向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 26626
感想 : 3176
  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355511

作品紹介・あらすじ

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

感想・レビュー・書評

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  • ●誰も救われない
    ●報われない
    ●残酷
    ●正解がない
    って感想ですね

    読んでて ずっとイライラしました
    作品的には【短編で良かったのでは?】といった感じで
    内容的に、[世にも奇妙な物語]の中の1話くらいな内容

    ですが450ページくらいある長編
    最後の50~60頁くらい、ずっと真相き迫る事の繰り返し。しかしコレが上手くいってなく、読んでて【まだ終んないの?】となった

    設定もそうだが
    カッコいい事を言おうとして、1小節にメッセージを詰め込みすぎる 中二病の歌詞みたいだった…

  • 少年のひと夏の出来事、と思って読み進めるも、とんでもない世界観に入り込んでいった。
    読み終え、冒頭の二頁に戻るとぞわっとする。
    人は誰も大なり小なり表向きでない違う一面を持っており、人に言えない過去をも抱えている、という解釈。
    自分はいつだって主人公で、その物語の中では、何かを隠そうとしているし、何かを忘れようとしている。
    善人と言われている人にも潜む狂気。人との間で、思い込み、錯覚が悪い方になびいてしまった悲劇ととれた。
    不意に相手が発した言葉で、思いつめ人生狂ってしまう。そこまではいかなくとも、言った方はそこまでの意味がないのに、深く受け止めてしまい苦しんでしまうことってある。
    解説が分かりやすくてとても良かったです。「著者の小説の主人公にとって、世界とは常に、主観や誤解や幻想に蝕まれる脆いものである。」
    僕は、ただ寂しかった。ミチオの言葉が印象に残った。
    するする読めて面白かった。内容的には違和感と不気味さが凄く、好みかといえばわからない。

  • 何を書いてもネタバレになるので手短なことしか言えませんが、読み進めていくうちに感じる不可解な点や捻れを理解できたときのおぞましさがとても良かったです。
    本作最大の謎に到達するまでは気持ち悪さが強く、更にそれを上回る驚きとラストの狂気。しかも主人公が小学生というのが末恐ろしさを感じます。
    グロテスクな描写さえクリアできればですが、どんでん返し系・イヤミス系が好きな方にオススメしたい一冊。
    そこそこ長い作品ですがもう一度読みたいと思ってしまいました。

  •  多くの方が仰っている通り、本書の好み・評価は分かれるのだろうな、とうなづける気がしました。
     読後に「面白かった」「感動した」等の感想・感覚は、読み手の納得や感情の高揚があってこそだと思います。
     本書は、ミステリー、ファンタジー、サイコサスペンス、ホラー等に加え、シュールな要素も起因し、読み手の違和感が解消されにくいのではないでしょうか。
     個人的には、様々な違和感や伏線の回収を求め、ページを捲る手が止まりませんでした。著者が問題提起した、初期の実験的作品と言えるかもしれません。物語が破綻している訳でもなく、沢山の解釈や議論が可能な作品と受け止めました。ただ、作品の価値を認めるものの、どこかでスッキリしたい自分がいることも事実でした。
     小説の中の特定の枠やジャンルに囚われない世界は、私たちが暮らしている日常が不条理な世界と隣り合わせであることの示唆かもしれません。

  • 物語の独特な雰囲気と謎が深まっていく感じに思わず一気読みでした。
    手足の骨を折るとか、石鹸のくだりとか、児童ポルノなど不気味でグロテスクな感じが好き嫌いが分かれそうな感じがしました。自分としては、まぁ好きでも嫌いでもないかなっていう感じです…

  • 思っていた系統じゃなかった!嫌な感じ。
    妙な違和感を感じながらページをめくる手が止まらない。退屈さを感じる瞬間がなく一気読みでした。

    ミチオが怖い。狂気。
    でも小学生のミチオのセリフは普通の人にも何かを感じさせる。
    「この世界は、どこかおかしい」
    「僕だけじゃない。誰だって、自分の物語の中にいるじゃないか。自分だけの物語の中に。その物語はいつだって、何かを隠そうとしてるし、何かを忘れようとしてるじゃないか」
    「知ってる?僕、今日で10歳になるんだよ」
    つい今まで悍ましいと思っていたのに、このシーンは泣いた。

    読後に冒頭を読み返してため息。小学生の究極の現実逃避!道尾秀介の別の作品をはやく読みたくなった。
    でも次は爽やかな話が読みたいな。 

  • 初・道尾秀介さん。
    作品名はとてもよく聞くが、確かにこれは好き嫌いが分かれそうだ。

    私は…どっちかといえばあまり好きではなかったかな笑?表紙のイラストからもう少し明るい話をイメージしていたからかも知れない。
    思いの外暗く、グロテスクで人間のダークサイドを煮詰めたみたいな話だった。
    最初のページを読んだ時すでに息が詰まるような重さを感じる。
    そういった世界観を作り出していたという点で筆力を感じさせる。

    ---------------------------------

    学校でイジメを受けていたS君の死体を発見してしまった9歳のミチオ。
    しかしその死体は忽然を姿を消してしまう。
    3歳の妹ミカ、そしてS君の生まれ変わりだという「蜘蛛」。彼らと事件の推理をしながら、消えた死体を探す。


    もう書いててこの時点で違和感たっぷりなんだけど笑
    物語の世界観がこの非現実な初期設定を
    「まぁアリか…」と読者にスルーさせるのが凄い…

    事件の筋は、最初は追えていたんだけど
    泰造爺さんあたりから複雑になってきて、私のレベルで理解が難しく…ちょっと読み飛ばし笑
    こんな9歳どこにもいないよ…どんな生き方してんだよ…

    そしてこの物語の一番のミソ、
    叙述トリックの部分。
    最初は「イヤイヤ、そんなん無理ちゃう、どゆうこと?」
    とまずショックと混乱が来る。
    その後行き戻りしつつ違和感の正体を確かめる。納得するとともにヤバぁー(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
    ここで言えないけどさ、ミカとかさぁ…色々きついなぁ、色々きついなぁ…



    人は誰しも自分の中に都合の良い物語を作りながら生きている。
    後悔や失敗。忘れてしまいたい、隠してしまいたい負の感情から身を守るため。
    そこはわかる。わかるが…
    「物語を作るなら、もっと本気でやらなくちゃ」
    イヤイヤ…あんた本気すぎでしょ

    エピローグも絶望的だけど、もう一度最初に戻ると大人になったミチオが「物語」から未だ抜け出せていないことが分かり、更に絶望を味わえておすすめ。

  • 「ミチオ=道尾」なんかな?
    主人公ミチオくん、学校では友達少なそうやけど、家帰るといっぱいいるやん!蜘蛛とかトカゲとかやけど^^;
    大の大人が悩みながら、解決しようとしてるのに、小学校四年生のミチオくんが、名探偵さながら、解決に向かっていくのは、何か…劣等感というか不思議な…
    せめて、中学生、いや高校生でも良いと思う。コナンは、小学生やけど中身は高校生やし(^_^)v
    現実としては、脳内活動が活発なミチオくんがメインなんで、それを考えると、ある程度絞れるんやけどね。
    まぁ、事件は解決はしたけど、あんまり良い気分にはならん…
    ミチオくんは、この後、どうやって生きてきたのかも気になるな。
    こちらの脳内活動を更に活発にして、もう一度読むと違ったように見えそう。

  • どんでん返しがすごいと言われているミステリーの1つ。
    読んでいくと、主人公含めたほぼ全ての人間の感覚が正直言うとイカれている年か思えないような人間ばかりで読むのをやめてしまいたいと思う描写(動物虐待や岩村の趣味等)が多かった。
    そしてどんでん返しであると思われる、妹やおばあちゃんが死んでいて輪廻転生という形(地の文ではあたかも人間であるかのように)で登場する場面には「そんなのアリか!?」と感じてしまった。
    そして最後の場面では、"彼"は死んでしまったかどうかが分からなかったが、それはこの物語のテーマである、自分の物語(=読者の感覚)に委ねられているのでは無いかと感じた。彼は転生?それとも...

  • ❇︎
    妹のミカだけを可愛がり、ミチオを嘘つきと
    罵り見向きもしない母とカメのように静かな父。

    学校にも家にも居場所のないミチオは困った事が
    あると、いつも二人に優しい近所のトコ婆ちゃんを
    訪ねては、存在を消すように暮らしていた。

    前半4分の1はミチオの置かれている状況が
    読んでいて苦しくて、速度がだんだん遅くなり
    読み切れるか正直不安でした。

    S君が現れたところから話は急激に展開するが、
    小学生四年生と3歳の妹のやりとりと思えない
    会話内容に戸惑いを感じながら、ミチオやS君の
    状況の好転を祈るように読み進めました。

    ーーー
    あらすじ

    ミチオは夏休みの前日に学校を休んだ
    クラスメイトのS君にプリントと夏の宿題を
    届けることになる。

    家についたミチオはS君が首を吊って死んで
    いるのを発見してしまう。
    慌てて学校に戻って報告するが、先生が行くと
    S君の死体は消えていた。

    とんでもない一夏の物語。


    ーーー
    S君に何があったのかという疑問と、
    ミチオの生活を不憫に感じているうちに、
    何?何?という間に、予想以上の斜め方向に
    話が展開していきました。

    心が狂ってしまうことと、
    抗い難い欲求に飲み込まれてしまうこと、
    どこまでも自分勝手な選択をしてですら、
    生きることが苦しいと感じた物語。





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著者プロフィール

2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』がベストセラーとなり、以後、『シャドウ』で本格ミステリー大賞、『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、『月と蟹』で直木賞を受賞。累計部数は700万部に迫る。

「2022年 『DETECTIVE X CASE FILE #1 御仏の殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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