ハイスクール1968 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101343716

感想・レビュー・書評

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  • 1968年、高校生の著者が見た60年代の終焉、いや、真にあらゆる価値観が根底から問われなおされたあの時代の終焉を、みずからの内的経験との関わりの中で綴る批評的自伝。思考し、表現し、その営みの中にみずからの存在を確認しようとする試みの意味を再確認できたように思います。
    四方田犬彦の名をはじめて意識したのはいつの頃だったろうか。大学生のころに背伸びをして手にしたユリイカか、現代思想か、それとも、すでにカオスの手前にあったガロだったろうか。近年ではパゾリーニの詩集の美しくも痛切な翻訳で四方田犬彦を再認識してはいたが、これほどまでに深刻な葛藤を乗り越えてきた思想家であったとは分かっていなかった。
    私より16歳上のこの世代がどのように高校時代を過ごしたのかを今この一冊から知り、四方田が傾倒した文化や著作が、私の青年期に親しんだものとの共通性に驚く一方、そこからすくい取ったもののあまりの相違に自分の浮薄さを改めて認識するばかりである。
    いずれにせよ、この本は、もっと多くの世代に、多くの人々に読まれるべきものと思う。出版社で絶版らしいのが残念。

  • 四方田犬彦 「ハイスクール1968」 表紙 モンキーパンチ


    著者の1968年〜72年の映画、音楽、詩の趣向遍歴や 高校紛争のことを語った本。その時代の雑多感や危機感は感じた

    冒頭のエピグラフとエピローグ(18才と50才の四方田犬彦の対話)から想像すると、高校紛争について 最後に語るために この本を書いた ということだろうか?

    ベトナム戦争、パリ大学の反ドゴール、キング牧師の暗殺〜べ兵連のデモ増加〜あらゆる事態が蟻地獄を滑り落ちるように エスカレート

    その中で 危機の臭いを嗅ぎ取っていたが、そのありかを見定めることができなかった



  • 四方田が好きな方は、やっぱり読んでおくしかないかな。1960年から70年の青春。遅れてきた全共闘世代の鬱屈。同じ世代はきっと共感する。もっとも、当時の同級生から嘘ばっかり書くなと糾弾されているという、スキャンダルがらみでもおもしろい。いろいろあるねえ。

  • 四方田さんの高校時代を振り返るエッセイ。すごい事細かに書いてあって、まるで個人的な思い出話におつき合いしているようでもあるんだけど、そのわりには退屈せずに読めた。それはなぜかと考えてみると、同級生とか交歓する人たちが、今は著名だったり一門になっている人の若かりし姿だったりするからだろうか。いや、ほんと頭のいい人たち、突き抜けた人たちはつながっちゃうもんなんだなあって思った。
    読んだ本や聞いた音楽、考えていたことなどが鮮やかに綴られていて、人ってこんなに若い頃のことを覚えているものなのだろうか。翻ってわが身を考えると、何とも無為に生きていたんだなあと思うばかり。一方で、こういうのって男性的だよなとも思った。何とも主体的、自分が人生の主人公になっているという意味で。
    四方田さんって何となくやさぐれて生きているような気がしてるんだけど、その原点ともいうべき、裏切りにあったときの衝撃なども書かれていた。それは高校闘争に絡んだ教室のバリケード封鎖の一件なんだけど、こういうことを一生引きずって生きてしまう人もいれば、しれっと忘れて生きていけてしまう人もいるんだよなあ……。

  • 【本の内容】
    相次ぐ大学封鎖に揺れる1968年の東京。

    高まる反体制運動の機運のなか、時を同じくして到来した若者文化の波は、進学校の雄「教駒」に進んだ15歳の少年を瞬時に捉えた。

    ビートルズ、ゴダール、吉本隆明など、あらゆる価値観を熱狂と混沌に導く新しい表現者たちに、感じやすい心は何を見たのか。

    同時代の文化状況を仔細に再現・検討し、自ら身を投じた文化的洗礼の意味を問う批評的自伝。

    [ 目次 ]
    第1章 1968.4
    第2章 1968.7‐12
    第3章 1969.1‐7
    第4章 1969.5‐11
    第5章 1969.12.8‐1970.1
    第6章 1970.2‐1971.3
    第7章 1971.4‐1972.3
    エピローグ 十八歳と五十歳の四方田犬彦の対話

    [ POP ]
    大人が語る大学闘争、思い出したようにテレビに映し出されるあさま山荘事件。

    あの時代に何かがあったことはわかるが、後の世代の私にはそれが何かよくわからなかった。

    1968年、高校1年生となった著者の、大学闘争の影に隠れ埋もれてしまっている高校生の政治活動と、当時の空気感を残したいという気持ちがよく伝わってくる。

    東大への進学者を多数輩出している進学校、“教駒”で中学校からの持ち上がりの真面目な優等生が、ビートルズやロック、多数の文学や映画に影響される興奮と、周囲で巻き起こる反戦や体制への反抗の数々を目の当たりにし、翻弄されて傷ついて行く姿。

    その中で彼らは、なんと前向きで行動的で積極的なのか。

    それが、時代だといえばそれまでだけど、驚かされるばかりだった。

    私の記憶では、この時代について特に教えてもらった覚えはない。

    まだ、客観的に扱うのは早いのかもしれない。

    60年代後半の流行と真実を知りたければ、この本を読んでもらいたいと思う。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 再読。ああ、面白い。

  • 映画をメインに文学、漫画、都市論といった領域で批評活動を続ける批評家・四方田犬彦の自伝です。1960~1970年代というのはなんとなく気になっている時代なので読みました。


    青年期の鬱屈

    本書は著者の高校時代から大学時代の自伝です。歳も歳なので、それはもう鬱屈とした思いが溢れ出ております。周囲と自分との温度差。仲間。本。音楽。映画。詩。批評家として多才な活動をする著者の原点がここにあるのだと思います。


    時代を知る

    冒頭に書いたように、本書を読んだ目的は1960~1970年代の空気感を知ることにあったわけですが、それは見事に達成されたといえます。

    初ビートルズ体験、サイモン&ガーファンクル、ドアーズ、平凡パンチ、COM、コボタン、(スペクテイターで知りました)寺山修司、天井桟敷、横尾忠則、永山則夫、中上健次、全共闘、高校紛争、ヒッピー、ヴィレッジ・ヴァンガード(ジャズ喫茶の方です)…。

    特に、全共闘に関しては、著者の体験が細かに書かれてあり、その一歩距離を置いた姿勢も含め、空気感を見事に伝えてくれています。また、中上健次や永山則夫、寺山修司と同時代だけあって、天井桟敷を観に行ったり横尾忠則が有名になる過程をリアルタイムで見たり。

    小沢征爾や水木しげるの自伝を見ても思うのですが、今の巨匠も昔は若造だったのです。その若造と同時代を生きる。きっと今だって未来の巨匠がそこら辺にいるはず。なんだかワクワクしてきます。


    全共闘と反原発デモ

    さて、話は変わりますが、この文章を書くために、付箋の部分だけですが読み返してみて、近頃の反原発デモについてもいろいろ考えさせられます。

    全共闘の時代背景。体制に回収されていく過程。全共闘は豊かな生活とデモの間にギャップがありましたが、今のデモは福島原発事故の影響でそのギャップが少なくなっています。まだ、デモの影響力は少ないですが、今後どうなっていくか予断を許さないと思っています。ただ、個人的には、この国がデモで変わるということをイメージできないので、このデモをどう着地させるのかに興味がありますね。


    過去を知ることで現在を知る

    反原発デモについてもそうですが、現在に何が起きているかを知るためにも過去を知ることは大事だと思います。本書は、当時の空気感を知りたい人、全共闘を知りたい人、デモを知りたい人、そのほかサブカルを知りたい人に参考になる本でしょう。

  • もうほんとこういった人の半生を垣間見る度にやっぱ人生の使い方が違うな…と途方に暮れてしまう。尊敬

  • めくるめく60年代の青春。そして暗い70年代の予感。
    歳月の鉛へ続く。

  • 単行本で一度読んだ。再読。
    高校生とは言え、立派に「大人」だったんですね。

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著者プロフィール

四方田 犬彦(よもた・いぬひこ):1953年生れ。批評家・エッセイスト・詩人。著作に『見ることの塩』(河出文庫)、翻訳に『パゾリーニ詩集』(みすず書房)がある。

「2024年 『パレスチナ詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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