流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101351810

作品紹介・あらすじ

忘れない、忘れられない。あの笑顔を。一緒に過ごした時間の輝きを。そして流れ星にかけた願いを-。高校で出会った、加地君と巧君と奈緒子。けれど突然の事故が、恋人同士だった奈緒子と加地君を、永遠に引き離した。加地君の思い出を抱きしめて離さない奈緒子に、巧君はそっと手を差し伸べるが…。悲しみの果てで向かい合う心と心。せつなさあふれる、恋愛小説の新しい名作。

感想・レビュー・書評

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  • 偶然に、2作品続けて、愛している異性を突然亡くした女性のお話でした。奈緒子は、転勤で家族が不在の実家に一人暮らし。高校時代から付き合っていた好青年の彼氏を、海外の小さな島のバス転落事故で、突然失う。
    彼の喪失感は、大き過ぎて、上手く受け止める事ができない。彼との思い出は、眠る事さえ妨げる。
    二人の馴れ初めから知っている同級生の巧は、彼女と彼女の中に生き続ける友人を受け止めて、愛していくことを決心する。
    小説の中に出てくる、文化祭とかフォークダンスとか手作りプラネタリウム等々、高校時代の甘やかな記憶を呼び覚ます。(ある人はね。ない人は、想像する。)
    とても素敵な優しい愛情のお話でした。
    私がこの小説の客層では無かった事は、残念。

  • 恋人の加地を旅先の事故で亡くした奈緒子は、巧と付き合いながらも、加地君を忘れられずにいる。一方、巧も加地のことを思いながら、お互い、加地のことには触れられずにいた。
    痛々しいくらいの二人だったが、それぞれに、加地君の記憶も含めて自分があり、相手もいる、だから、加地のことを忘れなくていいんだと気づき、前に進もうと決める。
    せつないけれど、心がほっこりするストーリー。

    橋本紡さんの本は初めて読んだが、他の著書も読みたくなった。

  • 初めての恋人・加地君をバスの事故で亡くした奈緒子。奈緒子の現在の恋人・巧君もまた、加地君を大切に思っていた友達だった。加地君の思い出を共有しながらも言葉に出せない二人。そんな時に、奈緒子の父親が家出をしたと言って奈緒子の住む家にやってくる。

    玄関で眠るというのは吉本ばなな氏の『キッチン』、亡くした親友の恋人と付き合うのは村上春樹氏の『ノルウェイの森』を彷彿とさせ、どこか既存の物語のように読み始めたのだが、加地君と奈緒子が付き合うようになったきっかけで心をつかまれた。そして、そのきっかけであるプラネタリウムのエピソードが物語全体の背骨でありタイトルにもなっている。真昼の星……見えないけれど見えるというのは、死者への想いもそうかもしれないと読み終えて感じた。

    優しい物語。何度も泣けた。もし私が書き手なら、ラストで明かされる加地君の絵葉書の件を最初に持ってきて、もっとドロドロと暗い感情を描きたくなると思うのだけど、そうしないのが良い。話自体は重く悲しいが、まるで夜空を見上げている時の穏やかで静かな気持ちが全編を通して流れていて、優しいせつなさにあふれている。
    父親のこと、妹の彼氏のこと、巧君の姉貴と山崎先輩のことなど、サブのエピソードも優しくて、なんてことないありふれた事件の積み重ねの中で、奈緒子と巧君が喪失から再生していく過程が丁寧に描かれている。
    どんどん読み進めるというよりは、ページをめくっては立ち止まって考え、味わう小説。身近で亡くした人のことを思い出しながら読んだ。
    最後に奈緒子と巧君が星にかけた願い事は……きっと一言では表せないけど、前を向いて歩いていくことを加地君に誓ったのだろうな、とおもいました。

  • はじめましてな橋本紡さん。最近、恋愛小説を読むようになったので、本屋さんで平積みされていたこの本を手に取りました。でも、これは恋愛小説じゃないなあ。切ない、よくある、恋愛小説だと思いながら読んでたら、全然、良い意味で期待を裏切られて。このお話の中で度々出てくる、加地くんや巧や奈緒子が繰り返す言葉。考えてばかりで立ち止まっていないで、動かないと。動いてこそ、見えてくるものがある。立っている場所が変わると、同じ風景でも違うふうに見える。本当に、そのとおりだなあと。なんだかすごく、これらの言葉が自分の中に響いてきた。人生の再生。奈緒子が日々見つける小さな幸せ。奈緒子と巧くんのそれぞれの思いと重なる思い。お話自体は淡々と、そこまで大きな事件もなく進んでいくけど、そのなんていうか、温度がね、良いね。優しいしそっと寄り添う。人って、ほんと、生きていれば山のように辛いこと・悲しいことに遭遇するけど、でもそうやって、辛いなあ・悲しいなあって思いながら泣きながら生きていくことで、明日を生きられるっていうか。奈緒子の、少しずつ少しずつ前に進んでいる感じが、なんだかすごく良かった。巧くんもかっこいいよね、うん。そして主人公たちを取り巻くまわりの人たちもすごく良い。あったかい、お話に出会いました。そして最後になにより解説が重松さん!完璧すぎました。

    • しおちゃんさん
      そうそう、解説の重松さん!完璧でしたね^^
      そうそう、解説の重松さん!完璧でしたね^^
      2012/09/04
  • わたしは毎日持ち歩きたいくらい大好きな本です。

  • 再読。美しい装丁に切なさが詰まった1冊です。

    大好きな恋人を亡くした奈緒子が主人公です。
    喪失の痛みと、それでも生きる人の強さに引き込まれました。
    夜から夜明けに向けての物語は、一人静かに読むのにお勧めです。

    作中でも言われていますが、年をとるってよいですね。
    いろんな経験を積んで、少しずつ賢くなれる。前はわからなかったことが、わかるようになる。
    それでも、いくつになっても悩んだり迷ったりもする。
    不器用だけど、そんな「人」ってよいねと思います。

    加地くんのように、繊細なアンテナと考える頭を持っている人にとって、生きることは大変なことかもしれないけど、その分たくさんの素晴らしいものを感じ、見ることができるんだと思います。
    状況は変わらなくても、何かやってみるといい。立ち止まって考え続けるよりも、動き出すことで見えてくるものがある。
    私も、そう思います。

    重松さんのあとがきがまた心に響きます。
    「空を見上げるのは、祈りだ。
    傷つき、苦しんできたひとたち――永遠を生きることがかなわないからこそ愛おしい生を生きるひとたちが捧げる、歩きだすための祈りだ。」
    あとがきもセットで読むことで、心に余韻が残ります。

  • 時々挟まれる学生時代の3人の回想シーンが良かった
    ドラマとか映画化がもしされたとしたら
    巧君視点での文化祭のダンスシーンを最後にもってきてほしい

  • 恋人を亡くしたわたしは、その恋人だった人の親友と付き合っている。
    大切な人を亡くした二人はそれでも生きていく。
    家族や友達との関わり。
    大きな出来事は起きないけれど、でも二人は確かに前を向いて歩いていく。
    波瀾万丈ではないストーリーだが、心には染み透っていく内容だ。

  • 切なくて、美しい恋愛のお話。
    奈緒子・加地くん・巧くん、みんな優しくて、どこか不器用で愛らしい。
    大切な人を失った悲しみを背負って前に進む奈緒子と巧くんを応援したくなります。忘れられないなら忘れなくても良いんですよね。忘れられないほど大切な思いは、そっと心に留めて少しずつ前に進もう。
    読了後は星空をゆっくり眺めて、3人の幸せを願います。

  • 大切な人を失って、いろんな感情が胸の中を占領するんだろうけど、それでも前を向く姿勢がすごいなあと思った。

  • 加地くん、加地くん、加地くん・・・
    なんて、せつないの。

    プラネタリウムとフォークダンスのシーンは、
    奈緒子が加地くんにグッと惹かれていく様子が
    空気ごと伝わってきてなんだかくすぐったく、
    甘酸っぱくて幸せなあの頃を思い起こさせた。

    どうしても消えることのない存在。
    忘れられたなら、どんなにラクだろうね。

    無理に消さなくたって、いいのかもね。
    時間が解決してくれることも、あるのだ。
    大人になって、ものの見え方も変わってゆく。
    受け止めれるものが広がってゆく。
    自分も、まわりも。

    誰かと誰かの関係性は、それぞれが1対1で
    ちゃんとつながっていて、ひとつの崩壊で
    その他が一緒に壊れてしまうわけではない。

    「ちゃんとひとりで立てる人間同士が、それを分かった上でもたれ合うからこそ、意味が生まれるんだ」

    悲しみは、優しさに変えよう。
    ちゃんと立って、もたれ合える人になろう。
    腹を割って、見せ合って、互いを受け入れて。
    そして、もたれ合えたなら、その存在によって
    もっと優しく強く、幸せになれるのだろうな。

  • 3.3
    →忘れようとしても、どうしても加地くんを忘れられず苦しむ奈緒子の姿がとても印象的でした。それを側で見守る巧くんもすごく素敵でした。
    登場人物全員が良い人で読んでいて幸せな気持ちになりました!

  • 悲しみとか喪失感と共存しながら、それを徐々に共有しながら生きていく2人の心の動きに掴まれた。
    人生ってそうだよなと少し冷静になることもできた。
    ハッピーエンドとはいかないのが人生で現実だけど、それでも色んなものをみんな抱えて最期の時まで何とか生きていく。
    生きてるだけで幸せ!なんて言い切る事はすごく難しいけど、何でもない日々の中に散りばめられた幸せとか穏やかな気持ちを大切に日々を過ごしていきたいな、と思った。

    奈緒子が玄関で眠ることが個人的にはすごく共感というか、心を想像できた。

  • 若かった時に読めば理解。でもっ!女性の気持ちをくめばこうなのだろう。なるほど…無いものに対しての「美化』かー。これは人の心理として、かなり優先になるのだろうなー。

  • 巧君のキャンプファイヤーの場面がとても好き。

    せつない三角関係。
    この二人だけじゃなくて、お父さんやお母さんや妹さんや、巧君のお姉さんや、色んなひとがいろいろなものを抱えていて、それがいい方向に向かっていきそうでよかった。
    もちろん現実はそううまくいくわけではないけれど、だからこそ物語の中は幸せでいっぱいであってほしい。みんなが幸せになってほしい、とわたしは思う。

    みんな前を向いて生きていく。わたしも、きっと。

  • 昔のこと思い出してちょっぴり切なくなった。大切な人が急にいなくなったらどうしようも出来ないんだろうな。もう戻らない過去に囚われるだけになってしまう。そこから抜け出すのはきっと無理で思い出を思い出のまま受け止めるしかないんだ。切ない恋愛小説。

  • 考えてばかりじゃ駄目だって。動いてこそ、見えてくるものがあるんだって。変わらないかもしれないけど、見る目が変わるかも。

  • 巧君の「加地の手と、奈緒子の手を、共に握ろう」という言葉が印象的です。周りの人が死んでも周りの人の中で生き続けているという言葉はよく聞きますが、その言葉の意味がよく分かったような気がします。
    読み終えて、清々しい気持ちになれる、すごく好きな小説です。

  • 幼馴染みの奈緒子に6年片想いして、ついに成就した加地君。そんな彼の想いを見守っていた親友の巧。

    加地君が旅先で事故死して一年半、現在 巧と奈緒子は恋人同士である。加地君の思い出を忘れられないままの2人が切ない。

    ただの失恋でも辛いのに、ラブラブな時期に相手が死んじゃったらどうやって乗り越えろって言うんだろ。

    山崎先輩の恋路もうまくいきますように。加地君の流れ星マシンを使った告白にキュンとして、ほろりとなった。

    私も久しぶりに流れ星に願いをかけてみようかな。

    部屋の天井が満点の星空に変わるってすごいなぁとHOMESTAR購入を検討していたのに、いつの間にか忘れてました。今度LOFTを覗いてみよう。

  • 辛いとき 悲しいときにこそ 読みたい本。
    ちょっと苦しくなって 読むのやめたくなるかもだけど
    でも 最後まで読むと ちょっとでもいいから がんばってみよっかな
    そう 思える本だと思う。

    解説もいい。重松 清さんが書いてるの。

    空を見るのは祈りだ。
    歩き出すための祈りだ。
    ひとは繰り返し空を見上げ、繰り返し祈り続ける。

    ってね。

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