見張り塔からずっと (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1999年8月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784101349121

作品紹介・あらすじ

 

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

人間の心情や家族の絆を深く掘り下げた三篇の短編から成る作品は、特に「扉を開けて」が印象的で、読者に強い感情を呼び起こします。対象喪失や社会の厳しさをテーマにし、時には辛さを伴う読書体験を提供しますが、...

感想・レビュー・書評

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  • 購入した重松清氏の積読本を発行順にちゃんと読んでから断捨離する。
    1/16冊目。

    年越し時に途中まで読んでいたものを今読了。

    20年ほど前に読んだ当時、『扉を開けて』の結末が不明瞭なので解釈に悩んだのだが、今回改めて読み直してみて、やはりある人物がもう1人の小さな人物を投げ落としたという方(最悪の結末)だったのだろうと推察する。
    心を病んだある人物の方が自ら落ちたのであれば、手足をばたつかせはしないような気がするからだ。
    とにかくこの話は辛過ぎる。
    主人公はもっと早く手を打つべきだった。

    篠田節子氏の解説を読むと、プロはこんな風に読み解けるし、言語化できるのだなと敬服する。

  • ハートフルな家族愛を描く作品が『ホワイト重松』としたら、ざらざらとした人の負の感情を描く『ダーク重松』の代表作かなあ。
    かなり昔に読んだのだが、ブックオフで買い再読。「カラス」 「扉を開けて」「陽だまりの猫」の3編。いずれもどんよりとした空気が漂う話。
    前回読んだ時も今回もその中でも『カラス』が印象に残る。

    30代の夫婦が投資目的もあり貯金をほとんどはたき、通勤に片道2時間以上かかるマンションを長期ローンで購入するが、地価がどんどん下がって、街の開発も頓挫する。それだけで気分は落ちこみ…夫婦間も諍いになる。
    そして、他の部屋の住人が部屋を売却し新しい住人が越してくるが、なんと自分たちより1000万円も安く部屋を手に入れたことがわかる…
    住民たちは新しく引っ越してきた家族に嫌がらせをはじめるという話…そして嫌がらせや悪口を言ってる時だけ、夫婦仲がよくなる…やがていじめの対象となった家族は耐えられなくなり、マンションを引っ越してゆくのだ。

    何とも言えない小さな集合体の中での人間の嫌な面が浮き彫りにされ、救われないどんより感の中で物語が終わる。そんな様子をゴミ捨て場のカラスがずっと見ている…

    再読して思い出したのだが、当時30代後半だった僕はマンションを買うか、実家を建て替え一戸建てに住むか迷っていたが、この小説を読みマンションはなんか嫌だなぁ…と思った記憶がある。果たして選択が正解だったのか…考えないようにしよう(笑)

  • 「扉を開けて」が印象的だった。
    対象喪失(家族福祉論のゼミででてきた概念?)が少しテーマになっていて、人の心情が上手く表現されていて、読後感は重かったけど、良かった。

  • 『家族』をテーマに三篇からなるオムニバス作品で、表題作品は無い。
    とにかく、読むのが辛かった。
    一つ目の『カラス』も私の中ではホラーとはまた違った読むのには躊躇われる怖い小説に分類され、無理矢理読んだ感があった。
    しかし、特に二つ目の『扉を開けて』という作品を読むのは格段にペースが落ちた。
    最後のページには、ぞわりと、もう、思わず本を投げたくなってしまった。投げずにはいたが、本は閉じた。

    私が初めて重松清作品と出会ったのは『卒業』で、そのイメージがあった分、その『卒業』と『見張り塔からずっと』でのギャップがあり衝撃が大きかったのだ。
    なんとか一冊読み終えたものの、数日経った今も未だに思い出してしまう。
    この人は、すごいと。
    それしか思えない私はボキャブラリが少ないし、読むという能力もまだまだ未熟だ。
    けれど重松さんにはいい意味で泣かされる。
    辛いと思うのだけれど、またこの人の作品に触れたいと、不思議と思ってしまう。



    (20110909)

  • 雑誌記者として出版社に長年勤めてきた重松清さん、様々な社会現象を目の当たりに「目撃」してきた自分自身のことを、見張り塔にいる哨兵にたとえている。
    そして、われわれ読者もその断片を本書以後の彼の作品を通して「目撃」させられることになる。

    3つの短編で成り立つ本書は、以後の重松作品の方向付けをしていると思う。
    ニュータウンでひそかに行なわれる主婦間のいじめと、その流れ玉を浴びる夫たちの話、「カラス」。
    1歳で亡くした息子と同じ歳、同じ名前の子供が、夫婦を悩ませる「扉を開けて」。
    姑に見放され、マザコン夫には邪険に扱われる若妻は、18で結婚した。世間知らずとののしられ、その存在さえも消し去られる「陽だまりの猫」。

  • 「見張り塔からずっと」
    家族の終焉。


    重松清さんと言えば、心情を描くのが抜群に上手い。だから心があったまるものは、普通の小説よりももっとあったまる。が、決して暖かいものだけではない物語になると、より辛い気持ちになったり、悲しくなったりしてしまう。本作は、間違いなく後者に該当する中編集です。収録されているのは、以下です。


    1.カラス
    発展の夢を断たれた住宅地ツインヒルズ・ニュータウンの住人たちの鬱屈と歪んだ「復讐」を描く中編。


    土価が天井知らずの高騰を見せるバブルに購入したマンションがあっという間に価値が下がり、売ったとしても赤字確実。住人たちは、何故このマンションを買ってしまったのか鬱屈を溜め込んでいた。そんな中、転居してきた榎田家族のある言葉が、住人たちに火をつけてしまう。


    非常に辛くなる物語。何気なく言ったかも知れない言葉がたまたま聞かれてしまい、それが広まり、嫌がらせになり、そして関係のない子供が巻き込まれる。何より怖いのがそんな状況の中、主人公夫婦がある種生き生きしていくことです。妻は自治会を立ち上げ、生活にハリが出るようになり、夫はそんな妻に性欲を覚える(というか回復する)。生々しいリアリティです。


    なによりもカラスの存在が抜群。主人公たちの気持ちを代弁するかのようにクエッと鳴く。そして、陰湿な復讐を住人たちの代わりにしてやったかのような攻撃。抜群でした。


    2.扉を開けて
    幼い息子を亡くした夫婦の癒されぬ哀しみと苦悩が詰まった物語。


    無くした息子と同じ名前の健太という少年は、いつも部屋の近くでサッカーボールを蹴っている。その音がうるさく注意しようとするがなかなか出来ない。一見住人トラブルに発展して行くかと思いきや、夫婦の哀しみと苦悩にフォーカスされていきます(大体マンションの隣で朝っぱらからボール蹴ることを注意しないダメ親に腹が立ちますが)


    最後の描写が凄い気になります。これも辛い中編です。


    3.陽だまりの猫
    妻として母親として誰にもまともに扱ってもらえない若妻《みどりさん》の人生を賭けた決断が辛い。


    みどりは、15歳から付き合いだした伸雄(当時22歳)と結婚した。幸せか、不幸かと聞かれたら幸せ。しかし、幸せか、不幸か、どちらでもないか、と聞かれたらどちらでもないと答える。それが、みどりの真実である。


    ちょっと気を遣えない、ちょっと分からない、色々ちょっと〇〇な部分をそこまで言うお前はなんやねん!と言いたくなる伸雄 with 伸雄母。もしかしたらざらに良くあることなのかも知れないが、辛いものは辛い。


    全部読むと気を落とす可能性大です。次は、とんびにしよう。。。

  • ・3/9 読了.家族、それも夫婦の話ばかりなんだけど、この人の本は続けて読むと切なくてどんより暗い気分になってよくないな.すっきりもしないしもやもやのままの暗い物語が続くと、こちらまで気が滅入ってきてしまう.やっぱり不幸でも最後には光明が見えるような、そんな物語を読みたくなる.

  • 2018年1月24日読了。
    2018年37冊目。

  • 質的には高い作品です。物語の中にどんどん引き込まれていきます。しかし、怖いですね。
    「カラス」はニュータウンのマンションで起こる現代版村八分、大人のいじめを加害者の立場から描いた作品です。陰湿な喜びを感じながら、一方でいつか自分が被害者になることを恐れる、そういった加害者心理を上手く描き出しています。
    「扉を開けて」は5年前に赤ん坊を亡くした夫婦と生きていればその位になっただろう子供の係わりを描いた作品です。子供の幻影を見る奥さんの侘ない精神状態と、それを援け、繋ぎとめようとする夫。精神の危うさが上手く描き出されます。
    「陽だまりの猫」はマザコンの夫と19で結婚した「何も出来ない」妻と姑の話です。これも一種の陰湿ないじめの物語です。妻は意思を持つ《あたし》と物語の登場人物である《みどりさん》を使い分け、夫や姑の仕打ちをかわそうとします。しかし、自分の存在自身を否定された時に、妻は復讐を企てます。
    重松さんの作品は初めてです。上手いと思います。直接表現ではなく、回りどんどん状況を作り上げて行き、きっちり一つの世界を作り上げていきます。そういえば、元々ノンフィクションライターでもあった様なので「架空の世界のノンフィクション」という感じもします。
    しかし、読後に暗くのしかかる物はあっても、爽やかさはありません。再び手にするかどうか。

  • 【あらすじ】
    発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語―。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。

    【感想】

  • 久々に読んだが、やはり暗い。暗さがいい。

  • 発展の望みを絶たれた郊外のニュータウン内のいじめ

    幼い子供を亡くした夫婦の元に現れた同じ名前の少年

    夫にも義母にもないがしろにされる若妻

    3組の追い詰められていく夫婦のお話し
    どれも救いがなく、怖いくらいにリアル

  • 人の弱さや脆さや狡さや嫌な部分が包み隠さず書かれている。
    それを他人事のように読んでいるこちら側にだってきっと嫌なところがあるはず。
    自分の中のそういった部分を仕方がないと思うか、そういう自分が嫌いだと思うかはそれぞれが勝手に思えばいい。
    つくづく人間は面倒くさいなと思う。

    [カラス]
    自分の不満を他人にぶつける事で晴らそうとし、それでいきいきしたところで後に残るのは何?
    ホンの些細なきっかけでぶつけられる側になるだけで儚さしか感じない。
    [扉を開けて]
    ラストの数ページは怖かった。まさか?と多いながら何度も読み返したがそのまさかなのだろう。
    妻や夫の追い込まれて行く気持ちはわかるけれど。
    [陽だまりの猫]
    みどりさんを作り出す事によって現実のあたしから逃げたかったんだろうな。
    夫の言葉「…三日早すぎたんだな」を聞いたらそう思っても。
    母親想いとマザコンは紙一重なのか同じ意味なのか?
    でも結局子離れ出来ない母親も、親離れ出来ない息子も、自分から逃げているみどりさんも誰も幸せになれてないじゃない?
    綾香ちゃんだけはちゃんと愛して幸せにしてあげて。

  • 短編3作。中でも「カラス」が好き。共感とは言い難いけど、どこか心に突き刺さるものがある。重松さんが持つ繊細さや感受性、またその表現力といい他の作家とは一味違う読者の心揺するツボがある。
    この作品は重松さんがまだ小説家として駆け出しの頃に書かれたもの。現在の活躍からも分かるように、非常に将来性を感じられる作品。

  • 三つの物語が入っている。価格の落ちたニュータウンでのイジメの話、マザコン男と結婚した若い女の話、息子を亡くして精神がおかしくなる夫婦の話。なんかどれもしっくりこない終わり方だった。

  • ずっしりと深重いお話でした。
    リアリティーのある、身近な罪の重さというか…。
    救われないようで、ある意味救われてる結末なのかな、とも思います。
    客観的に見たら嫌な終わりかたでも、終止符を打つという点では前向きなのかもしれない。

  • 家族がテーマの短編集。
    幸せではない何かを失った人たちのお話。
    フィクションなんだけれど、何処かにありそうなぐらいリアルなお話ばかり。
    読み終えた後の後味はあまりよくないように感じました。

  • 三編ともフィクションだが、何処かにありそうな話ばかり。つい自分だったらと置き換えて読んでしまった。
    確かに暗く重い三編だが、人の心理を突くいい話だった。

  • 解説の篠田節子さんが言っているが、夫婦関係について書かれているにも関わらず婚外の異性関係は描かれてない。僕が今まで読んできた夫婦を扱った小説は必ずと言っていいが、婚外の異性関係が描かれていた。だから、夫婦関係について書かれている小説の中で異質であり、また混沌とした
    部分も多く見られ、内容は重いものであったが、読み応えのある作品だと思った。

  • 重松最高傑作と個人的には思っている。何度も読みたい。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

重松清の作品

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