黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 3047
レビュー : 395
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347110

感想・レビュー・書評

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  • 高村薫さんのデビュー作。やはり圧倒的な世界観でディテイルにこだわった描写がとてもリアル。舞台の肥後橋らへんで働いてたことがあるからあの辺はよく知ってるのでよりリアルだった。高村さんの作品を読んだのは「マークスの山」と「李歐」と読んで3冊目だけど、どれも主人公たちが排他的で孤独。「李歐」のときも思ったけれど、孤独な中でお互いを渇望してやまない男同士の友情というよりもっと濃密な関係が哀しいような、うらやましいような。映画化されたということで映画も観てみたいと思うけれど、はたしてこの世界観が表現しきれるのかどうか。

  • まぁまぁ好き。読み終わった後に爽快感とモヤっと感が共存する不思議な本。

  • 読了後のあのなんとも言えない仄暗い気持ちが忘れられない。彼らはきっと神の国の話をしているのだ。計画に至る経緯だとか各々の心理がわからない、という声は多くの高村作品で言われることではあるが、私はこの作品にそういう描写は必要ないと思う。もっと言うならこの作品にいたっては、少なくとも幸田さんの心理は駄々漏れである。

  • 「はじめに金塊ありき」から始まる北川の真面目くさった宣誓が妙に好きです。
    彼らが銀行を襲うのは、金が欲しいからではないのです。(一人例外はいますが)
    「福沢諭吉だったら、やるきはない。金塊だから、やるのさ」ということです。
    でも、計画実行までの準備段階で、次々と色々なことが起こって、計画はがたがたのぼろぼろになっていきます。最終的に、6人だったチームも減ってしまったり…。そんなぼろぼろの状態で、それでもやるというところが、切ないような哀しいような。
    そんな中で、主人公の幸田は精神的にかなり成長したなあと思います。
    「人間のいない土地」へ行きたかったのが、「人間のいる土地」もいいと思えたということで。一番最後のページではうるっときてしまいました。
    あと、北川ってすごいと思う。あんなに他人の心を敏感に察知できる人ってなかなかいない。暴力的な面とのギャップも相まってかなり好きなキャラクターです。

  • 映画化されるとのことで再読。やっぱり好きだ高村作品。男性作家よりもダンディな、硬質で脂分ゼロ、抑制のきいたストイックな文体で描かれるダイナミックな金塊強奪劇。そこまで必要?と思うほど精緻な描写は読んでて脳にこたえるけれど、ラスト、分刻みで描かれる犯行場面は目の前に映像が浮かぶよう。強奪劇と並行して進む人間模様がいい。虚無感、厭世観を抱えた幸田が、モモと心を交わす中で変わり、「人間のいない土地」から人間のいるところに一歩足を踏み入れたラストにじーん。そして愛すべきキャラクター・モモ。教会のシーンはやっぱり泣けた。この人の男同士の愛の描き方、露骨な表現がないのに匂い立つような深い関係性、切ったら血が出そうな絆の描き方が好きだな。☆ひとつ分は、北や裏社会との接点が伏線としていまいち活ききっていない気がしたから。

  • 主人公の幸田弘之は、大学時代から付き合いのある北川浩二から、銀行襲撃の計画を持ちかけられます。北川は、野田という男と、「ジイちゃん」こと岸口順三を仲間に引き入れ、幸田の知人で韓国人留学生の「モモ」こと宗隆生(チョン・ユンセン)にも手助けを求めます。

    北川たちは実行に向けて綿密な計画を練りはじめますが、そんなある日、幸田はモモが拳銃による殺人をおこなったことを知ります。

    一方、北川の弟の春樹は、暴走族グループ「吹田連合」とトラブルを起こし、幸田もそれに巻き込まれることになります。吹田連合のリーダーは、索光延(サク・グァンヨン)という男で、その背後にはモモを追う北朝鮮の影が見え隠れします。さらにジイちゃんにも、幸田とかかわる重大な秘密があることが明らかになっていきます。

    二度の改稿を経て文庫版になったというだけあって、綿密なストーリーと研ぎ澄まされたハードボイルドな描写が印象にのこる作品でした。

  • デビュー作がこの作品とは驚きです。
    後半に向けてのスピード感がたまりません。
    他の作品もとにかく読みたいと思わせる一冊です。

  • <u><b>大阪のど真ん中で起こる緻密な金塊強盗 〜でも、ボーイズラブは不要だと思うわけです!!〜</b></u> 

    だらだら読んでしまったが、非常に面白い作品。
    大阪にある住田銀行本店の100億円以上の金塊を強奪を目論む6人の男の物語。

    勘の良い方なら上記の名前だけでぱっと思いつくと思いますが、
    淀屋橋と肥後橋に本店を構える旧財閥系の巨大銀行です。
    あのレトロな感じの建物の…。

    それはさておき、読了まで1ヶ月もかかってしまいましたが、
    物語のスピード感が半端ないです。かくゆう私も、
    3分の2程度を三日間で読んでしまうくらいのめり込んでしまい。
    次々とページが進んでしまいました。

    物語としては、6人の男が金塊強盗を計画し実行するまでの流れを描いているのですが、
    それぞれの個性の濃い事濃い事。皆さんキャラが立ってます。

    映画版のキャスティングを見ても解りますが、非常に良い味が出てます。
    だって妻夫木/浅野忠信/桐谷健太/西田敏行/溝端淳平/チャンミンですからね。
    このキャスティングは納得です。

    映画版も見てみたいなと思う今日この頃。

    スカッとしたい人にオススメな一冊。
    でもね僕はボーイズラブ的なくだりはいらんと思うわけです。

    <blockquote><b><内容紹介> −Amazonより−</b>
    銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ。大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。圧倒的な迫力と正確無比なディテイルで絶賛を浴びた著者のデビュー作。日本推理サスペンス大賞受賞。 </blockquote>

  • 登場人物の癖の強いところが良かった。
    展開も楽しめた。

  • 冷血に続き高村薫2冊目。冷血とは違って熱いけど淡々とした感じは全体にある。面白かった〜映画みたい、と思ったら映画にもドラマにもなってたのか。登場人物が同年代でなんとも言えない気持ち。あと箱寿司と牛乳って食べ合わせ悪そう。

    大阪の土地勘がまったくないので思わずGoogleマップで色々調べてしまった。その分、少ししか出てこないけど長野や吉祥寺にワクワクした。ミエちゃんと国島の話はゾッとした。この人の、こういうゾッとさせるエピソードが、怖いんだけど好きだ。モモとか北川の弟の春樹とか、ジイちゃんとか、泥棒稼業とか、なんだかぼやっと伊坂幸太郎を思い出した。まったく色は違うけど何か彼女に影響受けてるのだろうか。

    この本で初めて飯場という言葉を知りました。他にもいくつかあったけど、飯場って一般人でも知ってる言葉なのか?意味の想像はつくが、小説家ってこういう言葉をどこで知るんだろう?いつか日常会話で飯場を使える日が来ないかと今から楽しみ。

著者プロフィール

高村 薫(たかむら かおる)
1953年大阪市東住吉区生まれ、現在大阪府吹田市在住。国際基督教大学教養学部人文学科(フランス文学専攻)卒業。外資系商社の勤務を経て、作家活動に入る。
1990年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞、1993年『マークスの山』で直木三十五賞、1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞、2016年刊行の『土の記』では大佛次郎賞、野間文芸賞、毎日芸術賞をそれぞれ受賞し、新たな代表作となった。
『レディ・ジョーカー』を境として、重厚な社会派ミステリーから純文学に転向。織田作之助賞選考委員を務める。

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