- Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101352510
作品紹介・あらすじ
『吾輩は猫である』のモデルになった仔猫は、漱石の妻鏡子との攻防の果てに、いかにして夏目家に住みついたのか。七人の子供を育て、座る暇もないほど忙しい生活をおくった鏡子と漱石の関係。"狂気の時"の恐ろしさと、家族しか知りえないおおらかな素顔。漱石没後の夏目家-。長女筆子から伝え聞いた夏目家のくらしと、文豪の孫としての日常をユーモアたっぷりに描く珠玉のエッセイ。
感想・レビュー・書評
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漱石の長女であり著者の母である筆子から見聞した漱石。タイトルのほのぼのとした印象とは異なり、夏目一族の暗い面も隠さずに記す著者。「母の想い出」は筆子を介護する著者の苦悩が痛いほど感じられる。奇しくも今日、老父母を実家に訪うて感じる老いと重ねてしまう。「漱石ゆかりの事など」では、著者の明るさが読み取れて爽やかな読後を味わうことができた。
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漱石の孫娘の手に成るエッセイ。
著者、半藤末利子さんは、漱石の長女、筆子さんと松岡譲の娘とのこと。
漱石の話や、祖母鏡子のことを語った部分も興味深いけれど、私には実母を介護して見送った「母の思い出」の章が心に残る。
介護に疲れて、どうにかして手を抜きたいと思ったこと、もう生い先が長くない母と分かっていても、つらく当たってしまったこと...。
お母さんを大事に思っていないはずはないのに、後悔すると分かっているのに、そういうところに追い詰められていってしまうのだろう。
私はまだ親を介護した経験はないけれど、こうした心境になっていくだろうことは自分のこととして理解できる。
実際、実家の母が祖母(実の母)の晩年に親子喧嘩を結構していたのを目にした。
母の場合は同居もしていなかったから、それほどお世話をしたわけでもなかったけれど。
当時はもうちょっと優しくしてあげればいいのに...と思っていたけれど、実の母子にはそういう業のようなものがあるのかもしれない、と最近は思う。
あと、松岡譲について、その人となりが分かったことはよかった。
わたしも『憂鬱な愛人』を読んでみたい。 -
夏目漱石の長女・筆子の四女、半藤末利子氏によるエッセイ集。
表題以下、母親から伝え聞いた夏目家の暮らしや、漱石夫人・鏡子の思い出などにも言及しているが、どちらかと言えば、両親や自らの日常生活に比重の置かれた章が多く、漱石寄りの話題を主に読みたい向きには少々物足りないかもしれない。
漱石関連についての筆致は淡々としている一方で、漱石門下の松岡譲と筆子の結婚に絡む同門の久米正雄の妬視や、そのモデル小説によって受けた両親に対する世間の誤解を解かんとする下りには強い熱量が感じられた。
その意味では、あくまで『筆子の娘』の視点から書かれた本であると言えるだろう。
『文豪の孫』としての葛藤や感慨、漱石文学の読解等はあまり取り上げてはおらず、そういった内容ならば、同じく漱石の孫である夏目房之介氏の著作の方が詳しい。
『孫娘』らしい話と言えば、祖母・鏡子から母を通じて受け継ぎ、テレビ出演もしたという糠味噌だろうか。
そのため、本書より遡って刊行された『夏目家の糠みそ』にイメージが近くなってしまったように思う。
(タイトルの使い回しができず、“漱石と言えば猫”という連想の鉄板に縋った苦肉の策とでもいうか。) -
★2.5かな、幾つかは別の本で既に読んだことのあるものでした。
まぁそれはさておき、うーん、何かエッセイとして素敵な感じが足りないなぁ。当方、そもそもエッセイってあんまり好きではないので余計にそう感じるのかもしれない。
直接的な漱石絡みの無い中盤はちょっときつかった、何と言うかウィットさが足りない。まぁ単なる好みの問題ってな気もしなくはないんですがね。 -
糠漬け、夏目家の糠漬けにそそられて再開した。
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夏目漱石のお孫さんにあたる半藤末利子さんのエッセイ。
もう少しお母様との暮らしを突っ込んで描いてほしかったかな。
後半に入るとちょっと旅日記のようで面白さが半減しちゃったのが残念。 -
著者は漱石の孫。身内から見た、人間的な文豪の姿が綴られているエッセイです。
足に地がついた文章で、生活観如実に出ており、なんだかリアル。
文豪の周りは大変だと思うことしきりです。
漱石の洒脱さや諧謔の気風はなく、カラーが全く違うため、その差に面食らう人も多いことでしょう。
漱石と実際に触れ合ったことがないという著者は、親からの聞き伝えを元に回顧録を書いているため、漱石の話はかなり薄いものとなっています。
どちらかと言えば、漱石死後のことの方が書きやすいようで、漱石のゆかりの地としての熊本を推しながら、松山の商魂たくましさをシニカルに評しています。
「漱石まんじゅう」は「葬式まんじゅう」ではない、というところに、くすりとしました。
60の手習いで文章を書き始めたとのことですが、高齢になってからものを書き始めると、若さゆえの勢いや力がない分、人生への恨み節も隠し切れなく入って来るものだと思いました。
「生きているうちにこれだけは言っておきたい」と、ずっと胸にためこんでいた心情を歯止めなく書き込んでいる感じなので、読んでいてきつくなります。
父の受けた誤解を晴らすことや、痴呆老人としての母の介護の苦労が、綿々とつづられています。
初めのタイトルは『夏目家の糠みそ』だったそうですが、絶版になったため、再出版した際に名前を変えたとのこと。
糠みそでは時代にそぐわない、猫のほうが読者の気をひきそう、と考えてのことでしょうけれど、タイトルを変えるのなら内容も加筆修正するべきだと思います。
新刊と思ってがっかりした読者は大勢いたことでしょう。
実際の内容は、糠みそにした方がぐっと言わんとすることをつかんでいるという点も、残念です。
あとがきで嵐山光三郎氏が、彼女は幸田文や森茉莉と匹敵すると書いていますが、それはさすがに言いすぎだと思いました。
二人のように娘ではなく孫ですし、小説とエッセイはまた違いますから。
文豪というより、一人の人間としての漱石、そして彼に振り回された家族達の話がベースとなって描かれているため、他人の家の内情を聞かされた感じがして、読んでいてあまり居心地がよくありませんでした。
でも、夏目家の糠床にはとても興味を持ったし、漱石公園にある、飼われていた猫のお墓は新宿区文化財になったと知りました。
いつかたずねて見たいと思います。 -
情報科教員MTのBlog(『夏目家の福猫』を読了!!)
https://willpwr.blog.jp/archives/51163961.html -
ジュンク堂書店 千日前店
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偉人の生きてる時の話は面白い。
家族から見ればあんまり偉人っぽくないのがいい。
著者プロフィール
半藤末利子の作品





