飢えて狼 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 162
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101345178

感想・レビュー・書評

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  • 母がくれた何冊かの中に入っていた。母もわたしと同じで(いや、わたしが母に似ているのだな)ひとりの作者を読み始めると、何冊も同じ作者の作品を読むという傾向がある。
    随分前に、「志水辰夫って面白い?」と聞いてきたので「いいっすよ。渋いおっさんの、地味な話書かせたらうまい」と言ったのだけれど、母が選んでいたのは、シミタツ初期の冒険小説シリーズだった。

    これが志水辰夫デビュー作。うまい人は最初からうまい、という見本だ。
    最初からアクセル全開、事件につぐ事件。それに否応なしに巻き込まれていく主人公の姿は、とてもシミタツ作品とは思えない。けれどそこここにある、いわゆるシミタツ節や、内省的である意味やけっぱちな主人公は、ああシミタツだ、とほっとさせられる。


    この作品の見所はなんといっても、ベールに包まれた土地である北方領土が舞台に選ばれているところだ。
    第2部は択捉島と国後島が舞台になっているのだが、そこの土地の空気や藪の感触(これは田舎育ちじゃないとわからないかも)、夜の冷たさなどが実にリアルに伝わってくる。
    行ったことがない土地の映像を、ここまで鮮明に読者に伝えられる文章力を、まざまざと見せつけられて、あとがきで読まなければ、これがデビュー作とは気づかないくらいだ。

    惜しむらくは、主人公の渋谷と、ヒロイン格の順子との関係が曖昧なまま終わってしまったところか。
    国際防諜戦争から択捉島への侵入、日本への脱出、と息もつかせぬ冒険小説として成り立っているため、渋谷の女性関係についてまで、書く余地がなかったのかもしれない。
    その気持ちが爆発したのが、最近の作品なのかなと思うと、興味深い。

  • 前半は良かったのだけれど、第二部に入ったあたりから段々ごちゃごちゃになってきて、第三部でなんとなく全体像がつかめた。

    山男だったマリーナのオーナーが、ある特殊任務を依頼される。でもそこには国家ぐるみの陰謀が犇めいていて、主人公だけでなく彼の恋人(?)順子も巻き込まれていく。

    本当に順子さんがかわいそうだったよ。
    思いを寄せる相手とは真に分かりあえない。なんという辛さだろう。それがひときわ印象に残った。

  • 『北』は北でも北方領土が舞台のハードボイルド。守りたいのは何なのか?願いは何なのか?分かっているが形にできない不器用な男の話。何回も『転ぶ』のでちょっと難しい。

  • 古本屋で見つけてあまり期待せずに買ってみたけど、
    思ってたよりは面白かった気がする。
    生まれて初めて読んだハードボイルド小説。
    ストーリーは面白いんだけど、ただあまり感情移入ができないというか、
    主人公の身近な人が結構犠牲になるけど、描写がさらりとしてるというか。
    そこは置いといて二部での北方領土からの脱出はハラハラした。
    蛭間じーさんと別れる場面は切ない。
    北方領土の見方が変わった。

  • 人殺しに追われる主人公の逃げる
    筋、読んでいてはらはらどきどき

  • いまいち面白く読めなかったが、志水辰夫作品を読んでみようと思える作品だった。
    『裂ける海峡』と『背いて故郷』も読んでみようと思う。

著者プロフィール

1936年、高知県生まれ。雑誌のライターなどを経て、81年『飢えて狼』で小説家デビュー。86年『背いて故郷』で日本推理作家協会賞、91年『行きずりの街』で日本冒険小説協会大賞、2001年『きのうの空』で柴田錬三郎賞を受賞。2007年、初の時代小説『青に候』刊行、以降、『みのたけの春』(2008年 集英社)『つばくろ越え』(2009年 新潮社)『引かれ者でござい蓬莱屋帳外控』(2010年 新潮社)『夜去り川』(2011年 文藝春秋)『待ち伏せ街道 蓬莱屋帳外控』(2011年新潮社)と時代小説の刊行が続く。

「2019年 『疾れ、新蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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