レディ・ジョーカー 下 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 157
  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347189

作品紹介・あらすじ

消エルコトニシタ…。レディ・ジョーカーからの手紙が新聞社に届く。しかし、平穏は訪れなかった。新たなターゲットへの攻撃が始まり、血色に染められた麦酒が再び出現する。苦悩に耐えかねた日之出ビール取締役、禁忌に触れた記者らが、我々の世界から姿を消してゆく。事件は、人びとの運命を様々な色彩に塗り替えた。激浪の果て、刑事・合田雄一郎と男たちが流れ着いた、最終地点。

感想・レビュー・書評

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  • 物語の上でも、一番の巨悪に手が届くことのないこの国。正義はどこに。

  • [上中下巻あわせて]
    グリコ・森永事件をモチーフとした文庫本3冊の長編小説。
    最近はノンフィクションばかり読んでいたので久しぶりに小説を読んだ。
    グリコ・森永事件は自分が幼少の頃にリアルタイムに体験した事件でもあり、当時の自分の微かで断片的な記憶も思い出しながらで、大変面白く読めた。

    読み終わって幾分モヤモヤしたものが残るけれど、最近の自分は「小説は読んでいる時間そのものが面白ければいいのだ」と思う。

  • 合田とレディ・ジョーカーチームの中心、半田がいよいよ直接対決。と、その前にレディ・ジョーカーから事件の幕引き宣言。そして、チームが分裂して、別のビール会社への攻撃がはじまる。社長誘拐、同業他社へ目標変更、青酸カリ混入と、当時のグリコ・森永事件の流れを忠実に再現している。

    小説の方は新聞記者の失踪あり、株屋の活躍あり、刑事の自殺ありと、事件の解明どころか、盛りだくさんの内容で混沌は深まるばかり。が、合田のワンマンプレーでなんとなく、ぼんやりと決着する。これは合田刑事シリーズの定番だ。

    20億円も奪った犯人の追及が甘い気もするが、グリコ・森永事件も未解決なのだから、こんなものか。

    それにしても、社会で取り残された人間が大事件を犯すという設定。この小説は現在の「格差」がクローズアップされる時代にマッチしている。

  •  目的を達したレディ・ジョーカーは闇に消えたはずだった。しかし新たな脅迫状が別のビール会社に送られ、事件は犯人グループの思惑を越え新たな展開を見せ、そして終焉を迎えていく。

     ようやく読み終えた…、と読後にまず思いました。完全犯罪が達成されたというカタルシスもなければ事件が解決された、という爽快感もこの小説にはありません。読めば読むほどに登場人物たちの葛藤、疲労、閉塞感、暴力衝動は深まっていき、それに姿が見えない政治や裏社会の闇が読むほどに深くまとわりつき、それが完全に晴れることはありません。

     合田然り城山然り、マスコミ然りそして犯人グループでさえも、”レディ・ジョーカー”が生み出した闇の流れにゆっくりと飲み込まれていったかのように読んでいて思いました。

     誘拐劇に企業への恐喝、そしてそれに立ち向かう警察というミステリー的な構図でありながら、この本の終着点はミステリー的な解決ではありません。この誘拐を通して浮かび上がったのは何者にも説明できない個人の感情や衝動、そしてそれと相克せざるを得ない企業や社会の論理、それに勝てないと分かっていながらも向かっていかなければならない人々の叫びと戸惑いだったように思います。

     そしてそうした叫びや戸惑いは、現代の社会にも残り続けているのだと思います。自分もそうしたものを漠然と感じていたからこそ、この小説に嫌気がさしながらも、登場人物たちがどこにたどり着くのか知りたくてページをめくり続けたのだと思います。

     合田の加納への最後の唐突な告白はちょっと違和感があったものの、それを差し引いてもこの作品の価値というものは揺るがないと思います。ラストの青森の描写も、この作品の終着点としてこれ以上ないくらいふさわしいものだったように思います。

     人は小説にこれほどまで情念というものを載せることができるのだな、と強く思わされた小説でした。


    第52回毎日出版文化賞
    1999年版このミステリーがすごい!1位
    このミステリーがすごい!ベストオブベスト9位

  •  ついに完結( ´ ▽ ` )ノ

     予想どおり、結末は曖昧模糊( ´ ▽ ` )ノ
     元ネタのグリ森事件じたいがそうだったから、しかたがないことだけどね( ´ ▽ ` )ノ
     自分でも理由の判然としない情動に突き動かされた男たちの犯行が、総会屋やら仕手筋やら政治屋やらに利用されて、結局だれにも全体像のつかめないもやもや不気味な代物に変じていくさまがみごと( ´ ▽ ` )ノ

     半田のゆるやかな発狂は、あんまりにもいろいろな出来事があったなかに埋没して、やや唐突な感(>_<)
     考えてみれば、物語スタート前から狂気への傾斜があったからこそ、ああいう犯行に及んだわけだけど……
     合田の「覚醒」も、本作だけ見ると急な感じはするけど、「マークス」「照柿」の後だから、むしろ遅すぎた気がしたくらい( ´ ▽ ` )ノ
     この「つぎ」の作品が書かれたらどうなるんだろう? イケメン刑事&検事のおっさんずラブ? 腐女子歓喜必死だね( ´ ▽ ` )ノ

     しかし、なにより混乱したのは日之出のライバル社「旭ビール」なる社名の登場(・・;)
     なんとなく 日之出=キリン、毎日=アサヒ、と想定して読み進めていたから、サッポロにあたるはずの3社目の名前が 実在する(と言っていいのか否か?)「あさひ」ビールとは……(´ェ`)ン-…

     あと、終章でサラッとふれられる日之出社長の顛末、その後(2013年)に起きた「王将フードサービス社長○○事件」を予言しているようで 戦慄した……∑(((*゚ェ゚*)))ブルッ


     ともあれ、犯人の動機も事件の解決もハッキリ(さ)せず、名探偵もトリックもない、ミステリーとしては異様といっていい怪作ながら、人間心理・現代風俗・各種組織の構造腐敗などなどを緻密に描いた傑作文学( ´ ▽ ` )ノ
     それだけに、中巻の感想にも書いたとおり、女性視点・心理を一切排除している理由がよくわからない……(´ェ`)ン-…


    2019/02/05

  • 登場人物が心情をこれ以上ないほど饒舌に話すけれども
    この作者作になる話の枠組みは皆「社会派ミステリ」
    他作品と変わらず安定の出来

    ところでミステリはわかるが「社会派」とは何だろう
    ファンタジー小説のファンタジーであることがその話における程度と同じく
    「社会」すなわちひととひととの関係を取り扱かう領分がその話のなかで一定を占めるもの
    というようなところと思うが
    つまりファンタジーと違い現実が舞台であり
    時代小説でなく現代が舞台であり
    歴史小説というほど長いく広く影響を及ぼす事柄でなく
    なんとも言いがたいのが「社会派」
    現代小説とかいうと誤解あるのでこういう言い方である
    逆にファンタジーでない現代を舞台にして「社会派」でない話の
    ミステリとかSFとか冒険とか恋愛とかコメディとかバトルとか青春とか教養とからは
    どうひととひととのつながりでないお話なのかというと
    人間のぞうぞうの限界としてひととひととのつながりを排除して
    何ものも描き得ないということか

  • 自分探しの旅は自分を探すために行くわけではない。
    自分がどういう形をしていて、どれくらいのサイズ感なのかを知るために行くのである。
    この人たちの場合、それが誘拐だったということなのだろう。

    (以下抜粋)
    ○「よく考えてみたら、同じ馬が一着になることも三着になることもある。
     着順が馬の価値なら、その馬の価値は毎回変わることになる。
     そんなのおかしいだろ」

  • 義弟の杉原が自殺した後の城山から。

    物井、ヨウちゃん、レディが安穏に暮らしていた、という終わり方は良かったけど、その他のことが全てうやむやにされたままというのにモヤモヤした。
    それだけはっきりさせられない裏社会の存在が怖いということは分かるけど、城山も死んでしまったり裏じゃ無い人ばかりに被害が及び、理不尽だという思いが強くなる。

    半田が自首したのにLJ事件も解決出来ないし、半田も合田を刺したことで裁判になっただけだしで、警察組織のダメっぷりは変わらないし。

    一命を取り留めた合田が警察を辞めなかったし、クビにもならなかった流れがよく分からなかった。
    まだ自分は変われるという思いが芽生えたかもしれないという心境の変化?
    加納との関係もそう突っ込むんだ、という感じでした。
    好意なくしてこの距離の関係は続かないとは思うけど。。

    裏金、強請り、たかり、株操作など知らない世界を垣間見たという感じでした。
    読み終わった全体の感想としては「面白かった」だけど、また読み返したい、他の作品も読みたいとは思えない難解さでした。
    疲れたなぁ…

    「マークスの山」がものすごく面白くて、すごい勢いで読んだ印象深い読書体験をしたのだけど、続く「照柿」ではそういうこともなく、「レディ・ジョーカー」は近かったけどマークスほどでは無かったなぁ。
    もうしばらく経ってからマークスを読み直してみようかなとは思いますが、高村薫さんの他の作品には手が伸びそうもありません…

  • 消エルコトニシタ…。レディ・ジョーカーからの手紙が新聞社に届く。しかし、平穏は訪れなかった。新たなターゲットへの攻撃が始まり、血色に染められた麦酒が再び出現する。苦悩に耐えかねた日之出ビール取締役、禁忌に触れた記者らが、我々の世界から姿を消してゆく。事件は、人びとの運命を様々な色彩に塗り替えた。激浪の果て、刑事・合田雄一郎と男たちが流れ着いた、最終地点。

  • BL小説だったのかと腑におちた。

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著者プロフィール

高村 薫(たかむら かおる)
1953年大阪市東住吉区生まれ、現在大阪府吹田市在住。国際基督教大学教養学部人文学科(フランス文学専攻)卒業。外資系商社の勤務を経て、作家活動に入る。
1990年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞、1993年『マークスの山』で直木三十五賞、1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞、2016年刊行の『土の記』では大佛次郎賞、野間文芸賞、毎日芸術賞をそれぞれ受賞し、新たな代表作となった。
『レディ・ジョーカー』を境として、重厚な社会派ミステリーから純文学に転向。織田作之助賞選考委員を務める。

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