美の世界旅行 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101346236

作品紹介・あらすじ

70年代、稀代の芸術家は世界を旅した。恐れと憧れを抱き続けたインド、熱く壮大なスペイン、全身が震えるほど愛するメキシコ、人生観が変わった韓国……。各国の建築と美術を独自の視点で語り尽くし、現地の人々の暮らしに生身で入り込んでゆく。美の世界旅行、それは、太郎にしかできない太郎全開の旅――。長年の時を経ても驚くほど新しく瑞々しい、世界旅行の全記録を初めて文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 岡本太郎のインド、スペイン、メキシコ、韓国滞在記。行ったことのないインドと韓国は、へーそうなのかという感じだったけれど、共通しているのは外から押し付けられた価値観、インドで言えば統治国英国の美術、スペインで言えばイスラム文化を否定するためのカトリック文化の魅力のなさが強調されている点で、その「外来文化」への批判が面白かった。日本で彼が嘆いていた西洋美術への追従に共通するものをこれらの国でも感じたという点で、西洋以外にいくとどこでもそんな感じなのかもしれない。残念ながら…

  • 宇宙はみな空に向かって開かれているものだと思っているだろうが、大地、つまり地の下に向かっても広がっている。

    ー岡本太郎

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/775204

  • 1970年代、当時50代であった著者が書き記した世界旅行記、岡本太郎という1人の人間のとてつもない知性と情熱に圧倒される一冊でした。

    自分は現在40代前半ながら、ここまで知性と情熱に満ち溢れた旅行記を書くことができるだろうか...。
    知識が豊富なだけでは決して書くことができない。年を重ね人間としての経験を積み上げて完成される世界観と信念があってこそ書くことができるはずだと思う。
    そして、それは絶対的な個性であって、この本の中身こそが岡本太郎さんあり、1つ1つの文章から人間としての強いカッコよさがひしひしと伝わってくる...!

    生を与えられた人間としての知性と情熱もうすこし燃焼させる気概で生きることが今の自分に大事なのかもしれない...、読み終えてのなんだかそう感じた。

    本書を読む前、晩年に世界旅行するモチベーションは皆無であったが、今は色々巡ってその時々で感じる自分の正直な気持ちと思いっきり向き合って旅行してみたい気持ちである。

  • サグラダ・ファミリアの個々の装飾は陳腐だが、全体としては神聖感でそそりたつ。

  • 芸術は爆発だ!の著者だけに、きっと激情が赴くままの様な文面と想像していた。けど大違い。確かに意志の力強さは放たれているが、見てきたもの、考えたこと、感動したことを表現する言葉は適格に選り抜かれ、色彩豊かでありながら論理的、読み手に伝えるその文章の精確さには驚かされた。仮に岡本太郎という芸術家に価値を置かなくとも、一冊の本として充分手に取る価値がある。今から40年以上前の紀行文だけに、今日既に失われたものも多いだろうが、それでもその地を訪れその美や息吹を感じたい旅愁に誘われるほど。戦前から芸術活動していた事績から歴史的人物の範疇に入りそうな人だが、本質を突いた卓見には今読んでも全く違和感が無い新しさがあった。

  • 『生命爆発紀行』

    岡本太郎が世界中を旅行し、その都度、ナマの体から湧き上がる思いを執筆した作品。
    印象に残っている話はメキシコだ。
    作品よりも、その作品の見えない裏側になにかとてつもない臭気の色や形が目を大きく見開いて鑑賞者につきつける感じ。
    そのナマな表現はこれからますます浮き彫りとなり、宇宙の誕生、ビッグバーンのような響きが伝達していく。

  • 太郎さんの感性には熱がある。生命の根源から湧き起こるもの、その熱量を感じるものが好きなのだね。訪れた土地や美についての語りが岡本太郎らしいんじゃないかと思う。触れた美術や文化、風習から命の躍動を感じ取り、その刺激に自身の魂を奮わせ創作に活かしていたのかな。おどけた顔をしているカバー写真。その両目は彼自身の宇宙に繋がっている。

  • 70年代インド、スペイン、韓国、メキシコと美術と建築を見つめた旅の記録。幻の名著が文庫化。現地の文化を吸収し感動をあるがまま書き連ねるバイタリティはそのまま太郎の作品のように迫力が溢れている。

  •  岡本太郎の文章って、よくわかんないんだけど、なんかパワフル。読み終わってから頭の中で反芻しても、けっきょく何だったっけ?となる。 でもその熱だけは胸に残る。

     巻末の解説によると、岡本太郎は「芸術はうまくあってはならない、きれいであってはならない、心地よくあってはならない」という三原則を唱えていたらしい。


     そんなものを凡人は芸術とは呼ばない。天才は感受性が違うらしい。


     冒頭は70年代のインドの旅からはじまる。この章が太郎の感性がもっとも敏感になり、躍動している。彼の美意識がよくわかる。静的できれいなものには目が向かない。暴れまくって猥雑なものに生命力を感じている。ガンジス河の川べりで沐浴する群衆のパワーに圧倒される。
     こういう現実を嫌悪する人は、そこに美を見いだせないが、太郎はそこに美を見出す。


     立ち止まって、目に美しく映るものが芸術ではなく、激しい奔流にもまれながら、魂が雄たけびをあげるような事象が好きなんだ。(自分でも何を言っているのかわからなくなってきたが、太郎の文章ってこんな感じ)
     山深い寺で座禅は組むのは死んでも嫌だが、ねぶた祭りでは先頭に立って山車を引き回すぞ!って感じか?


      自分が一番面白かった章はメキシコのところ。


     現在渋谷駅に常設されている「明日への神話」の制作秘話が興味深かった。あんな重いテーマを一流ホテルのロビーのメインに据えようとしたメキシコの精神性を褒めたたえている。
     生と死が日常のなかで隔てなく同居しているメキシコ(カラベラ祭りとかあるし)は、ケとハレの境を明確にする日本とは価値観が異なる。そういうところが居心地が良かったみたいだ。


     あんな大作なのに、渋谷駅であの作品に目を止めている人はそんなにいないと思う。みんな忙しく過ぎ去っていくだけ。もったいないなぁ。


     うん、我ながらひどいブクレポだ。


     でも太郎の文章は熱いぞ!
     それが伝わればいいや。

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著者プロフィール

岡本太郎 (おかもと・たろう)
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。『岡本太郎の宇宙(全5巻)』(ちくま学芸文庫)、『美の世界旅行』(新潮文庫)、『日本再発見』(角川ソフィア文庫)、『沖縄文化論』(中公文庫)ほか著書多数。


平野暁臣 (ひらの・あきおみ)
空間メディアプロデューサー。岡本太郎創設の現代芸術研究所を主宰し、空間メディアの領域で多彩なプロデュース活動を行う。2005年岡本太郎記念館館長に就任。『明日の神話』再生プロジェクト、生誕百年事業『TARO100祭』のゼネラルプロデューサーを務める。『岡本藝術』『岡本太郎の沖縄』『大阪万博』(小学館)、『岡本太郎の仕事論』(日経プレミア)ほか著書多数。

「2016年 『孤独がきみを強くする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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