黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3042
レビュー : 395
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347110

感想・レビュー・書評

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  • 19
    難解でもあるが、ある意味中毒症状に近い感覚で読み進めてしまうのは著者の特徴か。
    テーマはありがちな金庫破りだが、登場人物はクセ多く、独特。
    とにかく一癖どころか10クセある本著だが一読の価値はある。

  • 【衝撃の芋】
    華麗なタイトルですが、実際は地面に這いつくばって黄金を狙っているイメージです。

    福岡国際大学:まなみ

  • 面白かったと思う。

    映画化されたが、見ていない。
    見たいと思っていたが、まずは原作からと思って。

    程よいボリューム。
    場所が大阪だったので少しでも土地勘があればもっと面白かったか。
    まぁモモのスーパープレイとモルヒネに助けられているような感じ。

    なんで金塊なのかの説明はあったっけ?
    あとホモのくだりはいるの?

    ★は3。

  • まぁまぁ好き。読み終わった後に爽快感とモヤっと感が共存する不思議な本。

  • 娯楽小説と思って読むと肩すかしを食らいます。計画に至るまでの経緯や心理描写が薄いために金塊強盗をするに至る説得力に欠ける、という批判を多く目にしましたが、物語のメインとされる金塊強盗はむしろ物語のスパイスであり、高村さんが主題としたところはもっと別にあるように思います。主題を重視した結果、金塊強盗に関する各々の心理描写はあえて省略されているのではないかと感じました。
    物語の主題とは、”自我の目覚め”、”魂の救済”であり、高村さんの宗教観に基づき、幸田自身と幸田を取り巻く人間関係を通して以上の二つのテーマが描かれていると考えます。

    (以下幸田と北川のことしか語ってません)
    幸田を陰から思いやり見守る北川の行動に、『トーマの心臓』のオスカーに通じる優しい人間愛を感じました。表面的には男くさくて荒っぽい印象でけっこう怖い人なんですが、優しい人だと思います。
    幸田は北川の思いなどつゆ知らず、ひたすら人間のいない土地だけを求めて自分の殻に閉じこもります。他者を寄せ付けない人間嫌いの幸田。金塊強盗に関わる抱えきれないほどのしがらみや厄介事に直面し北川は、
    「なあ、幸田よ。人間なんて、面倒なだけだな……。この次に何かやるときには、もう仲間はいらねえよ。お前は、どうせ≪人間のいない土地≫へ行くんだろ?」- 141ページ
    という言葉をぶつけます。幸田を光の中に連れ出すことが自分には決してできないんだというやるせなさや、結局どこまで行っても人は一人で、他者と解り合うことはできないのではないかという北川の抱く孤独感が噴出した静かな悲しみを表す場面だと思います。

    一方幸田は、北川のあずかり知らぬところで、金塊強盗を通してモモとの関係を深める内に、その純粋さに触れることで救われていたんだと思います。
    奪取作戦の最中、北川と幸田はこんな会話をします。
    「なあ、幸田。お前、いつからモモと出来てたんだ?」
    「最近」
    「俺はなあ、人間嫌いのお前は一生、人とどうこうすることなんかないんだろうと思ってた。人間って変わっていくんだな……」 - 336ページ

    幸田は確かに変わりました。ビルから落下する直前、以下の独白があります。
    「ふと、≪自由だ≫と思った。これまで、同じようにしてビルの屋根から逃げたことは何度かあったが、自由の気分を味わったのは初めてだった。自由であり、少し孤独だった。≪人間のいない土地≫はもう、どうでもよかった。人間のいる土地で、自由だと感じるのなら。」- 347ページ
    幸田の生死は明らかにされていませんが、生きていればきっと幸田のこれからの人生はそれまでとは大きく違うものになったのではないでしょうか。

    「これは俺の想像だが、お前はもう、人間のいる土地でも何でもいいのだろう。きっとそうだと思う。こんなことを言うのは気恥ずかしいが、お前は確かに変わったぜ」 - 350ページ
    「うまく言えないが……俺はお前が、やっと訪ねてきてくれた、って気がするんだ。やっと、互いの顔が見えるところまで近付いた、って気がする。よく来てくれた。ほんとうに、よく来てくれた。俺は嬉しいぞ……!なあ、幸田よ」 - 351ページ

    幸田と北川、その思いは違ってもそれぞれに大きな魂の救済がある素晴らしいラストではないかと思います。
    読者視点では若干北川が報われてないようにも見えるんですが(北川が手を握ってあんなに熱く語ってるのに、幸田の心情描写はモモへ宛てた独白なんですよね。なかなか終始北川泣かせ)、実はそんなことは関係なくて、幸田に救いが訪れたことを北川は誰よりも喜ぶんだと思います。

    『ヨハネによる福音書3章』 -イエスは答えて言われた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも新しく生まれなければ、神の国を見ることはできない」

    「どこかへ運ばれていく。新しい土地が待っている、と幸田は思った」
    「そうだ、モモさん。俺はあんたと、神の国の話がしたいと思う。あんたとは、心の話がしたいと思う……。 」 - 351ページ

  • 井筒監督で映画化された作品の原作。映画自体が良く出来ていて、面白かったので、これは原作も面白いに違いないと読み始めた。
    大阪の銀行の地下金庫に眠る金塊を盗み出すために集まった男たち。まるで“オーシャンズ11”の様な話だが、舞台が大阪だけあってスマートさよりは、蒸し暑い夏の泥臭さに溢れたクライムサスペンス。
    裏切りと罪に満ちた過去や身内を犠牲にしても後戻りできず金塊目指して突き進む男たち。
    確かに面白かった。しかし、前半の準備期間の方が面白くて、いざ盗みに入ると、展開が少しあっさり進んでしまった。
    映画の方が、原作ではあっさり終わった部分をちゃんと拾って描いていた。些細な事だが、そういう部分は大事だと思う。
    因みに映画はほぼ原作に忠実だ。原作付きの映画が面白い時は、大抵原作を改変して、少し違うものにしていて、まぁ映画ならそれもありかなって思わせる面白さのパターンが多い。原作への忠実度が増すと、忠実だけど面白くなかったり…。でも、これは原作にとても忠実でそれでいて面白さを損なわずに映画化していてびっくりした。

    • hs19501112さん
      原作も面白く、映画も面白い・・・・。
      そんな作品なのですね。原作は最近読んで割と気に入っていたので・・・・・、

      このレビューを読んで...
      原作も面白く、映画も面白い・・・・。
      そんな作品なのですね。原作は最近読んで割と気に入っていたので・・・・・、

      このレビューを読んで、映画も観たくなりました。DVD化されているなら、正月休みにでも借りてこようか・・・と。
      2012/12/25
  • 読了後のあのなんとも言えない仄暗い気持ちが忘れられない。彼らはきっと神の国の話をしているのだ。計画に至る経緯だとか各々の心理がわからない、という声は多くの高村作品で言われることではあるが、私はこの作品にそういう描写は必要ないと思う。もっと言うならこの作品にいたっては、少なくとも幸田さんの心理は駄々漏れである。

  • 正直、読み進めるのが苦痛だった。強盗計画ながすぎ。描写がこまかすぎて、理解するのが難しかった。

  • 銀行の地下三階に眠る6トンの金塊。金額にして百億。それが彼らの目標だった。綿密に計画される強奪計画。しかし、敵は厳重な警備だけではなかった。北の工作員に左翼団体。虎視眈々と命を狙われながらも、しかし、彼らの信念もまた揺るぎなかった。三つ巴の戦いの中、果たして彼らは無事生き残ることができるのか。そして金塊強奪の行方は。アウトローに生きる者たちの戦いを描いたハードボイルドな犯罪小説。

    映像化されるということで再読。まさに高村薫の原点とも言える作品。北とか南とか左とか右とか、そういった政治の黒い部分を大胆に使いながら、状況描写のディテールにはとことんこだわる。高村さんの取材力の高さに改めて感嘆する。そしてアウトローに生きながらもどこか人間臭さを感じさせる登場人物たち。頼れるものがないからこそ、彼らの生き様もまたかっこいい。

    はじめて読んだときの衝撃はなかったものの、やはり名作だなあ、と。映像化向きの一冊。

  • 「はじめに金塊ありき」から始まる北川の真面目くさった宣誓が妙に好きです。
    彼らが銀行を襲うのは、金が欲しいからではないのです。(一人例外はいますが)
    「福沢諭吉だったら、やるきはない。金塊だから、やるのさ」ということです。
    でも、計画実行までの準備段階で、次々と色々なことが起こって、計画はがたがたのぼろぼろになっていきます。最終的に、6人だったチームも減ってしまったり…。そんなぼろぼろの状態で、それでもやるというところが、切ないような哀しいような。
    そんな中で、主人公の幸田は精神的にかなり成長したなあと思います。
    「人間のいない土地」へ行きたかったのが、「人間のいる土地」もいいと思えたということで。一番最後のページではうるっときてしまいました。
    あと、北川ってすごいと思う。あんなに他人の心を敏感に察知できる人ってなかなかいない。暴力的な面とのギャップも相まってかなり好きなキャラクターです。

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著者プロフィール

高村 薫(たかむら かおる)
1953年大阪市東住吉区生まれ、現在大阪府吹田市在住。国際基督教大学教養学部人文学科(フランス文学専攻)卒業。外資系商社の勤務を経て、作家活動に入る。
1990年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞、1993年『マークスの山』で直木三十五賞、1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞、2016年刊行の『土の記』では大佛次郎賞、野間文芸賞、毎日芸術賞をそれぞれ受賞し、新たな代表作となった。
『レディ・ジョーカー』を境として、重厚な社会派ミステリーから純文学に転向。織田作之助賞選考委員を務める。

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