映画篇 (新潮文庫 か 49-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101351520

作品紹介・あらすじ

人生には、忘れたくても忘れられない、大切な記憶を呼び起こす映画がある。青春を共にし、別々の道を歩んだ友人。謎の死を遂げた夫。守りたいと初めて思った女性……。「太陽がいっぱい」「愛の泉」など名作映画をモチーフに、不器用ゆえ傷ついた人々が悲しみや孤独を分かち合う姿を描く5篇を収録。友情、正義、恋愛、復讐、家族愛と感動――物語の力が彼らを、そしてあなたを救う。

感想・レビュー・書評

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  • It consists of 5 different stories named after 5 movies. In the beginning, you’ll see a handmade poster for the free screening of ‘Roman Holiday’, but I wonder why, because there is no story named after it. But this is why this book is wonderful.

    I learned to know all the main characters live in the same town, and all of them saw the same handmade poster and tried to go to see the movie with their important person. In the last story, the main character was the producer of the free screening of ‘Roman Holiday’.

    I bet you’ll want to watch many movies after you read the book.
    (Ichiro さん)

  • おもしろかった!!よかった~‼特に「太陽がいっぱい」が好きです。「愛の巣」もよかったけれと。金城一紀さんの作品はどれも好きです。

  • 物語には、とてつもない"力"がある。
    そのことを思い出させてくれる作品です。

    愛と、友情と、ヒーローと、ロマンチックと。
    これだけあれば、もう充分。
    この本を読むと、きっと「ローマの休日」を観たくなりますよ。

  • ・僕がこれまでどれだけ龍一に救われてきたかを話し、感謝の言葉を口にすべきだった。いや、たった一言、ありがとう、と言えばよかった。でも、何よりも大切なことを話そうとすると、いつだって言葉は僕の口をすり抜け、音にならないままどこかに消えてしまう。僕はいつでも拙い話し方のせいで大切な言葉がうまく伝わらずに、にせものの響きが宿ってしまうのを恐れた。そんな臆病な僕が、一度だって龍一を救えたはずはなかった。誰よりも身近で、誰よりも最初に救わなくてはいけない存在だったはずなのに。

    ・《約束の日からもう二週間が過ぎています。梅雨も明けたことですし、今日中に電話線を繋いでください。》

    ・わたしは一人の長い夜を存分に使って記憶の中に入っていき、連れ合いと一緒に過ごした時間を最初から反芻していった。その流れのどこかに、わたしが気づかずにいた連れ合いの死の理由や兆候を見つけ出そうと思ったのだ。でも、とうとう見つけることはできなかった。そもそも記憶はところどころに穴が開き、色褪せ、それに驚くほど単調で、自分がいまどのあたりをさまよっているのかも見失ってしまうほどに目立った特徴がなかった。わたしは何度もどこでもない地点で立ち止まり、無表情にわたしを見つめている連れ合いを見つめ返しながら、こう自問した。
    ーわたしはこの人を愛していたのだろうか?

    ・目を開けた。
    目の前にあるのは、弱い光に照らされて木目がほんのりと浮かび上がっている、ただのクローゼットのドアだった。それ以外には何も存在しない。わたしはしばらくのあいだ、身じろぎもせずにクローゼットのドアと対峙したあと、力尽きて床の上にべったりと座り込み、泣いた。大声を上げて、わんわん泣いた。時々、ベッドのシーツの端で涙を拭き、鼻をかんだ。

    ・戦う準備はできた。

    ・「あんたとまともに喋ってからまだ三日ぐらいしか経ってないのよ。それなのに、こんなやばいことに手を貸すのってどう考えたっておかしいもん」
    「時間の長さなんて関係ねぇよ。俺はしたいことをしてるだけだよ」

    ・「子供は余計な心配なんてしなくていいんだよ。子供はね、好きな食べものと、大人になったらなりたいものと、好きな女の子のことだけ考えてればいいんだよ。わかった?」

    ・「君が人を好きになった時に取るべき最善の方法は、その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、耳をすますことだ。そうすると、君はその人が自分の思っていたよりも単純ではないことに気づく。極端なことを言えば、君はその人のことを実は何も知っていなかったのを思い知る。そこに至って、普段は軽く受け流していた言動でも、きちんと意味を考えざるを得なくなる。この人の本当に言いたいことはなんだろう?この人はなんでこんな考え方をするんだろう?ってね。難しくても決して投げ出さずにそれらの答えを出し続ける限り、君は次々に新しい問いを発するその人から目が離せなくなっていって、前よりもどんどん好きになっていく。と同時に、君は多くのものを与えられている。たとえ、必死で出したすべての答えが間違っていたとしてもね」

    ・お漬物は冷蔵庫の中。
    お味噌汁は鍋の中。
    お母さんは夢の中。

  • 5篇の作品タイトルはそれぞれに映画のタイトル。
    「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくは トゥルー・ロマンス」「ペイルライダー」「愛の泉」
    ひとつも観たことがない。orz

    私が熱心に映画を観るようになったのはここ1~2年ほどのことなので、観てない名作の多さに打ちのめされるとともに、映画を観ることの楽しさや必然というか巡り合わせのようなものも強く感じた。
    要するに、私が本に対して感じたり得たりしていたことを、映画で感じたり得たりすることができるわけなんですね。

    「小説はよかったけれど、映画はね…」
    と簡単に言っていたけれど、映画って監督とキャストだけではなく、音楽だったり、その舞台であったりと、表現する世界は同じなのに、そこへのアプローチが関わる人の数だけ存在するので、映画を理解するというのは私にとって、かなりハードルが高いことなのである。
    心の深いところで理解できるのが一番いいことなのだろうけれど、理解力に自信のない私はどうしてもなんらかの情報から理解の手助けをえようとしてしまう。
    多くを観ることによって、自然と理解力は増していくのだろうか。
    みんな、どうやって映画を味わっているのかが知りたいところだ。

    この「映画篇」という小説は、作品タイトルになっている5つの映画だけではなく、数多くの映画が登場人物たちの人生を彩っていく。
    5つの短編を扇の要のようにまとめているのが「ローマの休日」。(これも観てねーorz)

    区民会館で行われる「ローマの休日」の無料上映会が、各作品で転換点となる。
    映画を観て泣いたり笑ったり惜しみなく拍手をしたり。
    そしてそのあとの人生が、少し色合いを変えていく。

    いいなあ。
    私もそんなふうに映画を感じることができたら、もっと人生が豊かで楽しくなるような気がする。
    よし、映画を観よう!
    そう思わせてくる小説だった。

    これは、連作短編集というか、連作短編を装った長編小説というか、とにかく「ローマの休日」が要になる。
    裏バージョンとしてひたすら各作品でけなされている人妻の不倫映画もあるのだけど、これだけがタイトルを記されていない。わかる人にはわかるのだろうけど、この映画を探してみるのも楽しみの一つかもしれない。

    ところで区民会館とあるから、私は札幌市の区民センターのような小さい会場を想像していたのだけど、1200人収容とあるから結構な大会場。
    道新ホールで700人だからね。(「ベニスに死す」の上映会をこの会場でやったとき、特大スクリーンに映るビョルン・アンドレセンの美しさに泣いた)
    東京以外にお住まいの方は、市民会館とかそこら辺をイメージして読んだ方がよいかと思います。

    “龍一と見た映画を起点にして目の前に広がる記憶には、不幸せだった事柄がぽっかりと欠落しているのだ。映画の力で導かれた記憶の中の僕は、いつでも軽やかに笑い、素直に泣き、楽しそうに手を叩き、一心不乱に龍一と語り合い、はつらつと自転車を漕いでいた。”

    結構な感動作に持って行こうとしているように思わせておいての着地点は、あっけらかんと「参りました」が言える素敵なオチで、心を鷲掴みにされなおしたところでエンディング。
    好きだわ~、こういうの。

  • 映画を軸にした短編で読みやすかった。しかも最後の話に、全てがちょっと絡んでる。時々笑えて、時々泣けて。
    自分が過去に人と観に行った映画なんかを思い出す…そんな本でした。

  • 映画はその人との巡り合わせ。それは思い出になる。『対話篇』はちょっと悲しみ度合いが多かったけど、この『映画篇』の読後は晴れやかな気持ちになる。涙より笑顔になるいい話。特に最後の「愛の泉」は大好きです。「ドラゴン怒りの鉄拳」、「ペイルライダー」もお気に入り。あと、「対話篇」含めたそれぞれのちょっとした繋がり、ニアミス具合が個人的に好きなポイントです。ただ映画についてもっと知識があればもっと楽しめただろう。ちょっと残念。ま、それでも面白かったです。

  • ローマの休日を軸に展開される5篇のオムニバス形式の小説。
    小説にオムニバスを使うのかどうかは一旦おいとき、そこも、映画からインスパイアされたものなのか?と思うと俄然胸がワクワクする。

    面白い、面白すぎる。
    映画も好きだから、という軽めの感覚で手に取ったけど、もっと早く読みたかった。
    1篇、1篇が濃くて、胸が詰まる。

    ローマの休日が軸なだけでなくて、
    スパイス的要素として、どの話にも、若い男と、人妻の不倫物のフランス映画が出てくる、これもまた良い。

    皆さん、愛の泉がやっぱ1番好きなのかな?
    わたしは、恋のためらい/フランキーとジョニーもしくはトゥルーロマンス 篇が、
    1番、うぐぐぐぐと、なりました。


    easy come, easy go!
    簡単に手に入ったものは、簡単に手から離れていってしまう

  • 8月31日、区民会館での『ローマの休日』上映会を軸とした、5つの物語。

    作中に出てくる映画を全部見てみたいと思った。
    このように、作品が作品を教えてくれることが、私はとても好きで。

    『愛の泉』は主人公の思想が面白く、終始クスクス笑いながら読むことができた。

    個人的な話をすると、この本は古本屋で適当に購入したのだが、8月31日は私の誕生日であり、私もかなり映画が好きなので、シンパシーを感じる大切な作品になった。

  • 「だから、俺たちは映画館の暗闇の中にいると、ワクワクするんだよ」かつて映画について語り合い、だが全く別の道を歩んだ友との再会。夫の自殺で憔悴する河本に訪れた、レンタルビデオ店での運命の出会い。最愛の夫を亡くした祖母を元気づけるべく鳥越家の孫たちが企んだ『ローマの休日』上映計画―。やさしさと勇気が宿る全5篇を収録。映画から放たれた光が、人々の胸に潜む暗闇に、希望を映し出す。著者最高の短篇集。

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著者プロフィール

1968年埼玉生まれ。慶應義塾大学法学部卒。1988年「レヴォリューションNo.3」で第66回小説現代」新人賞を受賞。2000年『GO』で第123回直木賞を受賞。

「2020年 『映画篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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