がいつ襲われるかもわからず、毎日、不安を感じています。
被害者には、出所情報を知る権利を確立してほしいです。
●公訴参加制度(234頁)
『被害者』が、『公訴参加人』として参加することで、たいへん、裁判がスムーズに進むことが多いのです。それが『公訴参加』制度の、一つの大きなメリットと言えます。なぜなら、被害者は事件のことについて、最も深い関係をもっている当事者だからです。当事者がすべて法廷にそろうことで、裁判官は、さまざまな角度から、事件の内容をより深く知ることができます。
●二次被害(267頁)
被害者というのは、事件の被害によって、想像を絶するくらい、深く心を傷つけられているわけです。その被害者が、難の支援もなく、傍聴人と同じ立場で、刑事裁判所に行って傍聴すれば、加害者やその弁護人の供述などで、二回目の傷を受ける可能性が非常に高いわけです。
●導入すべき制度(278頁)
①犯罪被害者の公訴参加制度
②付帯私訴制度
③公費による被害者代理人制度
●無罪推定の原則(314頁)
「無罪推定の原則」とは、最終的に被告人が有罪の判決を受けるまでは、「無罪」という推定のもとで、被告人の人権を尊重するという原則である。
●被害者の権利(375頁)
犯罪という一個の行為は、社会秩序違反という面と被害者等の利益を害するという面をもっている。被害者等は、刑事司法についても保護されるべき利益をもっている。
事件の真実を知りたい、被害者等の名誉を守りたい、加害者に対して適正な刑罰権を課してほしい、という利益である。
☆東大作さんの本(既読)
「平和構築-アフガン、東ティモールの現場から-」東大作著、岩波新書、2009.06.19
☆関連図書(既読)
「なぜ君は絶望と闘えたのか」門田隆将著、新潮文庫、2010.09.01
「犯罪と刑罰」ベッカリーア著・風早八十二訳、岩波文庫、1938.11.01
「裁判員制度の正体」西野喜一著、講談社現代新書、2007.08.20
「裁判員法」船山泰範・平野節子著、ナツメ社、2008.06.09
「裁判員のための刑事法入門」前田雅英著、東京大学出版会、2009.05.15
「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」北尾トロ著、文春文庫、2006.07.10
「裁判長!おもいっきり悩んでもいいすか」北尾トロ・村木一郎著、文藝春秋、2009.05.15
「ぼくに死刑と言えるのか」北尾トロ著、鉄人社、2009.07.30
「きみが選んだ死刑のスイッチ」森達也著、理論社、2009.05.21
「殺人者たちの午後」トニー・パーカー著・沢木耕太郎訳、飛鳥新社、2009.10.20
「あなたが裁く!「罪と罰」から「1Q84」まで」森炎著、日本経済新聞出版社、2010.11.05
(2015年5月28日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
知らなかった…これはあまりにも理不尽です!妻を殺害された弁護士、ガソリンをかけられたOL―加害者を裁く刑事裁判にも参加できず、補償も受けられず、医療費すら自己負担を強いられて、一人で苦しんできた犯罪被害者たち。その一人ひとりの悲痛な訴えが、ついに国を動かし、画期的な「犯罪被害者等基本法」が成立した。「全国犯罪被害者の会」2992日の記録。 -
買ってよかった。
とにかく、悲惨な被害者の現実と被害者の権利を勝ち取るための苦難の連続が詳細に書かれていた。
人前では読めない、苦しい作品だった。
人は、自分自身や近しい人が被害者・加害者にならない限りどんなに悲惨な事件も日常生活からは薄れる。
それは仕方のないことだし、誤解を恐れずいえば必要なことですらあると思う。そうしなければ、普通の日常生活を送り、労働し、幸福になることが困難であるからだ。
大切なことは、事件を知っていること、被害者の苦しみを知っていることだと思う。被害者は、まず加害者から、そして社会から被害を受ける。そのことを踏まえ、事件を見ていきたい。
マスコミは「我々には報道する義務がる」といい、被害者家族の生活を脅かす。素人からすると、「より悲惨な姿、より消費者に”可哀想”と思わせる”絵”をとる権利がある」ということかなと思ってしまう。
確かに、言論の自由は先人が、それこそ命を懸けて勝ち取ってきた大切な権利だと思う。
でも、身内を殺された被害者をもう一度殺してまで主張すべきことなのか?と疑問を持った。
鈴木伸元先生の「加害者家族」という本も読んだが、犯罪は本当に関係者の人生を破壊する。
気になる点が一つあった。
火傷を負った女性に対面した際、「美しい彼女が、このような目に遭ったことの悲劇性が、自分の想像を超えていた・・・」と書かれていたが、「美しい」という言葉に違和感を覚えた。「若い」等であればスムーズに読めた気がした。 -
日本は犯罪被害者に対する支援が遅れている。『むかついたから』『いらいらしてたから』『友人をかばったから』などの理不尽な理由で、子供や妻を殺害され、一生治らない体にされるその痛みを和らげる暖かい国ではない。心の傷のケアだけではなく、介護・治療にかかる多大な費用も十分な支援を受ける制度がない。加害者の人権や損害賠償支払い能力がないという理由で、守られる理不尽さ。相も変わらず役人・警察は社会的弱者には冷たい。
子供や家族を失ったときに自分はどうするだろうかと考えると正直、理性を保持することができない。そんな印象をもった作品だった。 -
あまりにも理不尽な犯罪被害者への対応。
そして、その理不尽さに立ち向かう全国犯罪被害者の会。
彼らの活動を追ったルポ。
とても考えさせられる本です。 -
NHKのドキュメンタリー番組を書籍化したもの。日弁連副会長まで務めた弁護士がその妻を殺されたことで犯罪被害者やその家族が置かれていた惨状に気づき、同じ苦しみを味わっていた人たちと協力して国による補償や裁判に参加する制度の実現を求めて運動し、要求を実現していくまでの苦闘の様子を追っている。
民事で訴えても損害賠償を実際に払われる割合は相当低いこと(殺人事件だと7%とか)、そのため犯罪によって強いられた医療費を被害者が自己負担していること、被害者や遺族は刑事裁判の訴訟記録さえ見ることが許されていなかったこと、被害者や遺族は裁判の傍聴席を一般人と同じように抽選で確保しなくてはならなかったことなど、犯罪被害者のことを全く無視してきた日本の司法制度(とそれを担ってきた法曹たち)の惨状に衝撃を受ける。(運動の成果もあり、これらは改善されてきている。)
この本は外国の制度の紹介とかもあってNHKらしい包括的で堅実な作りだけど、犯罪被害者同様、自分に非がない(ことも多い)病気の人たちとの位置づけや扱いの違いはどうなっているのか/どう考えているのかが疑問として残った。