卒業 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101349190

作品紹介・あらすじ

「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、十四年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時代の思い出を語り始めたのだが-。悲しみを乗り越え、新たな旅立ちを迎えるために、それぞれの「卒業」を経験する家族を描いた四編。著者の新たなる原点。

感想・レビュー・書評

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  • ゆるす/ゆるされる、に関する4編。
    紆余曲折を経て、いろいろなことを考え、そして落ち着いていくお話。

    まゆみのマーチ。
    まゆみちゃんはいい子だ。
    本当に純真で、いい子なんです。結果として周りの人たちを明るくしていたはず。
    でも、先生の一言、行動で変わってしまう。いい子だからなおさら悲しい。
    大人は軽い気持ちで行動を起こしているのかもしれないけれど、本人にとっては一生消えない傷になってしまった。
    罪深いのはまゆみちゃんではなく、おとなだ。

    追伸。
    お母さんだったらどう思うとおもう? 目をつぶって考えてみて。
    とてもいいアドバイスだ。
    感情的になっているから、冷静に考えられないのだろうけれど、答えとしての選択肢はほとんどないはず。よく考えたらわかる。
    結果としてもう取り返しのつかない年月が経ってしまっている。

    最期に後悔したくないものですね。
    とてもいいお話でした。

  • 2004年初版。著者の作品は好きで、よく読みます。時間や金銭を損したと言う経験はありません。4つの中編小説です。どの作品も「卒業」がベースに流れています。著者の後書きにありますが、卒業とは終わりであり悲しくもあるが新たなスタートでもある。その通りだと思います。私も、あといくつの卒業を経験するのかなあと考えてしまいました。著者の作品は感傷的な作品が多いような気がします。親と子供、夫婦、そして少年少女の心情を心憎いほど巧みに描きます。私は毎回見事に涙したりします。

  • 本を読んで涙が出たのは、本当に久しぶりです。
    前回がいつだったかは思い出せません。

    4つの話の短編集であるこの本の中で、
    最後の「追伸」の話が一番好きでした。

    幼くして母を亡くした敬一、その4年後に新しい「母」として現れたハルさん。
    二人をいきなり親子にしようとしてしまった不器用な父、父とハルさんの間に産まれた、年の離れた弟。

    4人の複雑な家族の話が、丁寧に描かれています。
    物語では、既に敬一は40歳を迎えているところからはじまります。


    重松清さんの書く人物の心情はとてもリアルで、
    必ずしもまっすぐではない意思を持っていて、
    セリフだけでなくその目線やしぐさからそれを表れていて…
    だからこそ共感でき、自分だったらどうするだろう、と
    思いを巡らせることができます。

  • 最初は学校の意味の卒業かと思いましたが本を読むと人生にはいろいろな卒業があることを改めて感じました。

  • じーんと胸打つ物語
    4編の短編小説です

    ■まゆみのマーチ
    母親の臨終の間際に再開した兄と妹。
    母親はずーと妹を甘やかしていた。
    小学校で自由奔放にしていた妹。授業中でも歌を歌ってしまう妹。一方で、優等生だった兄。
    しかし、いま、自分の息子は登校できない状態に。
    そんなとき、まゆみのマーチといわれるその歌詞が驚愕。
    ジーンときます。

    ■あおげば尊し
    ガン末期を自宅で過ごす父親。
    父親は教え子からも嫌われる教師だった。
    自らも教師となり、小学生を教える立場に。
    その生徒たちに「死」を教えようと、父親の現場を見せることに。
    「死」について考えさせらえます。
    そして、出棺に流れるあおげば尊し
    これまたジーンときます。

    ■卒業
    これ、学校の卒業と思いきや違ってました(笑)
    14年前に自殺した親友の娘が突然訪ねてきます。
    そして、死をめぐる彼女の悩み
    そんな彼女のために、過去の思い出をつづります。
    乗り越える。それが卒業

    ■追伸
    育ての母を認められないず大人になった主人公。
    わだかまりがずーっと続きます。
    不器用な二人はどうなるのか
    そんな大みそかの夜
    といった展開

    この4作の中では、まゆみのマーチにやられた!

    とてもお勧め

  • 100ページの作品が4つ収録
    いずれも何かしら考えさせられる内容でした
    著者のあとがきでは連作ってことでしたが
    それはあまり感じられませんでした

  • ゆるすという事はとても難しいです。忘れる、放棄するとは違うんですよね。何十年経っても和解できないのに、ふとした瞬間にほどける事ありますよね。全てを受け入れなくても「ゆるす」「ゆるされた」という事でほどけていく。とても大事な事ですね。そんな短編集。

  • 【追伸】
    主人公の気持ちもとてもわかりますが、亡くなったお母さんの気持ちとお母ちゃんの気持ちも同じように伝わってきました。そして何より、主人公の妻も1人の息子のお母さんであって、たくさんのお母さんから主人公は支えられてきたこと。今まで引きずってきたこどもの気持ちから卒業して大人になっていく、とても引き込まれました。私も家族を残し亡くなったら、どれだけ泣きじゃくっても引っぱたいているかもしれません…。

  • 最後の短編の『追伸』が1番好きだった。主人公があまりにも自分勝手に映ったし、嫌いだったけれど、最後のページで全て許せてしまった。物語の引き込む力がすごい。

  • 追伸が一番良かった

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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